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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十章「異世界の車窓から」

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工芸品としての奴隷


「皇帝以外のすべて」


奴隷とは何か

――――――――――オスマン・トルコ帝国最盛期を評した西欧人の感想。


帝国軍最強のエリート集団イエニチェリは、奴隷でなくてはなれなかった。

廷臣から宰相までの政治家ならば、奴隷でなくてもなることはできた。

奴隷がなれないのは、皇帝だけだ。


あ、皇帝の母親にはなれます。




【異世界大陸沿岸部某所/奴隷牧場/帳場】


はい。

奴隷を使うは広く、扱うのは狭く、育てるのは深い。


僭越をお許しいただけますか。


ああ、もったいない御言葉。

されば、語りまする。



奴隷商人には三口ございます。


一口は商う。

二口は狩る。

三口は育てる。



商う。

こは、売る買うにございます。

一番間口はひろう御座いますな。


お客様も専業にないのではありますが、ある意味では商っておられる。

奴隷を使うなら、生涯買い続けます。


ただ売る機会は専業以外、そうそう在りませぬ。


使い物にならなくなる、その前に、売る。

目が利かねばかないませぬ。


まあ売り物にならずとも、使えぬところまではなかなか。

死なせてやるまで、最期まで使うのが常道にごさいます。


「商う」

ということ全般に申せますのは、取引である、ということです。

お互い納得ずくで、交換し合うこと。


そしてこれこそが日常の大半で御座います。




狩る。

これは文字通り、狩りまする。

使うは僅かな武具と、程よい金。


奴隷の仕入れとしては、一番多くございます。


剣を振るうよりも金が物を言いまする。

それも「狩り」と呼ばれますのは、真っ当な売り買いでは御座いませぬ故。



何処にて?


化外の地。

戦や災の跡。

氏族が絶える時。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・人の世にいう不幸の最中。


奴隷にするなら前歴付き。

生まれと育ちにアタリがつく、出来れば氏まで判ればよし。

野良犬、貧民窟の害虫など、お呼びではありませぬ。


頭の固まらぬ年の頃は、七つより十。

使い道の広さは男より女。


これが獲物でありまして。




狩場の一つ目。


化外の地

集落から買いまする。

それもなぜか、狩り、と言われますな。


いやいや、端金を惜しんで剣を抜くなどもったいない。

元金を守る為の剣槍にて。


相場も知らず、芋や麦、酒に飾りで買えます故。

なぜかこう、金子を積まねば買うという気がしませぬ。

故にこそ、買いながらも「狩り」と呼ばれるのやも知れず。


真っ当な武具を持たぬ相手であれば、殺し奪うのはたやすいこと。

それで終わらせれば、続きませぬ。


見知り置けば、毎年仕入れに行けまする。

故に仲良くはじめて、仲良く終わり。


また買うために増えてもらいませんと。

せいぜい励んでもらわねば。


なんの、奴隷以外に価値はない蛮地。

征しようなどとは、とてもとても思われませぬ。

故にこそ、長い長い付き合い。


こちらは商会ごとに縄張りが決まっております。



二つ目の狩場。

戦や洪水、大火に地震。


これこそが狩りの腕、見せどころでごさいます。


溢れかえる戦利品に身売り。

こんなところを買い叩くは、商いの舞台で御座いますな。


狩り人なら傷物など狙いませぬ。

事が起きれば走り出し、事が終われば走り回る。

塵芥を見切り捨て、玉石を選び取りまして。


狙うは獲物は、それなりに大きかった街や村の跡。

焼け出され、逃げ延びた、可愛がられた小さき者共。


寄る辺を無くしたそれ。

肥えた肢体が飢える前に、豊かな心根が枯れる前に、別な誰ぞに囲われる前に。


群がる野良犬、ああ、物の値打ちを知らぬ愚物にて野盗ごとき、を打ち払いまして狩り集めまする。


なんのなんの。

領主や将に顔を繋げば、実費のみですから。

とても大きな利鞘を稼げまする。



三つ目の狩場。

氏族の絶えるとき。


ここでは数より質が狙えます。


もっとも利鞘が大きく、もっとも数が少ないのは取り潰し。

政変の気配辿れば奴隷商人に行き着きまする。


社交界の美姫が売られ、その金で勝敗が入れ替わったことも。


まあ普通は暴動の類ですな。

大商家や貴族騎士が吊される前、貧民らがなぶる前。


名うての傭兵隊を殴り込ませて子女たちを狩りまする。

貧民らには小銭を投げれば足りますれば。


青き龍

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・主上の吐息がかかる場所は、皆が避けますが。


まかり間違い、生きざるを定められた者を浚いしは身の破滅。


ではすまぬ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・皆、察しておりまする。



そして三口目。

育てるのが我らに。


一番少ない生業で御座います。



主上。

お仕えせし拙こそは、それを超えたるもの。


奴隷は生き物、賢い生き物です。


ニッポンの方々。

その目に適いしあの娘たち。


あれこそ。

真物を越えた紛物。


我ら氏族のみで、なお希に生み出せる、稀物で御座います。


それと承知でお求めになる。

等級の付けられるもので良しとされる。

稀物を造るために紛物を溢れさせる。




であればこそ、我が氏族、得心いたしました。


すべての牧場を召し上げること。

すべての牧場を従来通りに任せること。

すべての牧場から此処に目を付けられたこと。


我が牧場でありました頃、出荷した我が娘たち。


あの娘たちを、味わっていただけたのであれば

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その味わい方も、感に堪えませぬ。


およそ奴隷に慣れない者なら、単に使うことしか知らぬ者なら。

いくらでもいる、知ったつもりの好事家に過ぎないのであれば。


あの娘たちは重すぎます。


精も気も吸いだされ、さて、身が持つのは幾日か。

家を滅ぼし、氏族を絶やし、その身を枯れさする。


いずれにとっても悲劇であり喜劇。

それが聴こえてくるのを、楽しむような悲しむような心地で出荷いたしました。


それが。

そればかりか。


星喰らう青き龍を顕現させることになろうとは!!!!!!!!



お気に召していただけましたこと、あの娘たちのために喜びましょう。

そは我が氏族の誇り。


我が氏族の粋こそ、あの娘たち。

素晴らしき主に奉仕出来る、それこそが至高の幸福。

主を約束されたることこそ、奴隷の誉れ。


これからも我ら氏族、主上の為に、そして奴隷たちの為にも、技を尽くす所存。





【国際連合統治軍第13集積地/白骨街道/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


だから俺はまあ、軍政官三原則、その三に戻る。

出来るだけ埋め合わせる感じで。



シスターズのように自立できる子たちはまだマシだ。

自立できた、と言うべきか?


俺たちが邪魔したんだが。

もう単独行動 させられやしない。

いろいろ背負わせちゃったからね。


その分、サポートすればきっとなんとかなるだろう。

Colorful場合、それが全くない。


俺たちの視界からでたら殺される。


視界に納めておけばいい?

古い檻から新しい檻へ。


そう考えると、対等っていうのは素晴らしいな。

対等なら、責任を負わずに済む。

死ねも生きるもご自由に。


相手に選択肢があるかないか。

そんなこと知ったことじゃない。


生か死か

――――――――――それは選択肢じゃない。


選べない選択肢を造るのは、詐欺師とゲームデザイナー、同じか?の常。


自己責任万歳!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ま、そんな見苦しい真似は赦されないけどな。


国際連合が死を持って排除している。


侵略者としての自覚を持ちましょう。

殺す側の立場を知りましょう。

殺される側の感覚を解らせましょう。



いずれにせよ、平等という概念がない。


社会契約論から一世紀。

ルソーが始めた近代国家。

互いを尊重する根拠。


それは当然、逆を産む。

互いを否定する根拠。


そう。

互いの合意が無ければ、互いを尊重する理由はない。


昔の人は言いました。

神を疑ってはならぬ。


根拠を得れば、否定も肯定も自由自在。


だから信じろとだけ言った。

人から自由を奪うため。


行ってはいけない方向へ。

人を進ませないために。



俺たちと異世界すべて。

シズターズ&Colorful、他皆。

そこに合意は成り立たない。


俺の属する世界と異世界は、対等じゃないからだ。

だから俺みたいな腰抜けも、逃げて逃げるに逃げ出せない。


俺たちと皆。

加害者と被害者。


その構図はここ、第13集積地とまるで同じ。


どうすりゃいいのか。

これから考えるけれど。


その場しのぎなら。

いくらでもどうにでもできるけど。


目の前から先。

この子たちの背景。


俺が帰った後。

誰に任せればいい?




【聖都南端/白骨街道/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の左膝/お嬢】


わたくしがお役に立てること。

女なればこそできることがありまわすわ。


女にしかできないこと。

これで敵、いえ、競う相手が半分に。

それで十分。

ご領主様の女にしかできないこと。

それなら指の数かしら。

常にお側から離されない女にしかできないこと。

これで十指に満たないわ。

まさに十二分。




心いたしましょう。


お兄様は黙らせましたし。

お父様は、わたくしくらいの娘は使いませんし。

あの若い参事は、あの娘に肩入れしてますし。


ま、その辺りは、わたくしの裁量。



ご領主様の奥を取り仕切るのですから、わたくしが。



園遊会のような表側も、女の舞台ではありますが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねえ様が相応しいわ。


場を満たす輝きに、誰もを惹き込む美貌。

仕草一つで翻弄し、関心を轢き擦る態度。


わたくしでは、圧するか舁きまわすか両方か、ですものね。


衣食を差配するのは

――――――――――あの娘、その独壇場。


日々その一瞬をとらえて、ご領主様の、そして周りに居る皆の為に食事をしつらえる。

ご領主様の衣服を整え、身の回りを踊るようにまわり、機微に感じて手を回す。


わたくしでは、お茶を差し上げるところまで、あとは玩ばれているだけですもの。




でも。

女たちを捌くなら、わたくし以外いません!


わたくしたちは、わたくしたちの為に。

わたくしが、女たちを捌く。


これこそ、誰にもできない、わたくしだけの、冴えたやり方。




力がある者には大勢が群がるモノ。

ご領主様のような方は、不要な諍いを招きかねません

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・絶対招きますわ。


ご領主様は、無視か蹂躙の二択。


気が付かない、気がつく。

そーいう二択かもしれませんが。


ご領主様はそれでも、ソレと知らぬ新参者が、それで済まさぬかもしれず。

そうなれば気が削がれ、御不快。


快不快で邦が亡びます。

ソレはそれとして。


特段、ご領主様の癖ではありませんけれど。

青龍の、その種族の習慣ですけれど。


誰もが、少なくとも邦では、皆がある程度理解していること。


龍のうろこに触れてはならない。

振れた者だけではすまぬ。


振れようとする者がいれば、皆で押さえて滅多刺し。

滅多って、なんでしょう?


ともあれ、邦中がご領主様の盾になりますわ。

わが身が可愛い者たちが。



しかも懸想に狂えば、邦と心中する狂女も出かねません



――――――――――ご領主様に切りかかる、とか


わたくしが、なにもしなければ、ですけれど。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・絶対、ありますわね。

皆が皆、死を恐れはしませんもの。


そして、ご領主様が傷つくことは、大いにあり得ます。


都度々、愚か者を殺し続ければいい。

その間に自分が殺されても、代わりはいる。


素手で人を裂き穿ち、大剣を砕く方。

千里の果てを、千日の前後を見ている方。

殺し滅ぼしても、その逆に気が向かない方。


それが青龍、ご領主様の考え方。


そもそも己を守る、と思い付かない方々。

ご領主様は、ご自分が殺されても無視されるでしょうが。




――――――――――許すマジ――――――――――





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