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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十章「異世界の車窓から」

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科学と魔法が交錯して:素晴らしき新世界/Zombie maker!

あなたはもっと頑張らないといけません。


みんなとおなじように「正常」でいる。

それは、とてもとても「努力」が必要なのですよ。


でも、大丈夫。

我々が、あなたを、かならず治してあげます。


あなたが「正常」になるまでは、けっして殺したりはしません。


※元ネタ「ジョージ・オーウェル 1984年」




「死」を恐れる者がいる。





なぜか?

それを考えるのは諸君らの役目ではない。


世の中にはいろいろな者がいる。


正義を知らずに生きている者もいる。

正しいと確信できぬことをする者もいる。

理由すら持たずに呼吸する者すらいるのだ。


それは純粋にアカデミックな問題であり、それを担う者たちが考察し研究し結論に至るだろう。

その過程には、そもそも門外漢である我々の作戦行動も大きく貢献することになるのだろうが。

そしていずれは、そのような衝動を治療し正常にしてあげることができるようになるだろうな。


人は必ず救われる。

それまでは、そのために、それを生かしてあげればいい。

うむ。

まさに、生かす、だ


が、それは本題ではない。


「そういう者がいるのだなぁ」

とだけ知っておればいい。



では「死を恐れる」とはどのような特性を持つだろうか。



「弱者」だ。

知力、腕力、幸運、肩書、武器、金。

何を持っていても、まともに使うことができない。


我々人類の道具になるために、糧になるためだけに存在している。


それで存在しようとしているところも、不思議ではあるが。

結果として真っ先に殺されるのだから、不思議ではないか。



古来より「死を恐れる者」はとても扱いやすい。



これが邪魔ならすぐ殺せる。

それも手間なら脅せば済む。


奪う。

従える。

黙らせる。


実際に何をどうするにせよ、手間暇かからない。

容易く従うし、逆らっても片付けやすいし、数をまとめればそれなりに役に立つ。

つまるところはその程度。


弱者故に、価値が無い。

弱者が何も持とうと、その力は振るえない。


武器。

権限。

財貨。


使えなければ持たないと同じ。

重荷によろめいていれば、丸腰よりもなお悪い。


しかも、弱いがゆえに壊れやすい。


脅し過ぎれば壊れる。

脅し過ぎねば裏切る。


すぐ死ぬ。

殺せぬ。

すぐ止まる。


人の形をしているのだから、盾にはなるし囮にもなる。

焚きつけにはならなくもない。


それだけだ。


それで終わりだった。

これまでは。


これからは違う。


死を恐れるがゆえに、死に怯えなくなる。

死を恐れるがゆえに、死に逆らえなくなる。

死を恐れるがゆえに、死に尽くすようになる。


その利用可能性を、我々と同じように十全に発揮しがら、その自主的な判断で、命を賭するようにさせることができる。


死を恐れるからこそ、生きていても価値の無い者。

死を恐れるからこそ、死に向けて走れるようにする。


それは我々とは、似て非なる物。

完全な人形(ひとがた)だ。



諸君。

これが、その仕掛けだ。


現状、国際連合軍に参加している魔法使いからヒアリングした結果。

それが、これ。


魔方陣。

高位治癒魔法使い。


精密医療機器。

練度十分な外科医。


オペレーターと感応魔法使い。

通信システムと増幅魔法具。


生贄。

そして、最も重要な業物。


青木兼元、マガラ斬り。


本来、在るべきところに戻ってきた、最高傑作。

史上に輝き続ける、兵器。




さて。

実際に殺ってみよう。


見たまえ諸君。

治癒魔方陣中央に位置する標本を。


手脚。

胴体。

何より体幹を固定してある。


もちろん、3分前に固定したばかりだ。

全身の血行を維持し、五感を研ぎ澄まさせてある。


もちろん事前に血液や体細胞は採取している。

輸血や移植の用意は万全だ。


3時間かけて緊張を解く。

時間をかけ過ぎては緊張させてしまう。


1分間かけて状況を認識させる。

短すぎては理解が追い付かない。


その落差がこそが最高のコントラストを実現する。


さて。

そこだ。


みたかね。

刀身に視線が釘づけた。


現実を否定する思考が繰返されている。


そう。

感応魔法使いが読み取っている。

オペレーターが数値化している通りだ。


つまり、否定しようとすればするほどに、状況を繰り返し繰り返し内奥に焼き付ける。


首筋に注目したまえ。

軌跡を遮るものは何もない。


3、2、1、開始!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・後は任せた。


ああ、大丈夫だ。


実際、剣手の役割は首を打つところまで。

寸分違わずに刀身を通過させれば終わり。


首から血は流れなかっただろう。


斬りぬけられた毛細血管から血液が溢れる。

切断面のまま血流を通していた大血管が歪を受ける。

血圧がそのまま断裂を引き裂こうとした瞬間。


離れた、明らかに断面が離れた、確実にその後に、そして離れきる前に治癒される。


――――――――――最高だ――――――――――



そのタイミングを計るために総ての医療機器が投入された。

その数値を読み取り解釈する為に、熟練の医療技術者が最速で動いた。

その結論を治癒魔法使いと医療技術者が共有する為に、最高の感知魔法が発動。



そう、音でわかるな?


45口径。

生贄の脳と心臓を撃ち抜いた。


作業中の参加者は、防音装備済み。

銃の轟音に邪魔されることはない。


魔法発動のピークに合わせて、殺す。


魔法に必要な死が、脳死か心臓死なのか判らない。

まだ。

だから無難なところで落ち着いた。


異世界の流儀ならば、生贄は刺殺する。

或いは斬首。


しかし、故にこそ魔法発動ピークと死がズレる。

だから敢えて銃を使った。


タイムラグを、ゼロにはできない。

だが、限りなく近い。


感応系魔法で魔法使いと射手の感覚を繋げているからだ。


もちろん瞬間的に全細胞を死滅させることも容易い。

高圧電流を使えば、完全にピークと同期させることができる。

あるいは、この方が効率かよくなるかもしれない。


今後の検討課題。


電撃魔法なら同じように出来るかもしれないな。

きっと帝都のアーカイブズには、資料が在るのだろうが。


もしかしたら単に殺すことが重要ではないかもしれない。


生贄の苦痛が必須ならば?

電気的化学的に操作可能だな。


そしてそれは、魔法にも可能だろう。


治癒魔法使いは、細胞や神経を知らなかった。

知れば癒せるようになった。


ならば電撃魔法使いは電子の知識を得て、それを操作出来るのではないか?


理解出来なければ、理解出来る地球人と繋げばいい。

医学で実践されたように、感応魔法使いを仲立ちにして。



ふむ

―――――――――たしかに。


発電をすべて機械化する手もあるな。

魔法使いには、電荷生成の負担をさせない。

より繊細な電子操作に注力させる。


例えばロナルド・レーガンの原子炉。

その電子を魔法て操れば



―――――――――――素晴らしい―――――――――




魔方陣。


治癒の為。

――――――――――打たれた首を治すため。

感応の為。

――――――――――魔法使い、剣手、医療技術者を一つにシステム化するため

屠殺の為。

――――――――――魔法を強化する生贄を殺すため。

増幅の為。

――――――――――各々の魔法を強化するため。


その背景を支える機器は、標本に対する医療機器ばかりではない。


魔法使い一人一人を含む全員のバイタルチェックを行う機器。

バイタルデータを計測検証して周波・幅・強弱を警告する機器。

支障がある要員を強制終了させバックアップに切り替えた機器。


これにより、刻印が完了した。



見たまえ。

手順さえ整えれば、準備時間を入れて三時間で済む。


これまでの技術であれば廃人にするのがせいぜいだ。

人格を入れ替えるということになればなんか月もかかり、元の人格とは似て非なる物にしかならなかった。


まさに革命的な進歩。


現状の設備だけで、10人前後を同時に処理できるだろう。

余り大勢を集めると、事前準備の緊張緩和が進まないからな。


刀の使い手が一番用意しにくい。


致命傷でありながら、一番、体が損傷しない方法。

治癒しやすく、殺された側の知覚に訴えやすい武器。

故にこそ、使い手と日本刀だったのだが。


工夫の余地はある。

意見は随時募集していいるので、検討のこと。


さて、結果の評価だ。



つい今しがた搬出された人物。

ここ港街、その有力者の一人。


現地協力者から提供された素材、その一つ。


つい今しがた死んだわけだ。

刀で首を刎ねられて。


頸部を通過する鋼の感触。

骨髄を絶ち斬る鋭利の感触。

血流が揺らぎ乱れ吹き出す感触。


そして死ななかった。

死ねなかった。


終わらない。


何度でも何度でも。

繰り返し繰り返し。


死を恐れる限り。

死なない限り。


痛みもなく、健康で、今までと全く変わらない。


眼には知性がある。

体はこの通り自由に動く。

何が起きたか誰にもわからん。


殺されたのに、だ。

私に、我々に、殺された。

難度でも繰り返せる。



死を恐れるからこその苦痛であり、死を恐れる限り逃げられない。

生きているからこその苦痛であり、生きている限り逃れられない。


苦痛を味わいたくないから、従う?


違う。

苦痛だから従うのだ。


死。

究極の恐怖。


弱者は恐怖に同化する。

恐怖を体現する者に同期する。

そのように振る舞うことを渇望する。


痛みと同化することでしか、痛みから目をそらせない。


それは消えない。

その心には死が刻み込まれた。

永遠に。




おそらくは、な。



標本の検査結果から、そのように推測される。

追試は今後も行われる。

この街で。


兵器は実戦を経なければ完成しない。

故にこそ、ここ、だ。


今後、一ヶ月以内に配備を完了。

二ヶ月の動作テストを経て実戦に投入される。


何も教えはしない。

何も指示しない。

何もさせない。


なにをするだろうか。


スタンドアローンでどこまで機能するのか。

ここで大きな戦訓が得られるだろう。





個々の手法はオーソドックスで、類例も多く信頼性が高い。

地球で、異世界で研鑽され積み上げられていた技術。


治癒魔法。

――――――――――任意の体組織を再生する技術。

医学知識。

――――――――――体組織の機能や性質を特定する技術。

感応魔法。

――――――――――知識や経験、体験と想念を伝達し合う技術。

医療機器。

――――――――――人の知覚を越えた情報を計測して認知させる技術。


この手法は他世界の実践的で実績のある技術のハイブリットだ。

ハイブリット自体、今回が初めてでは、もちろんない。


皆、知っているな。

先日行われた、ハイブリット術式による脳神経再建治療。


あれができるなら。

脳神経を再生できるなら、延髄も脳幹も骨髄も可能ではないか?


そう考えたのは、ひとりではあるまい。


さらに、異世界で行われている処刑法。

治癒魔法を使って、繰り返し繰り返し殺し続ける、死なない処刑。


この発想は無かった。

異世界人に出来ることならば、どこの誰にでもできるのではないか?


そう考えるのは、誰にでも出来ることだ。


ここ。

黒旗団でしか、実行できないだろうが。

まだ。


これは、今後のオーソドックスになる。



「死」を、何度でも使える。



殺すぞ、は、殺す、ではない。

一度しか使えないからこそ、制約があった。

それが無くなったのだ。


死体は何も話さない。

死体は何も出来ない。

死体は何も役立たない。


これまでは。

これからは。


何度でも殺せる。

何度でも蘇える。

何度でも使える。


その主体的な意志によって、死を恐れ、繰り返される死に怯え、死を避けるために死を覚悟して全能力を振り絞る。


死者と生者。

長所だけを取り入れたハイブリット。


と話している間に

――――――――――起動したな。


さて。

次に取りかかろう。








「団長」

『ん』

「ご報告申上げられないことを行いました」

『ふぅん?』

「それが必要と考えます」

『なら―――――――――――よし』

「―――――――――――拝命いたしました―――――――――――」

『ハナコには悟らせるな』

「了―――――――――――」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どしたの?まだなんか?』

「いえ、団長は希有な方であるな、と」

『でっしょ――――――――――!!!!!!!!!!こんな希な美女で好い女は有り難いよね~~~~~~~~~~アイツに言って言って言い聞かせて♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

全員の枕詞語尾につけさせようかしら??????????』

「団長の愛は必ずや彼の方の身命を救うでしょう、地球人類もまた、ええ、彼の方のために人類も」

『やっぱり~~~~~~~♪♪♪』



王ではなく、やはり、将軍であられる。



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