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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十一章「夏への扉」

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433/1003

目/Insight .

【用語】


『極東国際軍事裁判』


:国際司法裁判所が統括する国際連合の法廷。管轄は国際連合活動に置ける戦争犯罪。例えば国際連合軍に出向したのに任地に出頭しない日本の国家公務員は、人道に対する罪。例えば日本が国際連合活動に提供すると決めた資料を提供しない日本の国家公務員は、平和に対する罪。平和か人道の二種類の罪があり、一つの刑罰がある。もちろん極東国際軍事裁判は日本の国内法、既存の国際条約や慣例を超越する。それは前例通りで、国際法の一般原則である「戦争犯罪者は該当者の所属国で裁き処罰する」国際司法裁判所の原則である「判決実行は被告の所属国の手でこれを行う」には相反するが、なにもおかしなところはない。それは果たして「特別法は一般法に優越する」のか「原則に反する法は効力を持たない」のか。どちらにせよ日本国最高裁判所は、半世紀以上前に極東国際軍事裁判の正当性を認めているのだ。自分たちが無視されても当然ではないか。




しかし国際連合は民主的組織なので、他人が裁かれるのはいいが自分はイヤだ、という意見も拒絶しない。


特定個人や日本の裁判所や官庁警察他公的組織からの抗議や苦情、意見、令状召喚状に仮処分命令に確定判決などなどは国際連合本部に輸送中。間違えて異世界の日本列島にある国際連合事務局に届いても、キチンと転送。つまり地球のニューヨーク行きのすべての郵送物は、東京国際郵便局で大切に保管されている。異世界間輸送が可能になるまで待ったりしない。すぐにでも発信予定である。異世界間通信が完成したら。




草木も残らず苔も無い。

人工物ばかりで生きる気配が無い。

営みそのものでありながら当事者が無い。


魔法。

道具。

人力。


風雨。

微生物。

獣。


年月を重ねながらも洗い清められたばかり。

古の都市の、真新しい廃虚。


海は暖流。

春の陽光。

北の風。


湿度の高い空気は踏み固められた大地を湿す。

海風は表土を削らずに石と煉瓦を乾かす。

循環がもたらす自然の保管庫。



それよりなにより、人がいない。

壊し傷つけ痛めない。



壊して痛めて殺すのは、いつだって人間だ。








【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】


そーいえば。


俺の手が届く範囲では、みんな髪に気を使ってるよな。

そのあたりは日本とあまり変わらない。


これがどれほど異常か。

ご理解たまわることが出来れば幸いだ。



現代先進国と中世準拠の異世界で、あまり変わらない?


なんだそれは誰だそれは、ってもんである。

シスターズ&Colorfulのことではあるが。


女の子はそんなもんではあるが。

男にも男の子にもわからん世界。


髪形を変えられると識別できなくなることがあるのでやめていただきたい。


女や女の子の髪型。

その変化に気がつかなくてがっかりされる。


俺にはないね!


誰だか気がつかずにナンパして、最後まで押し通したことはあります。

女は解剖学的に個体差が少ないから仕方がないと納得してもらえまい。

お互いの活動圏が被るとどうしても同じ相手に出会うこともあるよね。


バレなくてよかった。

アドリブには自信があります。


それはさておき、子どもたちの髪型の話。

さらさら、ふわふわ、つやつや、誰の髪かわかる?


もともとの髪質も恵まれてるんだが手間暇をかけてるのも確か。

お風呂に入れる時も、髪を洗うのは俺がしないようにしている。

大中小そろって互いに洗って、あえて自分では洗わないようだ。


俺が子どもをあらう場合、身体ならワシャワシャ洗えば済むけどね。


いやもちろん、肌も傷めないようにしてますよ?

素手で丁寧に洗ってるし、俺は爪も短いしね。

だが、髪が痛んだ場合の対処が判らない。


餅は餅屋っていうけどさ。

髪が女の命なら、女の子にとっては未来。

そりゃー、丁寧に細かくしっかり整えるってわけだ。


子どもたちはともかく。


新たに手の届く範囲に入ってきた女。

うちの子たちに比肩するくらい、素質を努力で磨き上げている。


帝国女騎士。

彼女はうちのシスターズ&Colorfulと同じように、髪にこだわっている。


それ自体が凄い。


散髪は富の証である中世世界で、毛先を整え調髪している。

刃物自体が貴重品で、照明の乏しさゆえに昼間がもっと貴重品。

定期的に時間を割いて、高価な用具を揃え、専門職を手配し続ける。


一日12時間の世界ですよ?


冬はもっと短いか。

夏はもっと長いけど。


地軸が公転角度に対して傾いているので、緯度と経度にもよる。


そんな世界。

地球と同じ。


同じ髪形を保つこと。


金が無いと無理。

時間が無いと無理。

興味と意欲が無いと無理。


丸坊主って、すっごい贅沢です?


天然ではない人工坊主ならわかるはずだ。

剃り込み続けるより髪を整髪料で整える方が楽。

そもそも一人で出来るんかアレ。


経験者に語ってもらいたい。

そんな異世界髪形事情。


それゆえに、異世界の騎士兵士は男女とも長髪基本。

刃物は溢れているけれど、時間が無いお仕事ですから。

兵は肩口くらいでぶった切り、目にかからないようにする。


騎士はむしろ伸ばして整える様子。


バリカンなんかねーんだよ。

綺麗に頭をそり続ける暇なんかねーんだよ。

中世の剣はカミソリみたいに切れ味も良くねーんだよ。



日本刀というオーパーツは異世界には存在しない、たぶん。


ドワーフは、創って見せたけどね。

元カノ臣下の、ハイホードワーフ。

自衛隊非装備の日本刀が何故ある。


基本がステゴロな元カノの私物なわけはない。


マジもんの刀じゃないと、ドワーフの特異能力でも再現できんだろう。

マジもんってことは現実に多用されていた相応の時代の現役製品。

マジもんの美術品だよね現代じゃへたすりゃ博物館クラスの。


そんなもんを異世界に持ち込んでるのか。


三佐経由でどこかの博物館から流出した美術品?

黒旗団副長(インドネシア産)が持ち込んだ私物の軍刀?

UNDP(国際連合開発計画)の技術援助試験の一環?


どれがそれでもきっとあとで問題にならないように処置

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見なかったことにしよう。




【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族の左後/お嬢】


わたくしは、ことさら気を付けます。


良く見て、良く聴き、良く思え。

ご領主様の、女に向けた御命令。


感じたことを言え。

想ったことを言え。

望んだことを言え。


お任せください。

なにも見逃さない、ご領主様。

わたくしのことも、見ていらっしゃる。


はい。


お察しの通り。

わたくし、わたくしの欲に従っております。


眼に映るのは、ご領主様の寵を欲しがる、良くできた女。


ここまで見事に造り上げたこと。

さすがと申せましょうか。


帝国一つが取り掛かれば、ご領主様の関心を惹いたることも納得ですわ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・怖ろしい。


刻があれば、小さな娘を用意するくらい、やってのけましょう。


もちろん、わたくしへの寵愛が、薄れることすらあり得ませんけれど。

ぜったい、ぜったい、ぜったい、ぜったい、離されたり離れたり致しませんけれど。


女が増えれば、相応の刻が失われます。

それは命を削られること。


許されざること、これにまさることなし!





【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】


俺が想像したことすらない技術移転活動は、この場合に関係が無い。

帝国へ技術が伝播しないように、気を使っているからな。

たぶん成功していると思うが失敗してたら、この場合は俺が死ぬから。


ことほど左様に中世において調髪散髪は特権階級の示威行動だったりするのです。


帝国軍の騎士兵士は、それだけで特権階級なんだけどね。

実用的な理由であっても、それが実行できる余裕があるのだから。

帝国の騎竜民族、それを指導する魔法使いが綺麗好き、ってのもあるだろうが。


散髪の時間より、身体を洗うついでに洗髪の便宜がはかられている帝国騎士。


偉い人ほど待遇が良くなるのは、組織の常道。

自衛隊を含めて、軍隊組織で当たり前の階級原則。

組織階級が未分化な中世の方が曖昧だが、帝国軍は例外。


彼や彼女たちは髪を使って遊んでいるらしい。


目の前、帝国女騎士が色合いの違う髪を結い分けているように。

綺麗に焼け分けてるからには敢えて選んで晒してるのだろう。

目の前に居る美人さんなど、髪がメッシュに分けてある。


うーむ。


出撃前に装具を騎士同士で確認する習わしらしいが。

髪を、選んで束ねて丁寧に兜からはみ出すようにしているのかな。

鏡をみたり、従卒に確認させたりして、日々色合いをチェックして。


なんか、可愛い光景だな、おい。


そうかんがえると、見方が変ってくる。

まさに珠玉の珠に、瑕一つ。

美人で隙がある、って最高かよ。




その最高が、俺の目の前に。

むかしむかーし、地球は南欧で、日よけを工夫して髪だけを陽にやいたそうな。

シャンプーハット的なものを想像すればいい。

地中海のカラッとした日差しを髪に浴びせ、肢体は隠して日々を過ごす。


陽当たりがいいマッシュルーム栽培場?


すると天然の金髪よりも柔らかな、天然金髪に羨ましがられるような、そんな風な色合いができたとか。

その光景を想像するに、謎のオブジェ?か儀式?みたいか、でも怖くないどころか微笑(ほほえ)ましい気がする。

大変に可愛らしいというか、可憐しい(いじらしい)というか、個人的には是非に見てみたいが、男には見せたくないんだろうな。


異世界転移ではなく、時空転移だったらよかったのに。

タイムパラドックスへの配慮から、国会もムチャを言わなかっただろう。

それなら平和的に収まったかもしれず、自衛隊が暇なら俺も暇だったのに。


現代日本なら見えるのだが。


電車の中で化粧とか。

嫌うヤツもいるが、俺は違う。

公然化粧は大好きです。


標的の手の内がわかる、ってのは大きい。


何処に力を入れているか?

何処に自信があるのか?

何処を隠したいのか?


プロフェッショナルじゃや無けりゃ、個々人の意識が丸判りだ。


プロだと定型化された手順に従うからね。

自分自身の好き嫌いより、一般に向けた普遍的な段取り。

人一人を口説くときに必要なのは、そこじゃない。


Before Afterをチェックすれば、ポイントが判明。


其処に注目。

其処を無視しない。

其処こそ褒める。


見栄えのために一生懸命に努力する女は大好きです。


そーいう意味で言えば異世界、上流階級の方々はセミプロだ。

訓練と経験を積んだ専門職を雇い、互いの姿を引き比べて切磋琢磨。

其処に必ず我の強さや個人の美意識がにじみ出ているのが見て取れる。


現代社会と違って、情報の共有が不完全だから。


太守領盗賊ギルドの頭目は、大きな胸より脚に自信を持っていた。

エルフっ娘は筋肉美最強から、迷いを見せて右往左往ってところ。

ならばこの目の前に居る、自信と自慢と性的魅力全振りの美人は。


帝国女騎士のブロンドメッシュ。


兜から溢れた髪が、自然に陽焼けしたのかな。

他の全身は鎧の中だからね。

野外を征くうちに、自然と髪の一部だけが焼けたのだろう。


こちらで騎士がマッシュルーム栽培場、そんな長閑なんだか苦行なんだか男の知らない世界、それに挑戦しているとは思えない。

ということは朝、天気つまりは陽光を確認してから、おもむろに髪を小分けしておさげにまとめ、兜や頭巾の隙間から出しておき、野営の最中に焼け具合確かめるとかそういうことですか。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・可愛い。



((((((((!))))))))



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