見ざると決めればみえるもの

眼を閉じたことではなく、眼を閉じていられないのが辛いのだ。

――――――――――ジョン・ミルトン

（政治家・思想家・作家/イングランド王国-イングランド共和国-イングランド王国）

It is not miserable to be blind; it is miserable to be incapable of enduring blindness

――――――――――John Milton

※訳してみたら一般的な訳文と全く意味が違うことになったので、参考程度にお考え下さい。

※どーしてこうなったのかわかる人挙手！

※共和主義者が共和国建国から滅亡、王政反動下の弾圧まで経験すれば心情としてはごもっとも。

※失脚した政治家が作家になるのは西ヨーロッパの伝統。

【異世界大陸沿岸部某所/奴隷牧場品種改良】

ああ、借り腹のことでしょうか。

貴重なエルフの種を蒔くのですから、ただの腹では足りませぬ。

ハーフエルフを造るため。

借腹は人の女でごさいますな。

人はエルフと違います。

弱く、濁り、保たれず、壊れる。

ならば最初から孕ませるにたる、その為にある血統を造れぬか。

エルフに等しい、などどは申しません。

それができればエルフを育てる意味すらなくなりましょう。

ただ、近付けることはできるのではないか。

遷ろい易い人の肢体を可能な限り、等しく保つことはできるのではないか。

交配を通じて弱さを避け歪みを除く。

育成を経て健やかさと強さを整える。

歳を越えれば崩衰すれど数年のこと。

孕ませ、産ませ、休ませる。

これ一年。

それを三度繰り返すことができれば。

――――――――――見果てぬ夢にございます。

多くの同業者が、時に手を組んでまで設えようとしましたが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・叶いませなんだ。

おそらく数代やそこらを整えても、欠けるを防げず足りぬは埋まらず。

――――――――――なるほど、左様でございますか。

人の短い生では周りの気を吸いすぎて、形をたもてぬ

―――――――――――ありがたやありがたや。

主上からは学ぶことが多く御座います。

無論、お役に立つために。

ゆえにこそ、借り腹は造れませぬ。

ゆえに毎年買って参ります。

はい、それはもう。

どこから、というはなしにございますな。

【聖都南端/白骨街道/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の右膝/魔女っ娘】

わたしは、ご主人様の脚に顔を伏せました。

ご主人様の、眼差し。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌさんたち、一人一人をゆっくりと。

その特徴に目を留めて、満足されます。

わたしを見る時と

――――――――――同じです。

きっと、わたしも、普段。

今のＣｏｌｏｒｆｕｌさんたちと同じ表情をしているでしょう。

ご主人様に視線を頂けたとき

――――――――嬉しくて、誇らしくて、もっと見て欲しくて、魅せられないのが悔しい。

今。

そんなＣｏｌｏｒｆｕｌさんたちを見る、ご主人様の眼差し。

すご――――――――――く、優しい眼です。

わたしは羨ましいのですが、我慢です。

羨ましがっていることを、ご主人様に気が付かれたら死んじゃいます。

わたしはわたしを、ご主人様に見せられません。

わたしが自分で上手くできた、わたしだけ。

ご主人様に気に入っていただける、わたしだけ。

ねえ様、ちい姉さまが奨めてくださる下さる、わたしだけ。

わたしだけを、おみせしたい。

がんばって。

がんばって。

がんばります。

仕草に気をつけて、表情を整えて、わたし自身に言い聞かせて。

及ばなくても当たり前、でも、見とれてしまってはいけません。

愛してくださる方の、名誉と誇りが、わたしにかかっています。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌの皆さん。

すごくキレイです。

すごくおおきいてす。

すごくステキです。

羨む前に、とはいきませんが。

真似ができるか考えます。

諦めない、とはいきませんが。

かなわないとはおもいます。

わたしが見習えるところは無いでしょうか？

特に橙さん。

どこか親しみを感じます。

皆さん素敵なのですが。

皆さん女としては畏れ多いのですが。

皆さんのなかで綺麗より可愛らしい感じ。

え～～～～～～～～～～ハイ、わたしでは、まったく及びません。

でも、いいんです。

ご主人様がよければいいんです。

でも、欲張りになっても、いい、はずですよね？

ご主人様。

だから、もっともっともっと。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌさんたちは、ご主人様が好き。

ご主人様も、Ｃｏｌｏｒｆｕｌさんたちが気に入ってらっしゃる。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌさんたちは、誰だって好きになる。

美しくて可愛らしく。

博学で機知に富み。

巧くて上手。

うらやましくてうらやましくてうらやましいから、お話を聞いてしまいます。

わたしは愛していただいて、それで満足でも、もっともっともっと欲しいから。

だから、きっと、Ｃｏｌｏｒｆｕｌさんたちや橙さん。

僅かでも微かでも、真似できるところを探してしまいます。

誰かの真似をして、もっともっと、気に入っていただきたい。

わたしたちは、そう思います。

そして手本にするなら、Ｃｏｌｏｒｆｕｌさんたちですよね。

ねえ様も、ちい姉さまも素敵です。

でも、この場合はやっぱり。

ご主人様の眼を惹く方法。

想う男の方に好かれる方法。

好かれていることに応える方法。

何をどうしても答えきれないこの気持ちを、形で仕草で肢体で表したい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・全然だめです。

だいぶ焦って、失敗したりするくらい。

わたしも、ちい姉さまも、ねえ様さえ。

だからこそ。

ねえ様も、ちい姉もＣｏｌｏｒｆｕｌさんから学んでいます。

でも。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌさんたちは、違うそうです。

わたしはＣｏｌｏｒｆｕｌさんたちを見習いながら、見習うときにはいつも思い浮かぶ疑問を考えます。

いつでしたか、わたしが羨ましさをこぼしてしまった時。

その、油断したといいますか、はしたないといいますか、とっても仲良くなってしまった弊害といいますか。

みなさんみたいに、貴女みたいに、女としてみてほしいです。

ご主人様の女として、もっともっともっと。

ハイ。

言っちゃいました。

ごめんなさい。

わたしが、他の女の人に申し上げるようなことじゃ、ないですよね。

でもＣｏｌｏｒｆｕｌさんたちは、優雅な仕草で赦してくださるのですが。

そしてなぜか、みなさんが普段感じていることを、教えてもらえました。

これ以上、我が君に好いていただける

――――――――――なんて、思いつかなかった。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌさんたち、つまり、すっごく綺麗な、可愛らしい、洗練された女性の言葉とは思えません。

といいますか。

男の人に好かれる技能をもっておられるはずですよね。

それで好きな男の人、ご主人様に出会えたわけで。

？？？

改めて考えても、もっと、とは思えもしないとか

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだか判りません。

橙さんが特に、教えてくださいました。

ご主人様は特別なのです、と。

それはそうですけれど。

あたりまえのような。

その時、言葉に困り頸を傾げ合う、わたしと橙さん。

朱さんが、補足してくださいました。

あなた(まほうつかい)。

ちい姉さま(にんげん)。

ねえ様(エルフ)。

ご主人様には、三人が、三つ(三種族)の一番がおられる。

それなのに、Ｃｏｌｏｒｆｕｌ(ハーフエルフ)を、その眼の前で抱きしめてくださる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・朱さんの言葉そのままです。

ますます、わたしは判りませんでした。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌさんたち。

ご主人様のもの。

ご主人様の女たち。

ご主人様のみんな。

ぜんぶ、おなじ、ではないのでしょうか。

ご主人様は、その、誰にも等しく意地悪ですし。

弄り方は一人一人に合わせていつも意表を突かれますが。

いつもいつも誘うだけ誘って、焦がせて焦がせて。

女の扱いはみな、おなじ。

それだけは、断言できます。

でも、ちがう？

碧さん、いえ、Ｃｏｌｏｒｆｕｌの皆さんは、みんな想っているのだとか。

ご主人様には、女がいる。

わたしがいて、ちい姉さまがいて、ねえ様がいる。

なによりも、ねえ様がお側におられる。

なのに、その、わたしたちがいるのに。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌのみなさんを、ご主人様が愉しまれ、大切にする。

みなさんには、それが不思議なのだとか。

？？？？？？？？？？？？？？

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・意味が判りませんでした。

ご主人様が、ねえ様を抱く。

ご主人様が、Ｃｏｌｏｒｆｕｌのみなさんを、抱く。

ねえ様には、ねえ様を抱く様に。

橙さんには、橙さんを抱く様に。

違うけれど、でも同じ様に抱く。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なにがおかしいのでしょう？？？？？？？？？？

例えば橙さんを、ねえ様と一緒に抱きしめる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・羨ましかったです、人のことは言えませんが。

わたしも、その、ご主人様に抱いていただいたり、撫でていただいたり、頻度は少なくないはず、です。

だからＣｏｌｏｒｆｕｌさんたちが、おなじように抱かれても、特段、おかしくは、ないですよね？？？？？？？？？？

それが、Ｃｏｌｏｒｆｕｌのみなさんには、信じられないのだとか

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それ、って、どれですか？？？？？？？？？？

確かに、ご主人様はＣｏｌｏｒｆｕｌのみなさんが好きです。

それはそれは、当たり前なのですが。

わたしたちは、わたしたちだから当然なのだとか。

いえ、恥ずかしながら、女としては

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・足元にもおよびませんけれど。

ご主人様の好みに甘えている身ですが。

今はまだ、ですけれど。

結局、さっぱり解りませんでした。

お話しいただいたのに、申し訳ないです。

わたしも、いつかわかるように

――――――――――ダメ！！！！！！！！！！

って、言われました。

謝罪されて、ダメです、って言い直されました。

Ｃｏｌｏｒｆｕｌのみなさん、一人一人に、個々に、同じように、ダメなんだと諭されました。

わけがわかりません。

でも、それをわかると、悲しく苦しい、それ以上の何かに触れてしまう。

だから、わたしは、そのままでいたいと思います。