礼拝・崇敬・典礼
【用語】
『選挙』
:民主主義制度における主権者の意志表明手段の一つ。
唯一ではなく絶対でもないが唯一であり絶対であると布教する向きは多い。
それを信じこむ信徒も多い。
が、それは日本特有の現象なのであまり気にしなくてもよろしい。
民主主義や法治主義に縁がない社会だから仕方がない。
ただサンプル数が多く全有権者を網羅しており、集計方法にバイアスがかかっていない。
統計学的に正しく民意を掴むのであれば一番基本となるサンプルになる得票数/得票率が得られる。
学術的な社会工学的な資料としては稀少にして貴重なので、何回手間をかけ予算を幾らかけても十分に採算合う。
ただし、議席配分に関しては隻数配分や区割りなどで極端なバイアスがかかる。
よって議席や当選者自体には民意を示す科学的な根拠はない。
※異世界派遣自衛官は当然ながら期日前投票を含む在外投票が認められている。その対象は全ての選挙となるように公職選挙法が改正され即日施行された。
※異世界転移を国会が承認した「零号決議」以降、国際連合が成立するまでの間に様々な法律が改正された。しかし公職選挙法も例外ではなかったことに気が付くものは多くなかった。
まず去年と今年の住民税納税通知書をみます。
数字が多くなっていれば1へ。
数字が少なくなっていれば2へ。
所得が多くなったか少なくなったか。
税法が変ったか変わらなかったかなんてどーでもよろしい。
次に前回選挙と今回選挙を見比べます。
前回選挙の得票数と当落結果を読んで、当落線上の名前をチェック。
その名前が今回も立候補しているかをチェック。
最下位当選者。
次点(落選者の中の最上位者)。
この二つに注目。
最後にチェックした名前が現在の自治体の長(市長区長町長)の推薦を受けているかどうかチェック。
で。
最初にチェックした数字を確認。
1ならば、推薦を受けていない候補者に投票。
2ならば、推薦を受けている候補者に投票。
かくして議会を市長区長町長と対立させるか協調させるか操作するんですね。
「たいちょーはそこまでかんがえてたんですか」
「投票日の前日に15分使うだけだぞ」
「することはかんたんですが、ふつーそこまでかんがえるか、と」
「嫌いな奴を不幸にできるんだから楽しいじゃないか」
「だんちょーは未成年者の自由恋愛を規制する候補者探してましたよ」
「アイツそーいうこと気にしてたっけ」
「ひとごとであるいあいだはきにならなかったんでしょーね」
《統一地方選記念:在外投票講習会》
※軍政部隊指揮官による黒旗団(有権者二名)での講演なので公職選挙法には抵触しません
【聖都南端/白骨街道/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の右隣/エルフっ娘】
あたしはちょっと、ほんの少し、いたたまれない。
期待はずれ、って思われてるわよね。
これ。
役に立て、なんて思われてないのは知ってるけれど。
役に立ちたい、なんて思ってしまうのはみな同じなの。
それも、あたしの都合。
彼女たちには無関係。
周りで地に伏す女たち。
青龍に慣れない土地では、こんなものなのかしら?
もっとも、青龍に慣れている土地は稀かもしれない。
あの邦は、慣れさせられた、と言うべき?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・というほど時間たってないなのに。
でも、すっかり塗りつぶされてるわよね。
あたし、たち、じゃなくて、邦が。
青龍の貴族。
彼の色に。
彼に出会って以後。
青龍が邦を咀嚼する真ん中で、あたしたちが見聞きしたこと。
でも太守領は、青龍が一番後から来た土地
――――――――――って、言ってた。
あたしたち、ううん、あの娘の故郷、太守領。
あたしはそれを、当たり前に考えちゃっていた。
例外かしら?
なら他の邦は?
太守領以外、あたしが知る、青龍の足下
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・知らなくもない。
彼に出会う前、青龍が大陸に来た直後。
あたしは邦を出て諸邦を巡ったのだけど。
青龍が帝国を駆逐していく最中。
その混乱を一気に駆け回った。
ほんの僅かなあいだの体験。
青龍が来たら、どうする?
帝国軍以外。
相手にされない領民たち。
逃げるか隠れるか。
青龍には支配がないから。
戦を続ける為の徴発や労役。
領土に組み入れるための布告や見せしめ。
懐柔、威圧、説得、取引・・・・・・・・・・・・・・・・。
本当に、なにもかも、なにもなし。
ただ通り過ぎるだけ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生き残った者からみれば。
その進路上にあれば、踏みつぶされてもおかしくはない。
避けないし追わないし見てないし。
ほんとうに
――――――――――避けずに気付かずに、通り過ぎるだけ、だから。
逃げるか隠れるか。
あたしが知る限り、ね。
太守領だって、そうだった。
青龍の貴族が来たばかりは。
その後、あたしの立位置が決まってから
――――――――――ああ、彼、青龍の貴族が邦を一周したころ。
太守領は変わった。
皆が青龍から逃げ隠れしなくなった。
それが、彼の色だから。
そして、聖都は?
ここも変
――――――――――太守領とは違う意味で。
太守領以外の、あたしが知る青龍が訪れた土地。
そんな場所とも、聖都は違う。
逃げ散らずに、伏せずに、隠れずに
――――――――――這い蹲る。
わざわざこちらを向いて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・確かに変わってるわね。
だから彼、青龍の貴族は尋ねる、あたしに
――――――――――知らないわよ。
つまりそれは、青龍の貴族だけではなく、青龍それ自体が知らない、やらせていないこと。
青龍から発したことでなければどうか。
まあ似たような風習は以前からなかった訳じゃないけれど。
貴人に領民が跪く、諸王国からの習慣。
でも、それはそれでおかしい。
今、あたしたちの周り、青龍の貴族に対するソレ。
跪く、なんてものじゃない。
あんなやり方、あたしは知らない。
何百年と生きてきて、見たことも聞いたこともない。
新しく、最近、始まったばかりだと思う。
青龍から、ではなく、青龍で生じたなにか。
なにか。
なぜか。
それは?
儀礼。
ではあるんでしょうね。
何かを示すこと。
だから何故と聞かれたら、あたしには判らない。
でも、何故、ではなく、何、なら判る。
だから応えられたのだけれど。
なにが始まっているのかしら。
あたしも気になる。
【国際連合統治軍第13集積地/白骨街道/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】
俺たちの車両隊列。
大昔の大名行列。
這いつくばる行商人。
ひれ伏す領民。
一見すると同じ様に見える。
真逆だが。
権力と権威の相似と相違。
俺たちが権力。
望まぬことをさせる側。
歴史事例は権威。
望まれそれをさせる側。
そんなもんだ、で片づけていいのかもしれない。
自動車に怯えて恐慌状態。
それが異世界住民の標準だ。
が、この辺り、聖都出入りの住民は違う。
それこそ長年、帝国軍の竜に慣れている。
まあ、親しんではいないだろうが。
竜の恐ろしさを知っているからこそ、怯えない、ハズ。
って、書いてあったんだがな
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・事前に読んだレポートには。
まあ、あるある。
見ると読むとは大違い。
たいした問題じゃない。
ランドクルーザーに怯えたからといって、死なないし。
本当に問題なのは、目の左右を行き過ぎる彼女たち。
のさらに背景にいる、無数の同業者たち。
彼女たちの暗い未来だ。
みた範囲なら、数百人。
だが今日の外出前、偵察ユニットや哨戒気球の映像チェック。
第13集積地、その街道を埋める女たち
――――――――――行商人とはね。
脅威度表示しかみてなかったからな。
【聖都南端/白骨街道/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の右隣/エルフっ娘】
そもそも、あたし、青龍の貴族に礼儀を示したことがあったかしら?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すごく、まずい、きがする。
―――――――――――――――――――――手遅れ。
礼儀を示す前に結ばれたんだから仕方がないわ。
惚れた身ではあるけれど、惚れられてもいるわけだし。
。
最初から非礼も無礼も問題にされなかった。
最初から身内のように背を任せられたしね。
最初から
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 、とか。
。
出会ったときは虜囚も同然。
気が付いたときは氏族も同然。
その間、一瞬。
あたしは、そのとき?
※第7話<三人姉妹> より
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まだ惚れてなかった、と思う。
たぶん。
先に惚れられるなんて、あり得ないとは言わないけれど
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ない。
彼に限って、絶対に、ない。
あたしの方が先に好きになったのは間違いないわ。
なら、初対面では、あたしは見知らぬ女だったわけで。
その 扱い。
その理由は?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――見透かされていた、とか
、 。
、 。
先に、気が付かれていた?
彼に。
それと気が付かなかった?
あたし。
なのに、もしかして、あたしは、あの娘が彼に好意を向けていく様子を、余裕な気分で、見ていた、わけ、か。
それを見透かして、あたしを見ていた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 。
あたしは、彼、青龍の貴族を視る。
硝子?
に似ている、らんどくるーざーの一部。
塞がれた窓、というべき矛盾した、透明なのに鏡の様に映す、矛盾したもの。
そこに映る、青龍の貴族、その横顔。
こちらを見ていない、それはいつも通り。
あの娘たちを撫でながら、別なものを見ている。
あたしたちを、見ていない。
でも、見透かしている。
あたしたちを、なにもかも。
いまさらながらふりかえると、凄くカッコ悪いことばかり。
いまさらカッコつけるなんて、無理なのは判っているけれど。
いまさら繕ったところで、弄られることにしかならないけれど。
よし。
決めた。




