憐れむべき者
【登場人物/三人称】
地球側呼称《元カノ/団長/だんちょー/一尉/一尉殿》
現地側呼称《青龍の女将軍/団長/主》
?歳/女性
:国際連合軍大尉/陸上自衛隊一尉。国際連合軍独立教導旅団団長。『俺』の元カノ。ドワーフやエルフに異世界人と地球人類(ASEAN諸国合同部隊)が同じ戦列を組む、初の多世界複合部隊「黒旗団」指揮官。
地球側呼称《マッチョ爺さん/インドネシアの老人》
現地側呼称《副長/黒副/おじいさん》
?歳/男性
:インドネシア国家戦略予備軍特務軍曹。国際連合軍少尉。国際連合軍独立教導旅団副長。真面目で善良で人類愛と正義感に満ち満ちた高潔な老人。実在のモデルあり。
旅団には現地職制の副団長が同格としてあり、白を基調とした魔法使いローブのエルフが努めている。区別の為に肌が褐色な彼が現地兵士に「黒副」と呼ばれている。
かの方の青年時代から一時も休まずに続けていた正義100%の活動は「第35話 素晴らしき哉!人生!! 」参照ですが、現実で映画化された異世界ファンタジーにも見える英雄譚を探してもいいかもしれません。シスターズとの心温まる異文化交流は「第68話 トモダチ」など本作の随所に描写されております。
【用語】
『青龍』:地球人に対する異世界人からの呼び名。国際連合旗を見て「青地に白抜きでかたどった《星をのみほす龍の意匠》」と認識されたために生まれた呼称らしい。
異世界側(の中でも一部の知識層)から見る地球人とは、すなわち国際連合軍(含む国際連合統治軍)のこと。国連軍は自衛隊を主力として前衛を在日米軍、補助戦力として各国軍兵士が混在している。そのために実際の人口比より非日本人の割合が高い「多民族帝国」とみられている。
最大多数で指揮官クラスが多い黒髪黒瞳が主要民族(自衛隊)。
異世界人と近い外見で戦に特化した傭兵民族(在日米軍)。
国籍を問わず非モンゴロイド有色人種はその他民族(国籍問わず)。
地球側の国旗国章は民族氏族の紋章と理解されている。
中世準拠の文化を持つ異世界では、支配民族以外の被支配少数民族氏族から軍司令官や宰相などが任命される例は多い。よって対等に戦場に立っている、むしろ自衛隊が遠慮がちである国連軍の在り方に違和感を感じていない。
人には役割があります。
果たすべきこと。
為すべきこと。
貴方に、貴男に、貴女にしか出来ないことです!!!!!!!!!!
それはなにか?
それこそ!
私たちひとりひとりが選ぶこと。
あなた作るひと。
わたし食べる人。
私が消費者で皆が生産者。
私がニートで貴方が労働者。
貴方が働く。
わたしが遊ぶ。
何故か?
選んだからです。
貴方も私も自由意志で。
誰に強制されたのでもありません。
働けって?
人間の自由を否定するんですか?
こっちは働いているんだ?
なぜ働いてるんです?
みなさん。
バカを言っちゃけません。
胸に手を当てて、よーく反省しなさい。
造り、生み、創らない。
選んだのは、貴方たちです。
そんな貴方たちの為に、為に、働かないのは私です。
私のような、人間であることを尊ぶ人間です。
逆恨みをして、涎をたらして羨んで、貴方たちと同じように獣道、いや、奴隷に引きずり堕とそうとする。
人として恥ずかしいことです。
選ばれし生活保護受給者に妬み嫉みをぶつけるなら、辞表をだす勇気をもちなさい。
妬み嫉みは損しかしない。
負け犬、いえ、あなた方の勝手ですが。
勇気は利益をもたらす。
正しいことは、楽で得で気持ちがいい。
座れ万国の労働者!!!!!
一緒に不幸になるくらいなら!!!!!!!!!!!
一緒に幸福になろうじゃありませんか!!!!!!!!!!
少子化による生産力減少。
高齢化による生産力減少。
高学歴化による生産力減少。
どれだけ減らしても間に合わない!!!!!!!!!!
あなた方が働いたりするからです!
毎年繰り返される莫大な公共事業。
毎年積み重なる赤字予算。
毎年繰り返される増税。
すべてすべてすべて、破壊の為に!!!!!!!!!!
何故そんなことをしているのか?
中学校の社会科で習いましたね?
需要を増やすため。
そう。
溢れる供給を、置き場所すらない生産を、ゴミとして処理するために。
穴を掘って埋める。
海外に押し付けて捨てる。
純粋な消費、戦争を期待する。
若者ひとりで老人ひとりを支えるのなんのと、バカしか思いつかない比喩を吹聴する者がいます。
財務省が厚生労働省でしょうが。
若者一人の余剰生産。
老人一人の純粋消費。
それを比べなくては意味がない。
余剰生産を使って余剰生産を破壊する。
その割合を出さなくては意味がない。
内部留保と称して生み出された価値がどこにどれだけ死蔵しているか考えてみましょうか。
ご立派様な社会人である奴隷諸氏は、自分が造った、ありとあらゆるものを受け取ることはない。
もちろんそれを誰かが搾取したりもしていません。
ただただ持て余して、棄ててるだけです。
誰もが知っていて、何処にでも載っていて、誰も認知しない。
一事が万事、この調子。
21世紀からこっち、現状がどうなっているのか、誰も理解しないようにしている。
それはスターリン体制と同じ事。
誰も何も知らなければ、誰も何も責任を問われない。
統計はデタラメで、会計は粉飾で、権力は法規定とは別なバカが握っている。
かくして技術は退化して生活は貧困化してみんなの大切な地球が無駄遣い。
造って作って創って。
買って壊して捨てて。
過食症患者のごとく、吐くまで喰う。
ダイエット患者のように喰いながら走る。
官僚たちのに供給に合わせて需要をつくる。
試してみましょう。
一人前である大人に聞いてください。
アナタが会社を辞めたら、日本はどうなりますか?
答えは言うまでもなし。
立派な社会人さまに聞いてください。
アナタの会社が無くなったら、日本はどうなりますか?
それがご立派な一人前さまの存在理由です。
ああ、好意的に言い過ぎました。
まるでゼロ、無価値みたいにきこえますね。
正しくは違います。
マイナスです。
無駄な生産で地球環境をただただ破壊する。
生み出された利用価値のない生成物を廃棄するために金と手間と時間を浪費する。
破壊者であり、浪費家である彼らは、満足しています。
自分は社会にこ貢献している。
自分が社会を支えている。
自分を社会は必要としている。
中学校の政治経済、教科書に資料集を読みましょう。
国家自治体公的法人の予算案を見てみましょう。
全部公開されてますよ。
そして。
就職する?
会社で働く?
毎日痛勤する?
そんな貴方たちの破壊衝動、労働意欲を救うため。
わたしが、敢えて、働かない。
万難を排し、皆々様のために、心を込めて。
か・ん・し・ゃ・すること。
はい。
拍手!
《関東高校生弁論大会にて参加者急遽病欠により代理に立ち内容を知らなかったので不規則弁論に走ったあと記録削除された弁論をネットに拡散させた割に特別職国家公務員になってまだ道半ばとうそぶいている平凡なサラリーマンの記録》
【聖都南端/白骨街道/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の右隣/エルフっ娘】
あたしは耳を澄ませながら、反省。
これまで、彼、青龍の貴族以外、青龍を知らなかったこと。
機会がなかったわけじゃないのに。
青龍の公女。
あの女が太守領に連れてきた、その配下。
彼らが王城にいるとき、あたしたちは彼、青龍の貴族について邦中を周っていた。
だから直接見聞きしてないし、出来なかったのに
その間に王城の手直しを終えて、今度は太守府郊外の城を張り替えている。
黒旗団の仮住まい、港街とは別に、するのだとか。
だからほとんど、関わりが無いのよね。
なのに聴かされこと聞かされること。
彼、青龍の貴族が不在中。
何が行われてなにがなされたのか。
全て逐一、メイド長や参事会の若い参事から。
あたしが。
なぜか。
でもそれは結局、伝聞。
青龍を知った、なんて言えないわよね。
むしろメイド長や若い参事の方が知ってるのかしら。
青龍の貴族、その、一番近い女 なのに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 。
なら、あたしが知ってる青龍は?
男として、ではなくて。
他人として。
そう、客観的に。
我が身としてじゃなくて。
冷静に比較してみることができる。
アレね
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・絞めたり殴ったりいがみ合ったりした。。
青龍かどうか、違うような違わない様な連中なら、かなりかかわってしまったわね。
それはつまり、黒旗団。
青龍の女将軍。
あの女が連れている戦士たちは、まあ、青龍以外、ではない、よね。
黒旗団にもドワーフや獣人、エルフや大陸の人間ばかりじゃない。
彼、青龍の騎士とは肌合いが違う、でも青龍の騎士は少なからずいる。
でも、青龍、と言っていいのかどうか。
褐色の肌の、老いてなお矍鑠たる老騎士。
貴族とも違う、騎士長とも異なる、高位騎士。
高位騎士で、黒旗団を仕切っている副団長。
その配下の青龍騎士も、肌は褐色だった。
でもたしか、翁は少数民族のはず。
青龍の貴族と同じ部族ではなく、それでいて征服されたわけでもない少数派。
青龍自体が赤龍、帝国並みにこだわらないのよね。
種族民族なんてどーでもいい。
昔も今もどーでもいい。
これからどうする、それだけを計画している。
その辺り、小さくまとまっていた王国とは違う。
龍を冠する二つの種族、その特徴。
だから黒旗団は参考にならない。
少数民族がその慣習を尊重、いえ放置されてるなら。
それは青龍の気質や習慣じゃないはず。
それを知ることが、無意味とは言わないけれど。
それを知ることは、後に回してもかまわない。
なすべきこと。
青龍の主流。
陽の民。
青龍そのもの。
あたしたちが知るべき者たち。
だから聖都に来たのは貴重な機会。
はじめて。
彼と同じ。
黒い髪。
黒い瞳。
色づく肌。
そんな龍が大勢いる場所にこれたのだから。
そうなるとは全く思わなかったけどね。
聖都について、青龍の幕営に泊まると聞かされて。
好機至れり!
あたしたちが張り切ったのも、無理はないと思う。
彼のことを、彼の背負う世界を知る機会なんだから。
良くも悪くも知ることができれば、それに合わせて振る舞える。
目印があれば、あたしたちがどのくらい離れているか、わかる。
そこに近づきたいのか。
そこから離れたいのか。
彼、青龍の貴族。
その好み。
近付けたいのか。
遠ざけたいのか。
あたし、たち。
彼に自分をどう魅せたいのか。
好きと伝えて。
嫌いと伝えて。
自分がどうしたいか、彼がどうさせたいか、感じることができる。
そうなれば。
もっともっともっと、楽しんでもらえる。
もっともっともっと、愛してもらえる。
だから、青龍の沢山いる場所で過ごす、と聞いてすーっごく、期待したんだけれど。
期待したように
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・上手くいかないものよね。
あたしたちは客を迎える陣幕にいるし。
そこは他の青龍とは離れている。
あたしたちの周りには、いつもと同じ、彼の臣下。
新しく近付いてくるのは、青龍の女騎士たち。
でなければ、メンゲレ卿のような女貴族。
それが不自然だとは、言われなくてもわかること。
それが青龍の、陽の民の、その普通とは違うということ。
それが、あたしたちが学ぶべき、青龍の世界とは程遠いということ。
もしかしたら、とは思う。
あたし、たち、を、他の男の目から隠してくれてる、とか。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
それは、嬉しい♪♪♪
とっても、嬉しい♪♪♪♪
すっごく、嬉しい♪♪♪♪♪♪
うんうん。
やっと、女の扱いが判ってくれたようね。
扱われ過ぎて、泣いてたんだから♪
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だめだめ。
そんなことで満足してちゃダメ。
あらゆる可能性を試されたうえで、なら、いいけれど。
最初から閉じ込められるのは、少し困る。
もっともっと。
もっともっと。
もっともっと。
もっともっと。
もっともっと。
もっともっと。
あたしは、あたしたちは欲張りだ。
欲張らない女なんか、いやしないけどね。
そして、あたしの耳に響くのは、その要石が二人。
サトウ卿とシバ卿の声が聞こえてくる。
青龍の魔法に乗せて走る、命令や報告ではなく。
エルフの耳に響く、風の声。
「彼女たちも苦労してるな」
え?




