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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十一章「夏への扉」

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兵士たちへ


【用語】


『国際連合軍/Rules of Engagement/ROE/交戦規程』

:戦闘を前提とした作戦中の行動基準。自衛隊では「部隊行動基準」と呼ぶが国際連合派遣中は一般的な交戦規定で通じる。21世紀型戦場では「作戦が失敗した場合の言い訳の一つ」として作成。軍官僚/参謀将校の元で「間違いを防ぐためのチェックプロセスを多重化する」方向へ進展。通常プロセスに多重プロセスを重ね合わせることで誤認が発生する確率を倍増させることに成功。さらに個人と組織の精神的肉体的作業量的な、限られたリソースを極限まで分散することで事故率を倍増。様々な弊害を生み、現実には一切省みられることはなくなった。少しでも省みるとあらゆる行動が不可能になるので。


古今東西、無能な人間が必ずやらかす誤謬の一つなので単なる典型。


そのおかげで、どのような失敗や犯罪が発生しても「手順を守らなかった当事者の個人的な責任である」と断言し自分たち(ここに及んでなお「自分」は無し)は関係が無いと主張可能。

そのおかげで、参謀将校は一切の責任を負うことなくさらに手順を複雑化多重化増量化することに邁進してありとあらゆることに関与できるようになるが責任だけは取らないことが可能。


古今東西、官僚体制の一般的な姿なので、特別驚くべきことでは無い。


国際連合軍では軍が解散、ないし兵士が除隊するまでのすべてを作戦とみなしている。

よって従来のものとは全く違い、規定ではなく基準しか明示していない。

出来るだけ短く端的に表現してあるので、個々人の裁量と責任範囲が無限大となる。



『国際連合軍作戦既定一部抄訳』

最優先が友好的な部外者、シスターズみたいな現地協力者。

序列二位が国際連合、軍に参加している多世界の非戦闘員。

最下位が俺たち、出身世界を問わず自分で戦える兵士たち。


※第462話<命の序列:異世界人の地位に関する規定。> より



確かに。

書いたし命じて、誰の反対も無い。

責任者よ。



ふむ。

「異世界人の命が地球人より優先されている」

のは、なぜか?


ということ、か。


まあ非戦闘員を戦闘員より上位に置くのは、貴男が知ってる常道として、

「異世界人と地球人を公平に考えている」

様に見える、のは国際連合の姿勢からして違和感を感じる、と。


それは

「非道な侵略者が、なぜ人道的にふるまうのか」

という矛盾を感じるのかしら?


なら簡単。


いや、

「人間は矛盾の集積である」

なんて馬鹿のバカによる馬鹿のための御遊びを始める気は、ない。


矛盾などない。

人間なのでね。


矛盾ではなく、誤認。


そう、それ。

「人道的な侵略者」

などいない。


気が付いた事には胸を張りなさい。

「矛盾」と勘違いしたことは、反省すること。


単純な話。

我々は「地球人類」のために行動している。


最優先?


違います。

最も優もない。

唯一。


「地球人類のため」以外考慮していない。


だからこそ過ちを防ぐ。

そのために規定をこしらえた。

皆も判っているわ。


「地球人である」


たかがそれだけのことに、価値があると思いこむ、馬鹿を殺す。

それだけの、仕掛け。


起こりがちな事でしょう?




ありとあらゆる方法が試みられて実践される。

これまでも、これからも、我々によって。


それを知った凡俗、その一部が、何を感じる?


ありとあらゆる禁忌が破られ、何もかもが費やされ、全てを賭して努められる。

それは「地球人が価値ある存在」であるからに他ならない。

――――――――――阿呆。


こーいう屑が、何をしでかすかと思うと、吐き気がする。


何処からそんな妄想を拾ってくるやら。

価値が無ければ棄ててかまわん、とでもいいたいのかしらね。

そも自分が生きている時点で察しろって話。


静かに首をくくってくれないの。


まあ、軍はこちらの管轄だから。

そんな馬鹿が居れば、きちんと始末する背金がある。

自分に価値があると妄想し「生きよう」とするなど兵士に非ず。


馬鹿以前に、害虫。


だからこそ、判りやすく、序列を示した。

もちろんそれを、実践させてもいる。

守り難い異世界住民だけに、負荷も適当。


もともと対象の絶対数が少ない。


デモンストレーションによって、作戦に支障が出ることも無い。

関わる者を厳選することで、成功率も高い。


それこそ「地球人類のために」必要な軍事力を最適化する手段。

その一つ。


それだけ。

軍にとっては、ね。


《日本列島で活動中のカタリベ取材ノートVol34》





【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面階段/青龍の貴族の右後/魔女っ娘】


わたしは、すっごくすっごく嬉しいです。

あ、いえ、ご主人様の感触だけのことでは無くて。

ちょっと距離を置いても、視線を向けてくださることではなく。


ご主人様の物になれたから、なれたのに、なお広い世界を観せていただける。


大きな街、いえ、都市。

大きな柱、大神殿。

大きな道、大路。


わたしが小さいからでしょうか。


圧倒されるような、浮き立つような、そんな感じがします。

ぱそこん、で魅せていただいた、青龍の、ご主人様の世界。


あそこも大きかったです。

大きいことは、ご主人様を想わせます。


小さいのは、わたし。

大きいのは、ご主人様。


わたしは欲に溺れています。


一緒に居させていただく。

気にかけていただく。

愉しませていただく。


それだけじゃイヤ。


――――――――――だけ――――――――――


なんて、感じてしまうこと、うぅぅうぅぅうぅぅうぅぅうぅぅうぅぅうぅぅうぅぅうぅぅうぅぅうぅぅうぅぅうぅぅうぅぅ

・・・・・・・・・・・・・恥ずかしいです。


もっともっとが止まりません。


わたしを縛り付けて欲しい。

わたしを気にして欲しい。

わたしを愉しんで欲しい。


わたしだけを

――――――――――ダメですダメですダメです。

わたしは、抑えます。


心で肢体を抑えてみせます。


大好きになれた、わたし自身の小さな肢体。

相変わらず、弱く小さく乏しい、わたし。

だからこそ、ご主人様が悦ぶ、わたし自身。


今も、昔も、この先も、きっと視ていただいています。


わたしはわたしを好きになりました。

ご主人様の為にある肢体が、大好きだから。

もっと好きになるために、ご主人様に視て欲しい。


だからがんばります!

まずは、振り向かないように!

視ていただくために、見ないように!


え?

きゃ?

ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪




【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神殿正面階段途中/青龍の貴族】


エルフっ娘は俺たちにチラリと向き、すぐに向きなおる。

手を引いたら、俺に抱き付いてきた魔女っ娘、お嬢。

微笑んで、俺に任せてくれている。


エルフっ娘にとって、二人は家族同然。

俺たちが言う家族に、かなり近いはず。

そんな二人をあずけて心配していない。


この信頼感どーよ?


普段もこういけばいいのにな。

普段はそうもいかないんです。



太守領。

太守府。

王城。

港街。

農村。

他、色々。


エルフっ娘は俺たちの最終防衛線。

24時間、常にゼロ距離。


出ないと護れないからな。


俺一人だと、ちびっこ二人を抱え込むのがせいぜい。

それもまた、せいぜい身を隠すだけ。


しかも、ちびっこ二人は、ぴょこぴょこ顔を出すタイプ。


いやまあ、物見高いのは子どもの常。

抑えようが隠そうが、そりゃ覗くよね。

なんてもっともなんだ。


大人としては困るのだが。


しかも俺のとこには、Colorfulがいる。

さすがに全員分の盾にはなれません。

俺はそんなに機敏じゃなければデカくもないし。


幼女と童女以外は少女。

肢体のサイズだけなら大人と変わらん。


もちろんエルフっ娘が、最終防衛線、一応。


そもそも機械的電子的索敵網の中心が軍政部隊。

外殻は、うちの隊員たちが固めている。


そーいう意味では、あくまでも最終、防衛線に過ぎないともいえる。

指揮を執るのは曹長なんだから、最終防衛線(えるふっこ)の出番はない。

(自立式土嚢)の出番も、無いだろうね。


おそらく。


もちろん、曹長が自衛隊員の中でも優秀、ってのもありますが。

そこは俺とは関係ないけど我が隊の自慢ですと娘さんに告知中。

それをあえて等閑視し、個人の優劣とはまた違う意味で大丈夫。


でなければならないと偉い人が言っております。


亡国、いや、某国大統領とか。

今度こそアメリカン・ウェイを全うする覚悟でいらっしゃる。

三佐とか三佐とか三佐とか。

命令に現実を合わせるって、伝統的日本軍人でいらっしゃる。

そして親愛なる納税者の皆様。

もちろん大丈夫なんで、ご安心いただいていらっしゃる?


まあ、そりゃそうなんですけどね、三佐の言葉の割に。


そりゃー、あなた、あれですよ。

俺たち地球人は千年先にスタートした亀。

異世界のウサギやチーターの速さを承知で言う。


速さは早さにかなわない。


どれだけ速くても、追いつかれては恥辱屈辱それ以前。

フェア・アンフェアの問題じゃありませんよ。


異世界に勝って当たり前。

準中世に優って当たり前。

ソレを勝利と言ってよいなら。

コレを優越と言ってよいなら。


暴力と知識だけなら。


自慢にならねーなホント。

それでも薄氷の勝利なんですけどね

ホント、自慢できねーよ。


自衛隊員なら、いや、ある程度知識があれば対抗手段は思いつく。

中世VS現代で、勝てなくても、負けないようにするくらい。

いや、勝てなくもないか。


ゲリラ戦の知識なんかいくらでもあるからな。

だがそれを、異世界側が思いつくことは在り得ない。

前提になる現代知識が無い相手に、教えて伝えることも不可能。


相手に知られてない。

これ最強。


相手の無知に付け込む。

ソレに付け込み続けるようにする。

気分はインカ・アステカを蹂躙した悪い白人。


勝って当たり前だよこれ。


そんな前例がある以上、敗北なんぞ赦されない。

ものすごいプレッシャーですホント。

いや命がかかってんだから、当たり前なんですが。


でも、勝って当たり前、ってヤダよね?


当たり前だが、俺たちが保護できないような場所に、民間人が行くことは無い。

頑張ってるジャーナリスト諸君には悪いが、勝手に行くことも許さない。

もちろん異世界側から、民間人がいる場所にこさせたりはしない。


日本保護下、出身世界を問わず、の民間人。


もし民間人に犠牲が出るようなら?

俺たち自衛隊/国連軍が居る場所で?


自衛隊員全員割腹自決、ってか、殺される。


衆参両院で吊し上げ確定ですが、その前に上官が言うだろう。

例えばこんな風に。




貴様の辞表は昨年度付で受領済みよ♪

民間軍事会社に転職したあげくに任務に失敗して殉職って辛いわね?

貴男の気持ち(いしょ)は受け取ったわ♪


元上官として、死者にムチ打ったりはしないからね!


この9mmは気持ちよ♪

一発だけだから大切に使ってね?

気にしないでよ、介錯っていうのよこれは?




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・全部再現可能です。


たとえ異世界でも普通の状況であれば、民間人の死傷者などありえない。

紛争世界でいっぱいの現代世界だって、職業的な死傷者以外は稀だったやんけ。

ましてや異世界転移という異常事態で、民間人を危険な状況にするわけがないのだ。


危険な場所(いせかい)にいる現地協力者(みんかんじん)も含めてね。


殉職した国連特使?

そーいえば、居ましたか?

本当に実在してたんですかね?


まあ存在したと国連総会で決まった。

衆参両院も決議している。


だとすると、アリエナイギセイ、がなぜあり得たのかって話になるんですが、それについては誰も気にしてないからいいんですよ?って言われたことがあります。


ああ彼らの英雄的な自己犠牲、危険しかない場所に敢えて吶喊して平和を唱えたのか何をしたんかよくわからない行為、に敬意を捧げて帝国に殺されたのだということにしておこう。


コラテラル・ダメージってことで。

それ以外それ以外。


本来なら。

敢えてしない限り。

史上最悪の無能か悪意が無ければ。


つまりここに在る悪意。

わーざわーざ味方以外と近接混交状態を命じておいて、責任の取り方がコレもん。

責任を取らせることこそ責任の取り方。


自分を無疵に保つ義務がある、って、マジで断言する三佐。


そーいう意味で、俺が一番殺されそう。

そーいう環境を、非公式上司に強いられてるんだ!

そーいう事でも、赦してもらえないが。


とはいえ、それ以前の話。


赦す前に許されてたまるか。

もちろん、ムチャぶり元凶ブラック上司も赦さないだろう。

だからと言って撤退もさせてくれないが。


何考えてやがんだあの (クソアマ)


この対策は万事怠りない、と曹長が保障してくれている。

それでも万が一にも憶が一にも、あっては困る。

だからこそ、エルフっ娘にも、いろいろお願いしている。


な訳。

そりゃ、力も入るってもんだよね。


それが普段。

そして今。


リラックスしているエルフっ娘?

それ自体が初めてじゃないだろうか?




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