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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十一章「夏への扉」

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拡張認識/Cartesian Theater.

【登場人物/三人称】


地球側呼称《カタリベ/歴史家》

現地側呼称《青龍の史家》

?歳/女性

:地球側の政治指導者が定めた役割。すべての情報へのアクセスを許可されており、発表を禁止されている代わりにどんな情報も入手可能。軍政部隊に同行しているのはジャーナリスト志望の大学生。

初登場は第11話「幕間:自由と民主主義のために」



【用語】


『魔法翻訳』

:地球人と異世界人の間のみで発生する自動翻訳機能。聞くことと読むことに対して認識内部で互いの意図認識が瞬時に置換される。互いの文化に類似概念が無い場合や固有名詞に関しては単純な音で認識されるのみ。置換も表現している範囲の表層的なモノであり、背景となる概念が伝わることはない。だが、この効果のおかげで転移してきた地球人と異世界人は意志疎通をはかることができる。ただしその翻訳は感覚的なモノであり、聴く者や読む者、話す者や書く者が抱く心象や感情、気分の影響を強く受ける。「ばか」と書いたときに、後刻その言葉を読んだ者に執筆者のニュアンス、親愛・侮蔑・怒り・失望などなどが伝わる。さらに受け手の意識も影響する為に「とって」という依頼形が、聴いた相手が怖れを抱いている場合に「とれ」という命令形に聴こえたりもする。聴こえた瞬間、見えた瞬間に意識に変換する為に、良かれ悪しかれ「聴こえたいように聞こえてしまう」危険性がある。

この効果は魔法ではないかと推測されることから「魔法翻訳」と名付けられたが、そういった魔法は異世界には存在しないらしい。

地球も異世界も様々な文化様々な言語が併存している。地球は主要言語が日本語、次いで英語。異世界は帝国公用語が主流。本来であれば言語という偶発性が高い合図をゼロから共有する為には、片言程度に至るにも年単位の時間が必要とされる。実際、地球上でまったく初めての文化が接触した場合は十数年、あるいは数十年経っても理解に達していないことが多い。




クラインの壺。

メビウスの輪。

ウロボロスの蛇。

Infinite loopでもいいし、国際連合でもいい。


それよそれ。

社会学的閉鎖系縮小循環、政治学的無限の落下。

国家機能のアウトソーシング。

廃棄物処理場。


「戦争」

という時代錯誤な妄想を国家社会から引きはがし、完全に別系として処理する。

そのために設えられた、過不足の無い装置。



「戦争は人類の宿業です」

ふふ、それよそれ。

中二病っていうのかしら。


バカ、でまとめちゃいけないの?



半世紀前も千年紀前も時平の彼方も、認知できない者には意味がない。


それをそれと気がつかぬように隔離して廃棄する。

元々がそういうふうに造られたのが、あれ。


だからこそ、いまここで(異世界転移後に)再起動したってわけ。







【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】


ヤバイな俺たち。

あくまでも、たち。

俺自身はそうでもないが。


魔法翻訳は、相互の印象や感情に影響されるからね。


俺には仕草や表情をみなくても、声だけで判る。

シスターズ&Colorfulに好かれていることが。

それは俺の部隊、曹長や芝や佐藤も同じだろう。


無条件に注がれる無垢な信頼。


人が死ぬのに、これほど適した理由があるだろうか?

いやない。

何があっても、とは言わないが、裏切れないだろう?


NOという奴と神父は死んでよし。


それは俺たちが、この娘たちに好かれているから。

だから俺たちも、この娘たちを好いているから。

よって俺たちが、この娘たちは裏切りにくいから。


というわけで俺は俺の部隊の範囲で、この娘たちを遊ばせておける。



なら、嫌われてたら?

ひっじょ~~~~~~~うに、辛いことは想像に難しくない。

ぜって~~~~~想像しない。


つらい。


そんな気の毒な人が、いるんだよ。

今はいないが、ここには。

お元気ですか、俺たちは元気です。



例えば歴史家(カタリベ)

魔女っ娘にはっきりきっぱり嫌われており、自覚もしている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・可哀相に。


彼女も悪気じゃないのに。

そこまでいくわきゃない。

地球人同士だからわかる。


魔法翻訳が無いから。


あのジャーナリスト志望が権力者に絡め獲られて手先にされてしまった女子大生。

まことにご愁傷様なことに、御父君にはお悔やみ申し上げるが、嫌われている。

※第11話<幕間:自由と民主主義のために>より


うちの魔女っ娘に。

※第29話<アムネスティ>より。


つまりは贔屓の引き倒し。

魔女っ娘は仲がいい俺に含みがある 歴史家(カタリベ)、俺への敵意に反応したのだ。

反応してしまったわけだ。


よくあるよくある。

友達の友達が友達なら、友達の敵は敵で敵の友達も敵。

女にはよくある発想です。

俺調べ。


俺は俺の味方であって俺以外の味方ではないが、友達の敵は俺の味方でもあり俺は味方ではない。


人間関係の相対性理論は多くの人類には早すぎる。



歴史家(カタリベ)が俺を嫌っているのはそーいうこと。

お堅い18歳解禁直後の生娘の純情と生真面目と誠実さを利用した政治家。

その政治家の愛娘で利用ついでに玩具にして弄ぶドS三佐。


その子分、下っ端一号、鉄砲玉、に見えてるんだろうな俺のこと。

同じ被害者なのに、被害者の会を造りたいのに、完全に敵視されてます。

俺を敵視すれば、自動的に魔女っ娘から敵視される法則が適用されるのに。


ほんと~うに、悪気、敵意っていうよりは、八つ当たりだよな。

それが魔法翻訳を通して魔女っ娘につたわった。

バイアスがかかって。


隔意が敵意に。

敵意は悪意に。

悪意は害意に。


だからむちゃくちゃ噛みつかれた。

歴史家(カタリベ)が魔女っ娘に。

逆でも驚くが、順当の方がもっと驚く。



このおとなしい(まじょっこ)が!


その時は深く考えなかった。

もっと考えるべきだった。


人一倍内気で、引っ込み思案で、自省的で内向的な上に利他的。


そんな魔女っ娘が、怒りだすようなにかが、あの時あったかどうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、ない。


俺のためにしても 歴史家(カタリベ)が直接何かを言ったわけじゃない。

含みのある言い方も、現代日本風なもの。


人殺しの感想をお聞かせください。


それが 歴史家(カタリベ)の俺に向けた第一声。

中世規準で直訳すれば、意味不明でしかない。

殺人なんか日常の範囲だもの。


魔女っ娘は、言葉の意味をスキップし、その底意に、それだけに怒ったわけだ。


そりゃ、歴史家(カタリベ)も戸惑うってもの。

以後、良好な関係とはいいがたい。

それは双方にとって、で、つまり翻訳は双方向だし。


魔女っ娘は、他人に敵意を向けるなんていう不慣れな、もしかしたら初めての体験を後悔している。

歴史家(カタリベ)は俺や国際連合(しんりゃくしゃ)に対する敵意はあれど、魔女っ娘たち(ぎせいしゃいちどう)には同情し自らの立場(ぼうかんしゃ)を恥じてもいる。


その内心が、伝わってしまう。


言葉にしても文字にしても、あるいは身振りも、かもしれない。

魔法翻訳は、相互の印象や感情に影響されるからね。


隔意と害意は違う、はずだった。


だが、異世界人と地球人の間では通じない。

いや、最初から通じている。


罵倒が暴力なら、悪意が伝わるのは暴力に等しい。

罵倒することは傷害罪になり得る、と言えばお察し。


逆に言えば、俺たちはその恩恵を受けた。


俺たちの気遣いが、魔女っ娘たちにつたわる。

魔女っ娘たちの安堵が、俺たちにつたわる。


好意と援助、悪意と暴力がイコールなら?


感じることと行動することがイコールに。

何を話すかではなくて、何を感じるかで決まる。


俺たちが通じ合うわけだよ。

チョコレートなんかいらないよな。


これ翻訳ってより精神感応そのものじゃないか?


いや、空想上の概念に定義なんてないけれど。

定義が無けりゃ、どのモノかわからないけど。

だから、そうとも違うとも、言いかねるけど。


魔法翻訳は、相互の印象や感情に影響されるからね。


俺の周囲で渦巻くのは、好意と善意のスパイラル。

外面でごまかせない関係が、いつまで続くことやら。

内心を隠せない、隠し難い、そんな世界が成り立つか。


だが。

だから。

俺たち以外は?


悪意と善意が否応なしに伝えあってしまうのなら。


殺したくないから関わらないでほしい。

そう切実に感じている自衛官。

殺されたくないから関わりたくない。

そう必死に願っている異世界住民。


魔法翻訳は、相互の印象や感情に影響されるからね?



うん。

俺が考えても仕方がないね。


歴史家(カタリベ)のアフターケアは、何かのついでにやっておくか。


俺に対する悪感情、それが歴史家(カタリベ)

俺に対する親愛感、それがシスターズ&Colorful。


歴史家(カタリベ)に俺が好かれりゃ良いわけだな。


ジャーナリズムと取材対象は対峙する関係。

むしろ対立するのが推奨される。

そう考えると難しいそう、ってことも無い。


敵同士は否応なしにに関わるからね。


近い他人を嫌い続けるっていうのは難しいものだ。

ソレがよほど悪い意味で規格外でない限り。

慣れ合い、惰性になし崩し、全部が俺の得意技だ。


ナンパに近いと思えば、呼吸と同じ。


特定の相手と仲良くなるのは簡単だ。

適当な誰かと深い仲になるくらいには。

特定の相手と深い仲になるのは難しいが。


それはそれとして。

それ以外は責任範囲外。


俺がやらなきゃ誰かやる。


まさかここまで、異世界転移から半年たとうってのに、気がついていないことは在り得ない。

だがマジでここまで、半年が一年十数年で在ろうと、知ってて無視するってことは在り得る。


俺の知っている、地球人類の指導者層の一人は、そういう人です。


余計なことは考えない。

ソレが俺。

長生きの秘訣らしいですよ。


だから俺は、身近な友好関係樹立にいそしみます。

シスターズ&Colorful、他の娘たちが気楽に馴染んでほしい。

自分ん家か他人の家かわからんくらいが目標です。


最悪の場合、殺されないで済みますように。


つまり、まだまだ足りないんだな。

ついさっき危機的状況に気がついたとはいえ、元々仲良し。

魔法翻訳のプラスバイアスの恩恵も確認。


なのに遠慮深い娘たち。


なんであるべき目標値がクリアされてないのやら。

俺は笑顔が素敵なナイスガイなんですよ?

好かれているのに信頼されてないとはこれいかに。


シスターズや、怒らないから言ってごらん。


初対面から30分以内に殺人。

※第9話<トリガー>より

そのまま虐殺準備に入った。

※第10話<冬の日。春の日。> より


信じさせるのは無理だな!


そりゃもう虐殺者の前でどうやってリラックスしろっていうのか。

ヤベーよヤベーよ。

遠巻きにしている異世界住民方が正常で、この子たちがおかしい。


ならばそれを日常化させればいいわけで。


まあ言って聞かせてダメならば、見本を見せる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねーよ。


日本の自宅周りなら、見本がウロウロしてるのに。

俺の部屋で勝手にくつろいでいるガキどもが。

何処の長屋か江戸時代かって。


俺の実家の猫みたい。


近所の家に自由に出入り。

近所の家で勝手に食事。

近所の人の腹で寝る。


そこまではネコと一緒でもいいが。


夜中にふと寝返りをうつとそこに居る。

鼻先って、これはマジでやめてほしい。


夜中に目覚め、布団を覗くと中に居る。

それは完全に入っていると解釈できた。


ホラー映画の定番じゃねーか!


異空間からワシャワシャ出てくるのは日本風ホラー。

日常空間で突然ゼロ距離顔面正面なのがハリウッドホラー。


うちの近所は後者です。

日本なのに。


慣れたので、殴りつけるのをこらえたりしませんけどね。

とりあえず拘束して見覚えがあるかどうか確認するだけで。

自宅に忍び込んで家族を驚かすってのは、俺もやったしね。


近所のガキは俺の家族じゃないが。


その意味で、シスターズ&Colorfulは行儀がいい。

寝入る前に俺の目の前で布団に入ってくるからね。

腹に乗ってくるエルフっ娘も、まあ、ネコレベルならOK。


そこで止まってる、と言える。


怒られないと高をくくって悪戯を仕掛けてくる、くらいがちょうどよく。

掴まれる踏まれる摘まみだされる、ぐらいで対応できる範囲がベスト。


ムリかな~。


ゴールが見えてもルートが見えない。

俺が側にいるうちに、さて、たどり着けるか。



いやいやいやいや。

俺が態度で示さないと。

女子どもに任せてどーする。


字義にたがわぬ女と子ども。


我侭を引き出すには、より仲良くなれば良いだけだ。

もともと認知可能範囲が狭い子どもは、自他を混同しやすい。

遠慮というのは社会性の第一歩だが、所詮は後天的なもの。


錯覚さかくサッカク。


簡単カンタンかんたん

――――――――――誰もが通過した道。





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