アフターパレード1984/AfterParade with Orwell
銃声。
それは轟音と言っていい。
もちろん、22口径や弱装弾なら騒音くらい。
だいぶキツメだが。
軍用小銃、しかも7.62mmを使うM-14とくれば、耳に悪い、どころじゃない。
難聴不可避。
一時的か、慢性か、はともかく。
銃声はおろか爆発音に縁がない異世界の住民。
形がない何かに殴られたようなもの。
身を縮め、跳び上がり、耳を抑え、静止した。誰も彼も逃げる伏せるなど以前の問題。腰をぬかし、姿勢を崩し、地べたに座り込む者もいた。
そんな最中、皆が皆、同じ動作をした。
皆が音の方を見た。
皆が呆然とした。
皆にゆっくりと広がる思い。
「これぞウィンナーコーヒー!ずぅえんぶ現地素材で造った皆さん専用の逸品!99%のクリームと1%の優しさ!いやーアレルギーがない娘ばかりでよかったわ~~~」
「「「「「きゃー」」」」」
笑いさざめく、制服少女たち。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・皆、唖然とした。
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間/青龍の貴族の右背】
あたしは慌てなかった。
青龍の騎士たちのように使い魔の助けを借りなくても、遥か先のもめ事は聴こえていたからね。
火事場、ではないけれど、火事場泥棒的な略奪者と、住民やギルド愚連隊の追いかけっこ。
昨日の夜からあさってたんだろうけど、引き際を間違えたわね。
盗賊ギルドの愚連隊は治安維持、なんて考えてない。
残敵掃討のつもり。
被害者の住民以上に殺す気満々。ちょっと変なくらい。
追いかけられ、街道に飛び出した連中が、まっすぐこちらに向かって来た。
え!
何でこっちに来るの?集団自殺流行?
っと思い、思い直した。
そりゃそうね。
あたし達は街の北、北門近くの奴隷市場から南の港へ。
奴らは街の外に逃げなければ死刑だから北門南の住宅街から北へ。
出くわして当たり前。
あえて青龍一行に近付くなんて、自殺以前だけど。
連中から見れば別なモノが見える。
前は?
十数人の徒歩姿。お洒落して散歩気分で散策中。手にはお菓子と棒っきれ(竜殺しなんて知らないでしょう)。
後ろ。
血走った目つきの市民や荒事に慣れきっだ盗賊ギルド愚連隊。
夜盗の同類や疑わしい人影、路上にいる全員を、昨日から殺しまくっていた、血染めの武器を構えた集団。
凄い気合の入れようで、我先に追ってくる。
しかも前にいる、あたしたちが何に見える?
常識で言えば、権力者は歩かない。馬車か騎馬に乗る。
常識で言えば、領主は外を十数人で移動しない。最低で百人以上。
常識で言えば、軍隊は整列し行進する。
あたしたちは非常識な遊び人くらいに見えるかな。
だから、常識で言えば、青龍を初めてみる略奪者たちは、まっすぐに向かってくる。
御しやすい、突っ切ってもいいし、人質にしてもいいカモの群れにめがけて。
お気の毒さま。
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間】
俺が首を傾げていると、先頭の曹長が手を動かし、両脇から佐藤と柴が前進。
おお!今日、一回目の『しまった』だ!
チラ見。
背後に回したシスターズの小さい二人+1は安心しきった表情。頭目の子だけが、前を見ようとして二人に押さえられた。
エルフっ子とお母さん(頭目)は腕を組んで左右一歩後ろ。
お手並み拝見、な、感じか。
ドワーフ達が左右後方を護っているから、問題なし。ちょっとマジ顔?ああ、陽動を警戒してるのか。
俺たちは歩調を変えない。
Colorfulに気がつかれたら意味がない。
三尉が上手く気を惹いてる。
神父がハシャぐ。
元カノが頷く。
佐藤が構え、曹長が俺を見た。
「て」
あ、撃、が抜けた。
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間/青龍の貴族の右】
あたしは銃声に身を竦ませた、のを、隠せたかな。
青龍の戦場を見に行って、何度も死にかけた。あの威力を見せつけられた。
青龍の騎士が今使うソレよりも恐ろしい、文字通りに竜が殺された所を見た。
青龍の女将軍は力を抜いて見物気分。
さっき、あたしたちと睨み合っていたときの方が緊張、いえ、必死だったのに。
頭目は、目を丸くしている。
聞いてはいたけど、見るのは初めてね。
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間】
俺は背中のざわめきに一安心。
背中の暖かさに大変不安。
前に出ない、前に出ない。こっから先は大人の仕事。
ざわめきはColorful(ハーフエルフのお手伝いに神父が命名、悪くない)の賑やかさ。
それを聴くと、うまく隔離できたとわかる。
あの子たちのイヤフォンは完全に耳を覆う形。
まあ、坊さんいわく、
『耳介(いわゆる耳、エルフで言えば尖ったところ)は関係なく、外耳道(耳の穴)に端子を差し込む形をとりマイクのみ骨伝導にしている為に防音性にすぐれ』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかった。
詳しいな、坊さん。
本職の東久留米市市役所係長って電子工学系?
ともあれ、つまり。
耳の穴付近がきっちりふさがれ騒音を防ぎ、スピーカーが音を伝える。
音源は部隊通信系、指示した通り外部マイクは切ってある、今は。
声帯の振動を感知したマイクが電波で話しかけた相手に声を送る。
相手は2m圏内の同通信系と、ベレーの目視同調カメラ、及び音声振動認識で選択。
まあ、10m先の俺に向き『隊長』と言えば声帯の振動をマイクが拾い上げ、カメラの映像とIFF信号が照合され俺にコールが届く。
映像認識は、姿形より階級章が中心らしい。背後からでも肩章を識別って、すごいね?
IFFは位置暴露装置と言われてOFFがデフォだ。
まあ、正規戦よりゲリラ狩りが増える世相(転移前)を映して、カットされなくて良かった良かった。
という構造。
全力砲爆撃の弾着地点で静謐を楽しみ、お隣から離れた場所まで通信範囲で会話可能。
効力範囲に居なければ。
外部マイクとフィルタリングソフトを組み合わせ、同じ状況で背後に忍び寄る足音を聞き分けるのも夢ではない!
って機能。
う~ん、凄い。
後半は、まだ出来てません、ってはっきり言おうか。
ともあれ、今は十分だ。
珍客排除の効果音がColorfulに聴こえなきゃ、な。
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間/青龍の貴族の左背】
わたくしは、ご領主様の左手にとりすがっていました。
轟音が、なにか現実ではないような?
すぐに終わりましたわね。
あの娘が顔を出しそうになり、ご領主様に抑えられます。
一時より、あの娘も腰が据わりました。
この程度の些事が、ご領主様の手を煩わす訳もない。わかっていますから、落ち着いています。
まあ、役目柄、何が起きたのか、気にするのは良いけれど。
後で、ね。
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間/青龍の貴族の右】
あたしが見る間に、矢すら届かない彼方で、略奪者は骸になった。
またたくまに。
鋼の飛礫に腹と胸、他を抉られて。
青龍の騎士二人に騎士長。
騎士長は前方全体を観察。騎士の一人は後備えで銃を構えすらせず、どちらにも向けられるように待機。
残る一人が十一の的に向かう。
一人目。腹を抜かれ首が千切れる。
二人目。顔を砕かれ腰が抜かれた。
三人目。左右の胸を抜かれ仰向けにひっくり返る。
四人目。腹を抜かれ脚が砕かれ突っ伏す。
五人目。二人目を貫いた飛礫に脚を砕かれ、刀を投げようとして顔を抜かれた。
六人目。一人目を貫いた飛礫で脚を潰され、這って逃げる背中を四人目を貫いた飛礫で抉られた。
七人目。三人目を貫いた飛礫に腹を抉られて臓物の海に沈んだ。
八人目。四人目を貫いた飛礫に胸を抉られて血を吐きながらのた打ちまわる。
九人目。二人目の頭骨を砕いた飛礫の破片で眼を潰され、闇雲に暴れて仲間に躓いて地面に顔から倒れ伏した。
十人目。いくつ目かの飛礫が跳ね下腹をえぐられ、倒れ伏し、九人目に喉を踏み潰され窒息死。
十一人目。九人目の斧に胸を割られ、声にならない叫びを吹きながら、跪く。
終わり。
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間】
俺は佐藤に視線。
わかったらしい。くったくなく笑う。
一発一殺って奇跡だろ!団子状に突進してきたとはいえさ!
八人死んで、三人が虫の息?聞こえる?エルフっ子は耳がいいな。難聴大丈夫?丈夫なんだな。
よかったよかった。
曹長も柴も自慢そうだ。
え?みんな出来んの?
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
お?
何事???
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間/青龍の貴族の右】
あたしは耳を塞いでいた。
ドワーフが、ニヤリと笑い合い斧を振り上げたがら。こいつらドワーフが何をするか、知らなくても察しが付くわ。
四人の、たった四人なのに、街を揺るがす勝どきの声、いえ、音。
頭目はびっくりしたようだ・・・・・・・・・・・・ちょっといい気味、と思ってしまった・・・・・・・・・はんせ――――――――――って!!そこで抱きつくか!!!!
計算???素????
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間】
俺がフリーズ中(軍政司令部の日常)、曹長たちは、ドワーフに合わせて銃を掲げた。
さすがに声はあげないが。
なんつーか、あれ、敵の首を挙げた感じ。
いや、見たこと無いけど。
ドワーフ達が首を挙げた(ような感じの)曹長たち、ってか佐藤を讃える。
佐藤と曹長たちが、こんなものは雑魚だよ、というふうに謙遜しながら応える。
よーく、見る。前方で呻いてのたうつ人間と人間の残骸。
うーん、まったく違和感を感じないな。
アレ、俺も慣れたかな?
イイノカナー。
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間/青龍の貴族の右】
あたしが見る間もなく、頭目が合図。
恐々、それでも怯える市民の手前、虚勢を張った盗賊ギルドの愚連隊が街道に出てきた。
彼らがこちらを、頭目、いや、頭目を抱きしめる青龍の貴族をみた。
彼が微笑む。
微笑?え?
あたしたちやあの娘に向けるものとは、まったく異質な笑み。
歓声。
愚連隊が叫ぶ。
略奪者の生き残りをメッタ刺しにしながら。
そして、続く武装した市民が応える。彼らは略奪者の死体を刻んでかざす。
続いて、沿道で死んだ目をして、瓦礫や遺体を片付けていた市民たちが腕を振り上げた。
略奪者に止めを刺した愚連隊が死体を街道から引きずり出す。
叫び声を挙げ続ける沿道の住民を怒鳴りつけた。
死体は掲げられたまま住宅街の奥へ。
あわてて飛び出す住民や職人。
補修用の砂をまき血肉で汚れた砂利を片付け、敷き直す。
そのまま進む、あたしたち。その場所を通る頃には、死体の痕跡が片づけられていた。
多少、凹凸があったけれど。
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間】
俺はホッと息をつくべきなのだろう。
作戦目標達成。
予告せずとも人が集まる街道沿い。期せずして最高な御披露目。
皆が見た。
Colorfulの五人娘が,青い帽子と銃の轟音とともに市民の脳裏に焼き付いた。
すぐに全市、暫くすれば太守領全体に広まるだろう。
そしてなにより、教育上御見苦しい光景がColorfulとシスターズの小さいほう二人と頭目のお子さんの目に触れなかった。
いやーいい仕事したな!みんな!帰って寝たいくらいだ!!
それはいい。
それはいいんだ。
いいんだけど~~~。
なんか、市民の皆さん、目つき変わってません?良し悪し不明ながら、怖い方に。
しかも、俺と目をあわせるようになった?
いや、いつもの斜め下45°より良いけどね。アレ地味にきついからね。でも、いきなり変わると怖いから、目を見て話すのは話すとき。遠くから目を見ないでくれるかな?
みょーに熱っぽくないか?やばくね?
こっちみんな。
いやいや、子供がいるからね?
俺の視線が斜め下45°
いや、ノートPCで状況を確認してるだけだから。
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間/青龍の貴族の右】
あたしは頭目と後ろから覗いていた。
青龍の貴族が気がつく。
あたしたちに見やすく、彼が見ている視界が大きく中空に広がった。
つくづく、隠すって発想がないのね。
もう少し、他の人間には用心したほうが・・・・・・。
あの娘達にColorfulの橙と蒼が飲み物を持って来てくれる。
あたし、頭目、は遠慮。
青龍の貴族は、同じく走り寄る白、朱、緑に前を指す。
自分は飲まない、部下にやれ、と。
無言でもColorfulはすぐ把握。やっぱりすごく気が利いて、仕草を読む。一流愛玩奴隷は伊達じゃない。
三人は早速、青龍の騎士長と騎士に渡しに行った。
青龍の女将軍にはマメシバ卿が。なんだかんだで、姉妹みたいね。
「うちのみんなは、軍政のみなさんが飲んだ後です」
あたしの視線にマメシバ卿の解説。
面倒見と人当たりが良いから、騎士って印象が無いわね。まあ、騎士位はともかく、治癒魔法使いだからかな。
わざわざミニガンをかざして、警戒してる!って示すドワーフ共は無視無視。
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間】
俺はノートで俯瞰映像を見る。
解析済み。奴隷市場の黒旗団暫定指揮所の付けたマークが多数。
死体山。昨日死んだ、殺された死体の集積所。
避難所。港近く、だが、港を守る警戒線の外側。
全壊、半壊、破損した建物や地区。
移動中の掃討部隊。
盗賊ギルド愚連隊が先行して家屋を確認する。
家々を挟み路地を超えながら、ほぼ横隊陣形でゆっくり進む本隊。
明らかに体格にバラつきがあり、性別と武装してるってしか共通点がない。
市民から集められた男たちかな。武装ってか、ほぼ棒っきれだし。
見通しが利かない市街地で、えらく手慣れた部隊行動・・・・・・・・・・・・ああ、さっきから響くドラムか。
ギルドの人間が所々でドラムに合わせて前進させるわけか。
哨戒線としてだけ使えば十分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・時々鳴り止むね。
急拵えなら上等々。
騎馬を中心にした幾つかの集団はギルド精鋭か。
鎧に兜、剣に槍、雑談かな?時々笑いながら、視線を周囲に走らせて、しかも一人は必ず屋根に登って見張りをしてる。
移動は交代々、聞こえやしないが、呼笛を使ってるのかな。
移動前に一斉に、家々に隔てられた仲間の方を見るし。
配置は市民隊列の後方と、、愚連隊の遥か前方。
前後を最精鋭の予備隊で挟んでフォローする構え。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・レベル高けーな!!おい!!中世地球世界なら軍隊並みの動きじゃねーか!
盗賊ギルドの支配力?非常時だから従えやすい、ってのもあるか?
すごい!!盗賊ギルド!!RPGの設定みたいな名前なのに!!!
冒険者ギルドも探してみようかな?
俺が感心している間にも作戦は進む。いや、これははっきりと『作戦』と言えるレベル。
愚連隊が家屋に入り、家人を家の前に整列させる。
案内役の住民(愚連隊と違って棒しか持たない)が人相を改め、愚連隊が家捜し。
盗品が見つかったのか、家から持ち出した箱が家人の前でぶちまけられた。
問答無用で家人が打ち据えられ、家の屋根に死体の一つが吊された。
他の全員、死んだな。
欲を出して一家全滅か。
捜索線が前進する。
時々、家から走り出す人影。
後ろに向かえば市民隊列に袋叩き。隊列突破か前に逃げればギルド精鋭に串刺し。
まさにローラー作戦。
ズーム。
アップした中で、別の愚連隊がこちらを見た。
あ、ズームしたから哨戒気球から偵察ユニット(ラジコン機)に切り替わったか。
みんな偵察ユニット(ラジコン機)を見てるな。
件の愚連隊も。
その愚連隊はあわてて荷物を放り出した。
なんだ?装飾品?盗品か。慌てふためき、とりすがる目の前の家人を殺した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・賄賂で見逃そうとしたってところか。
あーやだやだ。
カメラがパン。あ、視線追尾か。
別な愚連隊が逃げ出した。
路地に女が倒れてるな?略奪に走ったか。
周りの愚連隊が逃げ出した連中に気が付き、同じ規模の愚連隊三つが追跡にかかった。
あれ?これ、それ。
ああ。
互いに視界に入るように、まあ、出来るだけだろうが、してるのか。
支援しあい見張りあう形。
おかしな動きにはすぐ反応。すぐに吊されるな。逃げ出した奴ら。
しかし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜに、逃げる奴らも追う奴らもこっちを見るのか。
いや、首を掲げられても。
みんなの注目!偵察ユニット!!!
おかしいよね?――――――――――あ、うん、仕方ない、な。
「ステルス切って自慢デスカ~ヤレヤレ」
うっせー神父。
黙っててください、お願いします。
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間/青龍の貴族の右】
あたしは目を丸くした。
青龍の貴族が操る魔法で景色が次々と切り替わる。
それは今更だけど(・・・慣れた自分が怖い・・・)おかしいのは盗賊ギルドの動き。
有り得ないほどの統率。
昨日から一晩空けたとはいえ、疲れ切ってるはずなのに異常な士気。
市民の全部とは言わないけれど、相当数が積極的に参加して、動いている。
実際に、裏でしか支配出来ない盗賊ギルドに、こんな風に市民を動かす力はない。
頭目があたしを見た。
なによ。
っと言う間に、気がついた。
ギルドの愚連隊が、青龍の使い魔に気がついて、従おうとしている?
上位者に見つかったように逃げ出し、手柄を見せつけるように闘ったり。
頭目を通さず青龍の意を伺うギルド配下。
盗賊ギルドの権力が浸食されている事に、頭目は穏やかでいられないのでは?
チラリと窺った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何を、彼に身を寄せているのかしらアナタ。
そう。
そういうこと、な、わけね。
『青龍の眷属』
市民も愚連隊も
『青龍の貴族が頭目を従えている』
と信じるからこそ、必死になる。
恐怖?違うわね。
強者に従うのではなく、力への憧憬。
秩序が根こそぎにされたからこそ。
ああ、だから。
『眷属』
なのね。
誰でもなく、自然に、異常なほど早く、広まった異称。
臆病な市民たち。
住まい。
仕事。
隣人。
家族。
確固たる日常があった、いや、それにすがっていた連中。
怯え、狂い、訳も分からずに家を壊し家族や仲間を殺してしまった彼ら。
世界を転倒させてしまった連中の空白を、塗りつぶしていく色。
唯一の色。
青。
沖合の巨大な海龍。
恐慌の最中、空から命令した翼龍。
鮮やかに、艶やかに、見たこともないほど何もかも無視して進む青龍のパレード。
皆、従う。
誰に命じられる事もなく。
青龍に求められてもいないのに。
ただ、すがっているだけだ。
今、彼らの上に唯一、揺るぎなくそびえるのは青龍のみだから。
その中に。
必死になって青龍の一翼たらんとする者たちもいる。
彼らは命を懸けて考えて走り回る。
頭目の、青龍の貴族の意志に応えるために。
願いがかなう保証もないのに。
わかったわ。
あたしに教えてくれて、ありがとう。
でも。
言葉、だけで、教えてくださるかしら??????????!!!!!!!!!!
【太守府/港湾都市/北街道/北門から港の間】
「First impression!殴るベシ殴るベシ殴るベシ!」
ボクシング漫画か?
「理由理屈説明厳禁!ひたすらHeartとBodyをdestroy!!ただし!100%LifeCare!OK」
どこ知識だよ?拷問だろそれ。
「強制収容所入所手順ファーストステップ!敵を愛し!仇を愛し!進んでbig Brotherの為に命も自分も恋人も差し出すようになりComplete!!」」
お前、ホント何人だ!米軍の手法か?
「NONONO!ソースは1984ネ!」
オーウェルか!イギリスか!
そのうちに『2+2=5』って迷いのない瞳で言い出すんか。
まあ、実際に効果がある手法だけど、俺に関係ないから。ディストピアは紙の上だけでたくさんだ。
「Oh-!!なんてスイーツ!!」
差し出されたカップを口に!あまっ!!クリームの塊!!!




