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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十一章「夏への扉」

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発想の転換/optimism.

【登場人物/三人称】


地球側呼称《合衆国大統領》

現地側呼称《青龍元帥》

:駐日大使、国連大使兼任。

女性初の合衆国軍統合参謀本部議長で次期大統領候補と目されていたが、祖父以来の縁がある日本へ大使として赴任。その際に家族も連れてきている。

異世界転移後、緊急時の継承順位に従い大統領に就任し在日米軍並び領域の軍を掌握。在日合衆国市民の統率者となる。

代々続く軍人の家系。

娘は文民(弁護士)になったが、孫は軍務(空軍F-16パイロット/三沢基地所属)についている。

普段から合衆国陸軍将官の礼服を身にまとう。



地球側呼称《佐藤》《芝》

現地側呼称《サトウ卿》《シバ卿》

:主人公『俺』の部下。選抜歩兵(物語世界での選抜射手)であり、異世界転移後の実戦経験者。曹長に次ぐ軍政部隊戦闘作戦の中心



【用語】


『軍政部隊』:「俺」が率いる増強分隊。司令官(俺)、監察官(神父)の二人の将校と下士官一人、兵十名(選抜歩兵2名、衛生兵一名)。独立した作戦単位として活動する為に軽装甲機動車と3 1/2tトラック各ニ台、KLX250(軍用バイク)二台、偵察ユニット四機と機動ユニット、各種支援装備が配備されている。




彼らはツイていなかった。



現生人類より脳容量が大きかったネアンデルタール人。

現生人類よりも遅く現れいち早く芸術に目覚めたクロマニョン人。

いずれも身体能力が我々より高く、精神活動も互角以上である異種族。


全て実在していた。


もし、優勝劣敗であったら?

もし、弱肉強食であったら?

もし、適者生存であったら?


世界はどこまで貴かく拡がっていたことか。




端的に言おう。

優れているのは彼らだ。


魔法のことでは無い。

あれは調べればいい程度のモノだ。

竜のことでもない。

たかだかトカゲにすぎん。

肉体的な素質ごとき話にもならん。

なにしろ我々と同程度だからな。



異世界人は、本質が違う。

もちろん我々の中世と正確な比較は不可能だが。

今の我々と比べれば、明らかに違う。


調べれば調べるほどに。

試みれば試みるほどに。

戦いあえば戦うほどに。


地球人類が千年にわたって積み重ねてきた、試行錯誤を取り除けば百年分ほどの、知識。


これを彼らに引き渡すことが出来れば。

それを持った彼らは至高の果てへと昇る。


早く速く。

高く貴く尊く。


だろう、ではない。

なる。


我々では到底たどり着けない。

一万年を重ねて試行錯誤してなお、届かぬ尊みへ、だ。

それを一見するだけでも、あらゆる代価を惜しむまい。



神がいて、我らと彼らを引き比べれば?


滅びよ。

そう言われるのは我らだ。

他に言葉もあるまい。


まったくひどい話もあったもの。

もし異世界転移を止められるのであれば、何を置いても止めるべきだろう。

彼らと我らが出会わぬように。



出会ってしまったが。








彼ら(異世界人)はツイていなかった。



――――――――――代合衆国大統領日誌より。








【聖都南端/聖都市内/らんどくるーざー/青龍の貴族の胸/魔女っ娘】


ご主人様。

わたし。

ねえ様。


??

???


え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


抱っこですか!

ねえ様を抱っこですか!!

わたしは挟まれて抱き付いてますけど抱っこしてほしいです!




【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


俺は自分の信頼度に目頭が熱くなる。

思えば長い道のりでした。

朝まで監視されていた日もありました。


初日だけだっけ?

いや、何日かあったような?

みんなで一緒に寝るようになってから?


比較的早めに同じ宿舎を使ってたからね。


24時間寝食を共にすることに、出会って初日からという。

そりゃエルフっ子も警戒しますよ。

コッチは侵略者だもの。


露骨に威嚇はされないものの。

静かに威嚇されていたと思う。

それはまあ常識の範囲内だよ。


エルフっ子は剣を自分の肩にかけ。

部屋の片隅で俺のことを監視していた。

魔女っ子に俺が危害を加えないように、ね。


シスターズと俺。

異世界ファーストコンタクトの類型。

血の雨が降らなくてよかった良かった。


いろいろあって、川の字で寝ることが出来るようになり、まるで家族のような温かい関係。


いや川、じゃないか?

小?少?革?

エルフっ子の位置が変動、多少?


まるでネコみたいだ。

寝る前に立ったり座ったり。

一度離れて、また戻ったりするよね。


俺が中心。

腕に乗らない形で両サイドに、二人ちびっ子。

エルフっ子は場所に迷って、俺にかぶさったり枕になったり。


まあいいんだが。


だからこそ。

この達成感はすごい。

近所のネコと仲良くなった時以来。


背中を預けてくれるようになったんだから。




【聖都南端/聖都市内/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の胸のうち/エルフっ娘】


あたしは、自分の顔色がわかった―――――――――――――――――判りたく、ないわよ!!!!!!!!!!

あたしの右手に

――――――――――青龍の貴族。

しかも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・せせせせなか、抱かれてるし。

時々、かかかみ髪を梳かれ、ひゃん!!!!!!!!!!




【聖都南端/聖都市内/らんどくるーざーの中/青龍の貴族頭上/お嬢】


すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・・・は!


ご領主様の髪に顔をうずめている場合では、ありませんでした。

わたくしは一段高い位置におります。

羨ましいことが良く見える、とてもとてもつらいことに。


先程まで、ひどく恐れていらした、ねえ様が今は。


ご領主様のせなに肢体を委ねて。

兜の位置に、頭を乗せて。

あの娘、ねえ様を見て。


今はもう、何もかも委ねておられる、ねえ様。


力任せに抱かれている、ねえ様。

見える範囲の肌がすべて真っ赤に。

挙動が可笑しくなっておられますわ。


動けないのか動きたくないのか、どちらなのかしら。


羨ましくはないのですけれど。

でも、ねえ様はいつもの調子に戻られたみたい。

羨ましくはないのですけれど。


閨の内、湯殿の中とは違い、素肌に直に、ではありません。


一歩引き、一段高みから、皆を見守っている。

ねえ様はそういう方。

得手不得手を知り、預ける委ねるが自儘になる。

それこそ、ねえ様。

あの娘が見習い、わたくしが憧れる理想像の女。

ねえ様は、そうでなくては。


常の様に剥かれるでもなく、まさぐられてもおりませんのに。


不得手なままに弄ばれて、応えるのか抗うのか迷走中。

ご領主様に抱きしめられて、考え考え身を任せる。

何もかも忘れてしまいながら、忘れないように一生懸命。


まさにこれこそ、ねえ様。


ついで、といってはなんですが、あの娘だって役得ですわね。

ねえ様と、ご領主様、その間にいるのですから。

一番近くで嫉妬して。


わたくしが一番、出遅れてしまっているような?




【聖都南端/聖都市内/らんどくるーざー/青龍の貴族の胸/魔女っ娘】


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わたしには、よく判りました。


ねえ様が落ち着かれていくのが。

意気を下げたのではありません。

むしろ意気を上げているような。


それは静かに、しずかに、昂ぶられている様子。

でも、肢体から力が、概ね抜けています。

そして視線や耳も、ゆっくりと周回されているような。


ねえ様、いつものカタチにもどられた?


例外は、ご主人様が触れているところだけ。

わたしを抱きながら、ねえ様のわき腹を支えるように添えておられます。

ご主人様の添えられた手には、力が入っていません。


だからこそ、ねえ様に委ねているとわかります。

だからこそ、ご主人様がついているとわかります。

だからこそ、ねえ様は両手を空けて備えられます。


わたしは戦う人の心得を、聴いたことしかありません。


ご主人様の腕を塞がないように。

ご主人様の腕に寄りかからないように。

ご主人様の体に肢体を預けるように。


いつも意識できている、とはいえませんが。

ついついしかみついてはしまうのですが。

それで、ねえ様に剥がされるまでが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・我を忘れないように、そこからですよね。



【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


『先行クリア、着30』


おっと。

俺は曹長の報告を聞き逃したりはしない。


キチンとエスコートする。

それも子守りの内だから。

俺が負っている責任範囲。


いつも通り、曹長の配慮は完璧。


さっき後ろの芝が先行したのはそれか。

前の車両、いまは右前が佐藤で荷台のM-2(重機関砲)にひっついてる。

ランドクルーザーは三台で、俺の乗車は曹長、後は選抜歩兵が各車を指揮する形。


理想を言えば、車載機銃の砲手と指揮は分けたほうがいいけどね。


各車5人程度なら兼任でも問題なし。

人手不足か、過剰を避けた最適配置か

迷うところだけれど、あの二人だし。


斥候。


聖都内外は機械的に安全化してあるんだが。

それでも標準手順を忘れない、下士官の鏡!

安全化されてるからこそ、訓練に最適だし。


習慣化しておかないとね。


普通の国際連合統治軍と違ってるし。

俺たち軍政部隊の任地は基本的に安全化前。

安全化を始めるわけにはいきません。


太守領が聖都みたいにされちゃうからね。


太守府の、視線を合わせてくれない人たち。

村々の、表情を硬めまくった皆さま。

蒼白で進み出てくる、お偉いさん。


聖都のように生きとし生けるなにものもいない場所。


王城のメイドさんやら執事さんたち。

港街の頭目親子や歓迎の子どもたち。

南部で力添えいただいた村々の人々。


登録済みの現地協力者は、回収されるけれど。


皆々様の安全のため。

俺たちが隙を造ってはならない。

異世界自衛官の一般教養。


俺たちの指導者は、俺たちほどやさしくはないのだから。




【聖都南端/聖都市内/らんどくるーざーの中/青龍の貴族頭上/お嬢】


でも、ご主人様が髪を、いえ髪だけではないですが、わたくしをモフモフされる理由が判りますわ。

ふわふわ、つやつや、しっとり、ゆったり。


ふふ。


ご領主様も、髪で感じられるのでしょうか。

わたくしの手際では、まだ、無理かもしれませんね。

与えていただくだけではなく、受けていただかないと。


あの娘、ねえ様はとても真っすぐ。


あの娘の髪は、柔らかな金のしずくのよう。

ねえ様の髪は、艶やかな銀の流れみたい。


もちろん、羨んでもおりません。


触られている、ねえ様。

抱かれている、あの娘。

肢体を預ける、わたくし。


ご領主様。

敢えて一番とするならば、どうされますか。


その結果次第では、大いに羨みますわ。

きっときっと、ぜったいに。

それは、いまではないのですけれど。


ですから、あくまでも、お知らせするためです。

ご領主様の耳に、唇を当てたのは、必要なこと。

けっして二人に水を注すわけでは、在りません。


わたくしの場所から、御外が良く見えましてよ。


それはたまたまそうなるだけ。

だから、わたくしは、囁きます。

そろそろつきましたわ、と。


ほんと。

変ったお出迎えですこと。



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