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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十一章「夏への扉」

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453/1003

がんばれ。

【登場人物/三人称】


地球側呼称《三尉/マメシバ/ハナコ》

現地側呼称《マメシバ卿》

?歳/女性

:陸上自衛隊医官/三尉。国際連合軍独立教導旅団副官。キラキラネームの本名をかたくなに拒み「ハナコ」を自称。上官の元カノが勝手に「マメシバ」とあだ名をつけて呼んでいる。


地球側呼称《三佐》

現地側呼称《青龍の公女》

?歳/女性

:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。


地球側呼称《幹事長/三佐のオヤジ/オヤジ様》

現地側呼称《青龍の宰相》

?歳/男性

:衆議院議員。連立与党第一党幹事長。与党合同選挙対策委員会代表。世に広く知られた「政界の黒幕」、知らぬ者が居ない「影の宰相」。娘と違って役職は三つだけ。米中を中心とした各国、複雑多数主張も思想もバラバラな与党連合に少数独自の野党からなる日本議会に影響力を持っている、と言われている。私邸が事実上の安全保障理事会/国連事務局となっており、その運営を司る(国連に役職は無い)。国際連合の実質的軍事指導者である現合衆国大統領とは旧知の間柄。

『女は見下さないんですか?』

「無価値なら口説いたり買ったりするかよ」

『拝んだり頼んだりゴマを擂ったりしないですもんね』

(じかん)命の次(げんきん)を注ぎこむ価値があるってもんだ」

『まるで真っ当なことを言っているように聞こえますね』

「耳と頭が正常だと今気がついた」

『砲爆撃下においてなお微動だにしない美貌と愛嬌と感触と女らしさと、あーえとあと頭脳視覚聴覚味覚です』

「マメシバにしておくのがもったいないからマメシバ」

『やっぱり女を見下してます?』

「今それだけは断じてないと全人類が同意してくれるだろう」

『三佐が嘆くわけですね』

「みなが口をそろえて偉大とよび背丈よりも天高くから堂々と見下しておられる誰もが広く名前を口にするのをはばかる影に隠れた誰も知らないことになっている陰謀の黒幕がどうしたって」

『血反吐を吐かされて地べたに叩きつけられても真下から笑って見下ろしてますよね、絶対』

「宇宙の中心が己の意識がある場所でそこからすべてが放射状に存在していると知っている訓練された狂人がどうしたって」

『女の癖に、とか、女だから、って言われたがってるじゃないですか』

「直接銃口を突き付けて目の前で二、三人が頭を弾かれた上で言えって命令されたら言ってもいい」

『それって虚偽申告で反逆罪(人道に対する罪)じゃないですか』

「思った通り正直に応えると上官不服従で抗命罪(平和に対する罪)だな」

『どっちが適切なんでしょうね』

「気分で変わるから気にするな」

『命のことですよ。大切な私の』

「罪が無けりゃ殺されないとでも?惜しまれるとでも?記憶に残るとでも?」

『私は精神力で物理世界が変わると判断しません。科学者ですから』

「意外に常識的だな」

『私、常識人ですよ♪』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうか」

『そうです』

「話を戻そう」

『なんでですか』

「三佐がどうしたって」

『女だって理由で侮られたいって』

「扱い易い理由なら何でもいいんだろう」

『見下されたい』

「だからとりあえず簡単なところ、女ってことだけで見下されようとしてるのか」

『産まれたときから他人に背中を向けられたことが無いヒトですからね』

「つーかお前、どーやっていろいろ調べてんだ、個人的な事ばかり。いや、三佐に私的な側面なんかないかもしれんが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・他?!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

『お姫さま抱っこの意味が背負うと頸椎を獲られることを防ぐために正面で監視するためだったなんて、誰が想像しますか』

「だから正しいお姫さま抱っこは頸を決められないように女の腕を借りることなく男の筋力と肉体だけで抱えて歩き殺られたらそのまま地べたに叩きつけられる位置をキープせねばならないとか、全世界のお姫様に謝れって話しだけじゃなくてな」

『背中を刺させたことはあっても背中を刺したことが無いなんて、女の嗜みに欠けるっていうかフツーじゃないっていうか』

「た、について」

『人類は家族と敵と臣下しかいないってホントでしょーか』

「それがあればまだいいけどな」

『どれ?』

「いいから黙って言うことをきけ」

『はい♪』

「三佐は人に背を向けられたことがありません」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

「三佐は背中を合わせることがあっても、背中を向けられることはありません」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

「ここまで」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

「この文脈に一文字を足さなかったら、何でも言うとおりにしてやる」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

「話していいよ」

『うぃ♪』

「で、何が欲しい」

『ぷぷぷ』

「なんだよ」

『一生、』

「おう」

『大切に大切に、』

「うむ」

『とって置きます』

「は」

『お願いの権利』

「キヤガッタ」

『ぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ』




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――まったく。


女に甘いんだから。


命を賭ける処までは、よし。

命を棄てる処までは、どう?

なら、命を使ってみましょう。






【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族の左前/魔女っ娘の左後ろ/お嬢】


わたくしの中から喜びだけを抉り取り、この場で微笑んで見せるのが、壁の華たる今の作法。


宴の華。

市の大輪。

船の船首像。


主役を喰らい、覆って包むのは慣れておりますが。

器の役も果たせますわ。

ご領主様♪


もちろん、わたくしを器にするほどに、主菜が光っておりませんと。


わたくしが、あの娘を育てた

――――――――――などと胸を張っている場合じゃあリません。

これから育つ、いえ、育てるのです。


おねいさんとして!


あの娘と対峙する、女。

帝国女騎士。


ご領主様の篭絡を企む、女。

どうせ組み敷かれ甘えるだけに墜とされる、でしょう。

わたくしがそうはさせませんけれど、女として魅力がある敵手。


あの娘がどう見えているのか、あの娘の後ろからでもわかります。


声に満ちた、愛される女の自信。

それは女としての自負、自覚、自然。

作為が無い、日常の欲求が、ただ溢れて。


堂々と、ドロボウ猫(ていこくおんなきし)の前で、ご領主様に甘える、あの娘。


狙ってできることじゃない、わね。

甘える女と、甘えさせる男、それは甘えあう二人。

これほど腹の立つ光景があるかしら。


わたくしの憤懣は、後々にわたって、ご領主様に愉しんでいただくとして。

言祝ぎますといたしましょう。

心から。


女としての成長を。


今は、ですけれど。

無言で、ですけれど。

競手として、ですけれど。


これなら、わたくしと一緒、ご領主様の側で過ごすにふさわしい。




【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】


俺の任地太守領は異世界大陸の北のほう。

やや東で海寄り。


やや西だと内陸部で、深央部まで行けば有名な竜の産地。


国際連合軍が暴れているのは、太守領の遥かに南。

大陸全体から言えば、南北の中間。


沿岸部を越えた内陸部、の高原が最前線だ。

※地図参照


俺たち国際連合統治軍はもとより、地球人の管制範囲は狭い。

異世界の一部である帝国の、さらに一部。


管制下にあるだけではない、管理地域に至っては世界の一部ですらないだろう。

異世界は広大で広く細かい。


こんだけ広いと、各地各々分化が生じる。


俺たちのせいじゃないぞ。

まだ。


技術的な移動可能難度を基準にね。


星一個、惑星一つが人の視野に入ったのは、さて地球でもせいぜい25年くらい?

世界を思い浮かべて、地球の全大陸を意識できる人間が、さてどれだけいるだろうか?

知ってはいる、というレベルでも少数派だろうと思うが、それを意識するとなれば?


そんな人類が一つかみ現れる前に、地球は異世界になってしまったが。

そしてそれすらできない俺たちが、放り出された異世界。

それがまた地球サイズだったわけで。


全部やり直しである。




魔女っ娘たちの出身地。

そこで話される言葉は、つまり、普段、4月からおれが日夜聞いている言葉。


異世界大陸北方基礎言語は、まんま異世界大陸北部東よりの言葉。

異世界大陸北方西よりだと言葉を使う種族自体が稀。

だから東北部とは言わず、北方とひとまとめ。


その言語群から太守領言語が産まれた。


生まれたというべきか分化したというべきか。

それはもちろん、文化の差異と均質化に繋がるのだ。


例えば太守領では全土で神殿が配置されている。

しかも、ほとんど等距離に。


元来大陸北部は、他の地域と比べて神殿の影響力が強かったらしい。

奇跡を司る巫女神官が、何故か集まり本拠地化したとされる、聖都が在ったとおりだ。

そんな異世界大陸北部でも、他地域ではそこまでの神殿跡はない。


神殿はどこにでもある。

異世界全体でランダム、であろうたぶん、な魔法使いを育てる場所。

そりゃ、異世界人が住んでいて出生がある限り必要なので、なけりゃつくるわな。


それにも地域差がある。


帝国による神殿破却の記録を精査した暇人いわく。

確かに異世界大陸全体から見れば、北部に神殿は多かった。

だがやはり、太守領は異例だった。


地域をまとめる神殿。

人口のほぼ全てが血縁ではなく、地縁でまとまる中世準拠社会。

それが王権国権にとって脅威なのはいうまでもない。


言ってしまえば、人々の帰属意識は地域に留まる。

それは社会の技術的限界により、変えようがない。


地球の中世なら在地領主が地縁をまとめる。

王権国権と直結した封建制だな。


だがしかし、神殿が地域を取りまとめたら。


地球の中世と異世界の違い。

神殿には実利的な意味がある。


魔法と奇跡を司る、赤い目の人々。

それを育成して管理する場所。

少なくあっても必ず産まれる赤い瞳。


つまり必ず神殿は必要とされる。

神殿はただあるだけで、領主を超えて人々と繋がる。


地球の中世ヨーロッパで、洗礼をでっち上げた教会とは違う。


あれは地獄で脅し、天国で賺した。

根拠もなければ、実利もない。


だから普及するのに千年かかり、普及しきったとは言いかねる。

元々が新興宗教による信徒拘束名簿で、出生管理による支配権確立は偶然だろうけどさ。


異世界ではまるで逆。

神殿が不可欠な機能を果たす。

社会に必要な魔法と奇跡にとっての母体として。


対立しても、戦うわけにはいかない。

魔法も奇跡も使えなければ、その社会は弱体化する。

他の社会に飲み込まれる。


ならばせめて、増やしたくはないだろう。


諸王国時代。

普通に内憂外患していた諸国諸地域なら、そんなもんだよね。

太守領は、それが無かった、か、少なかった。


これは太守領が他地域から物理的に寸断されていたからではないか。

そのおかげで外患に縁がなく、王権が200年以上安定。


外患が無いから、内憂も少ない。

摩擦が無ければ、共存しやすい。

それは協調から共同へ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二百年あればね。


太守領のそれは、おそらく地域コミュニティーの中心として定着発達したのではないか。

だからむやみやたらと神殿を、集会場のような地域の旗印のような、シンボルとしてこしらえた。





そんな神殿を破壊出来たのは、奇跡を否定し魔法使いの国家管理を打ち出した、打ち出せた世界帝国だけだった。


そりゃ神殿を虱潰しにするよなぁ

――――――――――などと、日本列島の暇人たちが供述しており。



異世界転移からこっち、暇じゃない日本人なんか自衛隊隊員くらいだが。


相変わらず国際連合がバラまいている異世界人文科学系情報。

重要な、だが、管理しなくて情報。

一億人の玩具です

――――――――――興味ない人数を差し引くとね。


まったくけしからぬうらやましいことに。

俺だって国際連合が垂れ流すデータで遊び暮らしたい

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さておき。


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