P4/Risk Group 4
【登場人物/三人称】
地球側呼称《三佐》
現地側呼称《青龍の公女》
?歳/女性
:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。
陸上自衛隊の正服第2種礼装(緑色)が標準。
馬上の時もスカートのまま、横座りで馬を操るのになれている
父親譲りで、私利私欲と公益を「完全に一致」させることが出来るタイプ。
地球側呼称《三尉/マメシバ/ハナコ》
現地側呼称《マメシバ卿》
?歳/女性
:陸上自衛隊医官/三尉。国際連合軍独立教導旅団副官。キラキラネームの本名をかたくなに拒み「ハナコ」を自称。上官の元カノが勝手に「マメシバ」とあだ名をつけて呼んでいる。
陸上自衛隊の正服第2種礼装(緑色)を仕立て直したように見せかけた完全新作を着用。
もちろんマメシバブランド。
恋愛至上主義者で、倫理や道徳はおろか「愛は地球(人類)より重い」と即答できるタイプ。
我々は何者なのか?
「なんだそれは」
「そう訊かれているのではないかと」
「赤い龍とでも応えてやれ」
「彼らは青い龍だそうだ」
「同じ龍でも大違い」
「何しに来たのだ吾奴らは」
「財貨を奪うわけで無し、労役を課すでも無し、領地を征して統治すらせぬ」
「近づくことすら忌避しているな」
「国庫は抑えたようですが、うっちゃっているようで」
「我が軍が退いた後を、密偵が潜まず歩けよる」
「民には追われるがの」
「こちらが追われぬわけでもない」
「将兵、役付、その氏族に子女、片端から余さず虜」
「処刑するか、買い戻させるか、奴隷にするならわかるが」
「貴賤問わずに等しく扱っておる」
「正気ではないな」
「帯剣すら許さず、身ぐるみを剥ぎ、同じ衣で包む」
「狂気であろうな」
「そして命ずる」
「なにもするな」
「さっぱりわからん」
「聞かれるだけか」
「好きなモノは何か?嫌いなモノは何か?今日は何をしているのか?昨日はなにをしていたのか?一昨日は?その前は?」
※第75話<幕間:善悪の彼岸>より
「きりがないな」
「信じがたいが」
「放たれた虜囚が、皆同じことを言っておる」
「よもや」
「それを知るために攻め寄せたのではあるまいな?」
和を請いにきたと称しておる輩は、領土をよこせと叫んでおるが、な。
《国際連合軍事参謀委員会管理/国際連合軍長距離偵察情報/音声データより抜粋》
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】
俺は視線を感じている。
子どもたちが楽しそうで何よりです。
んで。
俺の懸念するふたーつめ。
口説くに口説きたい、いや、けない女の方。
言葉を楽しむなら口説きながらだよね、って訳にはいかない。
帝国女騎士、二十代前半(推定)の美人(確定)さん。
あえて美、女とは言うまい。
観ているだけでも楽しいですよほんと。
砂漠のど真ん中でみえるオアシスみたいに。
あーこれが幻だったらどれだけ幸せであろうか。
そんな我慢と忍耐との圧縮中、別な楽しみは救いでもある。
でもある、ってことは、救いそのものではないわけで。
なんて退屈しない世界なんでしょーね。
ガンガン伝わってきます。
帝国女騎士がまっすぐ注ぐ、明快明解明開な意志。
魔法で翻訳されんでもすぐわかる。
希望、願望、共感じゃない。
そんな曖昧じゃありません。
正々堂々と口説かれようとしてらっしゃいますね、これは。
つまりは、みなさんにも伝わっているわけだ。
異世界の、すくなくともここ帝国軍捕虜には。
国際連合多世界物理接触禁止原則、その例外。
それが俺。
ありとあらゆる物理的接触がもたらす最大の危機。
異世界生態系同士の過剰反応、それは適応も含む。
未知の疫病へ相互感染、その程度で収まらない事。
新しい疫病の発生。
もともとウイルスが日常的に行っている変異。
それが新しい環境でどんな方向に向かうか予測不可能。
良くも悪くもなりうるわけで、対処も準備もしようがない。
その程度で収まったら、よかったんだけどな。
特に禁止されているのが多世界間生殖接触。
別に性感染症だけを警戒しているんじゃない。
生殖細胞同士の接触、事実上の遺伝子融合。
人体という遺伝子交配実験工場、それは体外に対する隙間だらけだ。
取り扱う危険から推測される必須レベル。
物理的封じ込めでいえばP4相当。
人体は異世界と地球双方で、まあ、P2~P3。
うん。
受胎以前の段階、受精のレベルで何かが起こる。
必ず起こる。
それがなにか、良否まったく誰にもわからない。
やばい。
単なるウィルスや細菌ならある程度、免疫の異物排除機能が期待できる。
んが、生殖過程であればそれはほぼ期待できない。
それ自体が異物を、異なる因子を獲りこんで結合させるためにあるのだから。
だからこそ、禁止令は徹底してる。
男女間の接触について重点的に。
それはそれなりに機能してる。
同性同士ならいいって訳でもないが、危険度は格段に低いので別枠。
24時間記録される地球人類の国際連合関係者。
それと接触する機会がある異世界人。
お互いに禁令が浸透している。
時々双方が焼却処分されているにしても、パンデミック対策は貫徹されている、と言えるだろう。
で、俺。
俺が解禁された理由。
まあ、解る。
永久に続けることはできないからだ。
多世界接触禁止措置は、あくまでも一時的な措置に過ぎない。
異世界に来てしまった以上、すでに異世界生態系に侵食し、されている。
異世界生態系を滅亡させでもしない限りは、接触を遅らせることしかできない。
もちろん、海や大気が接触しているから、ってわけじゃない。
水や空気は惑星単位で循環している訳じゃないから。
気流海流、濃度に密度、温度と組成によって循環範囲は固定される。
日本海に放射性物質を垂れ流しても、南極まで届くわけじゃない。
地軸転倒や地殻崩壊でも起こらない限り、数万年単位で日本周辺を循環します。
地球上の日本列島の様に、極めて脆弱な地盤では違うが。
地殻プレート境界線上に位置する為に、わずか十万年ほどで地形や海流が変る。
もちろん気候も変われば大気循環も変わるだろうが、南極には届かない。
水に流すって訳にはいかない、ってこと。
異世界の地殻プレートがどうなっているか、それはただいま調査中。
そも十万年あれば、放射性物質は軒並み半減期を迎えてるけどね。
そこまでゆるゆるな国土条件は、まあ少ないんだが、個性ってことで。
一つの星、その中が複数に仕切られている、ということ。
つまりは自然のエア・カーテン、ウォーター・カーテンと思えばいい。
そういう意味で、異世界生態系から日本列島を物理的に隔離することは、可能だ。
知的生命体、物理的に自然環境に干渉できる力がある生物が居なければ、ね。
居たんだが。
だから、ってのもあるんだろうな。
だから、ってだけじゃないのは置いておくとして。
だから、国際連合、いや俺たち日本の議員先生方は決定した。
こちらから干渉すること。
そうと決まれば無縁じゃいられない。
戸籍法の改正案まで審議されているが、社会的要素だけじゃなく。
生物学的な問題有無まで検討する。
それが良いか悪いか判断保留、俺は、ね。
で、俺。
俺が解禁された理由。
まあ、解る。
たまたまというか、偶然というか。
三佐の子分だから、だろう。
もちろん違うが。
そう見なされているようで。
それはきっと誤解ですあの女とは赤の他人です。
だから三佐から見て、国際連合からも、対処しやすい。
それが消毒でも記録でも、干渉でも誘導でも。
何もかも合法的にしたことにできる。
色々と趣味か仕事か暇つぶしか、判然としない活動を押し付けられる、だから常にもともと監視されてたり。
三佐の肩書。
陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長。
そしてなにより非肩書。
国際連合首謀者の娘、国際連合軍主謀者の友人の娘。
その上に人を人とも思わない性格。
ありとあらゆる場合の判断と行動を、迅速に個人的にできるわけ。
なんてしちメンドクサイ女だ。
いつか絶対にビシッと言ってやる。
お墓参りのついでに墓前できっちり。
半世紀くらいあれば、なんとかなるよ、きっと
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さきにしぬのはどちらかとかいわないよーに。
男女関係に必要な事なんか、解ってないんだろーな。
三佐の場合、経験値以前に人間性の問題として。
マメシバといい、どーしておかしな女が集まるのか。
しかも、問題はそれだけじゃない。
俺の周りには今、子どもが溢れてるってのに、どーしろというのか。
我慢できなかったらどーなるということになるのか。
パンデミックの前に大問題。
お互いにトラウマになりかねない。
いえ、そんなハードなことはしませんけれど、たぶん。
いえいえ、そもそも耐えきって見せますけどね、たぶん。
いえいえいえ、前例があるなんて言いません、たぶん。
子どもは大人の秘め事が大好きだからね。
そうと判れば突撃してくるんです。
居合せた俺は、どーすればよかったのか。
お互いに癖になっ・・・・・・ゲフンゲフン。
友人から聞いたことがるあれこれはともかくとして。
今そこにある危機。
あくまでも友達の話であって俺の体験じゃないです。
何事にも限度限界あるわけで、おかしなことに、三佐がその辺りをまるで考慮していない。
子どもにはそれなりに配慮するはずの三佐だが?
子どもが視てるのを忘れているのか?
子どもを前にあたふたする俺を楽しんでるのか?
肝心なところで抜けてるし、あの緑の悪魔。
とゆーわけで、帝国軍に通知されたんだろうな。
あいつチョロイからヤッテいいよ、じゃないか。
禁止事項の対象外は独りしかいない、とかかな。
やっちゃいけない、と言わなければ、やっていい、と思うよね普通。
帝国軍にしてみれば、俺たちと戦いたい。
捕虜になっているから、武力以外で倒したい。
そして俺限定で武力以外の行使をしてもかまわない。
そのために厳選されたであろう、帝国女騎士の力こぶが目に見えるようです。
たかが一人でも、地球の戦力を減らせればOK。
利用できればなお結構。
こいつ無力と判っても地球人類のデータになる。
俺を篭絡して損はない、あちらさん的には。
知ったことかの相手の事情。
俺は思いやりにあふれた人間ではないのだ。
絶対に優先されるべき、俺の事情、いや希望、欲望というとかっこ悪い。
ヤバイ上司の許可があり。
子どもの監視を逃れるのは手馴れており。
女が俺に向けるヤバイ視線。
ここまでされて、いや別にされなくても、我慢なんかしないのである。
絶対に、ぜったいに、ゼッタイに、口説いて見せよう。
落とせるとは言わないが。
口説けぬなら、口説けるまで待とうホトトギス。
けっして俺の趣味のためじゃない。
これでルパンダイブしないのは、十年後の快楽のため。
今日のよくぼ、いえ、屈辱に耐えて明日を生きるのが男です。
絶対にあんたのためじゃないんだからね!
喉の渇きに耐えかねて。
差し出されたるレモン水。
断わるほどに無粋ではなく。
飲み干すほどに無欲でも無し。
とびつきてー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
彼女が発する強者の自負と同じ強者への共感は、えーと、俺と俺たちを同一視するような錯覚を患っておられるか、俺を過大評価していると思われ
――――――――――女より、いや、女としても、対峙する意識が強いんですね。
女は背中で語る。
押し倒される気が満ちております。
押し倒しに来ないのは、自負心故でしょうね。
押し倒した方が負けっていう勝負ですかねこれ。
三佐がシスターズ&Colorfulのことに気がつくまで、俺が堪え凌ぐしかない。
大変に体にわるい。
我慢させられてる俺の。
ただでさえ禁欲中なのに。
これはあれですわ。
魔法翻訳冤罪無関係。
よくあるよくあるたまにある。
マメシバが言ってたもんな。
どーでもいい雑魚に誘われてるんじゃない。
一生懸命、狙った男に誘わせてるんだ、と
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、しくじって勘違いさせることもあるそうだが。
見てるオマエに魅せてない!!!!!!!!!!
――――――――――名言である。
観るけどね。
魅せてる貴男がなぜ見ない!!!!!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・知らんがな。
マジギレしないで俺にむけ。
おれサンドバックじゃないから。
爪砥ぎ板だなんて誤解です。
ネコパンチなら大歓迎。
そー上手くいかないですかそーですか。




