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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十一章「夏への扉」

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見える言葉。

【用語】


『Colorful』:奴隷商人に造られたハーフエルフの最高級愛玩奴隷たち。髪の色がいろいろなため、神父が全員あわせて「Colorful」と命名。一人一人の名前は髪の色に合わせて白・朱・翠・蒼・橙と主人公が名づけた。異世界では用途別の奴隷を出産から教育まで一貫して生産する奴隷牧場がある。前領主(帝国太守)が奴隷商人に発注し、引渡し前に戦争開始。占領軍の太守資産接収に伴い軍政司令官に引き渡された。軍属として雇用契約を結んでいるので日本の労働法が適用される

性格

一番不器用で耳が短い、橙。

その橙をフォローすることが多い、碧。

一番背が高くシスターズと一番話す、翠。

事あると真っ先に前に出てくる、朱。

一番胸が大きくおっとりしている、白。


『ハーフエルフ』:エルフと人間の間に生まれた混血種族。エルフに似た美しい容姿と不老、不妊、それ以外は人並みの種族。異世界全体としてすべての種族から迫害されている。出会い頭になぶり殺しにされるのが、異世界の常識。


「戦意昂揚は練馬に限る」

「この間は目白っていいませんでしたか」

「秋刀魚だけじゃ無いんですねぇ」

「天然はいい」

「養殖されてましたか」

「実によい」

「癖が無く、普遍的で、隙が無い」

「確かに、ライターの駄文とは比較になりません」

「愛国ポルノなんか中高年の自慰グッズですから」

「確かに異性を求められる年齢なら見向きもしませんね」

「日の丸をナンに使ってるんだ」

「抑圧された性欲が異常なフェチに走るという」

「消毒しなきゃ!」

「大丈夫です」

「少数派ですから」

「なら問題ないな」

「破棄しても」

「そのニッチ層の親の遺産で食いつないで居る斜陽産業もありますが」

「そのまま傾けて倒せばいいじゃん」

「ライターの最多需要」

「生活出来ないようですが」

「かつて出版界というものがあってな」

「うそだ~~~~~~~~~~♪」

「文学は死んだ!!!!!!!!!!」

「享年、80いった、か?」

「創作が産業化したのが例外なんですから」

「全盛期は30年くらい?」

「人間とおんなじ」

「異常が正常化して良かった良かった」

「まだ残ってますが」

「死体が痙攣してます」

「生と死につきまとうもっとも醜い姿」

「異世界には見せられんな」

「日本の名誉にかかわる」

「国辱防止策は国連が策定すみですよ」

「文化不干渉原則」

「国内は」

「落伍者収容と安楽死の道は完成している」

「キモイ触るのヤダ」

「幸い、うちの使命でもなし」

オッサン達(議員先生)にまかせとけ」

「なにごとも分担が大事です」

「地域や党派で論調分け」

「全体で継戦反戦、8:2」

「八月十五日まではこの調子でな」

「インターバル二ヶ月で切り替えます」


《党本部党史編纂局(通称「宣伝省」)の一コマ》




【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】


俺の背後の動揺が収まった。


お嬢が一瞬背後を気にしていたが、すぐに前へ向きなおる。

俺の笑顔、ひと前だから微やかに、だが、安心したらしい。

Colorfulもグッと俺を掴みなおして微動だにせず。


魔女っ娘を撫でながら正面の帝国女騎士を見据えて背後の動きがよくわかるなって?


俺は帝国女騎士(りそうてきぐんじん)のような把握能力はない。

俺にエルフっ子(りそうてきせんし)のような空間把握能力もなく。

俺が持たされているのは高度に発達した科学(まほう)だ。


索敵情報。


複数台の偵察ユニットによる全景映像は、第13集積地戦闘指揮所で統合される。

仮想空間にくみ上げられた今この時、俺たち一同のモデルが存在するわけで。

それを何処から視点でも視聴可能であり、巻き戻し再生もできるのだよ。


もちろん偵察ユニットに積んであるのはカメラだけじゃない。

そして情報を集めているのはいくつもの哨戒気球や自動機銃もある。

なにより周りを固める隊員達、俺も含むドック・タグ(記録装置)などのデータ。


それが俺の眼に映し出される。


普段ならバイザーの内側に映し出される情報を見るだけなんだけどね。

今日は遠足だから、普段のバイザーはつけていない。

兵士用のフルフェイス型じゃなくて、将校用で目元の保護を兼ねるタイプ。


見え方はいつもと変わらんけれど。


映し出すのは魔女っ娘なでなで中、俺の手首から覗く腕時計型情報端末。

それが俺の網膜にレーザー照射。

体感で言えば30cm四方にサブディスプレイが浮かんでいる感じだよ。


リアルモニター・カンニング。


結局、見えるってことは網膜が受け取る光を脳がどう解釈するかによる。

っていううと言いすぎで、他の五感が集めた情報も統合されているけれど。

俺たちくらいになれば判りやすく誤解しているだけでいいんですよ、ホント。


判っていないと解っていれば、誤解や偏見も役に立つ。


というわけで、俺がColorfulの挙動を見逃すことはあり得ない。

俺の制服、その裾を掴んでる指先の感じだけじゃ、判らないことも多いからな。

一番後ろから見てればいいんだが、俺から一歩半歩下がって動きたがるし。


シスターズ&Colorful、8人の被保護者。


皆、俺の言う通りにはするんだけどな。

言うこときく子どもって、おかしいよね。

それがストレスになったら、本末転倒。


科学のフォローがあると、実にラクチンです。

俺の視界に移動させなくても、全周から確認可能。

科学の勝利とは、まさにこのことではないか。


だからColorfulが姿勢を立て直したのが判る。

堂々と帝国女騎士に向かい立ってみせているのが判る。

緊張して強張っているのも判るが、それはまあよろし。


うんうん。


年下の視線で姿勢を立て直したか。

Colorfulは、おねいさんなのだ。

ちびっこ二人よりは、間違いなく。


齢15歳にして国際連合職員であり国際連合統治軍出向中の軍属。

どこのアニメかな?


生存権と財産権のみが準用されているのみというヤバイ仕様。

どこのディストピア小説かな?


それ人間扱いじゃない、とはいいながら、列島にもちらほら。

どこのリアル自称先進国かと小一時間ですむ?


下には下が現代社会にぞろぞろいるとか置いて置いて。

暴動の一つも起こさない家畜とは違うのだよ社畜とは。

なんたって中世準拠愛玩奴隷なのだからレベルが天地。


??

???



まあ、少女は幼女童女の前で、見栄を張らないとね。


真面目で一生懸命で頭でっかち。

従順内向我慢忍耐、止めろって。

それがColorful共通項。


幼女童女は良い刺激になってるようだな、うん。


しかりものの末っ子ちびっ子。

最強オカンはエルフっ子。

拡大家族は大家族。


Colorfulは親戚おねいさんポジション。

例えれば、ファミリードラマ。


生涯、国際連合から解放されることはない。

真っ当な雇用契約は結んでいるし、それは持続させられる。

だが、圧倒的な強弱の前に、この娘たちが自由など得られるものか。


これは結局、ポリティカル・スリラー。

Colorfulが先駆者になるのか、特異点となるのか。


今も日々、異世界各地で同じように造られている。

まったく同質でまったく違う、この子たち。

ハーフエルスの愛玩奴隷、生体言語翻訳システム。


ここまでくると、サイコ・サスペンス。

その道を開いたのが、俺なんだが。


また、って言われそう。

教科書に載ったらどうしよう。

末代まで祟られそう。



良いとこ取りだけすりゃ良いのに全く。

きっとあれだよ前例になって、ただそれだけでよくも悪くも従うバカがでる。


俺って引きが良い(わるい)から

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死んだ後なんか、どーでもいいか。




【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族の右前/魔女っ娘の右/エルフっ娘】


あたしが教えた言葉。

あの娘にも、妹分にも。

他にもいるけれど。


帝国公用語

――――――――――なにぶん一瞬、僅か百年に満たない間に大陸を席巻した言葉。


あまり他の言葉が混じっていないわ。


一音節が長く、響きも長い。

馬上、竜上の風中で聞き取りやすいように。

唇の動かし方が特徴的で、身振りが伴う。


もはや音を捨ててるわよね。


帝国騎兵、竜騎兵、工兵には声が出せない者も少なくない。

もともと声が出せない者が、重宝されるくらいに。



見て、伝え。

聴いて、伝わる。

音は相手に聞かせるより、自分で聴いて確認するため。


身振りの大きさは、声の大きさ。

あの娘はだから、唇はわかりやすく身振りは最小限。

彼の女として謁する場合、あくまでも彼の女、である振る舞い。


公の立場、公の会合。

青龍の貴族。


今、この時。


青龍領地、領民たちの長。

虜囚ではあっても帝国騎士。


彼、青龍の貴族の、手を裾に包む、彼の女であると示す。

あの娘。


女の証を無視して、彼の手が伸びていない皆、と一括り。

帝国女騎士。


彼が見守る、支配する。

女の戦い此処に在り、ってね。




【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】


「諸卿諸氏」


シスターズ&Colorful。

帝国女騎士にとって、Colorfulが諸氏、シスターズが諸卿。

ソレが何となく伝わってくる。


帝国軍にとって卿氏は、俺たちの言う文民的なニュアンスみたいな。

もちろん侮蔑的な意味合いはない。

戦闘ではなく、戦争を旨とする国家だけにすべてが軍の一部なのだ。


無駄が無いのが玉に瑕。


ソレと仕上げた帝国魔法使いの錯誤か。

ソレこそ最適と勧んで染まった騎竜民族の悪癖か。

ソレが瑕こそ、必要な無駄と捉えるか。


「御迎えする」


帝国女騎士。


言葉の前に身振りでだけ前振り。

そして両手を胸で組み合わせた。

これは、帝国軍式の敬礼らしい。


オーバーアクションぎみだが。


大きな動作で両手の指を広げて、上肢のみでゆっくりと。

良く見せて、そして、武具をかける腰に手を近付けない。


アメリカ人かな?


アメリカ人のオーバーアクションは、言語すら統一できない雑移民国家として建国されたからだが。


建国時点ですでに英語人口が半分を割っていたという、ね。

身振り手振りを交えないと、文字通り話にならなかったのだ。

いや、かった、ではなく今もこれからも続くはずだった、か。


異世界転移で地球側の人類が滅びなければ。


建国以来、英語系が主導しているのは人数ではなく武力の問題。

先行移民は肥沃な土地や重要な土地を抑えていたからね。

そうなれば非英語圏からも兵士を募れるし、富も集められるから。


ここ異世界の帝国もボディランゲージ主流なのかな。


世界帝国ってのも、多人種多文化でないと成立しないからね。

ローマ帝国やモンゴル帝国、オスマントルコがそうだった。

逆に多を否定して単一帝国で長持ちした例は一つもない。


大英帝国なんかたった百年すら保たなかった。




【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族の右前/魔女っ娘の右/エルフっ娘】


あたしたちエルフは、音に長けている。

良く聴こえるから、把握出来る。

だから言葉が得意。


把握出来るから、ズレも判る。

ゆえにこそ限界も解る。


だから、言葉を教えることが出来る。


人は音を扱うのに向いてない。

出せない音を繰り返させたり。

聴こえないのに意味を説いたり。

知らない事物を勘違いさせたり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は、音じゃないか。


直訳でなくとも、比喩暗喩は言葉の故郷を知らなければ判らない。

言葉の道筋を辿らなければ、故郷の者さえ解らない。


ましてや言葉の日々がわからなければ?

――――――――――誰にも何にもわからない――――――――――


人の世を行き交う、エルフのなかで変わり者。

あたしのような連中、人が出会うエルフ。


その放浪癖と、百年前と昨日が変わらない感覚が役にたつ。


そしてエルフは、もとより人の世に出て来ない。

少なく希で、役に立つ。


だから、あたしを師と呼んだ人は少なくない。

帝国がエルフ根絶を旨とした後も。

皆がエルフを避けた後も。


奴隷という抜け道を考えてくれたり。

帝国や邦の動向を教え、矛先を逸らして。

あまつさえ愛娘を預けてくれたり。


エルフの起用さ。

エルフの敏感さ。

エルフの長寿、もの覚え、素早さ

――――――――――すべてなにもかも、人との縁を結ぶ。


エルフなら誰にでもできることが、あたしならばこうなる。


どうして何故そうなったのかは、解らない。

もう一度やれと言われても、出来やしない。

貴男の役に立てるのどうかすら、解らない。


それが、それだけが、あたしの、力


観てくれてる、わよね

――――――――――貴男に誇れる、たった一つの、あたし。



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