いいわけ。

「自分は命令に従っただけです」

叛逆決定(アウト)。

命令に従うなんて、ありえない。

「命令に従ったのが罪ですか？」

人道に対する罪よ。

「命令に従っただけだ！せきに」

軍人は命令に従ってはならない。

軍人は軍令に従わなければならない。

軍人は命令を疑わなければならない。

軍人は軍令を疑ってはならない。

ＯＫ？

命令に従ってはいけません。

命令を検討すること。

命令の諾否を判じましょう。

それは軍の目的に寄与するでしょうか？

疑う。

考えて。

決める。

パペットなんか要りません。

訓練されたサルは邪魔なだけ。

確立された個人は不良品です。

軍令が無辜の人々ごと都市の破壊を求めるなら、最適を行う。

命令が無辜の住民を掠奪略取しろと求めるなら、最善を行う。

軍の目的に対してどうあるべきか、独りで行い独りで背負う。

安心なさい。

あなたの行績は、ご遺族だけに伝達すみ。

誰も悲しむ者はいないから。

《あの件の後始末の一コマ》

【国際連合統治軍第１３集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】

「ふゃっぁ！」

俺は両手で魔女っ娘のうなじから鎖骨あたりを、なでなで。

「♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪」

表情筋を弛緩させる魔女っ娘。

「ずるぃぃぃぃぃぃぃぃ」

（（ズルい））

みんなの心が一つになって、姉妹二人が羨んでる。

「ごまかひぁれぅぅぅぅぅ」

マッサージ好きだね、まったく。

子どもと老人は、意外なほどにマッサージ好きだ。

俺調べ。

それは異世界、っても俺の手が届く範囲だけだが、でも変わらない。

老人はまだ試していないが。

つーか、異世界では老人を見たことが無いが。

異世界爺婆がおらんはずはない。

うちの日本の近所の爺婆に、通りすがりの子どもを押し付けるときには好評です。

きっと異世界でも体構造が変わらないならＯＫなはず。

機会が無いし、今後も無いかもしれないが。

平均寿命こそ短い中世準拠世界。

それが本当に中世準拠なら老人はそれなりに居るはずだが。

平均値を押し下げてるのは、乳幼児死亡率の高さだからね。

つまり七歳を越えれば、その後は六十歳以上は軽く超える。

災害と戦争が無ければ。

異世界は、そこそこ平和だったはず。

帝国による世界征服が、ほぼ終わったところだったしね。

そこに俺たちが襲来してしまったのだが。

ということは？

俺たちが支配する気がない以上、異世界は混乱するだろうな。

これから異世界爺婆が絶滅に向かうのかもしれない。

ＵＮＥＳＣＯが貴重な生体アーカイブとして採集しているし。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・関わらないほうがよさそうだ。

俺は雑念を払って、魔女っ娘をもみもみ。

眼前の帝国女騎士は帝国代表、今此処、随行している今日一日はね。

要は赤龍。

背後の俺は国際連合統治軍の代表、ず～っと、魔女っ娘たちにとっては。

要は青龍。

逃げ場のない魔女っ娘の気持ちは察して余りある。

前門と後門のなんとやら。

挟まれた魔女っ娘

――――――――――サンド ウィッチ(sand wich)？

【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族の前/揉み解され中の魔女っ娘】

――――――――――わたしはわたしを忘れてしまいそう。

危うく戻ってこれました――――――――――たぶん、ですが。

いけませんいけませんいけません。

ご主人様。

大きな指。

広い掌。

温かく、強く、わたしの脈動を抑える力。

ほんの少し力を入れていただければ、わたしの血は止まります。

もっと握りしめていただければ、わたしの首は折れるのでしょう。

鋼を穿つ青い龍のそれを使わずとも、わたしはその手の中です。

その蠱惑的な、なにかは、わたしの命を、ご主人様に弄ばれている、その自覚。

肢体の中、肢体の内側、血の流れを弄ばれるのは、いつものことですね。

でも違います。

閨で、湯殿で、普段に、意地悪されているのとは、ぜんぜん違うんです。

肢体だけを揶揄われているのではなく。

気持ちだけを弄り倒されるのでもなく。

肢体も気持ちもまとめて、舌でころがされるような。

それはその、きもちい、こころよいだけではなくて、もっと大事な、いえ、わたしはいいですから、そこまで割り切れていないのがはずかしく、でもでもでも、がまんしようがないので、がまんは禁止されて

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい、します。

至らぬ身ではありますけれど、それを認めて受け入れて。

一人前の、女として。

【国際連合統治軍第１３集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】

俺は揉み手を止めた。

手先指先は添えたまま。

俺がついてるぞ。

魔女っ娘を大人扱い。

非道い話である。

言い訳はしないが誤魔化さないと。

いつも通り本人の意思は無視。

酷い話である。

言い訳もしないしフツーフツー。

今日だけなら、今だけなら、子どもでいい

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それでなにもかも終わるなら。

だが作戦期間中、作戦行動中、身内以外の異世界人が居る時は

――――――――――太守領現地代表で在らねばならない。

俺の知る子ども。

日本列島に溢れている、それ。

甘やかされてる？

我慢が出来ない？

ワガママすぎる？

甘やかすのは大人の嗜み。

我慢させるは大人の恥。

我儘なければ沽券に関わる

――――――――――俺にもできる、幸いに、日本であるば。

そしてここは日本ではない。

俺は今、大人ではない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・軍人か。

たから魔女っ娘マッサージ。

この娘に、俺が考えた役割を強制する為に。

この素直で優しい娘が、俺の都合を察して合わせてくれること。

それに便乗して、より巧くこなせるように。

地球人類が設定した仕組み。

それが国際連合の道具。

そして俺の道具。

それは俺が道具であるということ。

国際連合の異世界不干渉原則。

それを守ったら魔女っ娘の願いは叶わない。

それを破ったら異世界が滅びかねない。

それをかいくぐるために、現地代表が要る。

現地代表の要請が無いと、俺には虐殺する力しかないのだから。

魔女っ娘の願いを叶える為に、魔女っ娘が苦労する？

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おかしなこともあるもんだ。

魔女っ娘の望みは、とても簡単。

終局的には、みんなが幸せになるといい、という程度。

そして当面は、帝国に強制連行された太守領領民の帰国。

生まれ育った、待っている人がいる場所に帰してあげたい。

真っ当すぎて、ぐうの音も出ない。

その過程で、ただ望むだけで、少なからず無関係な人が死ぬ。

しかもその過程で、魔女っ娘(げんちだいひょう)がすべての責任を負う。

俺が誘導し、俺が命じて、俺たちが殺した、最初から判り切った結末に対して、だ。

なんでやねん。

望みをかなえるために代価がいる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・子どもが信じたらどーする？

子どもたちよ。

騙されてはいけない。

大人も騙されてるけどな。

それは学問的に否定されつくしている、現実には全く関係が無い、想念上にだけしか成立しない、市場原理や数学の点と同じ理論モデルだ。

そんな寝言はファンタジーの中だけで言ってりゃいい。

何も知らないで一生を終わるカモが、納得した気になるだろう。

それをカモるヤツが、犠牲を受け入れさせるために捏造したロジックで。

望んだ。

叶った。

踏み倒した。

それでいーんだよ、それで。

本来、女の子はネコ可愛がりされて、ワガママ言って、行き過ぎたら踏まれていればいいのに。

まあ、早期にそーいう方向を目指すとして

――――――――――リラックスリラックス。

【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族の右前/魔女っ娘の右/エルフっ娘】

あたしは、ちょっと、だいぶ、かなり、いたたまれない。

そして、むしろ、あたしのせいよね。

そうなる、と予想していたわけじゃないけれど。

そうなると、すっごく納得してしまう。

仕方がないとは思う、けれど、簡単すぎるというべきかな？

一瞬で沸点に達して、彼、青龍の貴族に抗議する。

一瞬で懐柔されて、彼、青龍の貴族の思うがまま。

一瞬で生まれた生涯初めての悋気は、忘却の彼方。

あの娘。

この先ちゃんと、嫉妬して妬んで拗ねられるのかしら？

あたしなら

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうかな。

あたしもあーされたら

――――――――――逆らうどころか、従う。

うん。

全然、お手本になれない。

味をしめるかも。

ヤキモチを隠さなければ、してもらえる。

ヤキモチを隠さないと、カッコ悪い。

彼、青龍の貴族には、綺麗に魅せたい。

でも、ワガママが求められているなら、応えたい。

見透かされかけてからかわれ、がまんしなくなる。

つまりは彼の、おもうがまま。

全然ダメじゃない！！！！！！！！！！！