ピュロスの戦争
古代ギリシャにおいてさえ、戦争とはどういうものであるか理解されていた。
あるいは、その理解度は19世紀、戦時国際法の基本ルールが成立したころに近い考え方であったかもしれない。
共通の文明圏における勢力争い。
その点で古代ギリシャと19世紀欧州には類似した環境があった。
専門家同士による、理性に基づいた武力行使。
非戦闘員の保護、捕虜の権利、無防備都市の概念、講和を促進するための「無条件降伏要求の禁止」(降伏は条件を付ける、と規定された)・・・・・・ありとあらゆる知恵を尽くし破壊と殺戮を最小限度にするために最善を尽くした。
(必要な殺人と破壊は当然ゆるされた。必要を決めなければ不必要を認定できないからだ)
徹底的なリアリズムに基づいたヒューマニズム。
それは、文明がようやくたどり着いた平和に近づくための筋道であっただろう。
たとえ決してたどり着けなくとも近づき続ける為に。
しかして、その後の歴史は、なぜこうなった。
戦争そのものを悪とすることで「戦争」法規が意味を失った。
当然だろう?
「悪いことをするときのルール」など決めるなら、「悪いこと」を防ぐべきだからだ。
不戦条約、国際連盟、集団的自衛権・・・・・努力しなかったとは言わない。
それは、平和を実現できると考えた人々、その理想の形であっただろう。
必ずそれを手にするために。
徹底的なファンタジーに基づいたヒューマニズムが何をもたらしたのかはみなさんご存じだ。
イデオロギー戦争。
民族戦争。
総力戦。
無差別攻撃、大量虐殺、無条件降伏勧告、報復裁判・・・・・・・。
みなさんはいかがかな。
戦争を認めるべきだなどとは言わない。
平和を夢物語と笑うほど卑しくはない。
それは、戦争を殺人と例えればわかりやすいと思う。
殺人が無くならない前提で、残酷な殺し方を禁止するのが文明か?
殺人が無くならない前提で、なくすことだけに集中するのが文明か?
犠牲が少なくなればいいのだろうか?
悪を容認したとしても。
悪を容認しないことこそが何よりも優先されるのだろうか?
犠牲が増えたとしても。
なんとも屈辱的なことに、私は答えられないのだけれども。
【太守府/港湾都市/北街道/港湾地区北柵関門/軍政部隊中央】
俺たちが港湾の門をくぐると出迎え。
お嬢の兄、両替商。
若い参事、船主たちの代表。
素早く離れたのは盗賊ギルドの頭目。
気を使ってくれたかな。
「大変心地よい感触が腕から離れてしまいました・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・悔しくなんかないんだからね!」
アテレコすんな神父!やっば日本語得意だろお前!――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――すいません、頭目。意味ありげな笑顔を浮かべるとこいつが調子に乗りますからやヤメテ。
といえたらどんなに気が楽か。
「OH―――ミステーク!具体名request?やーらかいオッパ・・・・・・ホワッ」
エルフっ子が神父を蹴り、そうになり裏拳。
スカートだからな。
さすがにかわす神父。結構、体捌きうまいよな。
出迎えと合流した港街の代表格三人。港湾三大勢力そろい踏み。
お付きがそれぞれ二人。
両替商ことお嬢の兄さんは、御付きが番頭さんかな?
若い参事の背に立つは船長っぽい?
頭目のとこは、ヤのつく自由業。
港は船主配下の武装船員が警備している。
こっちサイドでも、黒旗団の半分が港湾地域に駐留。
周り中が護衛みたいなもので安心だ。
黒旗団は地元の警邏が役にたたない、たちにくい昨夜、港湾の再掃討をしていたらしい。
さすがに中世じゃ月明かりだけで戦える奴は例外だ。
「暗視装備の習熟訓練よ。あたしらは試験装備が最初に廻されるからね」
と元カノ。
自慢そう。ほめてもらいたそう。ってか、お前が部下をほめるんじゃないの?
「大したものだ」
かわす俺。言葉の捌きは神父に劣らないぜ?
「うんうん。気遣いを覚えたね」
オマエも気を使え。背中にくっかないでくれるかな?
「なーにを他人行儀な、あんたとアタシの仲でしょ」
そーいう話じゃない。
「軍務中」
え?ってわざわざ驚くな。軍務中って言ったろうが。自衛隊?今は国連軍大尉、だから隊務じゃないの!
「仲、は否定なされないんですね」
何故に丁寧語エルフっ子。あ、元カノとにらめっこ。
さて置き。
黒旗団の夜間掃討で十何人か隠れている奴ら(避難民や略奪者)を見つけ、柵の隙間を確認したという。やっぱりスゴイな近代装備、そしてそれに素早く習熟していく元カノ私兵、黒旗団。
が、捕獲した連中は帝国兵やスパイじゃなかったので地元衛兵にだいたい引き渡した。
だいたい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・穴は地元の船員たちが塞いだという。
「別に、捕まえたヤツラを無意味に虐めたりしてないよ?」
無意味には?え?有意味にはどうなのかな?
いや、いい。
そんなわけで徹夜明けだから、黒旗団の大半は昼まで寝てる。
・・・・・・・・・・・・試験装備か。
まあ、試作じゃなくて、地球の各種装備から選別して国産化してるんだが。
この手の装備は『J付』と呼ばれ、信頼性も高い。
ほぼ全て、都区内の金型やプレス他中小工場で作っている。
設計や生産管理にテストは在日米軍メイン。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・国内の銃器生産会社は信頼性が無く、すべて国連軍装備調達リストから除外された。
国連軍兵站調査団(米軍の技術将校達)により
『耐久性他多数の試験データ改竄』
の不正がゴロゴロ出てきたからな。
国際連合軍事参謀委員会兵站部に、防衛省から抗議はあった。
ナニを抗議したか知らん。
そもそも正面装備はほとんど米軍の在庫で賄われてるだけに、防衛省の口出しする余地がないから無視されてるが。
衆参防衛委員会は弾劾裁判状態(日本の戦争指導は外務委員会中心だから影響がない)。
損害賠償と自衛隊からも取引禁止と危険物取り扱い許可剥奪が閣議決定。
会社役員と担当者が外患誘致罪と殺人未遂で告発され(検察庁は不起訴にして更に国連軍の日本兵器会社不信を決定づけた)。
起訴されなくても、取引先をすべて失った上に、支援措置が議会ですべて否決されたから、日系銃器メーカーは破産処理中。
それでも防衛省から送付された(目的不明)国際連合軍事参謀委員会宛て抗議文書は、自衛官的には有り難い事に、東京国際郵便局の再配達留保倉庫らしい。
俺の国際連合事務局宛て
『不当労働行為』
申立書と一緒だ。
『いつかニューヨーク国連本部への配達手段が完成/発見されたら』
配達開始。
結局。
小銃は、AK47かFN-FAL、どっちになるのかな~。
俺なんかは拳銃が軽きゃなんでもいいけどさ。
使う機会を考えたら、バラまきやすいAKかね。
両方、更に他の装備も、当の生産国政府に許諾とライセンス料を支払っている。
生産国政府ってのは日本の各国大使館の中だが。
兵器以外も
『本国との連絡が回復するまで』
という理由で日本国内の企業(含む外資)が、転移前から海外立地法人と結んだライセンス料を移転後に成立した各国政府が代行して集めている場合も多い。
外交や防衛の権利は国連に委託している国が多いが、財政はまた別ってことで。
国連軍参加兵士(給与は国際連合持ち、つまり日本の外交予算)からの徴税も各国とも始めている。
在日国民が多いが知的財産が乏しい発展途上国政府はこちらがメイン。
各国政府はそれで得た収入で在日国民の把握や支援を行う。
収入の無い国は何も出来ないわけじゃなく、国際連合から補助金(金出してるのは日本だが)がある。
基本的にまったく収入がない政府は在日国民も少ないからたいした問題じゃないらしい。
にしても、試用試作兵器の集中配備か・・・・・・・・・・・・上はこういう、黒旗団のような地球/異世界の混成部隊を標準化する気だな。でなけりゃ評価中の兵器を配備したりしない。
『彼らが使いやすい』
と感じる兵器を採用、改修する気だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どっかで、聞いたな?
げ!『戦争の現地化』ったら、ベトナムからアフガン、イラクまで完全失敗フラグじゃねーか。
「OK!AllRight!!」
肩叩くな。
「BBAはAfterWorldWarのJobにwwwwwwするRealistネ」
すでにどこの言語かわかんねーぞ。
和訳(訳者、俺)。
『現米軍最高司令官は一次大戦から後の戦争に草生やし・・・・・・・・・・嘲笑する現実主義者だから同じ失敗はしない安心しろ』
おい。
まあ、装備の更新を戦時にやる馬鹿じゃないし、底無し泥沼フラグを積む気もない、ってのはいい。
最高だ。
俺の命的に。
そっから先いいのか?俺の知った事じゃないがな?
つまり米西戦争までは評価するが、以後の戦争は嘲笑ってるわけか?
いいのか?
合衆国元統合参謀本部議長。
あ、TPOはわきまえてる?ってか、非公式な大統領の本音をなんで知ってる神父?
おまえ、ただの
「AHA――――――――?ME&BBAはブレインありありネー!1+1は東西南北老若男女ALLイコール!」
頭がありゃ答えは同じ、か・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それですんだら、人類皆理解しあえるわ!
「シワクチャBBA」
おい!いいのか?BBAって?
確かに婆さんだが不思議な艶が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なにその顔
「B――――――――――BAセン!!!!!!!!!!アナタドコ逝きマスカ!!!!!!!!!!考え直してRepeat You!」
ちげーよ!誰が婆専か!
なに凍り付いてるかシスターズ!蒼白だなおい!
その時。
俺も凍り付いた。
表情筋フリーズ。
俺が。
え?
Colorfulも?
キミたち任務勘違いしてない?
今は軍属だからね?
愛玩奴隷じゃないし!
え?
軍属ってわかってない?
軍司令官個人に属する愛玩奴隷?
ちょっ!
神父!!
凄い目で見られてるぞ!!
涙ぐまれてるぞ!!
凍り付くのは行きすぎじゃない??
俺が特殊性癖持ちってことになってるじゃねーか!!
どうするべきだ?
否定したら余計にそれらしいし!
証明しろって言われても困るし!
俺、みんなにスゲー怯えられてるよね?
そもそもどんな語感に変換されてるんだ?
なぞの魔法翻訳!!
いままで『俺たちの言葉』がどう伝わってるか、俺自身はあまり気にしてなかったけどさ!
伝わってりゃいいかと思ってたけどな!
「OK!OK!ロリペドBBAセン新人類!主よ?天は人の上にも下にも創らないHumanを斜め上に!!!」
よくねーよ!OKじゃね!だいたいカトリック!こら!天とか言っていいのか!天は道教の発想じゃね?
ゲ!!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――伝道開始。
【太守府/港湾都市/北街道/港湾地区北柵関門/青龍の貴族の背後】
あたしたちがポカンとしたのに気が付かない道化。
「主は皆さんを見捨てませんでした」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――誰?言葉が流暢ってより!顔が聖職者!目を覆っていた黒い『ぐらさん』が消えた!!
「神の愛は貴女方を祝福します」
あたしは総毛立ち、妹たちは希望を見出したような眼を聖職者のような道化にむけた。
騙されちゃだめ!!
さっきの衝撃がまだ抜けてないの?
「年月とは残酷なもの。常に移ろい行くもの」
え、え、うん・・・・・・そうかな?
あたしたちエルフは歳を取らないからよくわからないけど。
「ロリータは少女となり、いつまでも幼女童女ではいられません。まさに悲劇!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――なに、この空気。
壮大なお話のような、世界の真理を説いているような、でも、幼女趣味・・・・の話よね?
ツツッと神父の頬を伝う涙。
そんな要素あったの?
今の話?
「ペドのシンボルはいつか失われます。大きく!より大きく!バストもヒップもメリハリがつく。神が定めたそれ故に!」
なにいってるの!泣いてる娘もいるのよ!!
「しかし!主は応えました!」
手を広げて、神の祝福を示す神父。慈父のごとき暖かい光が背中から、背後から!
ダメダメダメ!!!
幻術?
幻覚?
魔法攻撃!!
あたしはとっさに剣を!!
「時間は偉大なる癒やし手である!」
すごいわ!!
青龍の貴族が暴漢を素手で瞬殺した術、青龍の騎士たちが操る竜殺し、火炎を操り空を飛ぶ――――――――――――――――――――――――――――――青龍の魔術は全て具体的なものだけど。
ここまで幻を見せるなんて!!
何位を狙ってるかよくわからないけど!!
証拠品A(使用前)と書かれた厚い、紙?を出す道化。
そこにはプラチナブロンドに琥珀色の瞳をした10歳くらいの少女。
大人っぽい容姿に、あどけない仕草が光る。
凄い!現実を取り込んだような絵!!
その時を止めて世界を固めたような絵画。
道化はしぐさも見せずに絵画を切り替えた。
証拠品B(使用後)。
シルバーブロンドに琥珀の瞳。
眼光鋭いの婦人・・・・・・・・・・・・・・・・齢65歳って書いてあるわね。
凄く生気にあふれて老いを感じさせないわ。
青龍特有の黒髪、黒い瞳がない?
こちらの人間なわけがない、から、ああ、青龍は主流となる部族以外に精強な傭兵部族を持ってるんだったわね。
三佐、青龍の公女が言っていたのはこれか。
「合衆国史上初の女性統合参謀本部議長。元合衆国駐日大使にして現合衆国大統領。異世界侵攻作戦、数十万の敵を殺して更に殺し続ける、国際連合平和創造活動の実質的司令官です」
青龍の元帥、ね。
赤龍を滅ぼし続け、滅ぼしつくす、青龍最高の武人。
・・・・そうか、客将が人臣を極めることはこちらの世界でもたまにある。
特に武人では。
「同じ人間です」
?????
AとB。
『美しくも幼い少女』と『青龍世界最高の武人』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――え。
ううん、言い方!言い方!
道化が、皆までいうな、とばかりに手で制した。
「少女は必ずBBAになります」
そっち!
「主よ!かのロリペドにBBAセンの属性を与え、愛しき子らを救いしか」
感涙号泣する道化!青龍の貴族を指差す!
今度は引っかからないわよ!さっきは、うん、動揺しなかったとは言わないけど。
「このハイブリッドキメラなら、ロリータとして愛されしかしてBBAとして愛される!始まりと終わりの物語!」
妹たちが顔を真っ赤にして怒る。
「「途中が抜けちゃうじゃないですか!!!」」
そうだけど!それはだめだけど!!
そこなの!そこなの!!それでいいの?あんたたち!!
【太守府/港湾都市/北街道/港湾地区北柵関門/軍政部隊中央】
俺が立ち尽くしてると、シスターズに激しく糾弾されColorfulに冷たい視線を向けられている神父が天を仰いだ。
「OH―――――オーマイガッ!My God, My God, Why Have You Forsaken Me?」
(わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか)
素に戻りやがった。お前の教祖に謝れ。
「ナゼなにゆえに見捨てたもうた!ヘタレにHarem!我が手にNotHarem!」
おい!罰当たり?
残念そーだなおい神父!ハーレムが欲しいんか?!カトリックじゃねーの?カトリックの聖職者が妻帯していいんか!
「Marriage?なんの話です?カトリック聖職者は妻帯NO!Marriage!Yes!Harem!!バチカンの伝統ネー!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、わかった。
まあ、愛人抱えた法王や枢機卿なんか普通だけどな、歴史的に。
ちょっと離れてくれる?一緒に見られちゃうからさ?
ただでさえ、この子たちにおびえられてるし。
普段から生暖かい目で見守られてる世間知らず扱いだったのに。近所の変態扱いにバージョンアップしたし。
「人種差別?」
ちげーよ!オマエ差別だよ!オマエ個人差別だから!オマエ以外人類皆平等だから!建て前は!
【国際連合公文書館時限開示制限文書/非開封期限20年】
「ピュロスの勝利」
知っているかな。
なら、主権者として十分だ。
キャピタル・ヒルのスノッブには不可能な芸当だ。
だが、比較がアレでは自慢にならんか。
答えはもうわかっただろう。
だが記録に残すといい。
合衆国。
我が祖国は戦争に負け続けた。
ここ一世紀ばかりずっとだ。
軍が強くなればなるほど、戦争が下手になる。
ここまで来れば、向いていないのかとも思える。
うちの家業は軍人だから屈辱の歴史だ。
誰もそうは言わない?
負けた者ほど勝った勝ったとふれ回る。苦しんだ者ほど苦痛に意味を押し付ける。
正気なら詐欺師、本気なら病人だ。
「戦争に勝つ」とは「敵を打ち倒す」事じゃない。
滅ぼす事でも、屈服させることでもない。
手段と目的を転倒させるマヌケは、どこにでもいくらでもいるな。
倒し、滅ぼし、屈服させるのは、手段であり「戦場」の話だ。
軍は、軍人はまさに「戦場」の為に、それだけの為にある。
たかが「それだけ」にどんな価値がある?
尊く、栄光に満ちた‐――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――無意味。
「戦争に勝つ」
とは
「自国に都合がいい国際情勢を創る」
こと。
余程の例外を除けば
「自国の経済的繁栄に都合がいい環境創り」
だ。
そこで軍と軍人の役割は、重要ではあるが、戦争の一部でしかない。
合衆国の戦争が、どうあったか。
教科書に書いてある。
どうだ?バカバカしかろう。
何か手に入れた戦争、最低でも損害を回収出来た戦争がどれだけある?
我が家に連なる者達は、見知っている限り、無駄死だ。
ま、我が家はいい。
無駄に死ぬことも含めて家業だからな。
徴兵で地獄に投げ込まれた兵士は浮かばれまい。
ましてや、彼らを地獄に送り込んだ連中が
「彼らは大義に身をささげた英雄だ」
などと連呼しているのだから。
誰もが褒めそやす、以外に許されない、先の大戦はどうだね。
太平洋で戦った理由は中国市場を奪うため――――――――――――結果は。
欧州で戦った理由は西欧市場を守るため――――――――――――聞くまでもない。
たまたま殴り倒した相手が、狂人だったから、聖戦に仕立てることができた。
開戦前に、米国指導部がナチの最終的解決を知っていた、とでも?
「殴り殺して財布を奪おうとしたら、殺した相手が連続殺人犯だった」
ここで問題だ。
財布を奪うために殴り殺した者。
そいつは英雄かな?
ああ、誰にもいわないさ。
将校とは嘘つきだ。特に部下の前では。
綺麗な嘘を「建て前」というらしい。
騙す将校も騙される兵や市民も、互いにわかっている時代があった。
古き良き曽祖父の時代。
今は昔の御伽話。
先の大戦までは我が同朋はリアリスト揃いだった。
だから
「欧州大戦で失敗した」
と認識する分別があった――――――――――――孤立主義の評価はまた別にして。
二次、朝鮮、ベトナム、湾岸、アフガン、イラク・・・・・・失えば失うほど、勝てば勝つほど、次こそ理想郷が開けると信じて。
これを病人という。
過去より現代が幻想的とは悪夢にすぎる。
職業としての軍人はプラグマティストでしかありえない。
国の求めに応じて、邪魔な国の軍隊を倒し、脅し、必要なら奪い、時々やってくる同じ目的の同業者を追い返すか殺す。
戦い怖し奪い殺し殺される。
理由は「仕事だから」で十分だ。
正義?大儀?名分?ははっ!
それは戦争ではなく、宗教行事というべきだ。
戦争に文明が持ち込まれ、戦争法規と慣習法が争いを文明化した。
非戦闘員を保護し、敵の立場を認め、交渉のルールを作った。
あくまでも理性と打算により戦いをはじめ戦いを終える。
しかし、戦争は悪だという。だから戦争をしないで殺しあう。
敵は悪だといい、味方は正義であるという。
悪は倒すしかないし、正義は途中で止まらない。
際限もなく合理性もない、犠牲のための犠牲。
なるほど、これは戦争ではない。
異端審問か?強制改宗か?いずれにせよ「戦争」という文明の営みとは相いれないな。
わたしや君たちは、このような過ちを犯すことはない。
これからは。
どれだけ殺そうと。
どれだけ殺されようと。
最小でも最大でもなく、必要にして十分な犠牲を出す。
手違いがあったとしても、それも考慮したうえで、適正値であると断言する。
無駄死にはない。
われわれは文明人に戻った。
だから戦争をしているのだから。
【太守府/港湾都市/北街道/港湾地区北柵関門/青龍の貴族の前】
わたしは皆さんにお願いします。
もうすぐに
「――――――――――マケタ――――――――――YOU!HaremMaster!NoEND!NeverGive Up!Second,ThirdのMEが必ずやキサマのロリペドHaremをカムバック!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あら?お、わらない、かな?
あの、いま、いま、しばらく、お待ちください。
ご主人様は、えーと、皆さんを軽んじてるわけでは・・・・・・・・・・・・だけを軽んじてる、わけではありません。
あ、あの、でも、ご主人様だけではなく、わたしも夢中になってしまいまして、ご主人様のお好み・・・、その、ごめんなさい。
・・・・・・・あうあう。
ご主人様。
皆さんお待ち、ですが・・・・・・・・・・・・い、良いんですか?参事さん?も、問題なし?ご主人様の邪魔?
あ、それは大丈夫です。
ご主人様は寛大な方ですから。
あ、はい。ちいねえ様、ねえ様。
ご主人さま~。




