Lasciate ogne speranza, voi ch'intrate./門（我）をくぐるすべての者たちは希望を手放した。

それは唐笠お化け。

軽く驚かせて、なーんだ、と笑わせ、二歩先のホログラフに繋げる。

つまりジャブでガードを下げてストレートみたいな？

ワンツーのワン。

それすらタイトルマッチ、いや、長い長いお化け道の第一歩に過ぎなかった。

【国際連合統治軍第１３集積地/聖都市内/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】

俺、見たことある。

この表情。

あれは成人した女の子だったが。

いわゆる一つの日本国規定により、２２歳以下の女性をもって女の子と表現する。

言葉の乱用による言語破壊を憂いた国語審議会により決せられた正式な国家意志である。

言語科学的に女の子と称すれば虚偽詐術欺瞞パロディに他ならない年齢層が乱用したからである。

もちろん女の子、という表現と女子という表現はイコールです。

当の年齢層は女の子扱いを嫌がったりするけどね。

苦情の数だけ女の子認定するとさらに面白いのだが。

いやいや。

女の子扱いするな！

って言われたら絶対したくなるよね。

そんな微笑ましいことはさておき。

女としてキメればいいのに、自己否定する自称者たち。

マジもんの女の子たちから、ああはなるまいと大変良い教材になっています。

意外かもしれないが声が大きい方が多数派ではないことは稀によくある。

女子だの女の子だのを自称するのはキモちわ、いや、恥ずかしい。

そう思ってる女は少なくないのだ。

というのは置いといて。

俺の人生信条とは、また別に積み重ねた失敗の記録に、また一ページ。

例えて言えば、そう。

怪談が嫌いでホラーがダメでお化け屋敷なんかもっての他なことをみんな熟知していることに気がつかずに見栄を張っている、その娘をサプライズでホラーハウスに招待したときのような。

いや、その

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・逃げると思ったんだよ？

ホラーハウスの看板が視界に入った時点でね、スッゴい焦点移動してたから。

瞳孔が決してホラーハウスにあわないんだ。

ふつーね？

女か女の子だったらね？

コワいコワいと騒ぎ立て、むっちゃくっちゃに嬉しそうに行くよね？

俺の知る限りの女、の大半はさ。

まあ一部例外はあるが。

怖いから嫌いです、と言ってあっさり避ける判りやすいタイプ。

怖いから嫌です、と言えないから言葉を連ねて自家撞着に陥りあそばれるタイプ。

実力行使な意味で手を出しそうになるからやめとけ、っていわれる元カノ。

まあ意地になるタイプもいるが、それなりに

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それなりってレベルじゃねーぞ。

あれはいきすぎだった。

同行は俺一人。

恥をかくこともない。

そのための、彼女の為の仕掛け。

いじめではない。

断じて違う。

カミングアウトさせればね、遊びに行くときの調整が楽かなって。

ホラー映画の時に誘わない理由を、捏造しなくて済むし。

なんで仲間外れにしたの

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・言わないんだコレ！！！！！！！！！！

平気なフリしてやがるんだよ演技力ゼロなクセに！！！！！！！！！！

周りの気遣いに鈍感なのに、外されてる空気は読む。

周りを気遣うくせに、人並みに寂しがりや。

周りを欺けない不器用どころか、隠すほどに露わるる自爆ドジ不運属性とか、もう盛りすぎじゃないですかねぇ。

そりゃアナタ、潰そうと思う。

だよね？

だよね？

だよね？

と、広く同意を得たところで生じた、俺の善意。

眼を閉じて隠れてるつもりなら、こじ開けて鏡を見せよう。

百回産まれ変っても、察する力なんか生まれやしない。

必死に隠すっていうなら、羞恥心ごと殺してしまえ。

そのほうがきっと、仲良くなれる。

珍しく下心以前だった。

女の子ではあっても女。

そんな相手を前にして。

もちろん相手の意志なんか無視。

好意の押売。

善意の強制。

優しい恫喝。

俺は他人を思いやるとき、相手の身になって考えたことは、ま～～～～～～ったくない。

それで失敗したことがない、とは言わないが。

それを反省したことがない、とは言えないが。

手遅れになってから思い出す、とは言っておく。

だから親友が少ないんだろうな。

友だちは多いけど。

この時も、それ。

思いやり。

趣味は抜き。

ほとんど。

決して、弱みを認める瞬間、屈辱を噛み締める刹那、その表情を見たかった訳じゃない。

嘘を突き通すこともできないが、言い出せず泣き出すところ、それを見たかった訳でもない。

逃げたくて慌てる姿を愉しむなんてもっての他ですよ？

だから、スタスタと入る姿に感動したものである。

やはり虚栄こそが人類を発展させるんだな、って。

男の前。

女の前。

子どもの前。

友達の前。

キメて魅せるぜ！

じっくり見てな！！

動揺一つ見せずにＴｈｅ Ｈａｕｎｔｅｄ Ｍａｎｓｉｏｎに突入していく後姿。

ソンムの戦いで、何も知らずに機関銃陣地に突撃させられていく。

そんなフランス兵もかくあらん。

いやＴｈｅ Ｈａｕｎｔｅｄ Ｍａｎｓｉｏｎだからね。

あまり、っていうか、全然怖くないしね。

これで慣れるようなら、次に行ってみよう。

全国五大お化け屋敷をコンプリートさせてみる。

お化け屋敷で怖いフリして男を墜とせる立派な女に。

最期は心霊スポットに見せかけた安全な廃墟にでも連れ込んで、動画撮影も乙なもの。

耐性が着くかもしれない。

食わず嫌いで、あっさりスルーもあるかもしれない

それはそれでいいかな、って。

泣き顔を見ることが出来ないのは残念だが。

弄るネタが無くなるのはもったいないが。

そんな安堵を抱きましたよマジ。

見栄は女を美しくする。

虚勢は男を格好良くする。

人間賛歌に我泣き濡れて「次は五歩を目指そうか」とは言えなかった

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・彼女の名誉の為に付け加えよう。

三歩目までは、意識がありました。

その後のことは

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・人間の尊厳は、こんなことではくじけない！！！！！！！！！！

ことにしてあげてもよくない？？？？？？？？？？

マジで凹まれた

――――――――――――――復旧作業に、時間と手間と金を惜しまなかったのは言うまでもない。

俺が笑ったのは、ベタな古典的妖怪キャラに対してであって、そこで生じた事態やら中心人物の悲劇に対してではない。

むしろ事態を把握してからは脊髄反射だけで隠蔽と事後収集に走って、感情を見失っていたくらい。

マジ、本気、事実

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それを信じたことにしてもらうまでに、また山のような手間暇時間が費やされた。

それが一昨年の話である。

そんな悲劇を、異世界で見ようとは！！！！！！！！！！

周りを見回すエルフっ子。

なにがあったかエルフっ子。

傷は浅いぞしっかりエルフっ子

取り返しがつかないことが起きたとき、の、それ。

しかもここホラーハウスじゃないよね？

スッゴく睨むのはどうかと思われ。

【聖都南端/聖都市内/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の胸のうち/エルフっ娘】

ここだったの

――――――――――来ちゃった。

あたしは、さりげなく彼、青龍の貴族を見た

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ワザとだ。

あの娘を連れてきて！！！！！！！！！

わざわざ此処を選ぶなんて！！！！！！！！

単なる遠乗りだと思ってたのに！！！！！！！！！！

言われなかったけど。

あたしのことを、手慣れたようにあやす手つき。

いきなり抱いてきたのはこーいうことだったのね！！！！！！！！！！

人が夢中になってる隙に～～～～～～～～～～！

こんなところに連れ込んで～～～～～～～～～～何する気よ！！！！！！！！！！

【国際連合統治軍第１３集積地/聖都市内/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】

犯罪臭がするのはきのせいでしょーか。

笑顔で返す俺。

困ったときはまず笑顔。

日本人の常識です。

俺の責任問題はスルー。

日本人の常識です？

潔く責任を認めるような無能じゃない。

誠実に謝罪するような馬鹿ではない。

堂々と反省するような間抜けでもない。

何の役にも立たないからな。

どーでもいい相手なら、謝ってすませるけどね。

意外かもしれんが、日本以外でも謝罪で終わらせる慣習は、意外とある。

相手というより、周囲の文化圏の見極めが大切です。

とはいえ全人類共通として、謝罪で納得できるようなら最初から怒らないわけですよ。

それでも怒れないようにするのが、謝罪という技術。

相手の不満憤懣その他もろもろ。

密閉してのたうたせるなら、謝罪ほど効果的な暴力はない。

もちろん大人相手の時しかやらんが。

子どもを、心理的に殴ったりしない。

物理的には別として。

掴んでも踏んづけても抑えても怒鳴っても、侮辱はしない。

見えない傷は扱いにくい。

見える傷は安牌だ。

野戦医療の基本基本

――――――――――ってマメシバ、軍医Ｖｅｒ．が言ってた。

知らんかったが、まあ判る。

だから罵る相手は大人だけ。

ゆえに謝る相手も大人だけ。

だからまあ２５６歳児エルフっ子をどうするか。

怪我をさせない緊縛術は得意だが。

縛っても解決しまい。

縛らせてはくれるだろう。

俺より強いが、俺のが強い。

そのあたりは恋バナクリーチャーに言われなくてもわかる。

敵と味方・男と女がそうあるように、大人と子どももかくあれかし。

だが縛るなり掴むなりでは、解決しない。

いや、解決じゃ足りない。

俺を睨む、涙目可愛いエルフっ子。

癖になりそう

――――――――――ではなく、魔女っ子関連か？

そりゃそうか。

魔女っ子を抱きしめてるのは、なにかから庇うようだ。

俺から庇う、だったらショックですが、つじつまは合う。

なんかしちゃったらしいしね、なんかしらないけれど。

だが、俺には時折睨むだけ。

セーフ？

アウト？

セウト？

――――――――――往生際が良かろうが悪かろうがどうあろうが、俺は最期まで諦めずにビデオ判定を求めるタイプです。

あれ、いつまでビデオって言い続けるんだろーね？