オリジナル。
【登場人物/三人称】
地球側呼称《曹長》
現地側呼称《騎士長》
?歳/男性
:国際連合軍/陸上自衛隊曹長。主人公の「俺」が困ったら、困ってなくても、まず頼る相手。
主人公の「俺」は着任以後、本土の友人知人を経由して曹長の家族に贈答をかかしていない。奥さんだと遠慮されてしまうので、娘に受け取らせる戦術を多用中。そのかいあってか主人公の「俺」は娘さんとはプライベートなメールをしあう関係。娘さんに曹長、お父さんの良いところを吹き込ん間接的に曹長の機嫌をとろうとしていることは間違いない。
地球側呼称《坊さん/係長》
現地側呼称《僧侶》
?歳/男性
:国際連合出向中地方公務員。得度した僧侶。浄土真宗らしい。軍政司令部文官。主人公の「俺」が困ったら、困ってなくても、まず頼る相手。
地球側呼称《官僚/財務官僚/役人》
現地側呼称《役人》
?歳/男性
:財務省官僚。高級官僚の一族に属するらしいが、異世界転移後の官僚機構一斉粛清で大半を失った。殺された者もいると信じている。
「異世界の亜人についてお聞きしたい」
一つ。
亜人とは何か。
二つ。
「異世界にはエルフやドワーフが生息しているのは誰でも知っていますよ」
「国際連合の秘密主義は通じません!」
一つ。
亜人とは亜種の人間、デミ・ヒューマンという意味か。
二つ。
「その人間に近い人たちのことです」
一つ。
亜種以前に我々の法規を置くとしても、異世界に人間は存在しない。
二つ。
〈人たち〉とは人の複数形であり、それに〈近い〉と言えば〈人間ではない〉という意味になる。
「?」
〈人間でありながら、人間ではない〉とは、何が言いたいのか。
「は?我々をバカにしてるんですか!」
「異世界人のことは日々、我々が報道していますからな」
一つ。
個人的に受けたマイナス評価に周りを巻き込んではいけない。
二つ。
この部屋にいる人物の知能程度は私の責任範囲ではない。
三つ。
裏付けの無い発表の孫引きを報道とは
「「「「何様のつもりだ!!!!!!!!!!」」」」
一つ
(怒号が飛び交い中断)
「国際連合は、日本国民の疑問にきちんとこたえる気がありますか?」
一つ。
答えている。
ふ
「どこがですか!」
一つ。
日本国最高機関から日々質問を受けている。
二つ
「その政府からの質問を無視しているんでしょうが!」
「外務省も防衛省もそういってますよ!」
「だいたいさっきから我々の質問に答えないじゃないか!」
一つ。
日本国最高法規は国家の主権者を国民とし、その代表となる国権の最高機関を国会と定めている。
二つ。
各省庁は何処であれ主権者から信任を得たことがない、政府隷下にあるだけの非法人格集団でしかない。
「?」
三つ。
主権者から信任信託を経ない公僕の希望表明は法律的根拠がなく、各人各私的集団の私的願望に過ぎない。なお国家行政組織法により法人とみなすかどうかについて疑義があることは認知しているが、彼らからの伝達の法的無地位に変化はない。
「???」
四つ。
日本人他、国際連合加盟国国民からの質問には答える。
国際連合とは無関係の立場からの質問には応える。
「官庁からの質問に答えてないでしょーが!」
一つ。
これまでもこれからも、無視をもって応えている。
ふ
「詭弁だ!」
一つ。
詭弁の定義
「なら国民はどうやって真実をしるというのか!」
一つ。
日本国憲法に書いてある。
二つ。
国会に請願するか国会議員に陳情するかジャーナリストを育成
「ジャーナリストに答えないじゃないか、今」
一つ。
ジャーナリストの定義は|Encyclopedia・Britannica日本語版参照のこと。
二つ。
日本でジャーナリストに出会ったことはない。
ゆえに質問されたことはな
「我々を何だと思っている!」
一つ。
思ってはいない。
二つ。
認知している。
三つ。
良いことは官僚のおかげ。悪いことは政治家のせい。無差別テロは個人の狂気。財政破綻は絶対真理。選挙は無意味で、法律のない裁判所は絶対で、変化は悪。昨日報じたことも忘れ、今日報じることは与えられ、明日報じることを問い合わせ中。サルに飽きられたバナナをしつらえる、出来の悪い餌係。
(理解が追い付いた段階で怒号中断)
《国際連合初の日本語対応記者会見》
【国際連合統治軍第13集積地/聖都市内/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】
ついさっきまでのあらすじ。
俺はまた、エルフっ子を泣かせてしまった。
わざとじゃないので楽しくない。
なお一度目はよーく覚えているので、今回泣かせたのが二回目と言い切れる。
俺が認知している限りでは。
※一回目は第51話〈異なる世界の同じ街〉にて
やはり涙目は養殖に限る。
天然ものはいかん。
身体に悪い。
ワシントン条約で保護しないと。
ワシントンないけど。
地球に残ってるといいけどな。
と嘆いていても解決しない。
対策を帝国軍に依頼したかった。
今ここに帝国軍はいなかった。
此処に居れば人類最難関の問題を解決できた。
森羅万象すべてに対して一人一人が一瞬一瞬間断なく対処可能。
あたりまえだろ?
そう考えてやまない、帝国騎竜民族。
えらい奴らを敵に回してしまったもんである。
よって今は助けを借りられません。
そのうち笑って話せる時代が来るだろう。
それまで帝国騎竜民族が絶滅し終わっていなければ。
それまで女の子の涙目対策は訊けないわけで。
俺がやらきゃならんのか。
エルフっ子の涙目を解決する方法
それを帝国騎竜民族に御教示いただけるまで。
エルフっ子専門家の俺がやらかそう。
ではさっそく。
対策を実行する。
誰に頼むか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・実行中。
わが軍政司令部は少ないながら、たいていのことは一任できる人間がいる。
その比率は13%以上を占めるのだから、優秀さが判ろうというモノ。
坊さん?
家庭内カウンセリングのスペシャリスト
幾多の親子夫婦男女関係に未成年の主張ほかの問題を解決してきた自然発生的家庭裁判所兼民生委員兼地域ボランティア。
その名も伝統仏教。
エルフっ子と俺の間に関しては、範囲外のような気もするが。
異文化コミュニケーションも男女間親子間のいざこざも似ている。
と思う。
俺は。
だよね。
なら、この子と俺。
両者の関係や如何に?
占領軍と現地協力者。
利益共同体とはいいがたい。
同僚や仲間や友達ではない。
近しくはあるがそれだけだ。
うん。
ご近所さんだとおもえば。
ご近所の紛争だと思えば、まあ。
ご近所のことならお寺でOK!
檀家じゃないだろ?
一包みすればいーんだって。
俺なんか近所の寺兼神社には時候の挨拶をかかさないぞ。
近所の爺婆に代わりを頼んだりもしているが。
近所で知り合いを当たれば、知り合いの知り合いの知り合いくらいに檀家はいるし。
世の中はコネさえあれば何とかなる。
年末年始の巫女バイトを知ってる子たちから紹介してるのは、だてじゃない。
短期未成年労働者を定期的に必要としてる地域伝統宗教組織。
中高校生くらいの方が時給安くて済むからね。
大学生以上の若い女で年末年始暇してる奴なんかいないし。
暇してる前期以降高齢者だと参拝客ががっかりするとかなんとか。
求人誌とかに乗せると変な奴しか来ないんだってさ。
変なポーズをとる。
変なファンが来る。
変な写真がアップ。
ばかったーこえぇぇぇぇぇ!
さすがに俺が知ってるガキは、そこまではバカじゃない。
そこまでは。
ご近所だけに相手の親まで知ってる子が多いからな。
そこまで知らんでも、一緒に芋煮をつつけばだいたいわかる。
決定的なバカはやらない子だなって。
普段バカでも、それで十分。
なお芋はゼロ円です。
近所の庭で採れるので。
もちろん持ち主と一緒につつきます。
近所の手伝い感覚。
保護者の許諾、時にはお参りと称する同伴
それで深夜働いても目くじら立てる奴なんかいない。
打ち上げ付きのお祭りボランティアなら、時給が安くても目をつぶろうってもんだ。
いや四桁は当然だけどね。
義勇兵じゃねーんだから。
賄い全部付、で飲食店より楽だから、まぁまぁ。
だから宗派繋がりで見知らぬ坊主の手を借りることは、まったく問題ない。
近所の寺が何宗か知らんが、神の家ならぬ仏の家はみんな一緒でいいんじゃない。
それゆえに俺が坊さんに一方的にシンパシーを感じているのは理の当然。
実際にこの一か月半で、どれだけ功徳を積ませてあげたか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すいません、調子乗りました。
ただ助けてもらいたいだけです。
だが、坊さんは不在。
その力を借りられないのは痛い。
すっげー呼びたい。
なんで俺、連れてこなかったんだろう。
留守部隊に信頼できる人員が、うちの部隊から一人は必要だった。
三佐に責任を押し付けてきたとはいえ、三佐が信用できるわけがない。
あくまでも嫌がらせとして、めんどくさがりに留守居をこじつけたのだから。
本来はもっと上位指揮系戦略担当の三佐。
抱えている作戦は山ほどあるはずだ。
北の辺境の、国連軍にとって重要性のない地域、太守領。
そこで何か生じた場合、おおざっぱに片づけてしまう可能性が、大いにある。
怠け者で気分屋で常識なしで(中略)狡猾で後悔も反省もしない(省略)三佐。
殲滅。
虐殺。
根絶。
それを止めるためには、相応の政治力がある人間が必要だった。
三佐をごまかせる程度に。
太守領の要人たちを纏める程度に。
前者が後者を踏みつぶさない程度に。
坊さんにしかできないよね。
え、官僚?
そんな奴いましたっけねぇ。
だからまあ、俺の切り札を一枚置いてきたのだ。
切り札ってーより、お札?
お札さんお札さん、異世界の人々を守っておくれ。
そんな感じ。
それ、そばにいないと困るなんて思わなかった。
通信システムを過信していた。
軍事用通信システムは多元化され、異世界では常時接続。
敵側に電子戦がないからな。
ECMもECCMも電波感知も偽装反射も欺瞞反応もないし。
俺たち国連軍兵士を監視する軍事参謀委員会の記録装置とも連動。
そりゃ、絶対に途切れないよね。
だから安心の通信体制。
太守領の留守部隊(二名)とは常に接続されている。
必要があればいつでも呼べるから、と。
エルフっ子の前で、呼べるかってーの。
この場にたまたま同席していれば、なにも言わなくても介入してくれただろうに。
致し方なし。
では曹長に頼むか。
14歳の娘がいるお父さんなら、エルフっ子256歳の気持ちもきっとわかるだろう。
大丈夫だ!
エルフっ子も体は17・8歳くらいだし、メンタルもそのくらいだと言い切れる。
エルフは異世界一般と違って親子関係や大人子供の概念もなくはない。
かなり地球の先進国未成年者に近いところがあると思う。
実際に俺が知っている子たちと外見以外、行動表情は全く変わらない。
いけるいける。
さあ曹長。
陸上自衛隊は君の英雄的自己犠牲に無形の感謝をささげるであ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・キミィ!
上官のアイコンタクトを無視してるんじゃない!
さっきルームミラーで俺の目を見てただろーが!!
ミラーの角度を変えても効かねーぞ!
娘さんに、お父さんのことをほめたたえてあげてるじゃないか嘘はついてないだけだけど!!!こまめにご家族へプレゼントして娘さんには希望通り帰国してから遊んであげる約束までしてあげてるんですよちょっと!!!!!
たいていのことは一任できる2人目に拒否られると代わりがいないんですけど!!!!!!!!!




