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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十章「異世界の車窓から」

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機械仕掛けの葡萄/The Grapes of Wrath.

【用語】


『ジョン・スタインベック』

:史上屈指の博打打ち(ギャンブラー)


「堅実に生きたければ馬券を買っていろ。小説なんか書くんじゃない」

と若者を諭しながら、生涯にわたって小説を書き続けた。


それはつまり。


「執筆は競馬より面白い」


ということなのですね。

うん。



勝率ゼロの世界にしか生きられない、正しく博徒。

生活費を稼ぐために行ったアルバイト多数。


第二次世界大戦中はOSS(Office of Strategic Services/戦略諜報局、後のCIA)でプロパガンダ文書の作成。

戦後は設立間もない合衆国空軍の宣伝文書作成。

ベトナム戦争がはじまると通信社のベトナム特派員とCIAベトナム支局諜報員を兼務。

通信社からは「ジャーナリズムのために死ね!」と蹴りだされた。

CIAからは「星条旗のために死ね!」と放り出された。


※この当時から合衆国では「報道の自由は政府の敵である」という思想が芽生えていた。

※21世紀の合衆国では「報道の自由は国家反逆罪である」と言う規定が成立している。

※ウィキリークスの関係者が次々と反逆者として逮捕されているが法律ではないらしい。


他にも生活保護や自給自足や物乞い万引きなどを歴任。

※実話。

そうして快適な生活を維持しながら四回結婚して友達も多く両親とも良好な関係を続ける。

※全部実話。


でもギャンブラー。

基本的に文書を書いてばかり。

小説という博打に燃えるギャンブル依存症。



代表作「怒りの葡萄」は小説っていうか、事実中心なのでルポルタージュのような、でも小説。


大規模農業産業による土地開発で発生した環境破壊で生態系が破綻。

生存環境を失った数百万人の難民が発生。

難民を奴隷化する農業産業と地下活動に追い込まれた難民の間で戦闘が発生した。


そんな実話を基にした作品。

現在までに実売1400万部と言われ、1939年の発表当時も大ベストセラーとなった。


合衆国の破綻と再統一がせめぎ合う世相の中で、破綻の象徴である事件を題材にしたために避難殺到。

発禁、焚書、スタインベックは埋められなかったが図書館への持ち込み禁止や撤去などの弾圧が激化。


これに対してアメリカ図書館協会が「図書館の権利宣言」でこれに対抗。

※実話。

図書館戦争の直接的原因となる。

※実話?


スタインベックは後にノーベル文学賞を受賞。

もちろん一部例外を除いて全然売れない彼の作品。

最期は心臓発作で急死。


弔意文より。

「ノーベル賞が彼を必要としたのであり、かれはノーベル賞を必要としてはいなかった」

ちょうどキューバ危機のど真ん中。

西側陣営の結束をアピールする為に合衆国から選びたいところだった。

もちろん、衆目の一致する人物でないと逆効果。


「彼のもっとも優れた作品は唯一すぐれた作品であった」

一発屋と言ってるんですが。

それをわざわざ弔電にする批評家も実在するんですよ。


小説家からすれば、存命中にぜひ言ってほしいですね。

目の前で。




正しい分析は正しい思想から生まれ正しい行動を導く。



「弾圧は、弾圧される者を強くし、結束させる作用がある」


―――――――ジョン・アーンスト・スタインベック(ジャーナリスト/作家)


なるほど。

まさにその通り。

理に適った分析だ。


「ノーベル賞を必要としなかったが、ノーベル賞が必要とした」

と言われるジャーナリストだけのことはある。



我々はここから何を学ぶべきか?


「弾圧は全く無意味であるだけではなく、逆効果」


という簡単な事実だ。

すなわち。


捕えてはならない。

殴ってはならない。

脅してはならない。


それは人を結束させて、それがますます行動に駆り立てるだろう。

それは反発を生み出し、叛逆を招き、反乱へと追い込んでしまう。


故に、支配下にある人々を弾圧したりしてはならない。


人々はたまたま支配下にはいってしまった。

我々はたまたま支配権に入れてしまった。

互いに出会いを望んではいなかった。



この出会いを大切にするために。

決して弾圧してはならない。

その別れを良いものとするために。



殺せ。

滅ぼせ。

消し尽くせ。


結束されないように、根絶やしにしよう。




※なお結束したから強くなるとは限らない。

※世の中には一網打尽という言葉がありまして。

※「怒りの葡萄」がループして経済難民が定着している現実があった。

※「継続は力なり」で弾圧も続ければ効果があるかもしれない。

※「続ける気なんかない」という合衆国大統領のお言葉。


《国際連合統治軍秩序維持講習会冒頭挨拶》







【聖都南端/白骨街道/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の右隣/エルフっ娘】


あたしは

―――――――――――――――――言葉にされないのを、気が付かれないのを、喜ぶべきかしら?


声には出さない。


だから、あの娘たちが外を見ない

――――――――――横顔を見上げるのに夢中。


彼、青龍の貴族の。


Colorfulもそこは同じ。


主の機微を窺い、覚え、反応できるように

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見惚れてなーい?


側仕えの嗜み。

それを忘れてるわね、これ。

Colorfulがどんな作法を躾られたかしらないけれど。


あたしは侍女のそれしかしらないし。

それでも、奴隷の仕草とは違う。

それは雰囲気で判る。



本当に変わったわね、この娘たち(Colorful)。


それでも見習うくらいに、男あしらいこそ長けているし。

駆け引きっぽいところが、まったくないけれど。


其れも含めて、あたしたちには貴重なお手本。



Colorfulの視線が職業的な頃があった。

最初に出会ってから、ほんの少しだけ、十日くらい?


青龍の貴族に所有された直後。

あくまでも所有者に対する立ち位置だった。


一歩引いた視点は、あたしも見習っ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おうとしていたんだけれど。


一瞬で無くなったわね。



実際には数日、かしら?


でも出会ってすぐに変えられた。

そんな風に見見える。



Colorful。


はじめての持ち主が、青龍の貴族。

奴隷商人は奴隷を、所有者として扱わないから。


生涯かけて、愛玩物として躾けられてきたのに。

ハーフエルフとして、生き残り方を仕込まれてきたのに。


瞬殺。

いままでを、青龍の貴族に。

踏み潰された。


戸惑いもあったのかしら?

まだあるのかな?


余裕が無いのは判るし、それも参考にはなる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生かせるとは言わないけど。



まあ仕える立場じゃなくなってきてるんだから、楽なんでしょうね。


好きな男に宮仕え

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どんな悪夢よ。


距離を置き、節度をわきまえ、求められるを待ち、周りに対して演じる。

ただ仕えるだけなら。


にじり寄り、抱きついて、飛びついて。

思うがままに縋って、強請て、請うて、拗ねて。

求めて求められてからかわれて。


だだ独りの為に演じて誤魔化して取り繕って、視線一つに一喜一憂。


捧げること。

仕えること。

奉仕

――――――――――そういうこと。


とはいえ、今はいいわ。



Colorfulも、外を見るべきだとは思わない。

大勢の目、それがハーフエルフに心地良いとは思えないし。


まあ彼の、青龍の貴族の女である限り、人目は避けられないけどね。


大衆の前で連れられ、抱かれ

・・・・・・・・・・・・・・・唇まで、吸われるだけじゃすまなかったわよね、うん。


嫉妬してない。

嫉妬しない。

嫉妬を見せない。


もっともっと、もっとも~っと、あたしの方が、いろいろされてるし!!!!!

肝心なところがお預けなのは、みんなだし!!!!!!!!!!


だから、あたしの方が、愛され

――――――――――てる (とおもうし)!!!!!!!!!!

ぜったい (だよね)!!!!!!!!!!


だから、あたしは、そんなこととは関係なく (ほんとに)、おもうのだ。



そとに這い蹲らせられた女たち

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それを出来るだけ、あの娘たちにもColorfulにも気が付かせたくはない。



知らなくて良いことは、いくらでもある

――――――――――あたしは、そう思う。


それに世間知らずな彼女たち。

青龍の疑問に気が付いても、答えられないしね。


あたしは平気。

あたしは知ってる。

あたしはずっと見てきた。


つまり今、青龍の貴族、その疑問に反応出来るのは、あたしだけ。




【国際連合統治軍第13集積地/白骨街道/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


俺は相も変わらず索敵情報を眺める。


ちびっ子たちを撫でながら。

けっして近くを見ない感じで。


いや、けっして小さな二人を見てないわけじゃないけどね。

俺たち、ランドクルーザー近くの女、いや行商人たちを見ないだけ。


聖都。


第13集積地全体を見渡せば、索敵網で眺めれば、自然な感じの姿が見える。

異世界住民の自然な感じ、っても限度があるけどね。

余所者ですから、俺は。


俺たちの車列からみて10kmくらいの位置。

そこにも行商人一行がいる。


哨戒気球が真上から。

偵察ユニットが斜めから。


最寄りの自動機銃からの映像が一番見やすい。

横から、同じ高さだから。


哨戒気球は音もなく。

偵察ユニットは滑空飛行。

自動機銃は防振防音ゴムが作動音を最小化。


おそらくたぶん、俺たちを意識してはいないだろう姿。

つまりはいつ殺されても自然であることを、自覚しないでいる時

そんな女た、行商人たちの姿。


時たま荷馬車が混じり、荷物どころか女たちが乗っている。

いえ、覗き趣味じゃないですよ。


なにしろ、ちびっ子たちと重なって見える。

そのように索敵情報の表示位置を調整しただけですが。

でもまあ、心配になるよね。


特に魔女っ子。

この子の視点で考えるとさ。


人が死ぬのを嫌がるからね。


第13集積地居住区。

国際連合統治軍管轄外の住民、周辺地域の商人は自由に出入り出来る。

だから。


此処、第13集積地では物売りの殺戮が多い。


何が、だから、かって話か。

まあ、ちびっ子二人には見えないが。

距離もあるし、頭が窓枠に届いてないし。

二人は特に、俺の視線を追うからね。


突然のスプラッタショーに遭遇しまい。

このゲスト用ランドクルーザーは防音もそれなり。


いや危惧してるのは、帝国軍の串刺し祭りじゃない。

あれは車両が近づく前に始まるから、対処しやすい。


最初から教えてほしかった。

当たり前すぎて、注意事項にすら上がらなかったとか。


危険が無いからね。

普通は子供連れてないからね。


国際連合は児童兵士を厳禁しております。

それが異世界の傭兵であっても、です。


そこは割り切ろう。

要警戒は、自動機銃だ。


照準している時は静か。

ランドクルーザーの防音機能が無くても、作動音なんか聴こえない。

エンジン音の方が大きいくらい。


射撃音はそれを凌駕する。

だから困る。


居住区を出入りする商人たち。

彼女たちは帝国軍管理下だった時からの常連らしい。

だから無人兵器に慣れている。


悪い意味で慣れており、行商人の彼女たちには

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・自動機銃とゴーレムの区別が、ついていない。


だから自動機銃に近づいてしまう、恐れ知らずがいるらしい。


ゴーレムなら魔法使いのさじ加減。

徴集農民だけではなく、帝国軍にも出入りする行商人。


ましてや若い娘たちを挽き肉にしたりはしない。

帝国軍は、だ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そーなのか。



ここまで伝聞、だが、俺は知っている。

自動機銃にさじなどついていない。


IFFに反応がない、味方以外。


近代火器を前提とした、広い広い警戒範囲。

それは魔法攻撃を前提としている為に、変更されていない。


誰でも持てるAK/RPGと、生得の資質が必須な魔法をごっちゃにする。

識別コストより弾をばら撒いた方が安く付く。


これぞコストパフォーマンス。


自動機銃の役割は居住区の出入り制限だけじゃない。

自動機銃自体の防衛も、設定済み。


味方以外が立ち入れば、自動射撃。

警戒範囲より広く、射界に入った味方以外を撃ちまくる。

もちろん、味方以外のすべてが動けなくなるまで。


最初から全索敵機器を動員して照準。


徹甲弾、瑠弾、最適な弾種で全力斉射。

もちろん警告などしない。


当然、威嚇など有り得ない。

味方以外に手の内を晒したりはしない。


事前に知らせたら、自動機銃のスペックが推測される。

そこから銃の性質を知り、性能をしる。


索敵照準システムのスペックを推測されるまで、時間はかかるまい。


事が起これば皆殺し。

事後に知られる恐れはない。


なら最初から殺す。

それが非武装の民間人であろうとなかろうと。

選択の余地はない。


近付いてしまった一人か二人。

射界の範囲に居る数十人から数百人。


居合せた行商人。

エスコートする商人。

警邏に着く帝国兵士。

衆へ居住区内の徴集農民。


全部。

平等に。

まとめて。


これぞリスクコントロール。








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