お天道様がみてる。

国際連合軍における戦争犯罪、ですか。

あれは

――――――――――ボスニアで、あ、違う？

ＰＫＦじゃない？

軍？

ＰｅａｃｅＫｅｅｐｉｎｇ Ｆｏｒｃｅですから平和維持「軍」なのですが？

ああ。

国際連合軍ですか。

いえいえいえいえいえ。

判りますよ判りますよ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嫌な話です。

いや、大丈夫。

貴女が重要な政治家から担った役割は理解しています。

あれは秋のことでした。

そう、秋です。

軍事境界線

――――――――――あ、はい。

存じておりますとも。

たしかに。

異世界転移は真冬でしたな。

年越しまで一週間。

それからかれこれ５ヶ月半。

春ですな～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～ふぅ。

いやなかなか息が続きませんで。

時計は御持ちで？

ああ、もうこんな時間ですか

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さて、宴もたけなわで御座いますが、そろそろ、あ、はい。

――――――――――もちろん御答えさせてください！！！！！！！！！！

家に帰れば三つを頭に５人の子どもが母の帰りを待っているんですが父が帰らなくていいとは思ってないと信じたいんです！！！！！！！！！！

ですから密告、いやいや報告するならせめてせめて軍事参謀委員会へ～～～～～～～～～～！

なぜ？

ご存知、ない？

いえいえいえいえいえ――――――――――そのままの貴女でいてください。

決して、必ず、絶対に、軍事参謀委員会以外には伝えたりはされませぬように

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・他意はありません。

ただ、貴女の良識に期待するだけです。

巨大海性生物の口に蹴り落とされる、私を見たく無いでしょう？

そんなモノを見る趣味はＵＮＥＳＣＯのキ○ガイ共にしかないはずです。

あいつらと来たら生体に発信器を埋め込んで内臓の動きを確認

――――――――――さて、戦争犯罪でしたな。

もちろん、在りますよ？

戦争犯罪が、いまでも、です。

不思議でしょう？

これこれ。

それそれ。

皆が填められた首輪

――――――――――追跡記録端末。

２４時間装着。

外す必要がある場合でも、３ｍ以上離してはならない。

物理的遮蔽禁止。

もしあれば即逮捕。

もちろん記録データはオンライン。

有り余る通信回線。

消費不可能な余剰ハードウェア。

産業を停止させたが故の余剰設備。

異世界で活動する一人一人。

そのすべてが蓄積されています。

各人の位置、行動を常に監視

――――――――――それは無理ですな。

十万人を監視するためには、十万人の監視員が必要です。

しかし、視られてる、かもしれない。

その時に見逃されても、後から追跡検証可能。

しかも自白剤はあまねく地球人にこそ多用される。

不審な点があればいくらでも検証可能。

その上に、異世界派遣中の単独行動は特殊任務のみ。

第一、今この時に、暇に潰す物を探して、あの女が視ていないとは限らない。

軍事参謀委員会やＭＰならまだしも、ＵＮＥＳＣＯのキチ○イなら知らず。

この状態で、戦争犯罪が発生するわけがない

――――――――――今はね。

意外にみんな、実感が無かったんですな。

最初の消毒が発生するまでは。

掣肘されなければ、監視されている自覚は生まれない。

眼を忘れて蛮行に及ぶ。

甚だしくは「自分たちは見逃される」と思い込んだ上級国民まで。

意外かもしれませんが、各国軍の方が統制がとれています。

程度問題かもしれませんが。

が、まあ、圧倒的多数派の中で少数派は目立つべきではない。

潜在的な危機感を肌身で感じている。

何処の国でも虐殺したりされたり。

転移前の身近な現実ですからな。

殺す側であれ殺される側であれ、普通に育てばおのずから。

それが「ない」のではなくて、知ら「ない」のは我等が同胞ばかりなり。

――――――――――そーいうことでしょう。

何が起こったのか？

それは軍令に拠らない異世界接触。

英雄願望をこじらせた、阿呆。

優越感情を肥大させた、馬鹿。

共通点はひとつ。

「現代文明、その暴力と自己を同一化する」ということ。

端的に言えば「銃」を自力と勘違い。

日本国に与えられた銃。

国際連合に与えられた地位。

社会に与えられた先人の知識。

与えられなかった、これから掴み取る、素手の素人に対する

「全能感」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いやはや。

消毒された連中は、概ね現実世界、いや地球・日本側での実力評価が低い。

年功序列でつまらん地位についた者ばかり。

政治家の判断。

参謀委員会の監視。

隣接部隊の動向。

背後の部下。

吹けば飛ぶような状況だ。

何も知らない武器もない連中の中、たった独りで銃をもつ

――――――――――人間の本性が現れるのは、窮地じゃない。

圧倒的な優位を信じた時ですなぁ。

いやはや。

なんで産まれたのやら。

呼吸を続けた図々しさは、どこから生じたのでしょうな。

「あの事件」

「あの件」

それは、最高の見せしめとなりました

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・異世界の被害者も含めて。

※国際連合軍は異世界転移前に一度しか編成されていない。

※異世界転移前の前例と言えるのは朝鮮戦争時の国連軍のみである。

《カタリベの取材ノート/国際連合複合物流拠点「出島５」にて》

【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族の右前/魔女っ娘の右/エルフっ娘】

あたしは――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ガマン。

応じたら負けだと思う。

なにしろ、あたし、たちの前で、彼にだけ聴こえるように甘い声で囁いた。

内容は何気なく、飾り気がない、単純な事実確認。

それでも伝わったのは判る。

ただ一人の相手に、誰もが判るように。

貴男だけにと、誰もが解るように。

女が男に送る声色と、誰もが知るように。

それにしても、腹が立つ。

彼、青龍の騎士。

あたし、たちの眼の前で。

あたし、たちが判るように。

あたし、たちを愉しみながら。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・他の女で、遊んでいる。

媚びないことで媚び誘う。

帝国女騎士の、美しい女に見合った手管。

騎兵だけに手管に長けてる。

※手管、管、管槍(クダヤリ)：槍のこと

彼。

青龍の貴族。

彼は、それを受け止める。

女が漢を酔わせる妙技。

男はソレを味わいながら、楽しむ。

あたしたちを愉しむそれとは、全く違う。

利き酒の様に。

批評するように。

分解するみたいに。

きっと気がついていない。

あたし、たちにしかわからない。

彼の好みを知らないと気が付けない。

彼が女を、自分の女をどうするのか。

帝国女騎士。

彼は、それを女として見ている。

美しさも、手練手管も、肢体も、何もかも楽しんでいる。

でも、あたしたちとは違う。

帝国女騎士を受け入れて楽しみ、弄ろうとはしない。

あたしたち以外には、そんなことはしない、か。

あたしたちにするように、愉しむ気が無い。

ううん、思いつきもしないのかしら。

いまもこうして、あたし、たちを追いつめてるのに。

他の女を手配して、自分に近付けて、自分の女に魅せつけて。

よーく考えたら、いつもとおり？

あたしたちが、一番嫌がること。

あたしには、想像もできないこと。

あたしにとって、最も堪えがたいこと。

それと判って、やっている。

うん。

つくづく思う。

絶対、許さない。

それが彼の愛し方。

あたしは彼の女なのだから、彼に、挑まなくちゃね。

何度ねじ伏せられても、諦めないんだから！

【国際連合統治軍第１３集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】

ヒロインな美人、帝国女騎士。

ヒールな俺、侵略軍軍政司令官。

なんか位負け？

俺たち悪役っぽくない？

モヒカンにした方がいいかな？

彼女（しゅやく）の舞台はここか。

人を魅惑してやまない巨大建造物。

このサイズ、中世土木技術じゃ不可能。

だが、古代地中海技術なら可能な感じかな。

魔法や奇跡が介在しているなら、物理学ではないかもしれないが。

ただ巨石や資材を持ち上げる魔法、それなら理解、というか実感しやすい。

それだけではなく、維持し続けることに魔法が使えるものなのか。

魔法は魔法使いがいなくなったとまで持続する、のかねぇ。

地球のさまざま巨石建造物がそうであるように、建築と数学は切り離せない。

数学的知識があれば構造物の自重を拡散し打ち消しあって、バランスを保てる。

まああくまでも一時的に保てる、というか倒壊までに時間が稼げるだけだけど。

基本的に大きな建物は崩れかけていて、崩れ落ちるまでの時間で利用するだけ。

倒壊までのカウントダウンが数十年数百年あれば、人の身にして十分だから。

魔法が魔法使いなしに半永久的に持続するのであれば、建築学が塗り替えられる。

いろいろな利用方法が考えられるな。

放射線のせいであらゆる資材への負担が大きい宇宙空間なんか、最適なんじゃないか。

逆にそこまで丈夫で長持ちするならば、壊す工夫も必要になるだろう。

いずれ壊れる。

現代文明は、それを前提にしている。

なので壊れないと困るのだ。

いわゆる消費サイクルを捏造するための破壊ってやつ、とはまた別にね。

壊れないということは拡張性がない、少ないってことだから。

入れ物に合わせて生活する人間にとって、それこそ停滞を招くだろう。

しかもこれだけ、デカイのであれば。

それだけで満足、いや停滞してしまいそう。

誰かが調べてるんだろーけどな。

聖都にはＵＮＥＳＣＯ調査団がうじゃうじゃいるし。

大きくて不滅なら、不滅のほうが問題だ。

大きさだけならたいした感興は湧かないが。

現代都市をもはや摩天楼なんて感じない身にはね。

そんな神殿前は、広い広場にもなりうる大路。

整然たる帝国の解体作業計画のかいもあり、見通しがよろしい。

末期都市攻防戦に伴うバリケードは真っ先に解体。

土木作業の邪魔だから、そしてそれは近代兵器の邪魔にもなる。

現代軍隊と似た発想の帝国軍隊。

おかげさまでカメラも電波もはるか遠くまで見通せる。

もちろん広くまっすぐ遠くまで射線をとれる。

そんな大路は都市壁を抜けてすぐに始まり、終着点が神殿。

聖都を誰が造ったのであれ、防衛拠点のつもりはなかったんだろうな。

そんな大路を背に神殿を前に、半円半包囲陣形

――――――――――が、俺たち。

巨大な神殿を背にしてこれに依らず、単身俺たちに向かい立つ

――――――――――美貌一つで俺を討ち取った帝国女騎士。