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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十章「異世界の車窓から」

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ググルナカス(Gugurunacus):AC(Another Christ /キリストとは別の世界)201-123年

【用語】


『青龍』:地球人に対する異世界人からの呼び名。国際連合旗を見て「青地に白抜きでかたどった《星をのみほす龍の意匠》」と認識されたために生まれた呼称らしい。

異世界側(の中でも一部の知識層)から見る地球人とは、すなわち国際連合軍(含む国際連合統治軍)のこと。国連軍は自衛隊を主力として前衛を在日米軍、補助戦力として各国軍兵士が混在している。そのために実際の人口比より非日本人の割合が高い「多民族帝国」とみられている。

最大多数で指揮官クラスが多い黒髪黒瞳が主要民族(自衛隊)。

異世界人と近い外見で戦に特化した傭兵民族(在日米軍)。

国籍を問わず非モンゴロイド有色人種はその他民族(国籍問わず)。

地球側の国旗国章は民族氏族の紋章と理解されている。

中世準拠の文化を持つ異世界では、支配民族以外の被支配少数民族氏族から軍司令官や宰相などが任命される例は多い。よって対等に戦場に立っている、むしろ自衛隊が遠慮がちである国連軍の在り方に違和感を感じていない


『合衆国大統領』

:駐日大使、国連大使兼任。

女性初の合衆国軍統合参謀本部議長で次期大統領候補と目されていたが、祖父以来の縁がある日本へ大使として赴任。その際に家族も連れてきている。

異世界転移後、緊急時の継承順位に従い大統領に就任し在日米軍並び領域の軍を掌握。在日合衆国市民の統率者となる。

代々続く軍人の家系。

娘は文民(弁護士)になったが、孫は軍務(空軍F-16パイロット/三沢基地所属)についている。

普段から合衆国陸軍将官の礼服を身にまとう。


『国際連合』:the United Nations/連合国、の超訳。異世界転移後の人類社会の総意を体現する組織。と国会で決まった。加盟国のほぼすべての外交防衛権を委託されている。黒幕は日本の一衆議院議員であるとマスコミに報道されている。


『国際連合軍』:国連憲章第七章に基づく人類社会の剣と盾。と国連総会で決まった。黒幕は元在日米大使の合衆国大統領であるとマスコミに報道されている。


『軍事参謀委員会』:国際連合の参謀本部。安全保障理事会の補助機関。国連憲章第七章に基づく国際連合の軍事力行使の指揮を執る。


『安全保障理事会』:国連実質的決定機関。もちろん、総会の承認を得てこそ正式な決定となる。異世界転移後は全て一任されている。でも、理事会の要請で総会決議がされることがある。


『常任理事国』:合衆国(米)、連合王国(英)、第五共和制(仏)、共和国(露)、統一中華連邦(中台合併)、日本。


『軍政部隊』:「俺」が率いる増強分隊。司令官(俺)、監察官(神父)の二人の将校と下士官一人、兵十名(選抜歩兵2名、衛生兵一名)。独立した作戦単位として活動する為に軽装甲機動車と3 1/2tトラック各ニ台、KLX250(軍用バイク)二台、偵察ユニット四機と機動ユニット、各種支援装備が配備されている。


『佐藤』『芝』

:主人公『俺』の部下。選抜歩兵(物語世界での選抜射手)であり、異世界転移後の実戦経験者。曹長に次ぐ軍政部隊戦闘作戦の中心




二分以上、考えない。

時間の無駄。

とりあえず眼に入った奴に訊く。


あえて憶えようとしない。

手間の無駄。

憶えられないことは不要なこと。


自分で出来ても人に聞く。

自分でやらない。

自分で出来る人を手伝う。


《陸上自衛隊某駐屯地事務担当の不文律/上司は認めていないが/上司を認めていないし》




【国際連合統治軍第13集積地/白骨街道/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


俺たち陸上自衛隊自衛官、異世界転移後の標準業務。


一人に一発155mm砲弾。

十回殺して、数を忘れて、数えなおしになお殺す。

オーバーキル三往復が標準。


いえ、この時点では見物人ですけれども。

通常業務に移る前段階で、カルチャーギャップが止まらない。


実感する。

総合火力演習って、なんだったのか。


俺の場合、比較対象がそれしかないからな。



元カノみたいに、モノホンを体験したことがない。

アイツみたいに北米の米軍視察団に紛れ込んだりすると、別な感想があるそうな。



――――――――――戦争ごっこ(By元カノ)――――――――――


あーはい。

総合火力演習ね。


展示演習って呼ばれてたくらいですからね。

増強一個連隊程度しか出ないんですからね。

示威作戦(デモンストレーション)ってかセレモニー(閲兵もどき)ですからね。



異世界転移前に元カノが体験した火力演習、北米版。


――――――――――――――――――それすら異世界転移後の戦争に比べれば、花火大会だったんだな、って。


なら日本の総合火力演習は?

火遊び。



火遊びすら見たことがなかった自衛官は多いのに。

今度のこれは、全陸上自衛官が概ねクリア。


異世界で見た、いや、経験したのは第三次世界大戦用の全力斉射。


――――――――――だから自衛官は皆、ポカーンである――――――――――



火砲っていうのは、こういうことさ

――――――――――こういうもの、じゃないから念のため。


米軍兵士だって、アイオワ級の艦砲射撃目撃者だって、びっくり。

ましてや自衛隊の特科隊員だって初体験。


よし。

大和級の艦砲射撃経験者を募集中。

是非見比べていただきたい。


万年弾薬不足の自衛隊だからね。

予算が足りない訳ではなくて、比重がおかしいからだが。


一番重要な人件費、訓練に弾薬調達は後回し。

優先されるのは見栄えが良いだけの、とんでも兵器の購入。


企画意図不明の、国産兵器開発。

天下り意図明瞭な、消化予算設定。


結果、イタリア軍かな?

慣れるほどには銃砲ミサイルを撃てないわけで。


異世界に来てからは、すぐ(一ヶ月で)慣れたが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・人間は、何にでも慣れることか出来る。


ここまでが前フリである。

肝心要の、通常業務。



帝国軍兵士がレアな理由。

帝国軍と戦っている、俺たち自衛隊にとってさえ。



ってわけで、陸上自衛隊の大半を占める、俺たち普通科。


要は歩兵。

その大半は、銃剣しか使ってない

――――――――――実戦では。


異世界転移後の演習では、湯水のように弾薬を溢れさせてるが。

その総量は、自衛隊が警察予備隊だったころから転移直前までの合計、相当。

銃弾は演習でしか使ってな、ってところでお察し。


で、銃になれた普通科隊員は、主に行う銃剣刺突。


まず帝国軍がいる方向を、特に教えられません。

射程外ですので。


だいたい遥か彼方です。


日本列島に慣れた人間には、大陸尺度は馴染めんのよ。

地平線なんて初めて見ました。

北海道民じゃないので。


到着時刻を指定され、到着までのカウントを聴き、乗車したり乗機したりして運ばれます。

文字通り運ばれて、歩くのは前路哨戒部隊か偵察隊の専門職が時々要所要所で、だけです。


で、戦場に着く。

先行部隊、大抵は米軍が展開しています。

そこを引き継ぐ、自衛隊。


見通しがよくなった、戦場。

元、戦場?


異世界の帝国軍に向けられたのは、ソビエト連邦正規機甲師団殲滅専用砲撃手順。

ソビエト軍はその砲爆撃の滝を切り分け突破してくるんですけどね。


はい、世界が変わります。


転移じゃなくてね?


あ、軍隊って、こーいうもんか、っと。

ここまでは標準業務の前段階。


その跡、普通科隊員が投入。


戦場、跡?

を横隊前進。


飛行機墜落事故直後。

肉片探しのノリです。


そのまんまか。


比較的原型に近い敵、の残骸?

それに、銃剣刺突。



何故に銃剣かって?


防疫上の配慮です。

至近距離でないと死体かどうか確かめられない。

100%死体ですが、200%が基本なので。


蘇えらせてまた殺す計算。

不死者が相手だと手間が省けますね。

さておき。


死体、広義の死体(血とか肉とか)、に仕方なく接近。


そこで銃弾を撃ち込むと、跳弾が怖い。


銃ってのは意外に近距離だと使いにくいんですよ。

地球の歴史における戦死でも、立ち木に弾かれた味方の銃弾で、自分の銃弾で、なんてよくあるよくある。


弾かれた銃弾はホローポイント弾並みにゆがんでる。

普通に撃たれるよりもヤバイ。


拡大した表面積で運動エネルギーを全開放。

ゆがみひずんだ形態は体内でバラけて散乱。

近距離に限れば人体破壊への適性が最高値。


だから刺突。


一つ突いては給与のために。

一つ突いては休暇のために。

一つ突いては我身のために。


一刺し一刺し気合を入れて。

間違いなく死んでいる、と確認。


何しろ異世界。

魔法や竜がいる世界。


ゾンビだってスケルトンだっていた。


敵の死亡確認中にゾンビに囲まれた小隊がいたくらいである。

弾がもったいなくなって、銃剣と台尻で数千体のゾンビを潰す羽目になった。


いや、ロメロ型ゾンビだったからね。


走らないし、強度は人体程度だし、頭を潰せば死ぬし。

通常の自衛官なら、というより、よっぽどの運動音痴でない一般人でも、ゾンビなんて楽勝な標的。


異世界でもあまり恐れられる相手じゃない。

火器が無い中世の住民でも、どーにでもできる。


嫌だけどね。

臭いとか、感触とか、いろいろと。


該当の、ソレと出くわしてしまった小隊。

しばらく駐屯地に戻れず、皆の涙を誘った。

※第159話<おそれるべきもの >


スケルトンの方が怖い。

ゾンビふぜいとは比較にならない。


パワーアップしてるし、普通の骨より硬いし、しかも走る。

装甲はないけど隙間だらけで、弾が当たりにくい。


異世界でも畏れられる相手だという。

剣や槍、斬撃や刺突が効きにくいからね。

矢は言わずもがな。


その時は第七師団が出くわしたから瞬殺だったが。

90式戦車という巨大ハンマーで砕ききった。

※第115話<帝国の統治> より


異世界でもスケルトンにはハンマーだっていうし。

正統な戦い方。


でもこれ。

運良く、だよな。


たまたま国連軍最強最大の戦車師団に出くわしただけで。

出くわしどころが悪ければ、大損害もありえた。


そーいうシュチュエーションは、決して少なくない。

帝国軍とはそういう相手。



魔法騎士一人に三桁の被害を出された記憶は生々しい。


203mm砲弾を、剣、ではじいたんですよ?

それは剣なのか何なのか。


魔剣だって言いますけどね。

魔法使いなのに魔を追加。


一人ソビエト機甲師団。

なにそれ怖い。


元カノの腕を落とした野郎である。

全く、あれはビビった。

元カノが頭を弾いた野郎である。

全く、申し訳ない。

※第24話<黒騎士> より


あの戦い。

奇襲ではなく、初めて異世界の軍隊と正面から殺し合った。


それは軍事参謀員会の認識を決めた、と言っていい。

ってより、合衆国大統領の戦争脳に不可逆の影響を与えたとかなんとか。



一度あることは、二度も三度もあるのが普通々。

次こそは、次の次こそは、次の次の次こそは。


国連軍から犠牲が出るかもしれないという可能性を、決して否定しない軍事参謀委員会。

ってより、合衆国大統領。


兵隊が殺されるのは指揮官の無能であり、兵士はあくまでも死なねばならない。

とか考える、変な人。


だから慎重にもなろうってもの。


魔法騎士って、あんまりいないんですけどね。

正直になれる御薬を、それなりの地位にある方々大勢に服用していただいた結果。


魔法使いと騎士の両立。

頭脳労働に肉体労働の両立。


しかも原理不明のランダムクジを当てないと、魔法って使えないし。

さらに騎士と魔法を同時に究める、極めることができる逸材は少ない。


邦あたり、一人出ればマシな方。

せいぜい片手の指の数ほどしかいない。



良かった良かった。


その報告を受けた大統領もお喜び。

203mmをはじき返す者は、片手の指だったのか、と。

であれば、155mmをはじき返す奴が、両手の数ほどいるかもな、と。


筋が通っていらっしゃる。

ってことなら120mm迫撃砲を避けたり、断片をはじいて身を護ったりするくらいの奴は、何処にでもいる?


未発見ですが。

次に刺突するのが、記念すべき第一号かも知れない。


完全に殺せ。


大統領閣下のご命令。

故にこそ、陸自の隊員達が銃剣を使い続けるのである。

合衆国大統領の信念で、勤務時間が増える自衛隊員。

これいかに?


いつも通りですかそうですか。



そんなわけで、ま、生きている帝国兵士というのは貴重品。

軍政部隊から見れば、死んでいる帝国兵士だって目にしない。


だから俺は、眼を向ける。

街道脇の皆々様に。



いや、湾岸戦争の米軍だって、こんなもの。

50万オーバーの兵員が投じられて、だからこそ、一発も撃たずに終わった兵士が大半だってば。





だからついつい、敵以外を見てしまう。

え、そりゃそうだよね。


曹長、佐藤に芝は帝国兵士を警戒しつつ観察しているだろう。

良きかな善きかな。


聖都、第13集積地に来ている俺の部隊。

俺以外はみんな、戦闘職だからね。


敵そのものが気になるのは、至極当然。

俺みたいな事務職と、目の付け所が違います。


他の隊員たちも、曹長が指導しているだろう。

姿勢も視点も関心も、なにもかも任せで。


ならば安心。

安心ならば。


俺が仕事するわけないじゃん。

みんなが仕事に励むなら、俺はみんなを応援します。

皆がみないところを見てこそ、分業というものではないだろうか。


つまり仕事や任務と関係ないところ。


まさに俺の得意分野。

敵兵士より、その足元。


ありゃなんだろう?


疑問に思ったこと。

わからないこと。

知らないこと。


他人に聞く前に、自分で調べなさい。


そんなことを抜かすバカがいる。

無能な教師に、馬鹿な大人に、邪魔な上司。


そのあたり。


知らないことを訊かれたくない、とか。

知らないことを認めたくない、とか。

知らないことを知ってるふり、とかとか。


俺は断言する。

調べるんじゃない。


知らないことは人に訊け。



知ってる人がいれば、調べる手間が省ける。

知ってる人がいなければ、一緒に調べりゃ早いだろう。

知らない人同士で調べれば、両方が知ることができるし。


上手くいけば、俺は調べないで済むかもしれないじゃないか。


けっこう、あるよ。

訊かれた人が知らないことを、勝手に調べてくれること。


だから俺は、最期まで調べずに知ることができる。

いやいや。


自分で調べろなんて言うアホは、何を得たいのやら?


だから出番だエルフっ子。

あれ、なあに。



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