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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十一章「夏への扉」

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432/1003

眼/InSight .

【用語】


『偵察』:「偵察に要した時間は他の時間と違い裏切られることが無い」などというくらい、軍事作戦の基本。基本が無視されたりするのもお約束。フィクションはおろかリアルでも、なぜか成し遂げられる事例多数。実話でそれをやらかされると、後で記録を読んだ方が頭を抱える。「僕の考えた最弱の当て馬」が現実史実には存在してるっていう、ね。事実は小説より奇なり、違いといえば「リアルではそのまま大失敗して、フィクションではそのまま成功してしまう」ところだろうか。


現実は非情である。


その現実。

偵察の目的は敵を見付けることはではなく、現況を確認するために行われる。結果として敵を見付けられればそれも良し、見つからなければそれも良し。「ないとわかることが科学に第一歩」くらいにどちらも全く等価であり、作戦可能範囲の地形気象地象情報が蓄積更新されていくのが戦果。敵の偵察はまずもって潰すべき最優先目標であり、味方の偵察は何を置いても護るべきものとなる。敵を見付けるよりも敵に見付からないことこそが肝要であり、見付けられればその相手を生かして帰してはならない。そのために偵察戦力には高い戦闘力、高い回避力、どちらかもしくは両方が求められる。回避力を極めたのが偵察衛星であろうし、戦闘力を極めれば威力偵察作戦となる。万能/汎用兵器が100%失敗することを継続する軍事史の中で、偵察もまずもって回避力優先となるのが常道。「こちらが気付いている」ということを相手に悟られたら効果が半減以下となるからだ。結果として偵察衛星全盛期をむかえた20世紀、その欠陥が次々と露呈。約束された失敗プランであるスターウォーズ計画による衛星攻撃ではなく、それは単なる解析能力の限界による。いつものようにいつもの如く「地上のベンチに放置された新聞の文字を読める」などということはなく、悪天候に弱く夜にも弱い。光を始めとしたさまざまな輻射放射線の波長を読み取っているのだから、仕方がない。エネルギー保存則がある限り、特段指向性も無いのに距離を置けば拡散され弱くなる。それを解析して読み取るとなればほとんど連想ゲーム。精度が落ちるなんてものじゃない、無い方がマシなくらいである。紛争多発でホットラインを使った相互理解が不可能になった冷戦後、長距離偵察コマンドと高高度偵察機への回帰が進んでいる。SR-71の復帰計画もあったが途中でぽしゃってしまい、SR-72を造ることにしたようだ。


え?

ドローン?

回避力がラジコン程度、いや、そもそも呼び名を変えたラジコンだから当たり前だけれど、攻撃力は皆無に等しく小型だから仕方がないけれど、低いは遅いわ煩いわで「ミツケタ!ミツケタ!」と相手のために警報を鳴らしているようなジョークグッズで戦争しようとしている面白い人たちはホワイトハウスの中にしかいない。

いや、心のホワイトハウスを頼まれないうちに建設している人も少なくありませんけどね?




異世界大陸東海岸を中心として、触手を広げていく情報化構造。


東の大洋に日本列島を越えた外洋調査船、という名の漁船団。

西に飛来するのは航続距離5400kmを誇るSR-71(超音速)Blackbird(高々度偵察機)

北の雪原を進む合衆国海兵隊(Force)武装偵察部隊(Recon) 第5武装偵察中隊。

南はドワーフの地下迷宮都市内ヒステリーまで。


無機物の中を走る電子で。

有機物中を走る電気で。


有機質の上を走る有機質で。

様々な波長の波動で。


解析され記録され伝達され多元化され概念へと置き換えられ物理が溶解していく。



その一部。

三千m上空からの観察者。

哨戒気球。



数百m下層には三機の偵察ユニットがエンドレスエイト。

八の字飛行で周回中。


飛行コースは、もちろん英数字。

8の交点を標的に置き、タイミングをずらして行き過ぎる。


近付くときは滑空。

遠ざかる時に飛行。


最低高度が交点で最高高度が頂点だ。


動力のノイズ、駆動音と振動、が情報をゆがめないように。

位置エネルギーを滑空動作に変換するために。



このパターンに慣れたのか、常に交点直下エルフっ娘。


滑空音に、敢えて目を向けないようにしていた。

今となっては耳を向けなくても聴き分ける。


彼女がいる場所。


魔法翻訳が「神殿」と変換した地域。

その門の前。


彼女に向き合う別な彼女。

彼女だらけで紛らわしいが、一群の彼女たちに向き合う彼女。


帝国女騎士。


一人で八人の女たちに対峙する。

その周りの男たち。


中心に居る一人を除いて十二人。

ランドクルーザー三台を半円状に停車。


前後の荷台と運転席。

一名づつ。

銃手と運転手。


中央車両は全員降車。

車体を背に半円の中心へ。


車列を壁に三人と三人。

内に向く兵士と外に向く兵士。


五つの銃口が帝国女騎士に向く。


とりわけ荷台のM-2、その砲口。

射角を浅く取り、廃墟の石片や12.7x99mm弾の破片が前に戻らぬように工夫。

撃ち慣れた選抜射手ならでは。


マークスマンとも呼ばれる彼ら。

芝、佐藤。

文字通り指標となり、佐藤が撃てば三人が、芝が撃てば三人が。

その方向を撃つ。


マークスマンは下士官以上の命令が無い限り、独自に判断できる。

しなければいけないわけではないし、指示を求めるのも判断の内。


運転席の一人と一人は、銃口を向けるだけ。

三人が弾倉を換え始めるまでは、観察する。

曹長が命じるまでは、撃たない、撃てない。




と、巧く行けばそうなる、といいな。


佐藤と芝までは、うまく機能している。

そこから下は、全面戦闘にならない限り機能しない機能。


そうなったとき。

さて、どうか。


例えば、目と鼻の先。


美しく装い。

華やかに微笑む。


兵器を持ちながら、それを構えない女。


ソレを撃つときに、ズレが生じないかどうか。

ソレは平均値を越えるものではないかどうか。

ソレが部隊の、作戦能力の範囲なのかどうか。



高みの先に在る、地球人類がみている。






【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】


背後に惹かれる、いや、曳かれるモノを感じる。

俺の裾を掴むのは、ちびっこ二人。

右後方にプラスワン。


エルフっ娘。


プラスというか、今そんな感じなだけで、もともと三人で一セットですけどね。

一人だけ年上、というか実年齢の話じゃなくて、その見た目が、十歳前後の二人と十代後半の一人。


立ち位置も保護者な一人と被保護者な二人。


二人、130cm未満、との身長差が生きたね。

二人は俺にゼロ距離、一人はその30cmくらい後方が定位置。

腕を力いっぱい不自然に伸ばす必要など全くない。


普段は、ちびっ子だけが裾を掴んでいるのだが。


子どもをロープでつなぐ趣味は無いんですよ。

それやるとガチで奴隷商人にしか見えないし。

日本で稀に見る光景ですけどすごく怖いです。


相手がおん、いえ、ナンデモアリマセン。


手を曳いてあげられればいいんだけどね。

うちの部隊だと、俺が唯一の予備兵力。

手は空けてないといかんのだよ。


俺は、とっさに動ける肉の盾だからな。


俺が初撃を防げれば、あとは部隊が、いや国連軍が何とかする。

エルフっ子という防御も攻撃もこなせる切り札もいるし。

切り札は最後まで斬らないから切り札なのだが。


んで。


どーしたエルフっ子

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・可愛さが十倍増し?


恥ずかしそうに俺の制服、その裾をつまんでいやがりますよこのエルフっ子は。


ちなみに、ちびっ子二人はギュっと掴んでいます。

其れはそれで必死カワイイんだけどね。

こんな愉しみ方があろうとは。


うん。


クールビューティー系10日に一度はドジっ子カワイイかと思っていたら。

頼りになるオカン系戦闘もこなせるパワー型子供たち最後の砦のはず。

泣き顔カワイイ(今朝)涙目カワイイ(さっき)からさらに進化。


エルフって成長止まるんじゃないのか?


ものすごく赤面、普段でなら耳だけなのにうなじまでフル、してるんですけれど。

抓んでいる指が震えているのは無理してるっていうより力が入り過ぎてるんだな。

子どもの伸びしろは半端ないっていうか、体が大人で心は子どもって王道の逆だ。


まだ成長余地を残しているとは、怖ろしい娘!


おもわず録画しておいて、エルフっ子の結婚式でアテレコ入れて上映したい。

引き出物に観賞用保存用配布用として三セットコンプリートボックスつけよう。

子どもが出来たらお母さんから学ぶ正しいポンコツ、いや、デレ顔として胎教に。


エルフっ子本人が断固拒否するだろうが無理強いする自信があります。


カワイイ娘には無理させよ。

俺は無理しないけど。

我慢と辛抱、耐久力(ポテンシャル)の限度を極めさせたい。

俺は極めないけど。

別に本人のためでもないので俺の為。

俺は俺の味方です。


嫌われなければなにしてもいいよね!




【聖都/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族の左後/お嬢】


わたくし、ご領主様の背に巧く隠れていますでしょうか。

肢体の小さきことには、二番目の利点がありますわ。


頭上を通過する、ねえ様の腕は気にしないことといたします、今は。


一番目は、ご領主様が小さい肢体を好まれること。

わたくしのような肢体を、とてもとてもとても嗜まれること。


心根であれ、肢体であれ、振る舞いであれ、わたくしであれ。

愛する方に好まれる以外に、重んじるべきことなどありませんけれど。


そんな素晴らしい幸運を得てなお、二物も三物も生み出せます。


ご領主様の側。

わたくし、たちの、生涯あるべき場所。

そう在るように努める処。


誰もが、価値ある方を注視して、付属する処は見ても見えぬもの。

ご領主様の飾りたる、この身、その置き場。


わたくしがことさら気を付けずとも、わたくしの目には誰も気がつきません。


これほど眼を開ける場所があるでしょうか?




【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/中央/大神宮正面前/青龍の貴族】


やばい。

俺の網膜に映るソレ。

高々度哨戒気球の高感度カメラによる動体解析データ。


五つの特異点、規準外行動を始めた動体。

単なるColorfulのことだけどね。


俺の背後、1m圏内ににじり寄りつつ、等距離でありながら各人の微妙な体格差と微細な動態範囲を調整しつつ、パーソナルスペースを模索中。

長い長いなが~~~~~~~~~~~~~~~~~い裾を子供に持たせるのが許されるのは誰かの花嫁だけだと思うんだよ俺は。

このままだとシスターズ&Colorfulを物理的にぶら下げて移動する、謎の俺が完成してしまうので花だろうか。


索敵システムが注意喚起してきたのも納得です。


今はまだ目立たないが、俺の周りを囲んでいる幼女童女少女保護部隊。

女性自衛官有志連合が、名前の通りに志を戦闘活動に置換えてしまう。

その場合、ロリ支援成らず者愛好家として極東軍事裁判送致前処刑だ。


だからと言って手を振り切ることは人としてやってはいけないことなのであるわけで。


いやいや。

いやいやいや。

いやいやいやいや。


動くべきではない。

不審な動きをすれば、注意を招く。


そもそもシスターズ&Colorfulがそわそわしているなんて、日常ではないか。

十代までの子ども、特に女の子はこんなもんです。


男の子だと大人を引っ張りに来るけどな。

財布とかサンドバックとか師匠とかいろんな役割を兼ねて。


つーか、おとなしく静止した子どもって怖いよね。


児童虐待を疑います。

だからこのまま。


けっしてエルフっ娘を堪能していたいからとかそういうことではあまり無い。

この娘たちを護るためには手段を選んではいられないだけだと言い切れる。


俺がザクロみたいに弾けたらトラウマだよね。


7.62mmNATO弾の射出孔ってかなりエグイです。

人体を一生懸命くぎ抜きで抉り

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やめよう。


そんなもんみせられるか!


自然に。

ごく自然に。

関心を逸らさないと。



さりげなく

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





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