悪い奴の条件
【用語】
『シスターズ』:エルフっ子、お嬢、魔女っ子の血縁がない姉妹同然の三人をひとまとめにした呼称。。頭目の愛娘を加えるときは「+1」とか「+α」などとつける。
魔女っ子、ちっちゃい。
お嬢、ちっちゃくないと主張。
エルフっ子、ベスト3の大きさ。
『Colorful』:奴隷商人に造られたハーフエルフの最高級愛玩奴隷たち。髪の色がいろいろなため、神父が全員あわせて「Colorful」と命名。一人一人の名前は髪の色に合わせて白・朱・翠・蒼・橙と主人公が名づけた。軍属として雇用契約を結んでいるので日本の労働法が適用される
性格
一番不器用で耳が短い、橙。
その橙をフォローすることが多い、碧。
一番背が高くシスターズと一番話す、翠。
事あると真っ先に前に出てくる、朱。
一番胸が大きくおっとりしている、白。
賄賂を受け取る警官には我慢できる。
だが目の前に立つ警官が「法と正義の狂信者」だったら?
合衆国司法省は「Department of Justice/正義省」と名乗っている。
呼ばれているのではない、自ら称している。
フーヴァーが築いた司法省傘下FBIは、合衆国のゲシュタポと呼ばれているが。
合衆国国防総省の設置は1949年だ。
以後、一度として国内で、自国の国境で戦ったことがない軍隊。
それを統率して、他国を蹂躙だけし続けて、「国を守る」と良く名づけたものだ。
オーウェルのディストピア小説ではこんな設定が描かれている。
「平和省」
戦争を管轄する。
「豊富省」
配給を減らし続ける。
「真理省」
情報を隠蔽し捏造する。
「愛情省」
拷問と弾圧のために在る。
今我々はどこにいるのだろうか?
スターリン体制下のロシアか?
1984年のオセアニアか?
20世紀の先進国か?
《トマス・ピンチョン(ノーベル文学賞候補の常連小説家)
――――――――――「1984年」書評を斜め読みにして意訳したつもり》
「悪党」とは、正義になりえる者を指す。
何故なら、正義を知らねば悪は為せないからだ。
ならば、その利害を知ることで善に誘い込むことは容易い。
「悪党になれない」ならば、何者にもなれない。
正義を知らず、悪にもなれないのだから当たり前だ。
だからナニモノでも無い者は「正義は人それぞれ」と、安易に言い訳して終わる。
本来、相対主義とは「異なる者同士が相互影響・依存関係にある」という概念であり、関係・決断・責任から逃げ出すための道具ではないのだけれど。
それを無能とも無為とも言い換えることができる。
「悪党を改心させることはできるが、無能を改めさせることはできない」
とも言える。
無能。
何もしないこと。
無為。
何もなさないこと。
それを消費して、唯一増殖するモノがある。
1910年代、列強諸国に伝播した共産主義。
1930年代、欧州後進地域を席巻した全体主義。
1950年代、合衆国を炎上させた反共国粋主義。
20世紀末以降、世界経済を破綻させた財政均衡主義。
それらのモノ。
名前が違い、ときに相争い、等しく社会を焼き尽くすモノ。
「狂信」
【国際連合統治軍第13集積地/白骨街道/ランドクルーザー車内/中央席/
青龍の貴族】
俺に集まる16の瞳。
あと8個あれば完璧だった。
「「「「「「「「・・・・・・・4人足すんだ・・・・・・」」」」」」」」
8人ハーモニー。
いえ、別にコーラスを造りたいわけではなく。
それよりも。
なぜこんな古典ネタに反応するんだ諸君。
日本人でも24の瞳なんて言われて判るのは、相当レアだぞ。
ググった挙句、迷走するのがせいぜいだ。
俺だって、オリジナルを見たことは無いんだよ?
こんなネタを異世界幼女童女少女たちに教えるのは誰だ。
サブカル好きのマメシバ三尉ではあるまい。
『Lawyer Up!!』
・・・・・・・・・・・・・・・神父だな。
未だ曹長にガバメントを突き付けられ、車室と仕切られた運転席のくせに。
真っすぐ前方路面を見て安全運転し、バックミラー確認を防がれてるくせに。
オープンな通信系で耳を澄まし、此方の様子をうかがっているのか。
ネタに介入する機会を逃さない、芸人の鏡。
『NoNoNo!Pacific Marine!』
こだわるの、そこ?
太平洋海兵隊。
合衆国海兵隊の中でも最大にして首席、って気分なんだろうが。
しらんがな。
後で嫌がらせしてやろう。
とか思っているうちに、事態は悪化、なのかどうなのか。
魔女っ子、お嬢は膝をじりじりと登り始める。
俺に。
登山かな。
エルフっ子&Colorfulの少女らは、詰め寄っている
俺に。
カバディかな。
注目を引けた。
と思っていたら、上には上がありました。
一曲歌う?
現代日本の楽曲は100%理解されないだろうけどな。
魔法翻訳も存在しない概念は対応してないし。
日本の創作物が海外で一般普及しないのと同じ。
まあ文化の垣根を超えるためには、文化を捨てるしかないけどね。
3歳児以下でもわかるようにされたハリウッド映画みたいに。
いや、逆を極める手もあるか?
異世界でも通じそうな歌。
般若心経のサンクスリット語版。
※キリスト教国で宗教聖歌が歌われるように、仏教国では経文が歌われます。教祖の時代の言語に近いものとしてラテン語やサンクスリット語が取り入れられるのもお約束。CDなども普通に販売され日本でも買える。
俺のは耳コピーしただけだから、ブッダ以外、歌詞の意味は解らん。
その分、ってーか関係ないけど、発音はなかなか自慢している。
話せないし意味も解らないけれど、音は出せる。
洋楽あるある、西洋じゃなくて南洋だが。
全く文化が違う異世界でも、哲学なら意味が解るんじゃないかな。
共感できるかどうかはまた別にして
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・国連決議違反で銃殺。
ここは無理せず愛想よく。
笑って過ごそう一度っきりの人生。
何かを訴えかけるような、ひたむきな16の瞳。
瞬きを忘れるほどに、俺に向く。
都合は良いが、心配でもある。
余計なモノを見られていない確信はある。
だが、それでは済まなかったのかもしれない。
こわいのかな?
子どもが大人に注目するのは、困った時と怖い時。
支障が無ければ子供は大人を無視するはず。
改めて検証振り返り。
うん。
まったく全然、窓外のアレな光景は、知られていないはずだが
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嫌な気配を感じてる、とか?
幸いにランドクルーザーの速度は速く、とても血塗れスプラッタは
――――――――――遥か後ろに行き過ぎた。
やっとか。
エルフっ子の耳がやや落ち着く。
視線を俺、そして俺の周りの皆にはしらせながら、耳は外を観察していた。
師匠って呼んでいいですか?
手を叩くと後ろから出てくる感じの。
時代劇の用心棒チックな。
ニンジャもアリ。
エルフっ子の耳を見る限り、一安心していいだろう。
んが、いつ再発してもおかしくはない。
なぜか時折、人が、いや人々が殺される。
それが国際連合統治軍第13集積地の日常。
偵察ユニットの情報チェック。
異世界人がいるところは危険。
異世界人がいればひとが死ぬ。
今も道々で血が流れている。
どんな理由かしらないし、知る気もない。
個別の事情はどうでもいい。
住民の管理は労役として、帝国軍捕虜に一任されている。
国際連合統治軍が規定したもの以外、と条件はある。
そして条件はあっても、規定はほとんどない。
支障もないからだ
――――――――――国際連合にとっては。
つくづく、人の命が軽い世界、いや、時代だ。
自覚はしてるけどね。
俺が言うのか?
って。
個人スコアとしての異世界人殺害ランキングトップテン。
異世界史上記録を塗り替える大量虐殺の当事者であるブルーベレー。
それでも、それだから、異世界の殺人事情に無関心ではいられない。
俺だけじゃないよ?
自衛官は、濃淡があれど気にしているよ?
対峙している世界を、総体として知る。
それは戦場把握の一環だから。
もちろんそれは、意図的な仕掛けではあるんだろう。
導かれているのは判るが、何処に向かっているのかはわからない。
それも皆、自衛官の共通認識だと思う。
目的どころか意図すら知っている相手。
三佐に聞いたところで、藪蛇になるだけだ。
だからこそ、公開情報を読み漁る。
それも、自衛官共通。
国際連合軍歴史資料解析班いわく
――――――――――地球の中世よりはマシ、って話。
善し悪しではない。
ただ、そうあるだけ。
歴史学者の意見ではなく、解析班には事務員ばかり。
単なる事実を集めないと、何も事態がつかめない。
大半の歴史学者が、自称に過ぎないからだ。
現代の地域的制度や、広範囲に及んでいるとされる因習。
そんなモノを人類古今東西普遍原理と信仰する狂信者。
現代日本の社会人としては、とても優秀。
いや、その為に造られた人格
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・他人ごとではない。
日本以外ではなく現実には存在しない、理想化された日本以外は、解釈出来ない。
そのために作られたデザイナーズ・パラノイア。
それはつまり、現実認識が出来ない、って話だが。
まあ、よくいる。
石を投げればあたるくらいには。
例えば原始時代の小さな人骨。
それを見て、子を失った母の悲しみ、とかなんとか言い出す類。
その骨が貝塚(ゴミ捨て場)から見つかった、なんて考慮しない。
多くの霊長類が子殺しの習性をもっているが、関連付けない。
その骨に人間の歯型が付いていても、解釈しようとしない。
文献を読んでも、読めるだけ。
武士や貴族が残した記録。
息子が父を殺す。
父が息子を殺す。
そんなありふれた記述を読んでも、悲劇と考える。
ありふれた異常などない。
異常でない悲劇などない。
それは日常だと、思いつかないようにする。
文系の世界は、現実からの逃げ道が多い。
2+2が5でも1でも、支障がないからだ。
それがコレ
――――――――――現実放棄。
だからこそ、役に立たない。
現代という幻想を守る、必要無いからこそ試されなかった、ハリボテ。
広大な地球の、狭い一角。
悠久の歴史からなる、微かな刹那。
そこに生じた、影未満。
だから、地球人類から切り捨てられた。
彼ら、学者を自称する人々。
死に絶えるまで、日本列島の中。
外にでたら死ぬからな。
異世界にあふれだそうとジタバタしているのは、学生と理系の学者たちだ。
十年もすれば歴史学も理化学と一つになるだろう。
実験計画がいくつも立ち上げられているくらいだし。
中世以降の人類史を完全に再現実験できるんですよ!!!!!!!!!!!!!!
とかなんとか。
・・・・・・・・・・・・・・まだ、実行されて、無いよな?
ないない。
モルモットがアメーバーを迷路に放り込むようなもんだ。
さすがにそれは無い。
【聖都南端/白骨街道/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の右隣/エルフっ娘】
あたし。
ええと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうしよう。
退くに退けない。
つまり、あたしの前には、彼、青龍の貴族がいるわけで。
正確には、あたしの前というより、胸というか、肢体というか、それが、あたしの意志で接しているというか、押し付けているというか
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・挟んで、ます。
あの娘たちを護れた。
ううん。
彼が護ってくれた。
それは、脱力する思いだった。
あたしらしくくもない。
でも、それで初めて気が付いた。
十年ぶり。
今、ってことじゃない。
出会って。
ねじ伏せられて。
隙を窺って。
疑問を抱いて。
問いかけて。
問われて。
からかわれて。
庇われて。
いつのまにか、あたしは、油断してた。
そしていまも、油断している、あたし。
何日目から?
何週間目から?
一カ月はかかってない?
肢体を預けるほどに、力を抜いてるんだ。
あたし。
それにいまさらきがつくって、どうなの??????
なんて無様なの?
どんな顔してるのよ?
それで捨てられるってことは無いけれど、嫌われなきゃいいってわけがないじゃない!!!




