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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十章「異世界の車窓から」

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354/1003

内心如夜叉

【用語】


『青龍』:地球人に対する異世界人からの呼び名。国際連合旗を見て「青地に白抜きでかたどった《星をのみほす龍の意匠》」と認識されたために生まれた呼称らしい。

異世界側(の中でも一部の知識層)から見る地球人とは、すなわち国際連合軍(含む国際連合統治軍)のこと。国連軍は自衛隊を主力として前衛を在日米軍、補助戦力として各国軍兵士が混在している。そのために実際の人口比より非日本人の割合が高い「多民族帝国」とみられている。

最大多数で指揮官クラスが多い黒髪黒瞳が主要民族(自衛隊)。

異世界人と近い外見で戦に特化した傭兵民族(在日米軍)。

国籍を問わず非モンゴロイド有色人種はその他民族(国籍問わず)。

地球側の国旗国章は民族氏族の紋章と理解されている。

中世準拠の文化を持つ異世界では、支配民族以外の被支配少数民族氏族から軍司令官や宰相などが任命される例は多い。よって対等に戦場に立っている、むしろ自衛隊が遠慮がちである国連軍の在り方に違和感を感じていない。


『赤龍』『帝国』:地球人と戦う異世界の世界帝国。飛龍と土竜の竜騎兵と魔法使いを組み合わせた征服国家。70年ほどかけてユーラシア大陸に匹敵する面積を持つ大陸の東半分を征服した。


『魔法』:異世界の赤い目をした人間が使う奇跡の力。遠距離の破壊、伝達、遠隔視、読心などが使える。魔法使いを帝国では組織的に養成しており、貴族に準ずるものとして扱われる。


『科学技術』:異世界ではすべて魔法として理解されている。ゆえに地球人は全て魔法使いとして見られる。



「およろこびくださいかっか~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」

打撃音。


「こ・こ・は・ど・こ・だ」

蹴音。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「およろこびくださいかっか~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」


投擲音。


「ここは我の城ではない!」

踏音。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は!」

「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」

「およろこびくださいかっか~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」



※繰り返し。

(公開版中略/全聴取は国連寄託図書館へ請求が必要)



蹴音踏音。


「ふぁが」

「こ・こ・は・ど・こ・だ」

上下音。


「失礼いたしました。 (殿下は条約派でしたな)

「普通に話せ」

「は!」

「で」

「にっぽん国の、ああ、青龍でしたか、のゴーレム、その特徴がわかりました!アレが何をみているかはわかりませぬが明らかに人を見分けておりましてしかも敵味方だけではなく遠近大小を」

「要約」

「人ひとりを大きさと形で見分けます」

「獣や鳥には応ぜぬか」

「まさに!犬も鳥も無視されました。牛や馬なら人ほどではありませんが」

「では策は?」

「ぬ~~~~~~~~~~ぁんの

役にもたちませんな!集めやすく躾やすい鳥や獣を放っても無視されるだけ!よほど近づけば別やもしれませんが近づきませぬ。じゅうの雷鳴一つで小動物など逃げ散りましょう。馬や牛や猪を集めたところで数がそろいません。民を進ませたほうがマシ。今、集まった分は早速処分して損害を減らしましょうぞ」

「誰の発案か知っておるな」

「閣下にございます」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・次」


「はて?」

「条約派とはなんだ」

「殿下のことです。決戦派たる閣下と真逆の立場であり政敵である閣下が寄宿を決め込み息のかかった閣下の動静を一つ残らず殿下に報告すること間違いない閣下好みの侍女を昼夜分かたずお側に配置しておられるが今は侍女たちが隣室で失神しておりますがその殿下ですが閣下の漢ぶりなら侍女を取り込む目は十分にありますが殿下も美形優秀男の魅力に満たされ女としてまよう」


「黙れ――――――――――なぜ条約だ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「絵に描くな、身振りもいらぬ、以後発声を許す」

「殿下の策が旧諸王国と帝国の条約を連想させるのでございましょう」

※第145話 <幕間:帝都物語> 参照


「青龍と講和を策す輩は、別な呼び方ではなかったか?」

「腑抜け負け馬馬乗られ敗走派撤退派守戦派懐古派回帰派再建派」

「で条約派、か」


「ありきたりな悪態が一派をなし悪罵から批判批評にいたり」


「今は誰も否定できぬ」

「背中に乗れる者ならば」

「歩く者は」

「悪罵と批判が半ばに御座いましょうな」


「時は置けぬな」


「しかりしかり条約派首魁が御方、殿下の宮で遊んでおられる時下には御座いませんぞ」

「有り金すったゆえに当然」

「皇宮に居座れば叛乱にしか見えませぬから行き場もありませぬがそも黒髪黒瞳に魅せられてあらゆる財貨を贈るなど狂気の沙汰にございますな」


※第151話〈幕間:略奪婚の基礎知識〉参照


「我の財を我が女に与えてなんの不自由があろうか」

「まにまさに支払える女が遙か彼方にあれば天布と絨毯と幕と寝床が無きくらいでありますな武具も馬も竜も女・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「早く我の女を獲りに()かねばな」


「おお閣下さすがに条約派の勢力拡大より独り寝を憂いておられたとは!安堵めされよ臣たるものその女に閣下が貴女を孕ますためにずっと無駄射ちを控えていたのだとせつせつと説きましょうぞ」


「控えていたのではなく絶っていた」


「それでは閣下が黒髪黒瞳無しには役に立たぬ異常となりまするそも女無しに一夜過ごせる男など信じる女は女ではありませぬ男が立たねば男にあらずし」


「それを魅せて魅せるが我が女よ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一片の疑いも無く信じましょう臣たるものは主にどうあれ信を示し心を捧げ身を捨てるのでありますれば今は敵のこれから喜んで閣下の奥方様として孕み一族をなしたる御方には先んじて赦しを請うのも辞せずして必ずや我が首までにしていただきます」


「忠義確かに受けた」

「では、これよりこれからの奥方様を説得する方便を考えにまいりまする」

「それ以外もだ」


《東北大学附属図書館・国連寄託図書館所蔵》




【国際連合統治軍第13集積地/白骨街道/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


俺は失敗を噛み締める。

ソレはいつものことではあるが、


後悔先に立たず。

タイムマシンが募集中。

机の引き出しを捜索してるけどね。

時々。


なお、日本建国神話をしらずとも青タヌキ誕生秘話を知らない日本人はいないだろう。

いや、むしろ建国神話知ってるのはマニアだけだけどね。

碧狸は世界各国に波及しているので、知っている人は日本人とみなしていい。


さておき。

失敗は失敗である。



ああ

――――――――――なぜ見つからんのだ!!!!!!!!!!


深くふかっ~~~~~~~~~~かく悔いるばかり。



問題を把握しなが放置する

――――――――――――――――――――いつものことだ。


問題を把握していなかった

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・異常事態。


よーく考えなくてもわかること。

シスターズ&Colorfulのポジション。

概ね平静、時折銃声


――――――――――戦場、だ――――――――――




【聖都南端/白骨街道/らんどくるーざーの中/青龍の貴族の右隣/エルフっ娘】


泣く娘には勝てない。

あたしは、そう思ってしまう。


涙は女の武器なんだけど。


使う機会もなかったし。

使い方を学んだだけだし。

使う機会も来ないでしょうし。


それに。

涙を見ると判る。


紛い物は醜い。


そんなモノを、好きな男に見せられるわけがない。

見られたら、己が首を自分で斬りおとすだろう。


あたしの場合、自分で死ぬことはできないけれどね。

それが不本意というわけではないけれど。

悔しくもある。


だからとっても羨ましいわ。


縋り付いて泣きじゃくる女。

我を忘れて縋れる女。

感じたままに泣きつける女。


やっぱりかなわない。


妹分の女らしさには、本当にかなわない。

作為が無い気持ちは、本当に美しい。



あたしだって、抱きしめたくなるもの。



あの娘と目線で交わす。

女三人、あと五人、そして男は独りだけ。


譲らないけど。


戦場なら、あたしの方がしってるんだからね?




【国際連合統治軍第13集積地/白骨街道/ランドクルーザー車内/中央席/青龍の貴族】


俺は固まったまま。

いつものこと。


やべーよやべーよ。



そのことではないが、それもヤバイ。

軍隊で停止静止は禁物禁忌禁句なのだからして。


攻撃されたらまず逃げる。

踏みとどまれば全滅するだけ。


攻撃側は、防御側のことを把握してから動くので。


反撃するなら逃げてから。

追い撃たれるときの犠牲はあきらめる。


諦めないのは素人だけ。

ギャンブラー、トレーダー、コマンダー。

損切りできないのはいつでも素人だ。


だから全滅するのだが。



軍事教育初期原則。


逃げること。

諦めること。



それは軍隊以外でも役に立つ。


幸福は逃避と諦めで出来ています。

残念な人生を送っている人は振り返ってみてください。


逃げないから苦しむんです。

諦めないから辛くなるんです。


立ち向かうのは逃げるのを諦めてからイヤイヤしましょう。


と、坊さんが言ってました。

俺は言ってないですよ?



では?

俺の胸の中、俺の回りに居る子たち。

その状況は?


異世界から来訪した侵略者が同世界から侵攻した侵略者と殺し合って、どちらかと言えば殺しまくって、この子達に近い領民の皆さんは侵略者の足の裏に主にいるというか死んでるというか。


エイリア○VSプレ○ターの背景でうろちょろしたあげく最期はきのこ雲に消える人類みたいなポジション。




そうかそうか。

そりゃ怖いわ。


一見して弾丸が跳んでないだけ。

時々俺たちが撃っていたが。

今朝も連射していたが。



そりゃ怖い。


俺たちには日常。

この子たちには非日常。

まだ開始して一か月半ばかり。




そりゃ怖い。

それが正常。

俺という信頼厚い大人で丈夫そうなナイスガイに隠れてたのね。

この子たちが、どうりで24時間ゼロ距離なわけだよ。


怯えて緊張していたからこそ、か。



シスターズ&Colorful、初見から一ヶ月程度しかたっていない子たち。

出会って程ない頭目の娘さんに港街の子どもたち。

発見された人魚まで。


その信頼感は俺の自慢です。



さすが俺。

末代まで自慢しよう。


おじいちゃんは出会ったばかりの子たちに頼られる、真っ当な大人だったんだよ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺、カッコよくない?


んが。

なのに。

マズい俺。


子どもたちが、強い不安を抱いていること。

ほとんど気が付いていませんでした。


もっと好き勝手してればいいのに、とかなんとか気楽に構えている場合じゃない。


日本だったらそれでよかったんだが。

不安を取り除ける、山のような手段があるからね。


知られてないだけで。


知られないようにしている予算亡者(ざいむかんりょう)がいるからね。

知ってしまえばどうということも無い。



俺はそれを適当に選んで、後は好きにさせてればよかった。

しかし、ここは異世界。


そうはさせない。

俺達が。


ここを戦場にしているからだ。

我らが国際連合が。


戦場で安心すれば、弛緩すれば、油断すれば。


すぐに死ぬ。

でないと死ぬ。

であるから死なないわけではないが。


不安で、緊張して、警戒しても死ぬけれど。

それはこれ。


そうあるべきだし、そうしなければいけないだろう。


諦めれば試合終了。


諦めなければどーなるって?

やっぱり試合終了。



ソレを解消するのは俺の手に余るどころじゃない。

俺に平和が創れるものか。


では代替案は?


戦場から逃がすことはできない。

いまのところ。


俺たち、国際連合のスケジュールは決まっている。

戦場が無くなるのは20年後だ。


では代替案の代替案は??


緊張させたまま、安心させること。

危険から守ることで、危険を認識させること

緊張を持続させるために、弛緩させきらないこと。



ならば可能行動は?


包み込む優しさじゃないだろう。

この子たちを抱きしめる女なら、駐屯地でいくらでも見つかるだろうに。


母性本能のあまり俺に銃口と殺意を向ける女性自衛官多数。

その眼を見れば本気だと判り、それはすなわち子供を預けて安心ということ。


平時ならその方がいいんだがな。



だから、男が機能を果たせばいい。

どうせ世界が変わらないなら、俺が抱くべきだ。




そのために在るんだからね。

男として。


いや~男に生まれてよかった良かった。

俺が女だったら、この場で手ごろな男を探さないといけなかったぜ。


ちょっとオマエ盾になれ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・言いにくい!!!!

平気で命令して堂々としてそうな女、知ってるけれど!!!!



嫌々盾にしても、子供に察せられるからムダなんだよなぁ。

怯えた盾なんか、ベニヤ板より役に立たない。



喜んで死ね。

って命令しそうな女も知ってるけどな。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なるほど。


俺が男で良かった良かった。

俺の鍛えない軟弱ボディー。


その防弾能力と大きさで安心させる。


大きいよ~。

まあまあ。

丈夫だよ~。

それなりに。

長持ちだよ~。

そこそこは。



人体って、鍛えなくても丈夫。

戦場では推奨即席土嚢替わり。


これ本当。


遮蔽物が無い場合は敵味方を問わず、死体か戦闘力を失った人体を使うことが求められます。

自衛隊ではそこまで言わないけどね。


死傷者が出ることを、そもそも想定してないし。

自衛隊にとって死体とは、災害救助で収容するもの。

日々訓練を重ねて、大量生産すべきものではない。


なんかもんくある?


俺はあるけどね。

それ以外も知る羽目になったのだから。


米軍海兵隊準拠の訓練を受けたからね。

家畜の腐乱死体と一緒とかね。

軍政官訓練キャンプでね。


まあ、あくまでも、雰囲気を学んだだけ。

速成訓練以前の体験学習。



でも。

教えられなくても。

自覚できなくても。


体はそれを知っている。

本能がそれを認知する。

だからそれで保たれる。


子どもでも。

いや、子どもの方が、か。



得られるものは少ない。

でも、無いよりはマシ。


不安におびえて死ぬよりも、安心したまま殺される。

そのほうがマシに決まってる。


つまり、訂正すべきことはない。

今までの行動は、続けていい。

むしろもっと、強化すべき。


今のうちに気付けたさすが俺。

今更気づいたダメだ俺。



前者をチョイスする為に、ここは退けない留まれない。


俺はカッコよくなければならないのだ。

子どもから見て。



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