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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十章「異世界の車窓から」

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水が低きに流れるように。

【用語】


『アムネスティ』:日本の異世界転移後、国連より早く再建された国際的な人権団体(NGO)。売春合法化の実地試験を兼ねて、日本で育成した娼婦を雇用し異世界大陸国連統治下で営業している。なおアムネスティの「売春合法化論」は現実に準拠しており小説上の設定ではない。ただし、支部ごとの独自性が強い団体なので全体の総意と言えるかは微妙。


(詳細は第28話 「アムネスティ」 より)




"The road to hell is paved with good intentions"

(地獄への道は善意で導かれている)



昔々の大昔。


ジーンズと呼ばれる衣服をご存じだろうか?


そのジーンズを「資本主義的である」という理由で禁止した国があった。

本来ジーンズは労働着なので「労働者の国」を標榜するなら推奨すべきところだが。


まあ「王政復古」という日本史上初めての新思想を復古して「廃仏毀釈」にはしった明治政府もあるし。

なんでも「神道」が唯一絶対の正しい思想なので「仏教」という異国から来た思想は云々閑雲。


だがまあ、正常な思考を持つ人間には辻褄が良くわからない。


絶対天皇制という日本史上初めての体制を造る上で、それで絶対権力を確保しようとした者が仏教を否定する不思議。

聖武天皇は仏教僧侶としての資格を持っていたので、それはつまり皇統を否定することになるのだが。


もちろん仕方がないこともある。

一般農民より識字率が低い下層階級が中心となった明治政府関係者。

彼等は、歴史的事実を知らなかったのだろうけれど。


革命政府っていうのは、何処でも似たことをやるモノである。


ようやっと、ジーンズの話だが。

実は本題ではない。


なのでさらっと進める。

ジーンズを禁止したことでジーンズ自体の流通は減らなかった。

そもそも出回ってないしね。


平等な国の富裕層子弟がユーザーだ。


ただ値段がさらに上がり、販売者がロシアン・マフィアになった。

正規の国営企業では扱えないし、個人で売買するのもリスクが高いからだ。

そして民警は忙しく、そんなどうでもいいことを積極的には取り締まらない。


つまり犯罪組織の、安全で実入りの良い、資金源になった。

それは組織の基盤固めの一助となり、その国の地下経済はさらなる発展を遂げる。


税収が減り、把握できない地下経済が増え、犯罪者を増やし、犯罪を増やした。

後年その国は地下経済に侵食されて滅びた。


では、本題。


誰一人傷つかない事物を倫理的に禁止すると何が起きるのか?


税収が減り。

経済が収縮し。

犯罪者が生まれ。

犯罪が増えます。


場合によっては被害者も。


人の内なる善きもの(倫理)を、外に抉りだして かたち(法律)にすれば。

必ず同じことが起きた。


繰り返す(Amen)

倫理を法律にすれば、地獄が生まれる。


今、貴方たちが常に被害者を生み出し続けているように。





【国際連合統治軍第13集積地/白骨街道/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


俺は行商人から目を逸らしたまま。

見ていて楽しくないからだ。


街道沿い。

俺たちが通る道々。

手が届く範囲。

良く見える。



本来ならサイコーなのだが。


全員が若い女。

古着しかない異世界でも、華がある。



全員が全員、地球の欧州でもあり得ないほど金髪だから、ではない。

ちょっとした着こなしで、魅せることを意識している。


帯をつかって要所を締めて、肢体のラインをキレイに見せる。

おそらくは見せたくないところは、布を飾るように巻いて隠す。


けっしてふといのではありませんいいね?

けっして貧弱なのではありませんいいな?

けっして荒れたり染みたりしてませんよ?


OK!

OK!


そこは嗜みだ。

相手が魅せたいところを見る。

相手が見せたくないところも見る。

比率はだいたい9:1で。


魅力にひきつけられていることを強く強く強~く、アピールしつつ気づかないとか気にしてないとか相手に解釈をゆだねるのである。


世の中にはおかしな奴が多い。


味も判らんくせに産地にこだわったり。

審美眼もないのに作者にこだわったり。

値段しか知らんのになんかこだわったり。


俺は違う。


モドキ食品が好きで誰の作かなんて知らんし値段は水物と割り切ってる。

上げ底矯正面造り産地偽装に贋作偽札どーでもいい。


俺が起きる前に必死に起床する姿を生暖かく見守ります。

だから楽しいはずなんだよ、こーいう状況。


髪を結い上げ綺麗なうなじを見せたり、肢体の中心線付近で隙間をとり肌を露出。

肌荒れや傷ができにくい場所を晒し、手先足先は隠すわけだ。



本来ならじーっと見るところだ。


チラチラ見ては細部が見えない。

重要な部分が見えないようでは愉しくない。


だいいち見るということそのものが、相手に向けた先制初手。


人間関係にありがちな、あらゆる誤解を排しさなくてはならない。

男女関係にありがちな、ありとあらゆる間違いを正さなくてはならない。


女だって、いきなり声をかけられたら困るだろう。


だから見る。

事前に、これから貴女を口説くために行動を開始しますので、とはっきり明確に知らせるために。

相手に準備を整える、間を与えるために。


宣戦布告してから攻撃なんて、戦争ならあり得ない。

オマエバカだろ、って話だ。


偉い人は言いました。


他国の悪口を言ってはいけません。

警戒されたら滅ぼす時困るじゃないですか


他民族の悪口を言ってはいけません。

滅ぼさなきゃいけなくなるから困るじゃないですか。


常に相手をほめたたえましょう。


共に生きるならばやりやすい。

滅ぼす時はもっとやりやすい。


他国や他民族の悪口を言うやつは、馬鹿か売国奴と言い切れる。

相手にとってのボーナスポイント。


だから俺。


日本人なので、日本を悪く言う他国民や他民族が大好きです。

ネギ背負ったカモを嫌うほどストイックじゃないから。

棚から落ちてくる牡丹餅なんか最高です。


キミが産まれてきてくれてよかった!


だが。

女を口説こうとするときに、不意を打つバカはいない。


不意打ちには皆が驚く。

驚かせれば守りに入る。

守りに入ると断られる。


そこからこじ開けるのは大変だ。


え?

あたりまえだけど、断られたくらいで諦めませんよ?

その場で食い下がるのはバカだけどね。


断わられたってことは、相手に好意がつたわった、ということ。

一手目はそれで十分。


もちろん、断られる寸前で手を退くのが一番だけどね。


好意を伝えることでプラス。

プラスが出たらそこで終わり。

勝ち逃げを続ければいいんだから。



普通はそんなもんだし、そこからそこから。

どんな場合も損切りは必要だが、初手でしているようじゃ、損しかしない。

損切りってのは、勝つためにやるんだから。


いきなりフォールドするもんか。

最後にずらかるにしても、何度かカード交換して相手を見てからだ。

でないとアンティを寄付しに来たのかってことになる。



魅せようとする女ってのは、実に好い。


これは、ほんの一例。

何処であっても女だね。

世界が変ろうが変るまいが。



うちの子たちほどじゃないけれど。




【聖都南端/白骨街道/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の右隣/エルフっ娘】


あたしの嗜好は別にして。


あの女たちは恵まれた領民たち、なんでしょうね。

人もうらやむ小金持ち。


太守領のような穀倉地帯でもない、気候が厳しい北の邦。


広く一普通の農村暮らしは楽じゃない。

生きていけないほどではないけれど、それだけだ。

内陸部なら普通かも知れないけどね。


畑を耕して過ごすだけなら、豊かな大陸沿岸部の中で、最も貧しい地方。

豊かな南の地方を知っっている、だからこそ、大陸で一番貧しいのかもしれない。


知らなければ、何も不満に思わないでしょうに。


上を知るから不幸を知って。

下を見るから恐怖を覚える。


でも女たちは違う。

女たちだけは、金を掴める。

一人一人がその手で、財貨を得られる。


その一人一人は、農村の女たち。

街娘は少ない。


ある程度人数が集まらないと旅に差し障る。


街より村の方が、人のつながりが強い。

比較の上で、村娘の方が集まりやすい。


求める者。

与える者。


交換相手は互いに依り合う。


彼女たちを引率している商人。

彼等は物を運ぶ商い。


馬車を貸し、隊商を組み、街道と宿街に拠点を構えているものだ。


ほとんどの場合、決まった道を通る。

決まった村街に寄りながら、決まった商品を積み降ろす。


そんな彼らと女たちは、村単位で契約する。

馴染みだけに裏切らない、裏切れない。


ただし彼らは女衒じゃない。

女たちも奴隷じゃない。


娼婦になった農婦たち。

彼女たちを管理する者はいない。


客との行き違いに備え出身地でまとまっている。

それだけ。


つまるところ、彼女たちが出向くのは、帝国軍の陣地内。

行き違いを越えた事件が生じれば、帝国軍を頼ればいい。


帝国軍は労役の効率を護るために、厳しく秩序を護らせる。

それが判っているから、問題が起きても言葉で解決する。


解決しなければ、双方殺されるからね。

青龍みたいに、関係があるかもしれない者たちを皆殺し、とまではしないけれど。


だから娼婦たちは、何処にも属さない。

街の娼館の様に、元締めもいないし用心棒もいない。

稼ぎは概ね、一人一人のモノ。


同行の商人たちが、手形で管理して保証してくれる。

商人の割符を渡されれば、広い範囲で金に換えることができた。

かかるのは手数料だけ。


行き帰りの旅費と同じく、数が多く毎年なので安くしてもらえる。


彼女たちが体で稼いだ金は、村とは関係ない。

村が徴収しようとすれば、女たちは出て行ってしまうだけ。


売上が多い娘は、勝手に街に出たりもしてしまうそうね。

中にはやり手も居て、街で商売を始めたりもするでしょう。


村や集落なんて、商人でいうギルドより緩い。

目的は同じく、互いを守り協力すること。

利益を守り、利益を得る。


人一人が力を得れば、不要になる。


普通はそんな力、一生かかっても得られない。

だから農夫農婦は村を出ない。


暗黙の了解。

無力な思い込み。

誰かが踏み出せば終わり。


だから娼婦になった女たちは、村に縛られない。

村も小金を稼いだ女たちを、縛ろうとはしない。

縛り付ける人手も組織も考えも、村々にはない。


もちろん領主、そして後に帝国は、領民の逃亡を許さない。

税を納める民であり、収穫を生み出す家畜なのだから。


だから。


税が減らなければ。

収穫が減らなければ。


特に帝国は、得られる利益が変らなければ、必要を満たせれば気にしない。

一人一人の領民をみず、村単位地域単位で見ていれば当然でしょうね。


普通の逃散農民なら?


あからさまに税収が減る。

ほどなく野盗や浮浪者が、領地を荒らす。

だからその前に、村を離れる者は殺す。

吊るして見せしめて、道理を教える。


ただの娼婦に転業すれば?


税収が増えることはあっても、減ることは無い。

領地以外から持ち込まれた金で、商いも回るようになり活気も増す。

街や市が人手を求めれば、農村から移動しても支障はない。

むしろ歓迎して黙認、ないし推奨する。




証券や金を持った、判り易い例外。


真似をしたければすればいいい。

手段はあるし方法も知られている。


ただそう扱うだけで、問題はないからだ。


産まれ育った、気心の知れた場所。

小金があるからと言って、新たな冒険に取り掛かるのは少数派。

極々、少数派。


女たちの大半は村に帰ってくるし、まったく遊び暮らすのも少数派。


村としては女たちが戻れば、ただ単に居続ければそれでいい。

大抵の女は子供を宿してくるので、村の人数が減ることもない。


遊び暮らすなら金が落ちる。

居さえすれば手伝いくらいはする。


村の子育てを務めながら、自前で食える女たちが多くなるわけで。

女たちが外に出ている間は、備蓄の収穫をたべる人数も減るのだ。


外から持ち込まれた小金の分、収穫が増えなくても余裕は増える。

一時、女手が少なくなっても収穫自体はあまり変わらないからだ。


主な女たちが留守の村と畑を守っていた男たちは、その意味で報われる。


女が少ないのはつらいでしょうけれど。

ほどほどに稼いで娼婦を止める女や、嗜好が合わないからしない女はいるし。


誰も困らない。

だからこそ、きまった形があるくらい。

大陸全土共通。


帝国軍の大きな労役が始まると、同じ形がすぐにできるのよね。



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