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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十一章「夏への扉」

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答/Credo quia absurdum.

【用語】


prorsus credibile est, quia ineptum est.

不合理だからこそ、正しい。


certum est, quia impossibile.

不可能だからこそ事実なのだ。



――――――――――信ずるということ――――――――――


思想家、哲学者、神学者であるQuintus Septimius Florens Tertullianusの言葉。



師の教えは間違っているのかもしれない。

私にはわからない。


師は嘘をついていたのかもしれない。

私にはわからない。


わかること。

わたしにはそれだけでいい。


私は教えに従う。

私は師を想う。

私は幸福だ。



――――――――――鎌倉時代の宗教家の言葉――――――――――


※文法や言い回しではなく、時代が代われば単語や文法だけではなく言葉の概念が変わるので翻訳が必要になります。

※さらに判り易く意訳してみました。






【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


俺は今まで、5分間くらい、と同じようにエルフっ子を注目。

注目していたから、エルフっ子が外に気を逸らしたのが判った。

ただし警戒が増える、ようは悪化する方向じゃない。


むしろ安心する方向。


さすがの俺は、表情一つでそこまで解る。

この子の気持ちはなんでもわかる。

エルフっ子専門家と言い切れるだろう。


だが戦闘行動の専門家、ではない。


なにが起きたか判っても、なにが起きたか解らない。

自衛隊の行動は自衛官に訊いて欲しい。

俺もそうします。


必要なら。



判ったこと。

三台単縦進で走っていた、ランドクルーザー。

最後列の三台目が先行。

俺たちの乗る中央ゲスト車両を追い抜いていた。


そのまま一台目も抜き去り、隊列を離れる。


以降は護衛車両とゲスト車両、二台走行。

だが縦列ではなく、ゲスト車両の右前が護衛車両。

少し速度を落として、斜めに並んだ。


解らん。

ま、いっか。

それどころじゃないし。




【聖都南端/聖都市内/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の胸のうち/エルフっ娘】


あたしは彼、青龍の貴族に寄り添う。


土竜、らんどくるーざー。

あたしたちが乗る一頭、青龍の騎士たちが乗る二頭。

その動きで判ったから。


あたしたちが乗る、一頭。

それを中心に、前後に青龍の騎士たちが乗る一頭ずつ。

だった。


さっき、そのうち最後尾の一頭が一騎駆け。

距離を置いて先行し、敵を確認するため。

シバ卿が背に載っていた。


もちろん護衛を無くすわけがないから、先頭は残っている。


敢えて最後尾から戦力を抜いたのね。

通り抜けて来た後ろより、これから向かう前のほう。

危険があるなら、まずそちら。


土竜(らんどくるーざー)は前に前に進んでいる。

後ろから奇襲を受けても、速度を上げればいいのだから凌ぎやすい。

襲われた時はまず逃げる、しかる後に反撃するのは基本。


だから護衛役、前の一頭を残した。

動線を一つ外したのは、万が一にも道を塞がないため。

そうしておけば緩急一つで前後を移動出来るし。


その残った土竜(らんどくるーざー)は、あたしたちがのる土竜(らんどくるーざー)、その騎手を庇う位置につく。


らんどくるーざーはその前方、右側に騎手が着く。


いま手綱を握っているのは青龍の道化。

青龍の道化に銃を向けて、その手綱を握っているのは青龍の騎士長。


もし。

そとから隊列が襲われても、青龍の貴族が乗る土竜(らんどくるーざー)が潰されることは無い、わね。


少なくとも一撃では。


青龍の貴族が乗る土竜(らんどくるーざー)庇うために、右前へと出た土竜(らんどくるーざー)の背。



据え付けられた大きな銃、文字通り竜殺しの筒先。

それを操るサトウ卿によって、左側を向いていた。


右からの脅威は竜体で防ぐ。

左からの脅威は銃で滅ぼす。


自分を護ることを考えない陣形。

それはとても、青龍らしい。


つまりそれは、彼そのものなのだけれど。


青龍の貴族、あたしたちが乗る土竜(らんどくるーざー)を護ってくれている。

つまり彼、ううん、彼が護る、あたしたちが乗る一頭を優先した陣形。

誰も何も言わずに、合図すらせずに、一つの生き物のように動く青龍の騎士団。


その頭は、彼、青龍の貴族。



あたし、たち、あの娘を護るために

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つまり、そういうこと。




【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


俺はもちろん命令してない。


犬が吠えても駱駝(らくだ)は進む。

それなら吠えなくても進むだろうし、テントに鼻先を入れれば全身で突入してくる。


The camel’s nose Under the tent!

(「軒を貸して母屋を取られる」の意)



駱駝だってそうなんだから人間おや。


親が無くても子は育つ。

政府が無くても日本はあるし。

指揮官がしなくとも部隊は動く。


さすがに居ないとまずいらしい。

ともかく居ればいいらしいです。

ちょっと自慢ですよ、これ。


着任すれども指揮とらず。


我が軍政部隊ではよくあることである。

気がつかなくても支障が無いけれどね。

そして気がつきもしなかった、のだが。


いやほら、担当業務兼使命兼私用が忙しくってさ。


つまり子守のギリギリ一歩手前。

アウト?

セーフ?

セウトかアーフ?


時々手は出すが、基本はメンタルケア。

自立しきれない子どもの背中を支えたり蹴り出したり。

いつもはこまるが、必要ならばやぶさかでもなし。


つまりエルフっ子対策で軍務どころじゃなかった。


俺はこのために産まれて来たと言い切れる。

お父さんお母さんありがとう。


お礼は貴方たちのじゃなく俺のでもない子どもの笑顔です。


いゃ~~~~~~~~~~自慢の息子ですね。

そのうち日本との通行が開始されたら、連れて行きます。

有り金全部現金化してまっててください。


訓練された近所のガキどもと一緒に、甘えせびってくれること請け合い。


爺婆と言えば財布も同然。

子守の主力は末期高齢者。

俺のような若者じゃない。


少子化万歳!

高齢化社会万歳!

まさにWin-Win!



全米が泣きそう。


まだ合衆国が残ってるのかって?

大統領も議会も州知事も過不足無く異世界に残ってる。


いや、やってきたって言うべきか?

合衆国大統領は残念ながら一人しかいない。

代わりがないから大切に。


だが、アメリカ連邦議会議員は五人もいるし、州知事は二人もいるんだぜ?

四人と一人までは使える理屈。


だから、いやストックとは無関係に、全米が泣くのは可能なのだ。


いやもちろん、異世界に合衆国が残っていればいい、ってわけじゃない。

地球の合衆国が残ってないと困る。


俺の辞職願いを受理するまで、ニューヨーク国連本部には存続してもらう。

俺の心の中で

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そろそろ地球の人類生存率が半減した頃合いか?

※第45話<世界の外の日本(地球人類終了のお知らせ/死因:肝不全)> より



地球人類は異世界に山ほどいるが。

だからといって、他がどーでもいい、と感じるほどに不人情ではない訳で。


地球世界に取り残された地球の人たち。

死ぬより辛いことはいくらでもある

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・異世界転移以前は考えたこともないが。


よし。

思考停止。




【聖都南端/聖都市内/らんどくるーざー/エルフっ子と青龍の貴族の間/魔女っ娘】


わたしは、ご主人様の眼を視ます。

わたしを手放した、ねえ様はそのまま背を向けてしまいました。

わたしはだから、ご主人様に向き直ります。


いえ、視るだけではありません。

匂いを吸い、息遣いを訊き、仕草を感じます。

いつもと同じように。


慌てていたのが恥ずかしいですが、やっとわかりました。


ねえ様が、とてもとても困ってしまわれている。

それはきっと、わたしのせいに違いありません。

ねえ様を困らせるのは、いつもわたしですから。


ご主人様か、ねえ様が自分で距離を開けるなんて!


ねえ様が途方に暮れるほどの何が起きているのか、わかりません。

わたしはいままでみたいに、それを見ているだけではありません。

恥じてなお見ているだけでは、ご主人様の女として恥ずかしいです。


だから、わたしは正しい答え(ごしゅじんさま)を見あげました。




【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


さあ。

思考再開。


貴官のように考えない自由を行使できる人間ばかりではないわ。

って三佐に言われました。


俺はそのとき殺される、いや、病死するかと思いました。

俺にできるのは考えないことだけだけれど。


つーか、そう教えたのは三佐なんですが。


警戒する前に把握しろ。

把握できなきゃ何もするな。

疲弊するより不意を討たれる方がマシ


そーかな~。

どーかな~。

ま~いいや。


だがまあ、それでうまくやってる人がいるわけで。

それを現状に応用。


さすが俺。


きっかけが全然わからないけれど。

よくあるよくある。


失われた信頼を取り戻すって、凄いことですよ?


俺の制服、その裾をつまむエルフっ子。

解放されて俺たち、エルフっ子と俺を見回す魔女っ子。

俺に一番大切な子を預けて、車外を警戒するエルフっ子。


耳は正直です。


俺に向いたまま。

視線が外部に走っている。

まだ脅威は去っていない、か。


耳がこちら向きなのは、魔女っ子を俺にゆだねてるからだろう。


オカンだねぇ。

お姉ちゃんだねぇ。

そーいうの好きだよ。


だからといって、楽しむのは後回し。


魔女っ子の見上げる視線、お嬢の流し目。

Colorfulのリングサイドコンサート目線。

俺の一挙手一投足を追尾する、エルフっ子の長い耳。


どんな意味が込められてるか、誰でもわかる。


子どもの期待を裏切るのは、敢えて期待させたとき。

させない期待が集まったからには、裏切ることだけはない。

子どもの期待に応えられる、とは言い切らないけどな。


裏切らないだけなら、これほど容易いことは無い。


おそらく好評いただきどーもどーも。

俺はこのために産まれて来たと言い切れる。

少女童女幼女包み焼きを免れた、俺。



なんだかんだでなんとかなった。

涙目は養殖以外好きじゃない。

俺は俺を裏切らない。


たぶん

――――――――――ここからが本番。



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