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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十章「異世界の車窓から」

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見えることで背負うこと。

【用語】


『Colorful』:奴隷商人に造られたハーフエルフの最高級愛玩奴隷たち。髪の色がいろいろなため、神父が全員あわせて「Colorful」と命名。異世界では用途別の奴隷を出産から教育まで一貫して生産する奴隷牧場がある。


『シスターズ』:エルフっ子、お嬢、魔女っ子の血縁がない姉妹同然の三人をひとまとめにした呼称。。頭目の愛娘を加えるときは「+1」とか「+α」などとつける。



彼らは眼を開けて産まれてきた

――――――――――Giuseppe Prezzolini

(政治思想家・作家・ジャーナリスト/イタリア王国-イタリア共和国)


ルネッサンス期の知識人を評した言葉。



盲目の世界で一人だけ眼が見える。


見えても誰にも伝わらない。

教えても誰にもわからない。

助けても誰にも知られない。


皆が一斉に断崖から飛び込もうとしている時。

その先を、ただ独り見ることができる自分。

何をどうしようと誰にも理解されない。


さてアナタなら。

目蓋を、開けるか。

閉じるか。






【異世界大陸沿岸部某所/奴隷牧場運営心得】


皆様方の箱庭。


我ら氏族が囲う此処。

エルフの腹も種も四代前から辿れまする。


女は純正を産むために。

男は先ずもってエルフを産ませ、次にハーフエルフを造るために。


はは、流石にお目が高い。

産ませるためにはもう一つ必要にて。

ハーフエルフを産ませるために。


人の借腹でございますな。


まさかまさか、その辺りからではありませぬ。

もちろん、奴隷商人が大切な大切な奴隷を使ったりは致しませぬ。


商人が商品に手を付けるなど、有ってはならぬこと。

これはどの商いでも同じことにございましょう。


とりわけ奴隷をはぐくむとなれば。

お客様への背信、これに勝るはございませぬ。


特段、初物を、と望まれる方が多いわけでは御座いませぬ。

練り込んでから、とお望みの方もおられます。


しかしながら。

お買い上げいただく。


御代金を頂く身でありながら、それ以上の何事かを得ようとするは、商いの道に外れたことにございます。


それはわれとわが身と氏族のすべて、これを主上に奉るうえでも、かくあれかし。


ご厚情にて首を赦され、俸禄を賜り、息を許されております身。

ましてや、我が氏族の技に業、それを龍がのみほす星に必須。

浅学な身では御座いますが、商いの道に磨きをかけてお仕えすべき。


と、かように心得ておりまする。

故にこそ、奴隷商人たる在り方は残しておきましょうぞ。



この生業、禁忌を犯せば、九族まで皆殺し。

これはギルドの中のこと。


故に、あの帝国さえも口出しませぬ。


無論、人のこと。

エルフやハーフエルフの魅力には逆らえぬ時も在りましょう。


過ちは、繰り返さぬ物では御座いませぬ。

繰り返さぬ、などと申し上げるは詐欺師の口上。

過ちは、その場で糾すに他在りませぬ。



もし、ソレが起これば

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・過ち、と言える範囲であれば、ですが。


三族に死を与え、当人には、責めがある全員には、最低三年かけて殺しまする。


金に飽かせて、最高の魔法を使い。

決して死なぬように、生きぬように。


拷問の粋を、切り潰し溶かし焼き侵し、体が喪われていく様を、末永く。



流石は主上。

期間を定めぬはお察しのとおり。


最後の最期まで舌で転がすように、常に新鮮な苦痛を生む配慮。


時折、生死をチラつかせ、正気を保ち、末永く奪い続ける

――――――――――奴隷商人以外、このようなことは致しませんな。


与える時のコツでございます

――――――――――ああ、もちろん、我らが賜る時は、御存分に。


もちろんギルドの中では、まだ死なぬものが死に続けておりますな。


奴隷に会う機会がある。

そんな者たちは、必ずソレを見る機会も与えられます。



――――――――――関心が、御在りで。


もちろん、特段、秘するモノには御座いませぬ。


おお!!!!!!!!!!

主上に隠すものなど御座いましょうか

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・御安堵頂き、嬉しゅうございます。


お役に立てばこれに勝る喜びはございません。





【国際連合統治軍第13集積地/白骨街道/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


もちろん、俺は内心を表したりしない。


毎度のことながら異世界人に謝罪したら死刑

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ってのもあるけどね。


ムチャだよねぇ。

て、アナタ。


謝罪禁止って嫌がらせか?

あ、嫌がらせか。


俺たち自衛官への。


これはまさに侵略に他ならない!!

ユーラシア・アメリカの大陸文化による陰謀である!



国際連合軍の九割方が日本人だっての。


いや、いまとなっては地球人類の九割以上が日本人だが。

しかしされどそのうえで。


日本人の根幹に関わる禁忌を、上書きして重ねて禁ずる禁令。

異世界種族と接する、ごく限られた全自衛官の悩み。


もうしわけない。

禁止。

ごめんなさい。

駄目。

すいません。

厳禁。


どーせいというのか。

胸を張ってふんぞり返れ?

ムリ言うな。



俺の場合は素知らぬふり。

他のみんなもそれなりに。

出来ないとは言わないが。


つらい。


そりゃ、ストレスになりますよ。

反射的に謝る日本人。

謝るからこそ気楽なのに。


何処かの誰かが言いました。

謝罪とはリセット(初期化)である。


何処かの誰かが言いました。

謝罪とはセットアップ(設定完了)である。


なんの?

罪悪の。


互いの力が対等であるとき、善悪責任無責任損得は互いの承認からスタートする。


結局は同じ賠償を払うにしても、一度は責任が無い立場を確保してからが望ましい。

あえて責任を引き受けて魅せる、まさに魅せることができるから。

さもなけりゃ、損して得とることもできやしない。


それって異世界でもそうなの?

そうらしい。


大陸文化という根底が一緒であるためなのか。

地球と同じ様な生態の地球と同じ様な生物が地球と同じように生きてきたためか。

あるいは?


対異世界の指針を造るためにサンプル(ひがいしゃ)確保(らち)する任務をこなしたのが、アングロサクソンな在日米軍兵士諸君であったためなのか。


魔法翻訳は互いの意識に引きずられる。


不幸なことに、人間は自分の常識を疑う能力が存在しない。

先入観と常識・偏見と信仰・認知と錯覚の区別はできない。

個人が知覚できる極めて狭い範囲で、全世界は規定される。


強者として地球の大陸文化前提で接した米軍兵士。

弱者として迎合することになれた異世界下層住民。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えーと。


まあ、それで問題が生じていないから、それでいくことになりました。

だから謝罪禁止。


これもなー。

極端すぎる気がするんだよなー。

軽い謝罪なら、日本人じゃなくてもするんだが。


日本慣れしていない、どころか日本に触れたことが無い奴に確認したから間違いない。

確認というか、ついでもあって試しただけだが。


アラスカから直接横田にきて、直接アラスカに戻る奴とか。

必要無いので日本語を話さないし、わからない。


そーいうやつらと付き合えばわかる。

英語話せるのかって?


馬鹿言っちゃいけない。

英語が判れば、話せなくても何とかなるのだ。


自衛官の英語能力って、そんなもんですよ?


目安は女を口説ける程度であればよし。

How much!じゃないほうで。


もちろん上級者はそんな言い方せんけれど。


ビジネスってのは互恵関係末永く。

最初から最後まで末永く。

相手のポテンシャルを


あ、その話じゃない。


まあ別な例でいえば、広西の奥地からやってきた少数民族とかね。

そーいうのと接すると、あんまり日本と変わらんところもあるな、と。


同じと考えると大失敗するから要注意。

つまり。


外国人が謝らないというのは偏見です。




弁護士や外交官と、個々人が違うってのは当たり前。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・軍政官は個人じゃないですね、すいません。



それはわかる。

よーくわかる。

オレも謝る方じゃないからね。

日本人にしては。


でも日本人なんで。

みんなの気持ちはよーく解ります。


軍政官を日本人にやらせないほうがいいんじゃないかな。

そもそも軍政官にまで回せる人間が日本人以外余ってると思ってんのか、と言われたらその通り。


実戦経験前提の外国人兵士は前線の中核。

政治向きのことが出来る教養があって、前線から引き抜いてもリスクにならない兵士。



犠牲は外国に押し付けるモノだって、議員が言っていたのに。

もちろん俺が外国人だったら、そのような不当は許さんと信じてもいないことを叫ぶところだが。

今、俺が日本人だから、それでいいと思っていたらこのありさまである。


え?

俺は俺の味方だよ?

あたりまえじゃん?


自分以外の何を護れというのか。

でまあ、怖い女が笑顔で俺に命じるわけだ。




はい、日本人でやります。


よって、皆さん日本人。

謝れないから、相手、異世界種族への心理的負債がたまっていく。



俺たち軍政官は特殊な訓練を受けております。

だから取り繕える、表面だけは。

だが内心は別なわけで。


気楽に接することができない。

謝罪ネタを増やすことは嫌だから。

だから何かと気を遣う。

謝罪に見えないように償うために。

ゆえに相手に先に訊いたり尋問したり。

謝罪すべきことを避けるために問答無用。


って、おい。



軍政官一般が異世界種族にとる姿勢。

慇懃無礼、中立孤立、最小最少、逃避敬遠、遠交近硬。


なるべく殺さないように。

なるべく関わらないように。

なるべく埋め合わせるように。


三原則。


それでだいたいうまくいく。

今のところやらかした軍政官はいない、はず、非存在にされてなければ。



これは俺調べ、じゃない。

軍政官交流掲示板調べ。



だが、この場合は違う。

それはこれ、俺がColorfulに謝らない理由。




俺とColorful。


利用する側と使用される側。

支配する側と隷属させられる側。

消費する側と消耗させられる側



謝るのは卑怯じゃないか。



謝るくらいなら最初からやるな!!!!!!!!!!

反省するなら腹を斬れ!!!!!!!!!!

悪いとわかったならすぐ止めろ!!!!!!!!!!



――――――――――はい。

まったくもって、その通り。


なにもできない。

なにもしない。


どちらも同じだ。


なら謝罪の意味は?



謝った側の気持ちが楽になる。


謝られた側が相も変わらず、苦しいだけなら?

元凶のくせに、自分だけ楽をしようということしてるだけ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いつもの俺か?



ただでさえアレなのに、許せ赦せとなお強制

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――できっか!!!!!!!!!!



憎まれた方がマシだ。

それは国際連合方針に反するか。


愛されるな。

憎まれるな。

畏れられよ。


なら恨まれた方がマシ。


侵略者として。

敵対者として。

加害者として。


胸を張ろう。


言い訳は、しない。

だから、あやまらない。

やれないんじゃなくて、あえてしない。


―――――――――――――――子どもにだけは――――――――――




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