感想戦/過去と未来・日本と異世界
【用語】
『国際連合』:the United Nations/連合国、の超訳。異世界転移後の人類社会の総意を体現する組織。と国会で決まった。加盟国のほぼすべての外交防衛権を委託されている。黒幕は日本の一衆議院議員であるとマスコミに報道されている。
『国際連合軍』:国連憲章第七章に基づく人類社会の剣と盾。と国連総会で決まった。黒幕は元在日米大使の現合衆国大統領であるとマスコミに報道されている。
『安全保障理事会』:国連実質的決定機関。もちろん、総会の承認を得てこそ正式な決定となる。異世界転移後は全て一任されている。でも、理事会の要請で総会決議がされることがある。
『常任理事国』:合衆国(米)、連合王国(英)、第五共和制(仏)、共和国(露)、統一中華連邦(中台合併)、日本。
『太守府』:帝国の行政区分をそのまま国連軍が引き継いだ呼び名。領地全体の呼び名と中枢が置かれる首府の呼び名を兼ねる。帝国ではおおむね直径120km程度を目安に社会的経済的につながりが深い地域で構成する。南北が森林、西は山脈、東は大海で大陸のほかの地域からは孤立している。ただし、穀倉地帯であり海路につながっているために領地としての価値は高い。10年前までは古い王国があり帝国に滅ぼされた。
基本的な発想です。
途上国に化学肥料を与えても、支払いができず後進国となるだけです。
社会基盤が整っていない地域で識字率を上げても、読むべき本が無い。
現代医学を教えて呪術しか知らない地域で患者が集まると思いますか。
労働集約型産業がブレイクスルーを迎えて初めて、資本集約型産業に移れる。
それならまず農村を組織化したほうがいい。
生産余力が生まれて初めて情報共有に意味が生じるんですよ。
学校を建てる前に教育すべき生徒を選別すべきです。
正しい概念を普及させるために、現代医学が生まれたんじゃありません。
身体を救うためには心を守らないといけない。
つまり、こういうことです。
自白剤を普及させても意味がない。
銃器を配ってみても役に立たない。
戦史を教えるなんて馬鹿のやることです。
ナイフ一本でいいんですよ。
与えるべきは発想。
何だってできるじゃないですか。
世界を変える事だって、容易いことです。
お国の人たちにはなじみが無いでしょうか。
いままでどれだけの軍事援助が無駄になったことか。
バカがバカをやったために、馬鹿を含めて無駄死にです。
魚を与えるより釣りを教える、でしたか。
教官の国では故事成語を知る人種は殺されますから、ご存じないかもしれませんね。
いやまあ、あの一東南アジアでなにかあれば殺されるのが華僑なんですけれど。
おや、ご存知でしたか。
これはテストケースです。
ある種の隔離環境でコントロールする。
パイロットファームで苗を造るということ。
苗床の条件。
自給自足が可能なだけではなく、余剰生産力がある地域。
地形的障害によって、ある程度は外部と隔絶している地域。
人口密度が高く特異な風習が無く国際連合統治軍の管制地域。
可能な限り受動的に行います。
接触を増やし、深めて、共感と模倣を誘う。
最少人数で警戒させず、バックアップで畏れさせる。
その過程で問題の洗い出しは全て終わります。
それを交易路沿いに伝播させる。
我々は決して表に出ない。
責めを負うのは、彼ら自身です。
優位を保つために、敢えて秘匿する我々の根幹。
が、誰もが知ることでしょう。
いずれ時間の問題ということを。
いつまでも併存することはできない。
ならば共存すればいい。
これが答えです。
《国際連合技術移転計画「持続可能な開発のための教育(UN Education for Sustainable Development/ESD)」プログラムミーティング》
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】
では初手を振り返ってみましょう。
俺が美女、帝国女騎士に迎えられたのは、神殿の前。
花束花輪は在りませんでした、ハイ。
太守府の港街で子どもたちから贈られたのが懐かしい。
※第207話<奇襲攻撃/Under the radar.>
なにもせんでも子どもウケが良い俺。
異世界でも日本列島でもおなじこと。
女ウケはまあ、努力と技術が必要だ。
そのうち花を贈れるようになるだろう。
花はやっぱり、贈るものだよね。
女に。
まあ、女の子になら、贈らないことも無いが。
飯の方が良くね?
まあ、子どもはさておき。
女と花はセットです。
俺だけだと言われても、われは征く。
花屋に行くと女の顔が浮かぶくらい。
付き合ってる相手。
付き合いたい相手。
付き合ってた相手。
隣り。
予定。
思い出。
実に楽しい。
ソレが無いのが実に悲しい。
ここは花屋ではなく、神殿だから。
神殿とは聖都全体で無数に、まあ俺が数を把握してないだけでたくさん、ある建物というか施設。
ここはその中でもひときわ大きく、往時に置いて特別な意味を持っていた、らしいが今はどうか俺が知らない。
その神殿。
大神殿、とでも呼ぼうか。
都市のランドマーク的な巨大建造物でバス停や駅を設えたい。
待ち合わせや初回デートスポットに最適です。
子どもたちの息抜き観光場所として目を付けたんだけどね。
いやマジ子供を遊ばせようと思ったら、とりあえず連れていきそうな場所。
俺たちの真ん前にそびえる大神殿。
それは、ニューヨーク市立図書館を思わせる。
ただしくはニューヨーク公共図書館だっけ?
良く映画にも出てくるのは本館だが。
分館がやたらとあるのがまさにこの、仮称大神殿ににてるな、と。
俺の知見が狭いだけかもしれないが。
大神殿と巨大図書館。
必ずしも形が似ているわけでもないのだが。
なんか雰囲気がね。
今は無き現代地球の宮殿や美術館とはなんか違う。
その役割が無くなって、単なる飾りになっても宮殿には強烈な匂いがある。
人を圧倒しようという意図っていうか、絶対にリラックスさせないというあれ。
あんなものに住んでる王族とかそーいう人達に同情してしまう感じがある。
宮殿転じて美術館じゃない、最初っからの美術館もね。
すっごくがっつりした印象があるのだよ。
こんな絵が家に在ったら生活できない。
なーんて、どこぞの美術評論家が言ってたけどさ。
そんな存在感が美術品。
それを納める美術館にも荘厳さが付きまとう。
宮殿とは真逆の同質性。
その威圧感は、静的な宮殿とでも言おうか。
著名な古典絵画のコレクターが言いました。
有名な美術品オークショナーが言いました。
墓場だ。
美術館とは、芸術家の魂が死に絶え葬られた場所。
そこから何も生まれないが、まったく失われるものもない。
完全な静寂。
絶対的静止。
永遠の均衡。
それはそれは味わい深い場所で、最高の非日常体験が味わえる。
それが宮殿と美術館。
それで楽しいといえるわけではないが、日常のための非日常だ。
どちらも一方的で圧倒的、嫌いじゃないけどな。
では、図書館は?
この、大神殿は?
いま、俺たちは?
それは双方向で蠱惑的、気がついたら捕らえられてる。
読んで聞いてと囁かれる。
見知らぬ家の客間のテーブル。
巨人の国に紛れ込んだ小人たち。
なんとも心が躍るじゃないか!
【世田谷区深沢某所/某衆議院議員私邸/当日付け国際連合安全保障理事会会場】
「魚より釣り竿をあたえよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それが何をもたらしますか?
「技術」
それは単体で存在できるものではありません。
社会的背景、いや、それを規定する環境生態系に依存します。
故にこそ、そこから逸脱したものは自然に淘汰されてきました。
技術は「発見・発明」されるモノではなく「定着」するのだとご理解いただきたい。
よくあるでしょう?
早すぎた発明、栄光無き天才、オーパーツなどなど。
みなみなさん、歴史上でおなじみですね?
発明家とは?
先人が無数に繰り返していた「発見・発明」を、定着できるタイミングで公開した者。
天が下に新しきものなし。
つまりそういうことです。
誤解無きように付言しますが。
「無限に賽を振ればいつか認められる」
訳ではありません。
「進歩」
という誤訳はあたかも
「人類が一つの方向に向かっている」
かのような錯覚を振りまきますが。
必然性はありません。
およそ世界にあり得ることは「偶然と惰性」が生み出し続けています。
多いことは善いことか?
大きなことは善いことか?
強いことは善いことか?
言うまでもありません。
どれもこれも、良い時もあれば悪い時もある。
「たかが」それだけです。
であればこそ、環境に依存するシステムを異なる環境に持ち込めばどうなるのか。
これを、みなさんよくご存じだ。
外来種を、異なる生態系を持ち込むようもの。
その辺りを誤認して多くの発展途上国が後進国へと崩壊しました。
いや、国家社会の体裁を保てれば幸運、と言ったところでしょうか。
端的に言えば
「現代技術を中世準拠異世界に持ち込む」
のは
「良くて無意味」
「普通に災害」
ということです。
淘汰されれば、影響は最小で済む。
衝撃は環境に吸収されて忘れられるでしょう。
誰かが割を喰っても、悪夢の一つと言えばいい。
めでたしめでたし。
そうはいきません。
誰か一人の思い付きなら淘汰されるんですがね。
他の環境に根を持つ技術は、存続しようとするので。
環境に依存した技術は、存続する為に環境を変えます。
それは当然、悲劇的な生態系の崩壊をもたらす。
どちらが存続するにせよ、です。
例えば。
効率的な製塩法を持ち込んだとしましょう。
釣り竿に等しく、現地の資材と技術で可能なもの。
まさにソフトウェア、技術です。
必然的結論は?
商品経済の破たんによる流通崩壊。
大規模な飢饉と難民の発生です。
単なる思考実験で判ること。
塩の生産量が少ない時代。
塩が保存しやすく必須の資源なので。
塩は通貨、生産できない貴金属より安定供給が可能ですから。
塩の消費自体が安定していることも信用通貨にふさわしい。
通貨が大量生産されればどうなるか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いう必要、有りますかね
信用通貨が無ければ物々交換しかありません。
保存性運搬性普遍性が無くなれば、経済は狭い範囲に限定されます。
流通が阻害されれば生産も停滞し、消費がそれに伴うためには人口が減る。
大虐殺です。
もっと直接的な話がいいですか。
地球上であった話で。
例えば。
乾燥地帯でかつ水源遠い草原がありました。
井戸の掘りかたを教えました。
水を風車を使って自動的に組み上げる仕掛けを造ったわけです。
電気も機械もいらない、その土地の人とモノだけで造れました。
見よう見まねで誰でも造れる上に土地には地下水脈もあったと。
みんな飢え死にして、僅かな生き残りは難民となりました、とさ。
原因?
砂漠になったから。
塩害です。
井戸を掘れば純水が湧く、訳が無い。
井戸水には様々な成分が含まれているわけで。
乾燥地帯で水分は急速に大気に吸収されます。
それが雨雲を発生させる、規模なわけがない。
水源から遠く、成分の逃げ場がない土地で、自然環境で蒸発乾固を繰り返せば何が起きるか。
「たかが」それだけです。
それでもみなさんは、命じますか?
異世界を、中世レベルの世界を、「現代日本と同化させろ」と?
許されるなら、魚を与えるだけにしておきたいですね。
いつまでも産業を止めて置けることか
――――――――――――――――――――――――――了解しました。
彼らに「釣り竿」を与えましょう。
例え、どのような犠牲を払おうとも。
※国際連合技術移転計画「持続可能な開発のための教育(UN Education for Sustainable Development/ESD)」安全保障理事会聴聞




