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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十一章「夏への扉」

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458/1003

耳を澄ませば。


【用語】


『国際連合』:The United Nations/連合国、の超訳。「異世界転移後の人類社会の総意を体現する組織」と日本の国会で決まった。再建後の国際連合は加盟国ほぼすべての外交防衛権を委託されている。黒幕は日本の一衆議院議員であるとマスコミに報道されている。

作品中の「あたらしい憲章のはなし」は「従来から存在する国際連合憲章について、異世界転移後に新しく書かれた解説書」という意味で「憲章が新しくなった」訳ではない。

故に内容は現行(フィクションを離れたリアルの)国際連合憲章と完全に一致する。


「選任も信認も受けていないがゆえに誰の責任でもない」構造は、国際連合という存在の機能/目的と不可分な核心をなす。



『国際連合軍』:国連憲章第七章に基づく人類社会の剣と盾。と国連総会で決まった。黒幕は元在日米大使の合衆国大統領であるとマスコミに報道されている。


『軍事参謀委員会』:国際連合の参謀本部。安全保障理事会の補助機関。国連憲章第七章に基づく国際連合の軍事力行使の指揮を執る。




国際連合は地球人類の福利を実行致します。

実現では御座いません。


詳しくは国際連合憲章前文にて理解します。



国際連合軍は全ての問題を解消致します。

解決では御座いません。


詳しくは国際連合憲章第七章39条にて理解します。



国際連合は選任および信認を受けることなく存在します。

よって誰も責任を負いません。


詳しくは国際連合憲章全文にて理解します。



《青空○庫「あたらしい憲章のはなし」より》




【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】


俺は言葉を楽しむことにした。


別に観光を否定してるってわけじゃないが。

聖都の廃墟都市が悪いってわけじゃないが。

真新しく綺麗なのが嫌ってわけじゃないが。


いやホント。


廃墟のくせにきれいなんだよ。

風雨にさらされてないみたいに。

例えるなら家具の下から青畳。


壁や柱に後から継ぎ足された部分が剥がされた、から?


帝国との市街戦。

その後の解体作業。

外側から剥がされた訳。


なかなか面白い。


だが、俺は二つのことを同時にできないタイプ。

どーでもいいことは数に入らんけれど。

数の中に優先順位ってのがある。


序列一位。

言うまでもなく被保護者、シスターズ&Colorfulたち。


かといって、俺がなにかを我慢しているわけではない。

我慢と忍耐と諦めは嫌いです。

それは三佐を相手にしている時すら許容しないのだよ。


強制されてるだけ。


しかし矯正されはしない。

いまのところ、北方領土のロシア連邦施設に連行される様子はないし。

既に処置済みで記憶を改鋳されている、ってことも無いと思う。

技術的には20世紀初頭すでに確立してるんですけどね。

俺には関係ありません。


たぶん。


友人知人赤の他人の記憶が矯正されてない限り。

現存するすべての記録が改鋳されていない限り。

そんな手をかける価値が俺に生じていない限り。


俺にそんな価値はないに決まっている!

だから俺は記憶の通り我慢していないと言い切れる!

耐えて堪えて受け入れない限り俺の我侭は続いているから!


諦めないうちは我慢に入らない。

我慢させられないように逃走している最中です。

諦めないうちは忍耐に入らない。

忍耐させられないように工夫している最中です。

諦めないうちは許容したことにならない。

断固として追認せず俺以外の言い分は認めない。


拒否ではない。

拒否は一度受け入れたことになるからな。

認めないのである。


楽して生きよう一度っきりの人生!


そんなわけで個人的娯楽と安心と健康のために子どもを見ているだけなのだ。

それはさておき観光して回りたいのに、仕方なく、というわけではない。

それがどれほど大事でも決して俺の都合は放擲されないのである。




【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族の右前/魔女っ娘の右/エルフっ娘】


街に興味が無い、あたし。

街よりも人に興味を寄せる、彼。


街よりも人よりも、自分の、とはいかなくても、女に関心を持ってくれたら。

――――――――と思わぬでもないわね。


海岸沿いの平野。

海に面して築かれた聖都。

大神殿は聖都の真ん中。

平らな土地で唯一の丘陵。


敢えて他の凹凸を削って、ここだけ残したんだけど。


祀るべき人を万丈に掲げ、人を越えたカタチに奉る。

ただただ星を見る場所を求めていた。

そんな女には、どーでもいいけど都合もいいここ。


満ち溢れていた人々。

往時に溢れていた装飾。

不調和に満ちたつぎ足し。


何もかも破壊して片づけられた。


そのせいで、最初の頃に戻った眺望。

一人の巫女、皆がそのために設えた。

皆のため、縛り付けられた巫女一人。


だから懐かしさもある。


此処から街を一望にできる。

見下ろすことなく眺める眺望。

高みと感じさせないなだらかさ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・星視の都にふさわしかった。




【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】


女が俺に言いました。


一番大事ってことは。

二番目以下があるということ。


察しの良い娘は大好きです。

相手が好いてくれるとは限らないが。

それは俺の努力次第って話。


少なくとも騙す結果にはならないから、口説くにしても力が入る。

何もかも同時進行並行並列平行できる、そんな自分に俺はなりたい。


それは今後の課題として。


リソースが限られている以上、先と後、上と下はあります。

かといって絶対決して必ずに、後と下を諦めたり棄てたりしません。


それを怒る女子どもがいるのはなぜなのか?


俺ならそんな些細なことを気に留めたりはしない。

まあ相手の怒りなんぞ知ったことでは無いのだが。

それは常に変わらないので、今日今この時もそう。



序列二位。

俺の好奇心は当然、棄てやしない。

観光、ってより、物見遊山は大好きです。


俺の性に合っているのは観て楽しむより、遊びながら見て回る方。


異世界人工物の粋を集めた巨大都市。

異世界人と接触する可能性が少ない。

異世界観光に、単なる娯楽に最適

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・な、ハズだったんだが。



聖都の全景の半分が此処、大神殿正面から見える。


大路は広く取られ、脇道も充実。

すべては直線基調で、カーブもなだらか。

空地、というより意図的にとられた広場も点在。


明らかに防御を無視している。


区画割が均等で、上から見ても同じ形。

自然発生した都市ではなく、一から計画され一つのコンセプトが貫かれてる。


異世界全体で言えば、帝都によく似ている。

と、本土のマニア、大勢意見。


確かにな。


高い城壁に囲まれている。

が、それは帝国と諸王国の戦争が佳境に入ってから築かれた、とか。

帝国軍の侵攻が及ぶ前から、十年以上かけて増築を繰り返したらしい。

何を護りたかったのやら。


北方とはいえ、沿岸も沿岸であるここまで内陸国家の帝国軍が来る事態になったら、反帝国陣営はお終いだろうに。


まあ軍事史ではよくあること。


前線ではなく首都の防備を固めたり。

後方に精鋭部隊を置いたり。

最強戦力が前線に出ないで終わったり。


聖都の場合は、何もかもおしまいになってから十年持ちこたえた。

何を護って耐えたのか。

それはUNESCOや本土の暇人たちが解き明かすだろう。


てことは、もともと障壁城塞はなかったわけで。


そう考えると、今見える全景から先には、海が見えたわけか。

左右は緑の農地が広がっていたわけだね。

今は白い荒野だが。


往時の姿が目に浮かぶ。


白亜に輝く人造物。。

青く輝くオーシャンビュー。

その左右に拓かれた緑の沃野。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ヤッベー!


すっげー絵にならないかそれ?

見たい!

ここ再建しないかな?


そっか。


だからか。

だから、気が乗らないのか。

物見高い俺が、今、ここを、観たいと跳び着かない理由。


遺跡っぽくなくて怖いんだよね。


石の建物しか残っていなくても。

片付け尽くされ生活感がまるでなくっても。


人の気配がするんだ。


今、ここに居る俺たちじゃないぞ。

UNESCOの異世界地球混成チームじゃない。

国際連合統治軍が設置した索敵掃討機器の音でもない。


往時の100万都市が面影。


誰かがいたんだよな。

半年もたっていない。

十年間立て篭もって。


全員、殺された。


真新しい石壁。

手入れされた石畳。

解体された建物。


髑髏の山でもあれ自然なんだが。


一瞬で引っ越しされた家屋のような。

そのまますぐに戻ってくるような。

俺たちも引っ越しに巻き込まれそうな。


すべて資材として、聖都外縁路上に敷かれた遺骨。


整理整頓され秩序だった廃墟。

生活感が無く人の気配が無い。

それがいびつさを強調してる。


廃墟の様に棄てられたわけじゃない。

遺跡のような乾いた感じが無い。

他人の家に許可なく踏み込むような。


いや、そのものか。


敵でも味方でもない。

戦争でも泥棒でもない。

理由も何もない。


誰か、無数の誰かの、招かれていない私室に入り込むような、不快感。


うん。

最初はシスターズ&Colorfulを楽しんだ方が無難かな。

この子たちの存在感で打ち消そう。


聖都の違和感に慣れて、引率がてらの方が楽しめそうだ。

ので序列一位に戻る。


そう言葉。


俺の耳に入ってくる。

俺が聴かなくても響く。


魔女っ娘は太守領なまりの帝国公用語。

帝国女騎士の流暢な北方基礎言語。


帝国公用語は、大陸の中央方向内陸深奥部、騎竜民族の言葉。

北方基礎言語は、大陸北端である太守府を含む北部一帯の言葉。


双方が全く違う言語な訳だ。


魔法翻訳のおかげで、誰が何事を話しているのか解りやすい。

魔法翻訳だからこそ、誰が何語を話しているのか判りにくい。


ってか、忘れそう、っていうより忘れてました。

異世界が地球と同じように多文化世界であることすら。

よく判る、よくわかる、からこそ、解らん。


何事か何語か?


響きが。

音が。

抑揚が。


だから声に集中。


理解すべく注意する必要はない。

意味は考えなくても、判るからね。

情感までたっ~~~~ぷりと。


魔法翻訳は、相互の印象や感情に影響されるからね。


余談偏見経験好悪

――――――――――曳きずられる、と言ってもいい。


この娘たちと俺の、親近感。

わかるわかる。


判っちゃいたけど、身近な実例を踏まえると、解るよな。


なんか隠し切れてないところまで伝わって

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・欲しいものを我慢してるな。


やっぱり仲良き中に礼儀在りやがるんだよ、これ。


いらんって

――――――――――子どもは黙って特攻あるのみ!!!!!!!!!!

掴まれるか踏んづけられるまで突撃!!!!!!!!!!



子どもの我侭は大人の勲章だよ。

大切なことなので繰り返し繰り返し。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ってことは、今の俺ダメじゃん。



ん?

んん?

あれ?


魔法翻訳は、相互の印象や感情に影響されるからね。


だと?

俺、じゃなくて、俺たち詰んでる?




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