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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十章「異世界の車窓から」

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眼下(めした)の敵

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします



本作では一人称で描写される登場人物の固有名詞を使いません。

他の登場人物も複数ある役職名やアダナ等で呼ばれます。


文節の大半は一人称となりそれが次々と入れ替わります。

よって、以下の特徴で誰視点であるのか、ご確認ください。


・一人称部分の視点変更時には一行目を【】で区切ります。

・【語る人間の居場所/誰視点】とします。

・「誰視点か」の部分は「青龍の貴族」「魔女っ娘」など代表的な呼称(役職名やアダナ)を入れます。

・次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。


以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)




【登場人物/一人称】


『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿/たいちょー》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。軍政官なのでいつも陸上自衛隊制服(常服)着用。元々訓練以外で戦闘服を着たことがない。


『あたし』

地球側呼称《エルフっ子/エルフっ娘》

現地側呼称《ねえ様》

256歳/女性

:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。シスターズの姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳、白い肌。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。



「子ども扱いするな」



子どもが良く言う言葉だ。

大人ぶった瞬間に、全ての大人が優しくなるだろう。

まあ、当然だよね。


俺はしくじったことがある。


人生の岐路。

そう、あれは、高校三年生。


ニートか。

失業者か。


不戦勝か。

参戦勝か?


俺はことさら、子どもとして振る舞った。

誰もがガキだからこそ、必死に大人ぶっている中で。

それはもう、好き放題にたのしんだ。


大人の真似をしている張りぼてを褒めそやし。

利害計算はおろか思考能力すらない人形たちを送り出し。


みんなが行くから俺いかない。


俺を墓場に誘う悪鬼羅刹。


不幸な人は友達を求める。

幸福な人は友達が求める。


まさにそれ。

大人たちが。


走るゾンビとして襲い掛かってくる!


マジ、怖かったです。

誰か鏡見せてやれ。

そう思いました。


だから俺は戦った。


俺は子どもだから可能性に向かうんです。

俺は子どもだから個性を求めてるんです。

俺は子どもだから自分の夢があるんです。


いや、いいとこまで行った、と思うよ?


だが。

負けた。


全てを棄てて挑む覚悟が無かったから。

大学というトライアウトを、コッソリ用意していたから。


手順を万全に整え、此処で敗けたら次は其処。

金蔓を探り、退路を物色し、理論武装と偽装工作。


バレタ。

おかげで第二戦線「就職浪人」作戦へ交代。

しかし敗走を止められず。

最終本土(じこ)決戦「失業保険」作戦遂行中。


運が悪かった、のは確かだろう。

だが、失策は否めない。


二手三手先なんか考えるんじゃなかった。

俺は気が弱いのよ。


「次善など最善が敗れたときに考える」

といかんのよ。


ただ一手に総てを投じられる奴は強い。


しかも俺、見栄っ張りなのよ。

カッコつけたい年頃なんだよ。


産まれた時から。


皆と同じようにしていたら。

皆から浮き出て注目されていなければ。


頭の悪いガキが未熟な大人の猿真似をしてるのを模倣しておけばよかったのに。

それを斜めに見ていたら、そりゃばれるよな。



大人(ゾンビ)どもが畳みかけてきたことは、言うまでもない。


「不言実行とはあのことだな」

「自分の未熟さを見据えて、将来のことを考えている」

「あの年ごろであそこまで大人びているとは」


うっせーよ。

というわけで、若人に送ろうこの言葉。


「子ども扱いするな!」





【聖都南端/白骨街道/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の右隣/エルフっ娘】


彼の視線が向く先。


「行商人たち」


あたしは応えた。

彼、青龍の貴族が思ったから。


あれは、なんだ。


ってね。

ほんと、言葉が少ないわよね。

というより、言葉が無いわね。


♪♪♪


彼が思う。

あたしが応える。


それが男と女の距離♪

それが心地いい♪


以前の、出会って間もないころの、あたしだったら気が付かないわよ?

もうちょっと、判りやすくしてくれてもいいんじゃない?


誰にでもわかるようにしろ、なんて言わないけれど、ね。


声を聴けないのが不満。

心には響いてくるけれど。


耳に響かせたいじゃない?


閨でも。

湯殿でも。

寄りかかってるときも。

抱きしめられてるときも。


何も言わないんだけどね。


あたしにも。

あたしたちにも。



でも、Colorfulには言うわよね。

一言だけど。


む――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――あたしたちには言わないのに!


Colorfulにだけ、いろいろ、ってほどでもないけど、それなりに、でもないけどいくつか、いつも、ってほどじゃないけど毎日、たまにだけど毎日ではある、しかも決まった時間に声をかけてあげてるわよね。


Colorfulにいつもいつも、彼、青龍の貴族が与える声。


休め。

止め。

動くな。

行け。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ~コレ。



命令、ね。

常に側にいるから、来い、はないけれど。


命令には従え。

遅滞疑問確認は赦さない。

意見異見上申は許す。

従えなければ死ね。


それは、まあ、誰にでもおんなじ、かな?


休め。

止め。

の二つ以外、ほとんど聴かないけれど。

あたしたちは、傍で聴いてるだけだけど。


命令

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・少なすぎない?


朝。

昼。

夕。


役目を早く始め過ぎて、止められるColorful。

役目を続け過ぎるので、止められるColorful。

役目を明日に回さない、止められるColorful。


命令以外は、全部好きにすること。

命令以外は、全部自分で判断すること。

命令以外は、命令を求めないこと。


それで困ったColorfulは、右往左往してしまう。

最近は、あたしや、あの娘、妹分に訊いてくるけどね。


我が君のために、何か出来ることは無いですか?

って。


なんか

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違う。


自分の女に対する扱いじゃないわよね。

求められるっていうのは、なんであれうらや、いいと思うけれど。

他人事ながら、腹がったってくるわよね。


騎士、臣下、もっと言えば領民に対する扱いと同じじゃないの!!!!!!!!!

あたしたちなんか、ほぼ声をかけてもらえないのに!!!!!!!!!!!!!!


あたしや妹たちは、本当に声をかけてくれない。

言われなくても判るけれど。


彼の好悪。

彼の欲求。

彼の是非。


気にかけられてるのは、判る。

あたし、たちのことをよく見てるしね。


あたし、あの娘、妹分は笑顔を返して伝える。

大丈夫、って。


青龍の貴族、彼は、一応、納得顔。

でも時々繰り返す。


大切にされてるのは、凄く解る。

みられるだけじゃないからね。


抱かれるし。

撫でられるし。

隅々まで

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、いろいろと。


肝心要が抜けてるけれど。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――悦ばせるだけ、って、ヒドイと思う。


でも!

気持ちと!!!

態度だけじゃなくて!!


大切なところが抜けているのはさておいて、おきたくないけどあえて!!!!!


もっと声を出してよ!

伝わればいいだろ、って、そーいう問題じゃないから!!

不都合が無いから?

あたし、たちには不都合だから!!!


言えないけど。

言わないけど。



でも。

通じ合っているような気分は、なんか、すっごく、嬉しい♪




【国際連合統治軍第13集積地/白骨街道/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


俺が訊く前に答えてくれたエルフっ子。


ありがたい話である。

ドヤ顔可愛い。


思わず飴玉を上げたくなる。

が、止めておこう。


小さい二人がみているからね。

Colorfulも見てるし。


エルフっ子は年上だ。

実年齢も精神年齢も肉体年齢も。


オカン気質の長女ポジション。

すぐ、澄まし顔に戻している。


恥をかかせてはいかない。


親切なエルフっ子に何よりのお礼。

世話好きなこの子に、助けられてるからな。


いつもすまないねぇ。

と言いたくなるが、そこは俺。


どうすれば喜ぶのか。


子ども扱いすると拗ねる、そんな子どもの顔。

よく見るよく見る。

大人扱いしてあげると、喜ぶだろう。




【聖都南端/白骨街道/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の右隣/エルフっ娘】


いけない。

あたしは表情を引き締めてから、自分に言い聞かせた。


うん。

手遅れよね。

みられたわよ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――浮かれた顔。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!


失敗。

大失敗。

駄目。

凄く駄目。


一喜一憂するなんて、あたしらしくない。

あたしは、そう、青龍の貴族と、一番釣り合いが取れてるんだから。

そーいうところで勝負しないと。


喜怒哀楽で見られたら、絶対勝てない。

そんなことは自覚済み。


あの娘の可憐(いじら)しさ。

妹分の可愛らしさ。


二人なら似合う。


役に立って浮かれて。

求められて喜んで。

視線が来ないと右往左往。


あたしがそれじゃ。


見せられない。

見られたけれど。

見せないよう。


あたしは?

あたしをもっと愛してもらえるのは?


包容力。

落ちつき。


他?

まあ、戦闘力は置いといて。


そんなところ。

隙を見せないようにしなくちゃね。


どんな防壁を固めても、突き破ってくる相手だもの。

むしろ、その方が気に入ってもらえると思う。

たぶん、きっと、間違いなく、よね?


あたしは正面から、彼、青龍の貴族に挑むのだ。


だ・か・ら。

青龍の貴族、その役に立って当たり前。

彼、青龍の貴族に求められて当たり前。

訊ねられる前に正しく答えて当たり前。


あたしは気持ちを整えた。

誤魔化しきれているとは思わないけれど。

いつか機を見て持ち出されそうだけれど。

凄く恥をかかされそうな気もするけれど。


それも織り込んで、付き合っていかないとね。

不束なところも、行き届かないところも、完全じゃないところも。


愛されてるとは知っている。

愉しまれてると知らされてる。


それで終れるもんですか!

取り繕って誤魔化して我慢してそら恍けて!!

在るべき、魅せたい、正しい、あたしを認めてもらう!!!


落ち着け落ち着け落ち着け。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――それはともかく。





彼、青龍の視線に応える一言。

それは答えじゃないけれど。


彼の疑問。

その一つ目。


あれは何者か。


帝国騎士。

帝国兵士。

そして帝国兵の、はるか下。


這い蹲る領民。

みな若い女たち。



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