幕間：かしましい

※第４３９話<Predictably Irrational/予定不調和> 冒頭の続き

「って――――――――――――――――バッドエンド粉砕！！！！！！！！！！愛とは後悔しないもの！！！！！！！！！！」

？

「合い言葉は、めでたしめでたし」

ん。

『なぜです』

「とーぜん！！！！！！！！！！あの娘たちならヤれます！！！！！！！！！！！惜しみない声援を惜しみません！！！！！！！！！！」

声だけじゃないのが立派なのか厄介なのか。

『なぜこだわるんですか』

「嬉し涙いがいきんし～痛み涙はしかたなし～！！！！！！」

しずかにね。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ですか』

「そーです！好きになってから共に死ぬまでが戦いです！ハーレム殲滅！！徹底抗戦！！！敵が幾万ありとても前世でも今生でも来世でも常在戦場恋愛不滅永久求愛生きて妥協の辱めを受けるなかれ死して異世界でも愛を掴まん悠久に！！！！ちょーてんはつねにひとーつ！！！！！！」

教えてくださる？

「なにをです」

アレが異世界派遣前から、一見すると倫理的に振る舞っていた理由。

「過去形ですか？」

『少女を庇護するのは以前からなのですか？』

まあ女について、だけでいいわよ、この場合。

「比率で言えば女の子が多いですからね～」

『正常に生育した動物は互いに同性を忌避します。自然な比率ですね』

「キモい母娘の共依存なんか、娘が憑り殺されるだけですもんねぇ～金蔓と介護用員って、最期は互いを恨んでしゅーりょー」

そ・れ・で？

「女に不自由していな～い」

っていうより、不自由しない努力をしている。

「あれは努力じゃないみたいですよ」

あれだけの時間と、それなりの金と、なにより手間を費やしてるけれど？

「酸素を取り入れるために肺に努力させてるのは病人だけです」

あ、嗜好品じゃないのね。

「必需品ですね」

『科学的にはその通りです』

「女好き、っていうより、欲求。それにまつわる人造物は倫理も道徳も法律さえハードルくらいに見てるんですよ」

三回遅刻したらペナルティって聞けば。

『二回までは大丈夫？』

違う違う。

「二回遅刻しないともったいない♬」

って考えるタイプよ。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

アレは世間体なんか気にしてないし。

懲戒免職を職場都合退職にする程度のことは、自分でやってのけるわ。

嫌々渋々仕方なく就職先を探さざるを得ないと諦めたときに、自衛隊を選んだのもその辺りが理由じゃない？

人事権を持つ中央の隠蔽体質と保身思考、集団指向と共同共犯。

原則を護るためなら、どんな逸脱も恐れない。

『なら官僚を目指せばよかったのでは』

上から下まで右から左までソレばっかりじゃ狂うでしょう。

自衛隊なら日常は正常に過ごせる。

人員の大半が現場仕事で、不快な中央との接触は最小限。

必要になれば伝手をたどることも容易いのよ。

「三佐が言うと説得力ありますね♬」

一番弱い立場の上司を嗅ぎ分けて、自分のスキャンダルをブラフにつかう。

本当に拡大させるような、自爆駆け引きくらいするでしょうね。

なにを失っても代わりはあるあるからチップに過ぎない

――――――――――――――――護るべきものを持たない、自覚し得ない、自分ひとり身一つと思ってる。

「まあ自分に逆らう手下はＰＫＦの帰国遺体に混ぜちゃえばいーや、っとか割り切る女（ひと）は独りしかいませんもんね。それ以外なら誰だってあしらえると思っちゃうのもむりないか」

『実践済み』

まだよ

――――――――――やるときは、非暴力的な上層部を選んで、やるでしょうね。

「三佐が面白がれば、即失業保険に入って生活保護までいっちょくせ～ん♪」

だから、よ。

アレがいままで不祥事（いんこう）を起こそうとしない、理由がない。

「無断不祥事（じょうれいいはん）が三佐の勘に触って嫌がらせされたら永久就業になるからでは？」

アレは上司の好みを知ってるわ。

「本気で仕事を愛さない限り、辞職も免職も退職も無し」

『よく似た主従ですね』

ならなぜ？

異世界でも日本でも、行動に変化がないのかしら。

「そーいえば、たしかに、天罰（さんさのきぶん）の有無に限らず同じか。異世界少女たちとまったく同じ被害が地球でも多発―――――――――――――――――――――――――――――――――――――へんですね？？？？？？？？？？」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・被害を受けられない被害、ですか』

　で。

「なんで？」

　ツージー？

『仮名ツジ参謀です―――――――――――――――――――――――――――――――――――――男女の成熟時期には大きな差があります』

文部科学省の統計によらず、国際連合も認めた地球人類種の特徴ね。

『異世界でも変わらないようですが』

「ＤＴの見分け方ですね！ＪＫから大きくなると信じてたら、女の子のそばに寄せ付けられなかった証♪」

　ぼっちの女子も同じじゃないの？自分は高校生で大きくなったけど、っていうなら周りとの比較してもらえなかったわけよね。

『女性の成熟は１５歳前後で完了。男性は１８歳前後で完了』

婚姻可能年齢って、意外に科学的だったのよね。

「経験則なら科学に近いですよ」

『婚姻制度自体は非科学的ですが』

「だから十代の女の子は未熟な同年代に目を向けない」

一般的には。

「例外を考慮したら法則は導けませんよ？科学を否定するなら別ですけど」

そうね。

「つまり１５歳の肢体で一生すごすんですね♪」

『ピークは男女とも５年ほどで、後は衰えるだけです』

女は２０過ぎたら、か。

「たいへんですねぇ～」

ホント、自信家だこと。

「マイナスを把握するアドバンテージがあれば、最盛期相手でも勝てますもん。若さを妬むＢＢＡの嫉妬で最盛期をドブに棄てさせられて泣き寝入りもしませんし、二度と戻らない若さを嫌うＢＢＡみたいな最盛期の女を保護名目で隔離して不戦勝狙うほど負け犬じゃありません！若さっていうリーサルウェポンが錆び付いても可愛く美人で脱いでもスゴいですからよゆーよゆー」

『よく似た主従ですね』

　コレと同じ扱い！！！！！！！！！！

『被験体Ｎｏ１が最盛期(含む未成年)に関心を持つが、欲望を持たないとしたら』

「間違いないんですよね。なんで百戦錬磨のセミプロかプロフェッショナル中心でＵ１８を女扱いしないのか」

いつの間にか調べ上げてるし。

『それは牡としての本能です』

　？

「？」

健全な牡が最盛期の牝を無視する訳？

「どんな理屈ですか！！！！！！！！！！

びょーき持ちが進んで正常な男が退いたら恋愛にならないじゃないですか！！！！！！！！！！」

『肢体が子供、心が大人』

「ファンでしたか？」

早熟のこと？

『異常ではなく特徴です』

「うぃ」

そうね。

『逆なら？』

「ウケませんねキモイ」

　安楽死。

『肢体が大人で精神が子供

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・病気です』

――――――――――ああ。

『正確なところは自白剤を使って』

「まーかせてー」

必要ありません。

アレのことはわかってます。

「正常な動物は病気の個体に欲求を感じない？」

『強い動物は弱った個体を健康になるまで庇護しようとする

――――――――――利益を最大化するために』

「まあ確かにまだ収穫してませんしー」

それも調査済み？

「この調子だと、取り置いたまま忘れて芽を出して新しい森をつくるかもですが、やだ、リスみたい、かわいい」

つまりそれね。

『だから道端で拾ったりするのでしょう』

一目で判るの？

発達障害って？

『判りますよ。所作ひとつ、視線ひとつが違いますから』

「あれ？子どもは視界が狭いから、周りの環境への反応が少ない。蓄積がないから反応のバリエーションが少ない。選択肢がないから反応が速い」

『刺激が多い雑踏で、視線の向き動き、呼吸や身じろぎを観察すれば判ります』

視線が落ち着かないのは、視点を選べないから。

呼吸が落ち着かないのは、現状を把握出来ないから。

「ん～～～～～～～～～～それって」

『普通のまあ標準内の、日本の中高生が、病気、精神疾患』

「眼を合わせるのが怖いけど、眼を離せない。好きな相手の前で、ドキドキ。

同じ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・恋する乙女が挙動不審？だからか！だから異世界幼女童女少女みんなが女扱いされないのカ～～～～～～～～～～！」

病んだ肉より老いた肉。

老化は病気じゃない、未熟は病気、ね。

「上はかなりアリ、下はかなりナシ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・間違いなし、うん」

データベースあるんだ。

『科学的に言えば、突飛な判断ではありません。先進国という現代人類社会の極少数派だけで起きている、人間の未熟化現象、あるいは政策。人類史から見ても人類社会全体から見ても異例であり、必然性が無いあたり異常です』

「異世界、うんにゃ、先進国以外では起きてないのにね」

それ自体は生産過剰に対する人的資源の廃棄と考えれば、説明できるけど。

『最も優秀な十代労働力を浪費するために、家庭や学校で空転させる。最も優秀な生殖能力をもつ十代を隔離して、労働力の再生産を阻止する』

「老化してからなら質の悪い個体しか再生産出来ないから、一石二鳥！」

あれが地球でも未成年者に手を出さない理由。

現代日本の少女たちを、本能的に病気だと見抜いてるから。

「そっかー環境が悪い時に幼体種子のまま単性生殖して環境が良くなると成長するなんかあったよね」

『ネオテニー(neoteny)、幼形成熟、幼態成熟のことですか。生殖器官だけが普通に成熟し脳や神経系の生育が遅く、しかも未完成のまま終える』

「まんま先進国の人間ですね」

　よく、わかったわ。

『こちらも理解出来ました』

「うんうん」

　なにを？

『国会が、与党が必要なのは異種交配の結果ではありません』

「あーだから、法務委員会と安保理、ってか三佐のお父さんがつよーく介入してくるんだ。ありがたく」

『未成年全体への給付、教育医療無料化、夫婦別姓、同性婚の準備

――――――――――家族制度の解体、中世への回帰』

「あー、少子化対策を隠れ蓑にした文明のてんかん、って学会でネタになってましたよ。もちろん理解が追い付かないから話題にはなりませんけど」

『経済学上なら、少子化は歓迎ですものね』

「過剰生産が減り、過少消費が増えますもん。異世界転移のドサクサで産業止めちゃいましたけど」

『中世的な先進社会を創る場合、現代社会の雛形を消滅させる必要がある。必然性なくたまたま発生し、惰性で維持されていると思ってましたが』

「地域コミュニティーを再生する為に、未熟化による共依存相互隷属を解消するために」

『中世的価値観を現代先進国基準で再編成できる

――――――――――可能性がある。成否問わずに、得難いデータが得られる。最終的には異世界との共存を建て前に、同化政策として日本の異世界化を導いて、本来数世代かかる変化を一気に受け入れさせる』

「いいとこどりしようってんですね♪すると真・ＪＫ、肢体も心も大人なラスボスとの戦いが？ハンデ戦じゃないならワクワクしてきますよ！ドサクサ、まぎ」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

あら？

まだ、まとまってないんじゃない♪

続けて続けて

―――――――――察しのいい娘、キライかも。