しあわせのかたち

「それで誰かが幸せになるのかな？」

為すべきこと。

為さざるべきこと。

それは誰にでもわかる。

なにかを言う前に、なにかを為す前に、ただ一つ問えばいい。

「誰か」は別に自分自身でもいい。

だが名前も顔も判っている、そんな相手に限る。

「幸せ」も、なんだってかまわない。

だが最低限、いつ、どれくらい、なにが、となる。

具体性のない「誰か」など存在しない。

例えば法人、人種、民族、階級などでしか表せないなら詐欺師の口上にすぎない。

具体性のない「幸せ」は不幸の別名だ。

例えば通貨、資源、財貨に商品と具体的な名を出せないなら気休めにもならない。

日本人の利益になる？

なら、お向かいの中村さんの利益になるだろう。

それが利益と名がつくなら、具体的な内容があるだろう。

でなければ考慮に値しない。

それが判って初めて、検討し得る。

もっと利益を得られないか？

コストパフォーマンスは最適か？

それが誰かの不幸になっていないか？

それが誰の利益にもならないのなら。

お向かいの中村さんの財布が膨らまないのなら。

数字屋の経済効果と同じ。

そんなことをしてはならない。

もっとましなことを考えるべき、いや、考えなくてはならない。

それが人であるということだから。

もちろん。

「誰かを不幸にする」ことしか考えつかない者もいるだろう。

悪い奴を糾弾したい。

糾弾して何かが変わるわけではないが。

悪い奴へ報復したい。

相手に損をさせるだけで自分に得は無いのだが。

悪い奴と認めさせたい。

つまり正しい自分と認めてほしい。

結構、結構。

「それで何かいいことがあるのか？」

等とは言うまい。

「気分がいい、ってことなら鏡を見ろ」

というのは野暮か。

誰かを不幸にしかできない。

そんなモノにも役割はある。

なにもしないことだ。

愚痴をこぼしていてもいい。

同病相哀れむ、と寄り集まってもいい。

なんなら鏡に向かって演説してもいいだろう。

実質的に何もしなければ、何をしていたってかまわない。

それは大きな成果だ。

とても大切な役割だ。

それこそが、理性だ。

皆が認め、称賛を惜しまない。

大切な大切な、彼らにしかできない。

持って産まれた大切な使命。

「邪魔をしない」

大きな成功、成功それ自体より、失敗しないことも大切だ。

誰も幸せにできなくとも、誰かを不幸にしなければいい。

敗北を防ぐことは勝利に匹敵するだろう。

それはみんなのしあわせのために。

最大多数の最大幸福。

それが政治のロジックだよ。

―――――――――――――連立与党第一党幹事長――――――――――――

【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族の左後/お嬢】

わたくしの眼は、ご領主様の眼、の一部。

いえ、わたくし自身が、ご領主様の物ですけれど。

髪先から爪先まで生まれてから死ぬるまで。

そーいうこととはまた別に。

群をもって一つとなし、個々をなして龍となる、青龍。

わたくしも、ご領主様に出会った、喰べられたときからその中。

男の価値は女で決まる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・訳がありません。

たいへんとてもたいへん残念ながら、仕方がありません。

いえ、そんなもので決まるような者を男とは言いませんけれど。

せいぜいが値札くらい、そして大勢は値札しか見えません。

見える物、その程度のもの、体面は、とても大切ですわ。

それを軽んじれば、人を殺されます。

ご領主様の、青龍の騎士様方や使い魔さんの手間が増えます。

一々相手にしていたら、青龍以外すべてを滅ぼすことになりましょう。

殺したいから殺すのではなく、不快だから、邪魔だから殺しているのが青龍。

本末転倒など、ご領主様が望まれるところではありません。

あの娘も悲しみますし。

だからこそ、わたくし、たちが示すのです。

ご領主様の格を、判りやすいように。

わたくし、たちにしかできないこと。

青龍の世界を、ある程度知っている。

わたくしたちの世界を、良く知ってる。

だから判り易く、教えてあげるのですわ。

青龍の方々は、わたくしたちのことなど最初から相手にしていないのだ、と。

良く見て、良く聴き、良く察して、ただ、受け入れていればいいのです、と。

わたくしたちとて、ご領主様の私物として守られているにすぎないのよ、と。

なればこそ、帝国女騎士など、ことさら無視。

見ていません。

気付きません。

嘘ですけれど。

我慢できます。

大きさを極めている女なら、わたくしの敵ではない、と油断していいわけがないのは、わかっております。

大きさでしたら、ねえ様に適うわけがないのですから、お任せしておけばいいのかなと、思わないでもありませんが。

帝国に次の機会を与えれば、必ず、あの娘くらいの娘を用意してくるに決まっていますから、その時が勝負。

それまでは

―――――――――――――――――――――――――――――――――せいぜい楽しむがいいわ。

【国際連合統治軍第１３集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】

俺は挫けない。

美人、いや、美女、いやいや、ではないがそこではなく、帝国女騎士にプラスイメージ、いや、マイナスを付けられなければいい。

十年後の愉しいデートは、今この瞬間から始まるのだ。

美味しい料理ほど、下拵えが大切です。

それはもちろん作業もあるが、構想から始めているといってよい。

すなわち。

美人の親戚縁者にお友達。

一人に嫌われたら最低三十人に嫌われる。

美人の周りは美人。

その法則は経験則。

血がつながってなくても、自然選択が働きます。

言うまでもなく世界は格差で満ちている。

その中で一番重要な要素。

一番普遍的で一番明示的で一番返報的なものはなーんだ？

容姿美醜容貌です。

とりわけ女はそれを気にする。

気に病む、と言った方が正しい。

誰がわざわざ公開処刑、もとい、格差の中に飛び込もうと思うだろうか？

男だと結構利用するんだけどね。

イケメンの周りでコバンザメ。

落ち穂拾いに便乗商法。

意外に簡単です。

顔がいい友達を大切にしましょう。

スタイルや物腰が良ければなお結構。

お金持ちなら最高です。

一点だけ目立つところが秀でてる、でもだいじょうぶ。

スナイパーが標的にとどめを刺さずに放置するように、周りを周回していればそれだけで獲物が

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いえいえ、余談でした。

とにかく！

美人に嫌われていけません。

っていうか、生きていけません。

これど自然選択適者生存。

種の起源にも書いてある？

進化論的にダーウィンもにっこり。

つまり美人一人に嫌われると三十人以上の美人にマイナス・スタート！

マハトマも激怒する。

なお逆もあって美人と上手くいくと、他の美人に好かれます。

美人と仲良くするだけで、他のガードが下がります。

もちろん紹介してもらえるわけがないが仕方ない。

そこは自分で突撃するからお気になさらず。

インターセプトにクロスプレイってカンベンな？

経験則。

チャールズの研究がまたれる。

法則化が出来れば動きやすくなるし、科学の法則なんて誰も気にしやしない。

つまり科学を武器にできるのは俺の様に限られた者。

俺の優位が揺るがないなら、どうなってもいいよね。

まさにピンチはチャンス。

嫌われざる相手。

好かれるべき相手。

嫌われるべき相手。

どうでもいい相手。

貴重な手間と時間は重点配分すべし。

今は昔とは違うんだ。

昨年までは、ざっと２０億人は獲物、もとい口説ける女がいたのに。

地球世界総人口の半分のさらに半分くらいはいける。

口説いて落とせるとは言わない。

そもそも物理的に出会って口説いて付き合うことが不可能だ？

いや、素晴らしい！！！！！！！！！！

出会いきれないほど。

口説ききれないほど。

付き合いきれないほど。

無限に等しいチャンスが溢れていたんだ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・異世界に転移するまでは。

何でもないことが幸せだったと気がつきました。

今は最盛期の１０％くらい？

いや国連軍に隔離された俺の現状では、比較にならない。

しかも軍政任務中は、ゼロに等しい。

女性兵士は元々少数、しかも前線にはほぼ来ないからな。

ましてや子どもたちを巻き込んでしまった、俺の現状。

２４時間目を離せないとなれば、プロフェッショナルに会うのも困難。

いや、アムネスティのプロフェッショナルたちは、面白がって挑発にくるけどね。

商売抜きでからかいに来るあたり、とても気が合うのだが。

そりゃー俺だって、同じ立場なら絶対に行く。

ダイエットしてる相手の前で好きでも無いスイーツを愉しむような。

忙しい最中に有給をとって忙しい最中の職場に遊びに行くような。

特別な味わい。

ごめんなさいやられる方の気持ちを心から思い知りましたごめんなさい。

駐屯地に戻る日が来たら、特別なスイーツを御馳走します。

差し入れも奮発しようじゃないか女以外にも。

限度というモノはあるがそれなりに。

プロフェッショナルに全財産つぎ込むときに備えて、とり置いておかないとね。

生活なんてどーにでもなるんだけどさ。

プロの仕事を買うときは、有り金全部が基本です。

金を払うだけで一緒に過ごせるなら安いもの。

ソレが手に入る距離に居るってのに

――――――――――役割が終わるまでは、子どもたちの目を奇跡的にクリアするまでは、天が我を見放さない

限り、我慢がまんガマン。

任務？

仕事？

義務？

あーそんなものも、ありましたね。チッ！！！！！！！！！！

まあいい。

何回目の、まあいい？

ひとつ、ふたつ、たくさん。

そう！！！！！！！！！！

いずれ異世界の皆さん、に限らないが、とにかく人間らしいお付き合いができる日が来るまでは、万里の道も一気から。

来るかなあ。

来るといいな。

来させてみせる？