ガーデン・パーティ
最悪の戦友は何かやりたがる奴だ。
最良の戦友は何一つしない奴だ。
普通の戦友は傍観する俺達だ。
巻き込むから。
巻き込まないから。
巻き込まれたくないから。
【太守府/港湾都市/奴隷市場の館/中央庭園/全員の前】
俺は空を見た。
宵闇のそら。
残照に浮かぶ雲。
夜の館に響く音。
奴隷市場中心の館。
その中心のVIPルーム(的な区画)は中庭がしつらえられている。
ハーフエルフ達と対面した部屋から奥に進む。
精緻な庭園、そして夜空を楽しめる。
照明は山ほど持ち込んだが、燭台と低光量ランプのほうがいいな。
指揮所扱いじゃそうもいかないか。
音楽は寝る前、今は風の音なら楽しめる。
「――――――――――マメシバ一等兵――――――――――!」
いや、声
いや、怒声。
よし、うるさい。
「はい!団長!五階級特退はひどいです!」
え?特退?特進の逆?一士のコトか?
「だんちょーゆーな!一尉か旅団長だ!あの制服はなによ!!!!マメシバ二等兵!!!!!」
六階級特退?二士扱い?
「ちゃんと階級呼んでくれなきゃ受令いたしません!一尉殿!!」
強いんだか、弱いんだか。
「ふーふー」
「はーはー」
睨み合い。
「ふ―――――」
「は―――――」
何?決闘?刑法犯だよ?
「マメシバ三尉」
「はい一尉。ハナコって呼んでください」
譲れんのはソコか。
「あの制服はなに?」
「一尉殿の予備礼服を仕立て直しました」
どうりで遅かった。
って、早いよ!小一時間で5着かよ!!!
「おしゃれすぎるでしょ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――!!アタシは野戦服だぞ!!!」
「あんなかーいい娘たちに原型そのまま着せられるわけないでしょーが!!人間として!!」
「アタシの人権、ってか希望か野望か欲望はどーなる!!コイツに見せるんだぞ!!!」
「一尉殿は戦闘服がお似合いです!戦闘服を着るために生まれてきたんです!!」
「なんだと!!!!」
しかも、仕立て直しってレベルじゃねーぞ!
原型は判るが駐屯地で着てたら部外者扱いされるレベル。
「明日までに一人4セット仕上げてみせます!司令官閣下!明日の朝がお楽しみですよ?それまでお披露目はなしですからね?誰も着てない服は服じゃないですから!あれで終わりと思わないでください」
親指アピール。
あ、はい。
え?
さっきは服だけ見て許可だけ出した。だが、完成系は別なわけか?
「なに色目つかっとるか!!!!!!!!!!女子力アピールか!!裁縫苦手なアタシにdisってくるか!」
いやいや、服のほつれ直せりゃ十分だろ。
俺でも出来るけどな(兵隊の基本)。
「なにをおっしゃるんですか!料理も裁縫もお掃除も得意で野戦医療日本一(自称)に実家が流行っている開業医の次女なハナコですが、自分から男性を口説いた事はありません!!彼女持ちに口説かれてもちゃんと分かり易く相手の女の前でふってます!!」
星がキレイダナー。
「言っとくがな!コイツは巨乳マニアよ!Gカップ以下は人類と見なさない外道よ!アタシの発育が遅れたせいで高校二年まで手をだそうとしなかった筋金いぃたたただっっっっっ」
何を口走っとるか!!!!!!!
元カノの頬をつかんで引っ張る。
大騒ぎする元カノ。
「何すんのよ!DV?DV?知ってんでしょ!痛いのは少ししかダメだって!掴むのはソコじゃないってば!」
「子供の前で何を言っとるか――――――――――!!!!!!!!!!」
アイアンクロー。
「は、ひゃなあゃふわあとさまぃまなぉさまゃぁなはなちゃたろわたはみらわたっかなたなぅぅぅぅぅぅ」
(あ!いまのやりとり夫婦ッポィ?でもクローをエルフ娘が使ってたよね?床技仕込んだわね~~~~~~~~~~)
異世界言語を唸りだした――――獣人化?――――――元カノの処置をしつつ、子供らを確認。
魔女っ子とお嬢が胸に手を当て、エルフっ子が慰め・・・・・・・・・・・・なんか、二人から胸元を隠してる、いや、二人が指をくわえてエルフっ子の事を見てる?
「HEY!!!!!!!!!!」
P――――――a――――――――n!
神父が手を叩き皆を鎮めた。
「Cool Down!Cool DOWN!」
コイツに助けられるとは。
「セイリセイトン!OK?」
皆が頷いた。
遊んでばかりだった神父が・・・・・・・・・・・・・・・いや、トラブルメーカーだったか・・・・・・・・・・・・・・・いやいや、ついに役に立つ日が来たんだ!
過去の奇行は忘れよう。
『目指せ!なにもしない!!』
から始まり
『邪魔にならない』
を一足飛びに越え、
『業務可能』
に!
俺は嬉しい!
頑張った!
俺以外が!
とりあえず俺は撃ち殺そうとしかしなかったし。
あれか?昨日は三佐と話し込んでたもんな!さすが上司!部下に出来ない事を軽くやってのける!
そこにしびれ(以下略)。
上司と部下と同僚が立派なら、俺は帰っていいよね。あ、だめ?
「Priority?OK?」
優先順位は大切だな。うん。
「A!」
魔女っ子シスターズの二人。
え?一番最初?最優先?アルファベット順はともかく、問題発生してたか?
「B!」
「くっ」
マメシバ(他称)、自称ハナコ三尉。
よく考えたら、軍政箔付大尉の俺と、自衛隊では同格なんだよな。
「C!」
ビシビシッとハーフエルフ軍属のうち、橙(髪色)に朱(髪色)を指した。
「D!」
ハーフエルフ軍属の蒼(髪色)。
「E!」
ハーフエルフ軍属の緑(髪色)。
「F!」
ハーフエルフ軍属の白(髪色)。
皆、一様に顔を伏せた。
って言うか、問題多いな!優先順位で6段階かよ!件数換算何件だ!今日中に措置が終わるんか?
いやいや・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・曹長と坊さんを呼ぼう。
ノートPCのアイコンクリック。
「G!!」
ビシ!ビシ!!
元カノが胸を張り、エルフっ子が隠した。
「H!」
開けっ放しの扉から覗く、働くお母さん。
まあ、盗賊ギルドの頭目。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?執務室から溢れ出した問題?
そっちでもか!問題が残ってるんじゃなくて、増えてるのか!
「徹夜を覚悟しよう」
ザワ!!!
余裕綽々と二人を見回す元カノ。
何故にエルフっ子と頭目を見る?
そして、平静を装う頭目。
耳だけ赤くなるタイプか。
あ、目を逸らした、ら、やっぱり見て、あらら、元カノを睨みつけ、エルフっ子に指でサイン。
頬を染めて俺とシスターズをチラ見するエルフっ子。
周りが見えてない、悲壮な目で見上げるシスターズの小さい二人。あれ?三人目、じゃなくて、頭目の子か。
必ず後からまいります、とか、なんとか?決死隊かな?
偵察気球チェック。戦闘傾向なし。
「サアハジマリマシタ!無制限エンドレス勝負アサナマホッピング!!」
元カノを指す。
「ブラック・ナイツGカップ1/4、刺突系ヤマトナデシコ!ヤンデレジェノサイダー!」
エルフっ子をフューチャー。
「ファンタスティック・シンボルGカップ1/3、ゴールデンボディメリハリNO1!恥じらい大和撫子コッチジャネ?条例外美少女エルフ!」
天を見上げる神父。
「マイ!フェイバリットイチオシ!!!」
シャウト―――――――――。
「シーフマスター!Hカップ1/2!NTR !寝取り寝取られドッチヤネン!質量ウェポンキタ―――――」
PAN!!!!!!!!!!
「ファイ!!!!」
あ、俺?
「ドナドナド~ナ、ド~ナ」
曹長が無言で神父を拘束(簀巻き)。連れ出した(担いで)。
【太守府/港湾都市/奴隷市場の館/中央庭園/青龍の貴族の前】
あたしは忘れる事にした。
よしっ!
既に夜。
そしてここは、奴隷市場の貴賓館。
今日から、いえ、夕方からだから、さっきか。
青龍の貴族が居座る本陣。
港。
最大勢力、盗賊ギルド。
港の主役、海運交易商人たち。
邦の中心、参事会の出先が両替商。
盗賊ギルドは、港一の娯楽場に招いた。
海運交易商人達は一番豪奢な客船を献上した。
参事会は港における支部となる、迎賓館を明け渡した。
娯楽場は黒旗団のドワーフ他、現地兵の半分が乗り込んだ。
客船は商人たちに下寵された。
迎賓館は明日から始まる資産接収作業本部が設営中。
皆が、注視した。
青龍の貴族。
港に滞在中。
どこに住むのか?
その答えが、コレ。
「この館を借りる」
奴隷商人の頭。
青龍の騎士長が道化と交代に連れてきた。
青龍の僧侶も続き、青龍の貴族にうなずく。
「光栄にございます。どうかお気が済むまでご利用ください。我らにできることでございましたら、何なりとお申し付けをいただけますよう、伏してお願いいたします」
既に青龍の僧侶から話は通っていたみたいね。
声音に喜色が混じる。
「では館の使用人もそのままで」
は?
奴隷商人の頭は、慌てて、傍らの僧侶に取りすがる。
二度めはないと理解している。
それが救いにならなくとも。
「つまりこれはどう意味でしょうか」
応えは皆が想像した通り。
「この館にお勤めのみなさんに、今の仕事を続けていただきます」
館のメイド、下男、料理人、用心棒。
そのまま引き続きお仕事してください。
給仕して、掃除をして、食事を作り、不審者警備をお願いします。
青龍の貴族、女将軍、騎士たちが指揮している中で。
帝国を滅ぼす策を練り、密偵を狩り出す相談中に。
従順なものと反逆者を吟味している最中に。
敵を滅ぼしに出かけるときに。
【太守府/港湾都市/奴隷市場の館/中央庭園/青龍の貴族の左】
わたくしは、考え込みます。
もちろん、笑顔は忘れません。
魅力的に考え込むなんて、できません。
それと見せないよう装うのが淑女のたしなみですわ。
ご領主様のお考えは・・・・・・・。
奴隷商はいま、追いつめられてますね。
帝国直轄の独占市場。
参事会や港の商人はおろか、盗賊ギルドとすら疎遠。
お兄様も港の話をなさるとき、まったく話題にされませんでしたし。
結局それは、赤龍、つまり帝国の威光。
つまりは、今のご領主様、青龍の敵意を買います。
まあ、買うように見える、だけですけど。
ご領主様が何かに敵意を向けたのは二回だけ。
あの娘が犠牲にされかけたとき・・・・・・街を焼きそうになられました。
あの娘が侮辱されたとき・・・・・・侮辱した下賤な暴漢は自ら手にかけられましたね。
・・・・・・・・・・羨ましい。
・・・・・・・・・・・すっごく。
・・・・・・・・・・・・胸、の差はない、ですわね。
・・・・・・!!??わたくしはお姉さんですわ!差がないのは問題では??
いけません。
後回しです。
『奴隷市場』は寄る辺なき黄金。
誰もがうらやむ独占利権。
支配者の敵意に周囲の嫉妬。
すべてを失うのは時間の問題。
奴隷商人たちは、ご領主様の慈悲を希います。
なら、前太守から預かっていた奴隷を差し出したのは賂と同じ、最初の一手。
あの子の母親が、奴隷商人の口利きとは、少し微妙、注意ね。
それにしても姑息なこと。
降伏の作法もなってないわ。
でもまあ、ご領主様は最初の一手(ハーフエルフの少女たち)を気に入られた。
ええ。
お気に召されました。
あくまでも、女としてではないけれど。
行き届いた教育に価値を見出されただけだけれど。
ご領主様はそういう方ではあり・・・・ましても、わたくしは変わりませんけど。
だから、奴隷商人たちも、求められたら何でもするわ。
館であれ、人であれ、お金であれ。
そもそも誰一人使わない状態でも年中維持されている建物だし。
新たな負担があるわけもない。
たやすい話。
そうね。
なにも求められなかった、ことになるわね。
莫大な宝飾を求められたほうが安心したでしょう。
しかも、ご領主様の本陣を手伝え、ってことは。
ほとんど何も受け取らずに、いきなり飲み干された。
さすがご主人様。
・・・・・・悔しい。
お兄様がグズグズしてるから、我が家にお迎えできなかったのよ!!
くやしいくやしいくやしい!!!
って、あら、あの子の頬を引っ張ってましたわ。
【太守府/港湾都市/奴隷市場の館/中央庭園/全員の前】
俺はちょっと心配になった。
奴隷商人が卒倒しそうになっている。
いや、相変わらず全身を隠す衣装だから、顔色は判らない。
しかもずっと見ているわけじゃないから、同じ人間かどうかすらわからない。
まあ、中の人がどうあれ『奴隷商人の頭』って名乗ってるからかまわんが。
経費他必要な話は坊さん(係長)がやってるはず、うん、メッセージ来てるな。
『世は全てこともなし』
うん、いつも通りだ。よく見ると今までのメッセージもそれしか書いてないが。
・・・・・・・・まあ、困ってから考えよう。
まずは目先の問題。アルファベット順じゃないほう。
医者はどこだ?
【太守府/港湾都市/奴隷市場の館/中央庭園/青龍の貴族の前】
あたしはどちらを憐れむべきかわからなくなってしまう。
館。
青龍の本陣。
しばらく、あるいは、ずっと。
秘密がいっぱい。
要人がいっぱい。
危険がいっぱい。
青龍の貴族は、そんな館を管理せよ、という。
否応なしに責任を負わされる奴隷商人たち。
青龍と奴隷商人の関係は?
強弱で言うなら比較にならない。
疎遠というより無縁。
友好より敵対。
それどころか、夕方初めて会ったばかりで、お互いに何も知らない者同士。
怖い怖い青龍がとぐろを巻く、危険で高価な宝箱。
鍵を預けられ、出入り自由と言い渡される。
もしも。
何かがあったら?
ありそうだと疑われたら?
それを理由に資産没収、皆殺し。
半ば覚悟を決めて尋ねる奴隷商人の頭。
他の奴隷商人仲間を館から遠ざけておいて良かった。
被害は最小限、奴隷市場は守られる。
今夜は。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・と思っているのだろう。
みんなで死ぬくらいなら、自分だけが死ぬ。
周りに貸しをつくり、家族や身代を同業者に委ねるのが大商人だ。
あたしにもわからなくはない。
これが職人か農民なら、一目散に逃げ散るだろうけど。
「・・・・・・・・・・・・我らが、あらぬモノを見てしまう、かも、しれませんが・・・・・・・・・」
青龍の貴族や女将軍、要人を殺せるとはだれも思わない。
(そんなこともないけれど)
だから、間諜に疑われるのが一番怖い。
証拠も証明もいらない。
それができる場所に居合わせる。
それがお前と支配者に決められる
それだけで、皆が自然に受け入れる。
命を懸けた問いかけ。
いや、その形をとり婉曲に拒否しようとしている。
「見ればよかろう」
なんなりと。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
見られて困るものなどない。来て見て話せ。
何もないと知られた方が、何をするにもやりやすい。
あたしも呆れたし、皆も同じだろう。
【太守府/港湾都市/奴隷市場の館/中央庭園/全員の前】
俺は、この奴隷商人に感心した。
いや商売人というのはすごいな。
そんなことを気にしているとは。
上に立つ人間てのはこうでないとな、うん。
俺の後任者にはぜひ見習ってほしい。
問:秘密を見て、うっかりもらしてしまわないか心配です。
答:しっかり見てふれ回ってください。
そうそう。
そのほうが仕事がやりやすくなるってもんだ。
帳簿整理と資料集め。
そもそも隠してないし。
ここで行われていることが帝国にも知られたら、余計なスパイだか偵察だか送り込まなくなるだろう。
ぜひ伝えてもらいたい。
守るものも隠すものもない我が任地のすべてを!!
ついでに、俺の役目も知ってもらいたい。
殺す気が無くなること請け合いだ。
むしろ、ニート予備軍を減らしたら、帝国に不利になるんじゃないかと助言したい。
なんなら帝国軍に手紙で送りたいくらいだ。
邪推されるからやらないけど。
郵便番号知らないし。
「なんならスパイになるか?」
なるって言ってなれたら苦労しないか。
【太守府/港湾都市/奴隷市場の館/中央庭園/青龍の貴族の前】
あたしは目を閉じると反射的に耳を澄ませることになる。
奴隷商人の頭は棒立ち。
「そんなばかな、ありえない、罠だ罠、なんの、わからない、タチが悪い、騙されている、まだまだ広がるどうしたら」
つぶやきが漏れてる。
あたしにしか聞こえない、いや、青龍の魔法なら聞き取れているかしら。
ご苦労さま。
奴隷商人に?それともあたしに?
憐れむ相手は判らないけど腹を立てる相手は判る。
青龍の貴族!!コイツが全部悪い!
なんでこんなことをする必要があるの?
館を使いたければ使えばいい。
青龍だけしか立ち入れない場所を創る。
人が足りないなら、あたしたちか取り立てたハーフエルフたちを使えばいい。
館の大半を管理する人間はそれなりに必要だけどどうにでもなる。
一応、身元が確認できている、しかも青龍自身が雇いなおした王城の使用人たち。
忠誠を示そうと躍起になっている参事会の連中。
側に仕える妹分の実家からでもいい。
秘密なんか気にしない?何でも聞き見てふれ回れ?
訳が分からないけど、結構。
だけどほかに気にすべきことがあるでしょう。
たった三日よ?
最後はついさっきよ??
参事会に嘘をつかれ、暗殺者に狙われて、暴漢に襲われて、さっきも武装した不審者と倉街で殺し合い!
参事会をねじ上げて暗殺者も暴漢も不審者も殺して。
はい、おしまい。
ほかに何か?
わかるわけないじゃない!なに考えてるの!
青龍の論理。
敵は殺す。
敵以外は気にしない。
奴隷商人たちは敵以外。
今のところ。
何をしようがしまいが、どうでもいい。
考えは公言してるわね!悪うございました!ふん!
死なないわけでもないくせに!!
【太守府/港湾都市/奴隷市場の館/中央庭園/青龍の貴族の右】
わたしは、ご主人様に圧倒されてしまいます。
いつもですけど。
商人さんのお気遣い。
察して思いやるご主人様のお心遣い。
大人の世界はまだまだ遠いですが・・・・・・いえ、体格の事ではなく。
えっと、それは慰めてくれていますか?
頭目さん、いえ、あなたのお母さんはあちらですよ?
あまり触られると、その、ちょっと、あ、ちいねえ様、耳を引っ張るのはどうかと。
「明日朝、日の出から一時間後、お披露目を行う」
いけません、ご主人様のお声を聞き逃すところでした。
でも、朝?
お披露目、ですか?
園遊会なら昼過ぎ・・・・ですよね。
ねえ様・・・・・お顔怖いです。
ちいねえ様も不思議そう。
「着飾ってこい」
ちいねえ様も、目が怖いです。
えーと、私の服は、あ、お屋敷から針子も含めて何もかも?
生地、ですか?
一晩で仕立て、るんですか?
あの、せめて、お古を貸していただければ・・・・はい!
頑張ります!
ご、ごひゅ、主人様の名に懸けて!!




