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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十一章「夏への扉」

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413/1003

狂気の処方箋。

本編内の地理情報は第349話〈地図情報:第十三集積地〉にて図解されています。


「文章だけでは判りにくい」

とお考えの方は「わからん」と一言おっしゃってからご参照ください。


感想欄、メッセージ、テレパシーなどでダメ出し頂けるととても参考になります。

「こんな前書き要らない」でも結構ですので。


では、今後ともよろしくお願いいたします。



狂気とは「認識と認知が一致しない」精神状態を指す。


これが一時的なものであるなら「錯誤」と呼ばれるだろう。

それが持続的なものであるならば「異常」と診断されるのだ。


さて、そんな一例。



問:「犯罪者を逮捕する場合、どんな基準によって行われていますか?」

答:「事件が100あれば100通りの捜査がある。すなわちタイプは無限にある。ゆえにそのような一般的な基準は作れないし、作っても実効性を欠く。」




答えを要約すれば「警察官の気分次第」ということになる。


なにしろ基準が無いのだから。

もちろん刑事訴訟法の規定や判例など、先進国一般で基準とされるものはある。


一つ。

犯した重犯罪が特定されていること。

二つ。

犯した者が冤罪の可能性が限りなく低くなるほど特定されていること。

三つ。

逮捕により逃走、証拠隠滅が防がれること。

※関係者と口裏を合わせたりあわさせたり、過去類似の事件事故を犯している私的記録を破棄したりさせたり、精神疾患を偽装する練習をしたり、などなど。


このとおり。

日本でさえ、一応は、規準がある。

護られているとは言わないが。



つまりこの答えを出した者は法律、警察官の公的な義務職務を理解していないことになる。

そして日本国においてこの答えを導いた人物は警察官僚だったりするのだが。

しかも警察官を育成する立場の人物であったのだがホントに。



早急な診察が待たれる。

もちろん、唯一人個人ではなく、在る階層全体への




【国際連合統治軍第13集積地/白骨街道/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


俺たちが今、入り込んだのは作業区画。

今まで通っていたのは、居住区画。

出発したのが、国際連合統治軍駐屯地。


単語や言い回しに差はあれど、区分けの趣旨は帝国統治時代と変わらない。


まあ俺たちが出現してから半年たってないからね。

ぎりぎりで、あと9日か10日くらいで半年、かな。


でまあ聖都/第13集積地。


南から北へ。

駐屯地、居住区画、作業区画。

今ここ。

作業区画の街路上。


自動車の移動距離として考えればたいしたことは無い。

そうは思えないかもしれないが。


一番広い居住区画を通り抜けたわけだ。


ただ通り抜けるだけで濃密な体験が待っているからね。

主に血とか虐殺とか虐待とか。


とりわけ子どもが一緒だとな。


エアコンディション最強。

防音防弾特注加工が最高。


車内と車外が異次元空間。


そとは世紀末救世主がいない救世主伝説。

なかは小学校中学校高等学校遠足車中。


内外の仕切りが俺。


時間が遅く感じるわけだよ。

まったく。



そんな未来の観光地。

地球人類(かがいしゃ)に残された最後の被害者(いせかいじん)


第13集積地。

俺たちが間借りしている国際連合拠点。

帝国の旧聖都解体作戦軍。


一個軍動員して行われていた。

戦争中の帝国が、一軍を投じる重要作戦。


いや建国からこっち、戦争中じゃないってことは無いらしいが。


聖都。

最低でも数十万が居住していた大都市。


基本構造は石造り。

外郭は煉瓦造り。

細部は小石と木造り。


中世準拠世界では技術的な限界といえる三階建て多数。

巨石をあしらったモニュメントに、居住性を無視してただただ大きくした神殿。

直近10年は軍事拠点として固められた城塞構造は城壁と砦の集積体。


更にその都市圏を支えるために自然発生した周辺農業地帯。

整備された街道に異世界有数の港湾施設は船着き場や倉庫街。


これを破却する。


敷石一つ。

畝一つ。

何もかも残さない。


巨石は砕き、煉瓦は擂り潰し、土台は掘り起こし、がれきの山は貴重な塩と一緒に地下深くに埋める。

何もかも予定通りに進めば五年以内に更地がのころ、念には念を入れて塩地でも育つ雑草を丁寧に植生栽培することになっていたとか。


十年で何があったかすらわからない不毛の土地が出来上がる。


カルタゴか!!!!!!!!!!

ってツッコミたくなる。



塩って高いんだよね。

多くの時代で貨幣そのものであったくらい。

貴金属と同じと考えれば間違いない。


海水という塩水が溢れてる沿岸部でも、それを取り出すには大変な人手と時間と環境が必要なわけで。

それは現代でも変わらない。


ましてや人力と環境に依存している度合いが高い中世においてや。


しかも帝国って、内陸国家。

内陸から出てきた陸生国家。


塩に対する意識は沿岸部の比ではなく。

大変貴重な命の糧。


それを、大地に梳き込むって。

本来であれば何年もかかって発生する塩害。

それを人工的に短期間で完成させる。


ローマと同じくらい、正気じゃない。

これを狂気と言わずして、なにを狂気と呼ぶのだろうか。



俺たちの歴史にもふつーにある狂気。


聖都。

神官巫女たちの聖地。


宗教が無い世界に聖だの神だのって、なんぞ?


そしてなにより、政治首都。

だった。


大陸の豊かな沿岸部。

その北辺に在りながら、ある種の観光地域として栄えた大都市。


大陸全体の先進経済地域が沿岸部。

その沿岸部には入るものの、北にすぎる。


中世準拠の異世界で考える最大産業である農業。

それで考えれば聖都は、特に肥沃ではないので、まあ普通。

実際、周辺の農地だけでは聖都の人口を賄えなかったらしい。


陸路海路を含む交通の要所かといえば、そうでもない。

せいぜい大陸北辺という、ローカル地域の要所。


人と物の出入りは激しかったが、その必然性があったわけではない。


そこで10年にも及ぶ城塞攻略戦が行われたわけだ。

実際の戦略的な価値は、大してなかっただろう。


沿岸部全体が帝国の手に陥ちてなお、援軍の見込みもない重包囲戦。


そこを陥とさなけれなければ、戦争は終わらなかった。

だからこそ帝国は聖都陥落まで、西方戦争を始められなかった。


帝都より西へ進撃する手順を整えつつ、沿岸部支配を固めつつ、動けなかったのだ。


反帝国、っていうより、帝国の征服戦争に抗った旧諸王国の象徴。

象徴というだけあって、実際に諸王国首脳が集まっていたわけではない。

式典や儀式こそ行われたが、ここで反帝国諸王国の指揮がとられたわけもない。


旗印。

まあ侵略って概念が無いからね。


強い勢力が弱い勢力を蹂躙する。

支配して収奪して豊かになる。


国って概念が無いように、大義名分も必要ない。


せいぜいが文化的な近似性を境にする程度。

あとは氏族血族集団が着いたり離れたり。


そんな中世。

初めて始めた大帝国。


いきなり三段抜きで帝国である。

しかも大、自称していないが、傍から見ると大帝国。


はじめまして死ね。

って、そんな連中。


あれー?

おかしいな?

近親憎悪が止まらない?


いかんいかん。

蓋をしておくべき問題。

反省できたらやってない。


そんな帝国。


俺たちが来る前から俺たちみたいな?

俺たちが来たとき案外平静な異世界社会。

俺たちの予想よりは、って話だけれど。


帝国が異世界全体を慣らしておいてくれたんだね。

そーいうノリに。


その順応の過程。


個別に喰い潰されているうちに、最後には団結できた諸王国。

まあ帝国も最期の段階では、団結させようとしていたらしい。


記録や証言をたどるとね。


個別に始末するのが大変だから、かな。

掃除と同じ発想。


国際連合軍ドクトリンを思い出すね。


集積。

隔離。

殲滅。


やはり帝国(きみたち)とは仇か親友のどちらかにしかなれないよ。

だから婚も場合、被害者は帝国以外のすべて。


反帝国陣営は帝国の思惑通りに動いた。

それが間違いってこともないだろう。


どうせバラバラでも勝てなかったんだから。


聖都、というか、いまそう呼ばれている廃墟にかつて住んでいた人たちにとっては、たいへん大間違いではなかったかとおもうのだがな。


諸王国軍。

異世界にかつてない連合軍。


それを造る過程で、絶対に必要だったもの。

誰の上にも立たない、誰もが戴ける旗印。


巫女。

奇跡。

聖都。


帝国に対抗する名分として、祭り上げた、ってことらしい。



エルフっ子に言わせると本来は、星の都と呼ばれていたとか。

それが半世紀ばかりの間に聖性を帯びて、聖都、ね。


魔法翻訳は韻を踏むのが好きなのが。



でまあ、昨年暮れに陥落。

籠城した人たちがどうなったかなんて、考えたくもない。


それを物理的に消滅させるって。

しかも昨年末に陥落させてから間髪入れず解体開始。


十年の攻囲戦と言っても、陥落する時期は読めていたんだろう。

でなきゃ陥落の直前から百万の労働力を集めておけるわけがない。


攻城戦のためにだって、非戦闘員の労働力は役に立つだろうに。

集められた労働力は、攻囲戦には全く使われなかったらしい。


聖都に対する沿岸部領民の畏怖。


それがサボタージュや反乱を生まないか警戒したのかもしれないが。

それなら動員しなきゃいいだけだし、叛乱というなら陥落間際に集めるだけで危ない。


本当に直ぐに素早く直ちに、聖都を消滅させたかったんだろうな。


そこまでするか?

ってのが、正直なところ。


なにか魔法的な理由でもあるのかもしれない。

なにが魔法的かすら理由以前にわからないが。


たとえばほら、放っておくと滅ぼされた人たちの呪いがうんぬんかんぬん、とか?


別にない。

言い切られた。


当の帝国軍捕虜に。


もちろん罠を疑い、疑わなくても敵味方とも日常的な正直になれる処方箋をつかって、なお、理由などないってどういうことですかねぇ。


帝国軍軍人、それも将官ですら、理由を知っていた。

わざわざ壊す理由なんかない。


国際連合軍に参加している各種魔法使いも同調。


じゃあなんで、といえば。

命令されたから。

とまあ、軍人らしい答えが返ってきた。


実際、俺たちが抱いた疑問。

それは帝国軍関係者が抱いたものと同じだったらしい。

当然、彼らも俺たちと同じように調べたわけで。


自分で検討し、部下の意見を訊き、上層部に具申や確認をする。


普通に考えたらせっかく陥した都市なんだから再利用するよね。

立地的に政治的意味合いを失えば衰退するしかないだろうけど。


尚のことわざわざ壊す必要もない。


結論。

危険があるわけじゃない。

壊さないと困るわけでもない。

軍事的には無意味である。


帝国中枢のある人物が命じたから、壊す。


帝国軍人としてはそれで充分だったとか。

上意下達を守る理想的な、ある種、非中世的な帝国組織。


ゆえにこそ、そこで話は終わり。

本当のところは俺たちにも知りえない。

後は、その人物を捕まえて聴きだせばいい。


それが国際連合の方針。


それまでは聖都は保存する。

そのために帝国からなにもかも丸ごと引き継いだのが、国際連合統治軍駐留部隊。


作戦目的。

ひとつ、帝国が異世界大陸各地から徴集した住民の無害化。

ふたつ、ひとつ目が達成できる限り徴集された住民の帰郷。

みっつ、上記二点とは全く関係なく聖都を調査保存する事。


作戦域は帝国時代の区分けに等しい。


聖都。

帝国軍:作業対象。

国連軍:調査対象。


作業区画。

帝国軍:解体作業スペース。

国連軍:廃棄作業スペース。


居住区画。

帝国軍:労働力の保管場所。

国連軍:難民予備軍の監禁場所。


まあ後は、港湾施設や帝国軍宿舎、国際連合統治軍駐屯地。





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