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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十章「異世界の車窓から」

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社会資本

【用語】


『ロシア共和国』

:国際連合常任理事国の一つ。実効支配中の日本領土と共に異世界転移。実効支配領土を保有する数少ない異世界内地球国家。日本国としての領土主張は従来と一切変更はないが「旧来から続く不変の友好関係に鑑みてロシア本国との通交が回復したと国会決議するまで日本側からの要請は控える」と国会で決まった。日本国外務省は抗議しているが日本国内の話なので関係は無い。日本のどこかで「みんなの未来を守るために日本の官憲が入り込めない場所で国連管理下でもなく日本でもある場所があるといいな」と誰かがふと思ったそうな。結果、北方領土にはロシアが独自に行って他の誰もが一切関与していないと明言されている諸般の施設が設立運営されているとかされていないとか。潜水艦の補給拠点を造っておいてよかったよかった。


『ロシア共和国大統領』

:全地球国家と同じく日本列島ごと異世界転移したロシア共和国で共和国憲法の規定により誕生した大統領。柔道が得意なお父さんがいる二人姉妹の妹で、日本史専攻の大学院生。まだ若いのに大統領職に就くことになったのはなぜか序列上位者が死去したから。日本人より流暢な日本語を話し、日本の生活慣習に詳しく、髪を染め目をコンタクトで飾れば日本人の中に紛れ込んでも何年も気づかれない自信があります。まだ若いせいか共和国の最前線に出ることが多く、本業(日本史実戦、いや、実践)の癖が抜けないのではないかと言われている。



キミが知らないのは仕方がないわ。

江戸期の瓦版は革命政権でほろびたのだし。

有史以来、触れたことがないのだから、解りようがない

――――――――――ジャーナリズム。



これは理想理念などという、どうでもいい空論の話ではないのよ。

我が国でも勘違いする向きは少なくないけど、実利の問題。


そうね。

実利なら、経済を例にしよっか。


スターリニズム、ソビエト経済が破綻したのは何故か?


バカは言う。

共産主義のせいだ

――――――――――何故?


ふふ♪


割り当てによる計画経済は個々人の創意工夫を絶やし、私有を否定した共有制度は個々人の勤労動機を失わせしめる

――――――――――バカってすごいと思わない?


扱いやすいわよね♪

――――――――――使い道がないけど。



実際、計画経済が成功した事例はありふれている。


発展途上国の開発独裁。

合衆国のニューディールや、大日本帝国の国家総動員体制などなどなどなど、各種戦時経済。


どれも見事に機能した。


個々人の動機付けに金を持ってくるなど、バカにしか思いつけない。



前線で突撃する兵士が、金や勲章に向けて突っ込んでいると思う?

歴史上、傭兵ほど当てにならない職業軍人がいるとでも?

飢餓にいたってなお、自分の割り当てが増えない限り餓死を選ぶ生物が、あり得るかしら?


現実に日本人の労働意欲は、報酬に連動したことはない。

資本主義者というのは「頭の悪い人間」の意味よね。




単純な事実

――――――――――ソビエト経済が破綻したのは、情報が流通しなかったから。



何時。

何処で。

何が。

幾つ。


生産されたのか、されるのか。

必要なのか、とされるのか。



スターリンによる行き過ぎだ厳罰主義。

共産党が生み出した官僚特有の前例主義。

独裁体制が生む情報の過剰集中に処理遅延。



誰もがなにをもわからない。

誰の権限かすらわからない。

誰もが誰をも責められない。


原因は共有財産じゃなくて、共同責任、つまりは無責任。


Checks & Balances?

どっちもなし。


市場経済だって同じよ?



需給バランスって言うじゃない。

日本人なら、義務教育の範囲よね。


需要に対して供給が足りない。

人はそれを手するために、お金をより多く出す。

利益を増やしたい生産者は、価格が上がれば生産量を増やす。


それ、どうやって知るのかしらね。



需要は誰が調べるかしら?

供給は誰が調べるかしら?



在庫の総量は?

現生産量は?

現消費量は?

その予測は?

それらが正しいと誰が調べるかしら?

調べてる誰とは何か、誰が調べるのかしら?




――――――――――全部、情報。


情報が無ければ、なにもかも失敗する。


情報とは?


検証可能な数値。

別個の複数の源から得られるものを、比較した仮説。

別個の仮説を比較した結論。


数は多ければ多いほど、精度が上がる。

全く別個の情報源でなければ、意味がない。

それがなければ社会は成り立たない

――――――――――報道の自由、その理由。



ジャーナリズムはインフラストラクチャー。


当然、彼らは「政府・軍(わたしたち)」に敵対的でなくてはいけない。

味方の見方は判るから、必要ない。


別個の情報を得るために、ジャーナリストは敵でなければならない。

政府・軍(わたしたち)」の役にたつために。



社会や国家に忠実なら、政府や軍には敵対的でいてほしい

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・当たり前だけど、国家と政府は別よ?


国家ってのは、国民・国土・政府で構成される

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・日本じゃ中等学校の教科書にある、ハズよね?



まあ敵対的になる勇気がなくとも、批判的であれば使える。

でなければ、使えない。


宣伝担当なんか、いくらでもいて、まったくおよびじゃない。




かつての我が国ならば、国外ジャーナリズムが役目を見事に果たしてくれてた。

しがらみですぐに機能不全に陥る、国内ジャーナリズムの代わりをね。


残念ながら、我が国もジャーナリズムの伝統が薄いから。

その為に、広く彼らから敵視されるために、ジャーナリストを殺していた

――――――――――過去形だけど。



お父様に言われたわけじゃないけどね。



でも、わかる。

視察先で、馬鹿な学芸会をみせられたら

――――――――――大統領の視察先で大規模な偽装工作って、

海外ジャーナリストが報じてくれたわ。



海外はもう無いわよ?

だから、これからは、貴国の内部で創ってもらわないと、死んでしまうのよ。

わたしが。


だから「政府・軍(わたしたち)」が、敵対者(журналист)を守るワケ。



記者会見に群がる娯楽産業の猿回しなら、今、殺してもいいんだけど。

わーざわーざ、潜水艦補給船に潜り込んでくるなんて、とっても素敵。


だ・か・ら、生かしておいて、あ・げ・る。




――――――――――艦長、ここはロシア共和国領土です。



本艦は国際連合軍に派遣していませんから。

журналист(ジャーナリスト)は、半年ほど誘拐します。

疑問があれば我らが親愛なる同志指導者、貴国の黒幕さんの息子さんにどうぞ。

国内の自衛隊関係は、お兄さんの担当だから。


"Хорошо, тогда я на тебя рассчитываю♪"




《海上自衛隊潜水艦救難母艦「ちよだ」より5m海上》






【国際連合統治軍第13集積地/白骨街道/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


『アローアロー!』


俺たちを乗せたランドクルーザーは快調に進む。

いわゆる発展途上国とよばれる後進国より、よほど異世界は道路状態がいいからな。


中世ってレベルじゃねーぞ、これ。


帝国支配領域以外は知らんが。

人類が到達した領域で、非帝国可住領域なんかないが。


すくなくとも道なき道を疾駆する、地球の中世と桁違いだったのは良かった。

多世界から現れた侵略者的に。


敵に喜ばれるなんて思わなかったんだろーな。

帝国軍は圧倒的異世界最強だったからね。



道路は兵器である。


しかも軍隊や武器と違って、基本無駄な金食い虫じゃない。

ただあるだけで金になるし、だから予算もつけやすい。

日本では。


日本ではそれを、無駄工事と揶揄する向きもある。

土建屋と手を組んだ政治家の金づるで税金の無駄遣いとかなんとか。


だがしかし。

地球で日本以外で道を走ってみるがいい。

もうできんか。


マジ、すっごいから。

すっごかったから。

道じゃねーから。


国土のごく一部の都会の真ん中らへんは、まあいい、かもしれない。

ちょっと、いや、大部分、僅かな範囲を外れるとほとんどただの地面である。

踏み固めてあるだけじゃねーか。


後進国は踏み固めてすらないけどな。

人の足跡があるってだけでお察し。

柔らかな自然が残っています。





社会(インフラ)資本(ストラクチャー)というのは日々の整備、それ自体が資本と為す。壊れる前に掘り返し、割れる前に塗り固め、落ちる前に建て直す。



細かい土建屋も利権政治家もいない国々。


街区一つが壊れるまで放置。

穴の開いた道に漏れ出る水道管に無計画停電。


ダメになったから造り直そうとする。


まず、莫大な予算が用意できない。

トータルコストで言えば、壊れる前から毎年年度末に造り直しを続ける方が高くつく。

が、その半分でも一時に調達するのは大変だ。


小銭を毎日借りるより、住宅ローンを組む方が大変。

みたいな話。


そして、莫大な作業量がこなしきれない。

必要な技術者と技能者と人数に資材と機器と建設機材に住民の耐久心。

持続的に備えるか一時的に用意するか、どちらが大変か以下略。


最後に、利用不可能な街区を造り直す話がもつれているうちに、そこは貧民街になっている。

元々の住民と入れ替わりに確認不可能な貧困層が流れ込み、税収も減り技能労働力も減る。

イメージも悪化して治安維持や生活支援コストが膨れ上がると、街区再建の利益もなくなる。


かくして先進諸国のあちこちに、虫食い状の発展途上地域が増えていった。

小金を漁る利権屋が居なかったせいで。


※第214話<白骨街道>よりリニューアル


道を見れば、そこがどんな国なのか判る。

道すらなければ国ではない。





しかし異世界は違う。

アスファルトじゃないのに(わだち)ってーか、タイヤの跡が残らないですよほとんど。

後を追尾(つける)のが大変そうです。


軍事力に全振りしている帝国はよくわかっていらっしゃる。

中世欧州準拠の世界で、これはここだけ古代かオリエント。


オスマン・トルコ帝国の工兵隊は有名だし、共和国から帝国に至るローマ軍など全軍が工兵部隊だったといっても過言ではない。


そーいや、専制国家のオスマン帝国も地方パシャによる利益誘導政治だったし、ローマのパンとサーカスは公共工事と戦争と言い換えてもいいのか。


それっぽいと勝手に俺たちが認定している異世界帝国軍。


彼らもインフラ整備には熱心だ。

人命よりもインフラを優先するくらいには、熱心だ。


道路や水道橋を創るために住民が全滅しても気が付かない。

よそから連れてくるからヘーキヘーキ。


領民はキャベツ畑で収穫できる。

そんなノリ。


それはどうかと思います。

不都合が全くないのは判りますけどね。

国連軍が調べた限り。




さておき道路や橋は大切です。

波及効果を考えたら、道そのもので料金を徴収しなくても十分儲かる。

日本国財務省のアレが許さないが。


軍隊じゃないけど類似産業に従事していると、それが身に染みる。

いや日本の、財務省のアレっぷりじゃなく。


作戦地域の交通事情。

これ、最重要。


国連軍は開戦前から異世界大陸に不法侵入していたが。

いや出入国管理法があったかどうか知らないから、違法かどうかはまた別に。

勝手に侵入していろいろ拉致したり移動したり隠滅していたばかりじゃない。


道路も確認していたくらいだ。


固さ。

幅。

利用頻度。



戦争のマイクロ面である戦場の、一局面というミクロ以下部分だけしか見なければ?


戦車や飛行機の数が気になるんだろうけどね。

異世界なら龍の数かな。


戦闘じゃなくて戦争を考えるとそうはいかない。

普通は知らないが。


戦争戦場に関心が無い趣味人は兵器のカタログスペックにしか興味がないのであんまり自衛隊に近づかないでほしい。

邪魔だ。



ミクロもマクロも一般人には感心がなかった。

俺だって将校教育を受けるまで知らなかった。

事務屋になってさらに深く知る羽目になった。




挙句の果てに最前線に左遷(とば)されてしまった。


泣きません。

子どもが見てるから。




『ユナイテッドネイションズプレゼンツ』



そして天気もいい。

上を見て歩こう。

天井だが。

車内だし。


窓から外は覗けるけど、子供たちに囲まれた中央席に変化なし。


俺は窓際の席が好きなんですけどね。

それは子供たちもおなじわけで。


それでも気を使って俺をチラ見するシスターズ&Colorful、お嬢は除く。


もっと窓外を見てもいいのよ?

今日は観光なんだからね?


『Invader Real Sightseeing Tour!』



神父(オマエ)に言われたくない。





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