それでも夜は明ける
いつか夜は明ける。
それは間違いない。
明けなかった者から、苦情はでない。
【異世界大陸沿岸部某所】
ようこそ皆々様方。
いえいえいえ、めっそうもございません。
地に伏すは礼にございます。
我が主上への礼を示さず如何に昼夜を過ごせましょうか。
おお!
御高配、感に堪えませぬ。
はは、さすがはニッポンの皆様方、青より蒼き龍が頭。
いえいえいえ、我と我らが売るのは奴隷のみに御座いました。
舌を売るなど御座いません。
とりわけ皆様方との語らい、これ当主たる我が誉。
一言半句と言えど滑らせることなだ在り得ましょうか。
狭量な身故、誉のひとひら、影さえも我一人のモノで御座います。
我とて末席にて、我らが主上の踏み石の一つたる者。
分けるなどありません。
叶うことなら我が身を裂いて、隠れ無き姿をご覧居おアタ抱きたくもあれ。
無論、我が忠心は龍の秘薬にて証し続ける所存。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もちろん、奴隷を商うは昔語り。
今は皆々様方より、禄を賜る卑しき遜身でございます。
今は、孕ませ、育み、躾るを持って、至尊の御身にお仕えする身にて
――――――――――さささ、こちらへこちらへ。
ここは我が氏族が丹精を込めた牧場にございますれば。
ご高覧あれ、ご高覧あれ。
皆々様方が満足されるのは、当然ながら、お目の高さゆえに。
そう、ざっと三代をへて(45年相当)我が身にて四代目。
古の諸王国、今世の前世の更に前。
皆様方がいらっしゃる前、の前にございますれば。
あの頃より一族は奴隷を育てておりました。
ハーフエルフを。
ハーフエルフのみを。
ただハーフエルフだけを。
人もエルフもそのためにだけおりまする。
美しく卑しく。
賢くも愚かしく。
儚くも忘れがたく。
惹かれ囚われ、避けて逃れて、誰もが誰もが抗えぬ、モノ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――然様にございます。
あの娘たちは此処にて産まれ育った至上の逸品。
唯一の五名にて。
同じモノは二つとございません。
さりながら、お察しの通り。
同じ様に御用意いたしましょう。
おお、よくぞご存知で。
いえいえいえいえ、気に留めて頂いたのですから。
皆様そうおっしゃいます。
遠きも近きも、今も昔も、ついと取りだされまするな。
まるで世界を帳簿につけておられるかのようで。
はは、まさかまさか。
存じあげませぬ。
存じようと致しませぬ。
存じようとは思いませぬ。
まっことに
――――――――――おそろしやおそろしや。
【聖都南端/白骨街道/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の左膝/お嬢】
だから、わたくし、Colorfulの皆をにら、いえ、見ました。
貴女たちは取り立てられたのですから。
それはつまり、お気に召されたということ。
それがいったいどこなのか?
沢山美点があり過ぎますけれど。
中でも特に召されたのはどこなのか?
それを学べるとは限りませんが。
一番良いところ
次に良いところ。
さらにさらにと繰り下げていけば判ります。
学べるか学べぬか。
学べぬところは競わずに。
学べるところは付け足して。
もっともっとも~~~~~~~っと。
悦んでいただくのです。
わたくしで。
わたくしが。
だからるあなたたち。
わたくしのまえで、存分に愛でていただけば良いのです、よ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わたくし、たちが決めることじゃありませんし。
わたくしの羨望など、なんの関係もございません。
必ずや貴女たちから学び取って差し上げます。
【国際連合統治軍第13集積地/白骨街道/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】
俺にはわからない世界。
判るけれども解らない。
だからできないしちゃいけない。
否定も肯定も干渉も。
俺に関わらない限り。
国際連合軍の作戦に関わらない限り。
異世界文化不干渉原則。
国際連合決議。
地球人類の総意は正しかった?
判るけれども解らない。
Colorful
出生前から工夫された存在。
産まれ落ちた瞬間から繰り返された研鑽。
誰もが逃れられない運不運。
全ては、ただ、否定されるために。
橙の耳、もそうだ。
白に比べれば、丸いかもしれない。
エルフっ子と並ばなければ、わからない。
エルフの耳は尖っているからな。
そんな些細な特徴。
尖り具合が生死を分けたのかもしれない。
ハーフエルフは愛玩奴隷。
頭目の娘のように、愛されて産まれて、愛され続ける子は例外。
蔑まれ虐げられるために高値で取引されるソレ。
形が規格外ならば。
気性が合わなけければ。
現状を受け入れなければ。
廃棄される。
粗悪品として売られたりはしない。
市場価格を護るため。
それなりに買い手がついても、破棄。
ブランドイメージを護るため。
気に入る買い手がいたとしても、破棄。
それが奴隷牧場。
今も日々、エルフがハーフエルフを生産している。
女エルフは純粋エルフを造るため。
男エルフはそれに加えて、ハーフエルフを造るため。
ハーフエルフたちは、認められる瞬間を諦められず
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お腹痛くなってきた
――――――――――んが、笑顔です。
Colorfulがみてるからね。
シスターズもだが。
【聖都南端/白骨街道/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の左膝/お嬢】
ですから!
わたくし、むしろ、Colorfulの皆には感謝してます。
良き手本として。
尊い師範として。
習う先達として。
まあもちろん、わたくしたちで至らぬところで、ご領主様を愉しませてくださるのは、感謝だけでは語りつくせぬ良くない感情も抱きますけれど。
いいのですわ。
我慢に足りないわけではありません。
わたくしが学ぶだけでなく、他にもたすかっておりますし。
それはつまり、よい眼眩まし。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご領主様は十五前後の娘盛りが好き、そう思わせる為。
ご領主様の好みを、多くの者が誤解してますもの。
わたくしたち、ご領主様の周りに侍る娘を見れば、その頃合が多いですからね。
そう見えますわ。
ねえ様くらい、趣味嗜好を圧倒する力があれば別ですけれど。
十前後の女は二人だけ。
わたくし、あの娘の独壇場ですわ♪
そのことに、御領主様の好みに気がついている、一握り。
その口さえ塞げば、しばらくは優位を保てます。
一握り?
参事会を仕切る、若い参事。
まあ、あの男は大丈夫ね。
あの娘の後押しで、わたくしに対抗。
判りやすいし、敢えて、わたくしに判りやすくしてますもの。
きっと勝負所まで目立つことはしないわ
――――――――――わたくしたちが、ご領主様の子をなすまでは。
そして、用心すべきは、わたくしの、お兄様
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・危険なのは、お兄様が手配した港街の娘たちね。
十前後でまとめた娘たち。
お兄様が、わたくしに対抗すべく集めた精鋭
――――――――――流石、と申しましょう。
思い出します
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの怒りを!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
わたくしを、愛しい殿方から引き離そうなんて!!!!!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・解せませんわ。
お兄様ほどの商人が、わたくしの後押しをしないなんて。
自然に考えるならば、逆。
ご領主様は、一領主に留まりません。
高らかに旗で掲げる、星を奪う青い龍。
その中枢に繋がる、方。
海龍や飛龍、大隼を顎で従える。
無理を通して道理を引っ込める女将軍を組み敷く。
己こそ世界な青龍の公女様に、無理難題を押し付けられる。
ご領主様自身、それを望まれては居ませんのに。
失脚されるまで、心が休まるときはありませんわね。
そんな立場の、ご領主様。
娘が召し上げられなくとも、押し付けたがる家ばかり。
仮に寵愛を得られずとも、側に居るというだけで力になりますもの
――――――――――それは世の常。
じいや、ばあやから、具体的な動き、その気配は聴いていますわ。
社交界直前の、容姿が売れる娘たちは当然のこととして。
手駒がない家は、配下の家々はおろか市井や村々から探して養女に据える算段。
わたくし、たちへの寵愛が揺らぐなんて思いません。
でも。
わたくしと過ごされる時間が減るのは、腹立たしく。
そしてもちろん、わたくしたちの間でも競い合いはありますし。
ご領主様が、わたくしを愛でる。
わたくしの家が、ご領主様にとりいる。
と思わせて、わたくしが家の力を捧げる
――――――――――予定でしたのに。
わたくし、あの娘に負けるとは思いません。
でも、あの娘の方が、小さいし
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大きさなら、ねえ様の、独壇場ですわね。
なんとしても、埋没阻止!!!!!!!!!!
だというのに、お兄様ときたら!!!!!!!!!!
わたくしを利用しないなんて非常識な!!!!!!!!!!
ま、まあ、良いでしょう、今は
――――――――――お兄様どころじゃありませんわ。
非地球世界における道徳、法律、慣習、その他一切の文化的干渉を禁ずる。
≪国際連合/国際司法裁判所勧告/安全保障理事会承認/総会決議≫
国際連合軍は国連決議「A/RES/ES-11/8(国際連合第11回緊急特別総会8号決議)」に従う。
よって、現地の道徳、法律、慣習には一切干渉しない。
軍内部においては国際連合軍特別軍法を適用し、非規定事項については日本国国法を準用するが、現地社会、現地人に対しては適用しない。
規定違反は人類への反逆であり「平和に対する罪」ないし「人道に対する罪」が適用される。
なお、作戦上の必要がある場合はこの限りではない。
≪国際連合軍事参謀委員会通達より抜粋≫




