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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十一章「夏への扉」

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幕間:「あの件」に関する記録

【用語】


『あの件』:国際連合軍関係者で知らぬ者がいない一件。


「あの事件」

※第51話<異なる世界の同じ街>より

と対をなす事例であり、命名から流布まで軍事参謀委員会が観察していた

――――――――――管理や管制ではない。


手を加える必要が無かった、ということ。



3月。

開戦から2ヶ月目。

一度目の大規模会戦、その後。


国際連合軍は進撃を停止。

帝国軍は一気に後退。


双方が意図的に距離を置いた前線は、自然休戦状態に入っていた。


積極的に動いていた国際連合軍は以下の通り。

残敵掃討部隊。

捕虜奪還部隊。


UNESCOやWHOも盛んに活動していたが、まあ、指揮系統が違うために没交渉。


たまたま近くで作戦する時だけ最低限連絡。

各強制執行部隊間の調整は、なにもかも軍事参謀委員会で一元管理していた。


だがそれは、余談である。


「あの件」に関わる公式な報告は国際連合軍独立教導旅団「黒旗団」内部のもの。

関係諸部隊は報告を作成していなかったので、聴聞がなされたのは後日のことだ。


報告によれば日常化していた捕虜奪還作戦後。

「あの件」は開始された。


当時、黒旗団の任務は捕虜奪回。


作戦目的はもちろん捕虜奪回、だけですませるわけもなく、同時に帝国軍への威力偵察。

それはもちろん、情報を得るためでもあり敵に与える情報を最小化するため。


地球文明の軍事的アドバンテージを守るため。


熟練の異世界種族戦士たちを中心に、地球側でも特殊で少数のASEAN諸国軍を加えて編成した独立教導旅団。


限られた地球軍人は、その姿が見えにくくなる。

そして当面の目的である敵地で活動しやすくなる。


だからこそ、異世界/地球ハイブリッド部隊が動員された。



覚悟を完了している帝国軍捕虜。

軍を外部からしか知らない、捕獲した帝国民間人。

各種盗聴盗撮機器のデータは、解釈に時間がかかる。


普通に手に入るデータは、やはり、それなり。


普段の帝国軍そのままを再現しても、表層しかわからない。

表層、軍事情報だけ判れば戦術的には問題ない。

だが戦略的には足りない。


普段の帝国軍を知るためには、ソレと接触した地球人捕虜から聞き出すしかない。


敵は地球を、日本を知るために、捕虜に合わせてくれるから。

こちらからではなく異世界側から行われる、歩み寄り。

地球人捕虜というフィルターを経由してこそ、異世界を理解出来る。


奪還する地球人捕虜は、帝国軍情報の集積だ。

国際連合はそう考えて、捕虜を歓迎した。

だからこそ、でもある捕虜奪還。


しかし一つの行動に一つしか目的を与えない、訳がない。


それが国際連合の、異世界転移後の地球指導者たちの性質。

国際連合は、集中と統一には無縁、堅実さとは無縁なのだ。

それは帝国が全力で撤退しつつ、捕虜を連れ帰るような物。


帝国軍と国連軍は互いの捕虜を奪いあった。


そのついでに「あの件」が加わったのは、実に「らしい」。

計画と偶然を両立させ、二兎追うついでに木の実も拾う。

両手いっぱいに抱え込んだら、さらに頬一杯に咥え込む。


あの件。


その日、黒旗団は帰還ルートで野盗の群れを発見。

奪還した捕虜は元気に同席。


その日。

IFF(敵味方識別装置)の使い方に不慣れ?慣れすぎ?なドワーフ達が斥候を務めていた。


発見場所は国際連合軍の作戦地域。

野盗と認識されたのは、陸上自衛隊の一個小隊。


国際連合軍の作戦行動は付近の部隊で共有されている。

不期遭遇戦でもない限り。


WHOなら接近するまえに禁止命令、かナパームかトマホーク。

UNESCOなら事前告知が24時間前に出回る。


発見された部隊、その行動は登録されていなかった。


しかも行動が野盗で女子供を浚ってる。

おまけにIFF(敵味方識別装置)が味方と判断している。


つまり発見された部隊は反乱軍である。


と黒旗団団長は判断した

――――――――――制圧後に。


一応、生け捕った反乱兵、すでに自衛官扱いじゃない、を拷問、に近いのかその物なのか意見が分かれる尋問にかける。


2~3人をワイヤーで縛って、ガソリンをかけて、点火。

たまたま医学的処方他のエキスパートな三尉が不在だったので、自白剤は後回し。

戦場ではよくあることで、記録装置で立証可能な現行犯に人権など認めない。


軽く事情を把握した後、団長の判断で叛逆者の帰属部隊、現地に展開している師団司令部に進撃。


捕らえた反乱兵の生き残り、十人ほどは装備を没収して連行。

身ぐるみをはいだ全裸で脚にワイヤーを使い射抜き留め、HMMWVに繋いで時速60kmで走らせた、らほどなく概ね原型が無くなったが。


師団司令部は接収した現地の城館。


城館でも軍規違反の真っ最中。

特に追加尋問の必要もなくなったので、死体モドキは拘束したまま捨て置いた。


一応は問いただそうと思ってたのでガバメントの銃身を持っていたのだが。

45口径の銃は大きいので、持ち方を変えると即席金槌に使えます。

金槌は尋問によく使いますが便利です、とは黒旗団黒副長の言葉。



都合は良かったが気分は悪かった

――――――――――団長の感想。




師団司令部には幕僚監部関係者、護衛と補佐の一個中隊程度の人数。

黒旗団が瞬く間に、本来有り得ないことに、無抵抗で制圧。

常道ではは警備兵と戦闘になるのだが、まったく警戒が無い様子。


既に戦闘体制ではなかった。


その場で佐官数人が黒旗団団長に撲殺されたのは、口のききかたを間違えたから

――――――――――とは、団長の記憶。


黒旗団の熟練兵士は、手早くナイフで斬り分けた。

団長の機嫌を損ねた馬鹿者たちを二つに。


叛逆者と、従うべきではない命令に従った叛逆者。


後者は、朝までに各自で自分の身長程度の穴を掘った。

動力器機なしで見事に掘りあげたのは、高い練度を窺わせる。


塹壕蛸壺掘削は歩兵の基本。

もちろん、士気も高かった。


スタングローブを付けたドワーフたちが監督。


一瞬の休止も許されず、5人一組連帯責任。

羽柴藤吉郎もかくや、という工夫のおかげ。


掘りあげた後は順番に、ひとりひとり、連続して処分。


団長が休憩して軽食をとる間を除き。

後はガバメントの弾倉を差し替えて初弾を装填する間。

もちろん連続射撃に対応して時々分解整備。


銃身を取り換える必要はなかったのは、さすがの古強者ガバメント。


そんなインターバルを除き射殺継続。

ああ、それと団長がお花を摘みにいっている間とか。


遅滞なく、順番に、頭に45ACPが撃ち込まれていった。


苦しむ余地など無かった。

撃たれた後は。


穴は前者、命令したほうの叛逆者に埋めさせた。


この時点で、気がついた友軍、どちらの、とは言わないが。

作戦完了後に通過するだけだったはずの黒旗団が師団司令部を占領している。

それが周辺の、蹂躙されている師団司令部隷下の部隊に確認された。


天佑

――――――――――都合がいいことになった、と皆が思う。


隷下部隊に上層部の軍規違反は知れていた。

防疫上の理由もあり、各連隊は司令部から物理的に離れて配置。

誰も近付かせず、近寄らせない。


各連隊長は上層部をまとめて爆殺しようと相談中

――――――――――旧軍の伝統、未だ廃れず。


だから、都合がいい。

異世界人が大勢いる黒旗団なら、帝国軍の襲撃ってことにしやすい。

不祥事は隠蔽出来るし、手を汚さなくて済む。


事情を察すれば、皆が言うだろう。

皆には黒旗団も含む。


――――――――――司令部は帝国軍に攻撃された。


司令部全員は勇敢に戦って死亡。

原因は戦死した師団長が油断して部隊を散開させすぎたこと。

だが死者に鞭打つべきではない。


――――――――――――――――――――各連隊大隊の報告や日誌は精査され、日付を入れるだけで良い。


早速、周辺部隊は配置についた。

討ち漏らしが無いように、特に選抜された司令部救援部隊。

条件は口が堅いこと。


彼らは爆薬や燃焼剤を構えて待つ。

最大限監視しながら、機を逃さぬように。

楽しい光景ではなかったが。


まったく問題ない

――――――――――黒旗団が撤退すれば。




待つことしきり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気がついていなかった。


黒旗団団長のパーソナリティ、現代日本人に有り得ない

――――――――――空気を読まない。



黒旗団団長は動物的な勘で周辺部隊の動きを即断。

包囲されたとなれば、司令部であった城館に籠城。

一人でも多くの反乱軍を巻き込んで、自爆の構え。


交渉する発想が無いので、捕獲した元将官他首謀者を処刑していった。

元、と既に決めつけて。

処刑には様々な工夫が凝らされており、見せしめも兼ねていたのだろう。


黒旗団を監視する反乱軍へ。

まあ、反乱軍だと思った相手へ、か。

威嚇なのやら挑発なのやら。


猿轡を噛まされ化学樹脂拘束具を使われ、哀願錯乱言い訳不可能な状態でじっくりと。

順次、時々休止の叛逆者処刑。

目と耳はもちろん使えるようにしてあり、見まわすこともできるようにされていた。


自分の状況は理解できていただろう。


一人一人が三日間かけて遅滞も切れ目もなく持続的に死へと向かう不可思議な化学と魔法の融合

――――――――――見せられてしまった、それを監視する数百の自衛隊隊員。


見られた方は自業自得(国際連合の見解)。

見せられた方と見せてる方は堪らない。

やめる自由はあると思われ。



ただしもっと上の監視には、皆が皆、気がつかなかった。


軍事参謀委員会直轄の教導旅団。

位置情報くらいは定期モニターされている。

分遣隊とはいえ、団長が率いる中隊ならなおのこと。


現時点と直近のデータから、事態が把握されたのは当日だった。


すぐに担当者に連絡されたが、放置。

悪化するわけでもないからと、後回しにされた。

反乱兵たちが穴を掘らされている時刻のことだ。


でまあ、籠城三日目。


WHO到着。

まだ不思議に、いや、不思議な状態で生きてた反逆者を残して、黒旗団は本隊合流を命じられた。

後は反逆者に救出された事実を噛みしめさせた。


その後、トドメを刺す手間を省かれ、反逆者は全員焼却。

事前にサンプルは斬り出されたが。


科学と魔法のハイブリッドが本格的に研究開始の半月前。

マテリアルとして活用しようとは、まだ思われなかった。


だがそれは広くインスピレーションを産んだ。


監視していた自衛隊隊員たち曰わく

「三日間生きたまま燃え続ける人間を初めてみました」。

黒旗団白副長曰わく

「治癒魔法にはこんな使い方があったのですね」。

黒旗団黒副長曰わく

「家畜に使えば無限の補給になる」。




治癒魔法で再生。

体の脂肪が燃え続けた。

窒息してなお、内臓が機能停止しなかった。


もちろん脳が焼け崩れながら、意識は続いていた。

つまり治癒魔法を使えば、欠損部分が再現される。

生体ならそれなりに治せるし現代医学で範囲拡大。


死なせなければ再生可能。


無限の動物性タンパク質と燃料を得られるのでは?

熟練兵士を半分にして治癒をかけたら増えるんじゃないか?

魔法使いは少ないし、コストが見合うかどうかは考えどころかな?


「魔法使いをはんぶんこにしたら?」

「「「「「「「それだ!」」」」」」」



まずは再現実験で手法を確立させなくてはならない。

そんなことを談義していた魔法使いや獣人やドワーフやインドネシア人がどつかれた。


終始不機嫌な団長に

――――――――――それはそれとして。



国際連合は、満足しない。

たった一つの成果では。


反逆者たち、この時点では感染源の副次的成果。


その過程を観察させられた隷下連隊の隊員達。

その悪夢は、独りでは抱えきれない。

自然にうわさは広がっていく。



さらにこの件を広くひろく広めたのは、黒旗団本体の留守居役、いや留守司令。

たかだか三尉で旅団を率いる羽目になっている彼女は、上司の帰還遅延に厳しい。

予定期間を過ぎると連絡すら取らずに個人的なコネでどこで遊んでいるか追跡。


なんとしてでも早く帰還させるために

――――――――――この時も。


団長たちの状況を理解して、反射神経任せで空気を読まない大騒ぎ。

自分と同質の連中を中心に声が届く範囲すべてにSOSをばら撒いた。


同じような騒動屋が同じような騒動屋に声をかけ核融合並みの連鎖反応。

ブラックホールが重力崩壊を起こしてビックバンを起こすがごとく。


繰り返し繰り返し、信じたくないホラ話にしておきたいこととして、半月ほどで全国連関係兵士に定着した。



作為なしに。



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