太陽と
『野党』:作品世界における連合与党に対抗する単一政党。転移時点の党執行部/主流は党内左派。異世界転移後、リベラル系与党連合と大連立、挙国一致内閣を造る。が、第一回閣議で閣内不一致を理由に、野党閣僚が全員罷免。全く選挙準備の無いまま、衆議院が解散。準備完了している与党との選挙戦に入った。これを「騙し討ち解散」と呼ぶ。野党内では責任をとって左派執行部は総退陣。代わって少数派ながら責任追求の急先鋒である、党内極右派が執行部を掌握。左派右派ともに執行部から距離を置き、選挙戦に突入。極右のみで創られた公約が、支持層の離叛を招いた結果、大敗。改選前議席が与野党で3:1であったものが、4:1へ。左派議員はほぼ落選。極右と右派は議席を残したが、執行部から極右は追放され右派が主導権を握る。現在、野党は対異世界戦争推進に反対ではないためにその点への言及は避ける方針。代わりに与党の統制経済を批判し、自由主義経済で論陣をはっている。
野党党首に関して
覚書
・この人物は日本最後の右翼思想家と言われている
・与党の詐術で野党内左右両派閥が壊滅しなければ総裁の地位に就くことはなかっただろう
・右翼団体の多くがそうであるように台湾系半島系の人脈に強い
・与党幹事長が大陸系(大平洋双方)に強いことと好対照をなしている
・与党幹事長と長い付き合いであり先輩議員として指導した仲ではあるが「大日本帝国など薩長が造った奇形国家であり日本ではない」と言い切り戦争責任についても「現日本の有権者にとって利益不利益以外考慮しない」と言い切っている「革新主義者」とみなしており、相いれない。
老人は懐かしさを感じていた。
日本人。
朝鮮人。
台湾人。
――――――――帝国―――――――――
国号を換えても、それは日本である。
離散してなお、家族であったことに変わりはない。
集うのは一握りの人々。
会合に名前はない。
毎週開かれる。
国際連合軍の主力は日本軍、いや、自衛隊だ。
ただし主戦力と兵站は合衆国軍が担っている。
そして国際連合加盟各国から参集した軍人たち。
大は旅団、小は将官から兵士一人まで。
変わり種では、親善航海にて寄港していたアルゼンチン艦艇やロシア連邦呼称の係争地で活動していたスペツナズ、等々。
まあスペツナズはロシア語で「特殊部隊」を意味する一般名詞なので
「どのスペツナズ?」と問うべきかもしれないが。
国際連合加盟各国は、国際連合軍事制裁活動への積極的な協力を表明しているし、実行している。
それはつまり、各国軍が国連旗を掲げているということ。
部隊を持たない将官は軍事参謀委員会に加わることが多い、が、全てではない。
少人数の士官兵士は複数の関係諸国でまとめて部隊化する、が、全てではない。
もちろん急造部隊や極小部隊は異世界に派遣されない、基本的にだが。
指揮系統を複雑化するだけのコストに見合わない、と一応みなされる故に。
部隊単位で異世界に派遣されているケースは、合衆国を除けば数えるばかり。
一番大きいのはイラン・イスラム共和国。
様々な形で入国していた軍役経験者で、実戦経験者も多い。
旅団規模。
二番目に多いのは、統一中華連邦。
実際の兵士は在日華僑よりも本国からの一時滞在者が多い。
連隊規模。
そして南北朝鮮半島、今も睨み合う朝鮮民主主義人民共和国軍と大韓民国軍。
各大隊規模で、やはり一時滞在者が中心だ。
国際連合軍参加条件は、軍籍に在るか在った者。
あとは特別な技能で指名された者。
日本に産まれ日本で育てば、日本人と変わらない。
兵役など経験していないし、することもない。
戦争には向かないし、特別な訓練を経なければ戦争能力がない。
もちろん国際連合軍から見て、そんな手間をかける価値はない。
すでに世代を超えて日本化している在日居留民を考慮せず、一時滞在者だけで二個大隊が出来たのは奇跡だろう。
だから大陸系二カ国は早々に合併し、部隊規模を拡大した。
異世界で生きるために、より良く生きるために。
白い猫でも黒い猫でも、ネズミをとる猫には居場所がある
――――――――――華僑の常識に従って。
朝鮮半島二ヵ国は、しなかったのかできなかったのか。
北の特殊部隊がイスラム革命防衛隊内ニールーイェ・ゴドスなどとともに、とある三佐に指揮されている。
黄色人種は目立つので、異世界では特殊任務に向かない。
日本列島では目立たないし、その為に造られた部隊だが。
それはまあ、例外だ。
そして例外は老人の「為すべきこと」ではない。
たとえそれを仕切っているのが、旧知の娘であろうと。
老人が為すべき、為している、こと。
仲裁
――――――――――対立を生じさせないこと。
そこは老人の本業に等しい。
争いが起きてから介入するなど、チンピラのやることだ。
争いを生み出すとなれば、チンピラ以下。
争いは防ぐべきもの。
争いは起こすべきもの。
意図なき所に在り得ざるべき、しかして愚者がそれを生む。
だから馬鹿を狩るために三佐の同種が励まねばならぬし、老人のような仲介者が火口を片付ける。
老人は、まずもって仲裁者。
故に国会議員であり政治団体の主催者であり与党党首なのだ。
仲裁。
そこに立場は要らない。
理屈は邪魔だ。
正義などもっての他だ。
頭が悪い奴は、正当性を誇る
――――――――――それが何かを生むかのように。
頭がおかしい奴は、非難する
――――――――――それで誰もが反省するかのように。
頭がない木偶は制裁する
――――――――――それで殺し合う覚悟もなしに。
老人から言わせれば、つまりは「甘ったれたガキ」だ。
それが子供なら躾て教える。
それを大人が行えば、生きる資格以前の話。
馬鹿のくせに、産まれた挙げ句、呼吸するのが図々しい。
ましてや群れるし声がデカイ。
正しさは対立を生む。
非難は反発を起こす。
制裁が報復合戦に至。
老人はそんなバカげたことをしないし考えない。
当事者だけを会わせはしない。
頭を下げるのは仲介役。
事実など求めない。
もとめるべきは了解だ。
ましてや公になどと考えもしない。
知見の無い馬鹿がたかってくるだけだ。
仲介役が各々と話し、同席した皆の耳に入れる。
聴いてないとは言えないが、聞いただろうとも言わせない。
人が人であろうとすれば、もめ事は当たり前なのだ。
行き違いだけではない。
悪意がない人間などいない。
それを認めて、認めない。
同士撃ち?
怯懦?
無知蒙昧?
たかだか銃口を向けたから、それがなんだというのか。
糺そうとして双方誰もが不幸になる。
――――――――――馬鹿はそうする。
道理と正義は、誰かを幸せにするために在るのでは、無い。
馬鹿は無能故に自らの頭の代わりに、他人の理屈に取り縋る。
多少なりとも理解すらできぬは、馬鹿故に形を模倣して。
だから老人が防ぐ。
馬鹿に世界を壊されぬように。
国際連合軍に参加する各国軍。
様々な文化、様々な練度、様々な状況。
老人の担当が旧帝国諸国。
各々、そして自衛隊との軋轢を、表にに出さずに消去する。
それが会合だ。
いつ以来だろうか?
祖父は陸軍士官学校の教官。
中野にあるとされた特別な学校、その生徒が父だ。
それはつまり、帝国各地の士官が家に集まったということ。
夕餉に響く様々な言葉。
妻子と共に来訪する向きも多く、老はなくとも若男女がそろう。
共通点は赤子たる自負。
子供だった彼を支えてくれた、規範とすべき大人たち。
そして今。
8月15日を経て、その懐旧を表すことは、無い。
出来ない。
老人が帝国の罪業を、深く理解し背負うが故に。
我々の仕打ちを経てなお、彼らは変わらなかった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・赦されなくとも。
父が台湾で戦ったのは、祖父の生徒である総統の招請だった。
例え袂を割つとも、敬意は変わらない。
だからこそ、老人は規範とならなければならない。
我らの父が育てた。
彼らの父に育てられた。
そんな自分が恥をさらせない。
それはすべてを侮辱することだ。
――――――――――保守主義者―――――――――
すべてが老人にとってあたりまえのこと。
――――――――――日本人が背負うべき歴史――――――――――
善くもあり悪くもある。
誇るべき恥じるべき。
悠久の過去から未来まで。
大日本帝国という、恥ずべき過去。
売国記念日
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8月15日。
※第228話<この日、なんの日、恥辱の日> より
ともに死すると誓った同朋を!
朝鮮系臣民と台湾系臣民を!!
敵に売り渡した罪過を!!!
「では、始めよう」
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】
異世界人は服を着ていないと言ったな?
嘘です。
俺の周りの異世界人は服を着ています。
極々々少数派で人口の一割未満ですが。
概ね都市に住んでいる富裕層か権力者。
服というのは、都市部と上流階級の中だけで循環している高級品。
残りの人たちは、いわゆる服は着ていない。
真っ裸じゃないけどね。
いや、布を巻きつけたら服、というなら別ですが。
いわゆる、ってのはつまり人型に裁断して縫製して着ることを目的にしている布。
それは持っていないのが常識、ってこと。
気候と季節によっては肌を晒せないわけで。
すると布の出番であるわけで。
ただし布は服のためにある訳じゃない。
まずもって、布は資材。
そもそも布自体が貴重な産業製品だし。
家屋建物の床壁天井に仕込む断熱材だったり。
穀物一粒々を扱う精密作業スペースの気密性保持材だったり。
小さな主要生命線である穀物を輸送保管する際の消耗を防ぐとかとかとか。
人間がまとう布は、よくて資材の切れっぱし。
普通は切れっぱしのお古のお古。
新陳代謝を繰り返し、新旧見分けが付くはずもなく。
え?
身体に合わせた裁断なんかしませんよ。
減るじゃないですか。
在る人間のサイズに合せて切るってことは、 それ以外に使えなくなるか使いにくくなります。
布という密閉素材。
服という廃棄物
・・・・・・・・・・・・・・・たきつけにはなるか。
貴重品をゴミに変える事が許されるのは御大尽だけ。
お札に火をつけるような行為。
布キレっていうのは必要な作業用に切りだした残りのこと。
小麦や豆など基盤資源の袋を造るために裁断したり。
穀物を扱う密閉作業スペースに合わせて裁断したり。
資材を購入売却するときに値に合わせて裁断したり。
あ、もういいですか。
そんな布の切れ端やお古やなんかを、身体に巻いて縛って、隙間に詰め込みます。
必要最小限を、ね。
縫う?
針なんて金属貴重品、有り得ない。
糸なんて他に用途がない贅沢品、有り得ない。
そもそも、なんで必要なのかって話。
人が、纏ってないけど体に巻いてる、外部環境の寒さや埃や風雨から身を護るために使う、布きれの塊。
服は無いけど真っ裸じゃないというのはこういうこと。
遊牧民のような全生活がほとんど野外って種族はまた、違うのだけれど。
定住農耕民の方が人口が多いのは、資源を節約できたからでもあるのだろう。
これ、服ですかね?
もちろん半裸全裸がデフォな地域が大半だけどね。
人間は温暖な地域に集まる性質があるので、他の動物みたいに。
そうなると服みたいな布玉は、気候が悪い時だけ使う特殊装備扱いだったりします。
北国の太守領、俺の任地ですら夏になると半裸が一般的だとか。
まだ春しか経験してないけれど。
もちろん老若男女問いません。
農村では作業時以外に服、みたいな布玉は着ないそうで。
森はもちろん、畑も、人の肌だけだとキツイときがあるからね。
たいてい股間や乳房は覆うそうで。
何処まで覆うかは人次第。
お肌は人それぞれというわけなので、合理的。
まあ昼間はずっと作業しているわけですが。
月月火水木金金。
夕方から翌朝まで、作業ができない16時間くらいはほとんど全裸。
月月火水木金金。
太陽任せの強制8時間労働。
現代日本で誰もが忘れてる労働基準法よりつよーい。
暖流の影響でそれほど寒くはならない北国、俺の任地の太守領。
緯度が高いので平均日照量は少ないので暗い時間が多い。
白夜極夜が起るほどではないが。
労働時間が減るってもんだ。
労働時間以外はもちろん、布はしまっておく。
常につけたら汚れるし痛むしろくなことが無い。
夏はそれでいい。
春秋はガマン。
冬は?
そもそも目張りされた屋内で、みんな人肌で温め合う。
屋外作業他、外に行くときに布を巻き付ける。
多くの布は体じゃなくて家屋の断熱材や密閉材なので。
布が体に巻いてある。
貫頭衣ですらない。
これ、服ですかね?




