投機投資
【用語】
『経済三団体』:日本経済団体連合会、経済同友会、日本商工会議所。日本財界の利益を代表する圧力団体。
・「日本経済団体連合会」
大企業を上部構造に据えた法人政治団体。
民族主義保守主義を特徴とするが、最大の理念は企業経理至上主義。
強い組織統制と共同行動、保守政治勢力としての側面を持つ。
・「経済同友会」
経営者個人による互助組織。
国際主義革新主義を重んじる雰囲気はあるが、最大の特徴は互恵的個人主義。
政治イデオロギーと距離を置き手段を択ばず、共産党と協力関係を結んだこともある。
・「日本商工会議所」
地方商工会議所のまとめ役。
国内主義分権主義非政治主義を特徴としており、最大の優先は局外中立主義。
政治活動全般に否定的でむしろそこからの避難場所。
異世界。
その経済的価値はゼロ。
よほどの馬鹿でなければ理解できるでしょう。
これで控えめな言い方をしなければ、マイナスです。
地球サイズの惑星一つ。
この広い広い無開発地域は、手のつけようがありません。
コストパフォーマンスを無視すれば、なんだってできます。
ソレを無視できるのは、「光あれ」ですべてを解決できる人だけで。
まあ、そーいう人が何かする必要もありませんが。
現状の日本列島で不足している必需品はありません。
日照量が十分なら食糧生産は賄えます。
金属資源はリサイクルが可能です。
燃料資源なら備蓄で十二分以上。
現状の備蓄が無くなる前に、日本列島の炭鉱や油田などの再開発も終わるでしょう。
一体全体、地下のどこまでが一緒に転移したのやら、ですね。
産業をほぼ停止して社会衣を維持するなら、必要量はそれでまかなえます。
もし異世界から燃料資源、例えば石油を得ようとしたら。
どれだけ備蓄があっても足りません。
油田探索は年単位で行う賭博です。
既に油田地帯と判っている地域で行ってなお、博打です。
異世界に開発済みの油田が、油田地帯があれば別ですが。
勿論、そんなものがあるわけがない。
当然です。
内燃機関が発見されていないんですから。
使い道のない石油を探そうとするほど、異世界人はバカじゃない。
では我々、石油文明に浸かっている我々なら、探す意味がある?
ここでも、コストパフォーマンスの問題です。
お役所には判らない概念ですね。
闇雲にならざるを得ない異世界石油探索。
可能性を上げるためには広大な探索地域が必要。
広大な地域を支配下に置くためには莫大な燃料が消費される。
日々どころじゃすみません。
刻一刻。
それをすれば?
備蓄は瞬殺されます。
絶対に、油田を掘り当てるまで持ちません。
ラスベガスと違い、宇宙にはジャックポットを用意する義務はないんですよ。
必ずあたりが存在する宝くじのほうがマシ。
確率論とは全く完全に無縁です。
異世界からの資源調達。
そんなことを考えるほうが異常なんですよ。
いや、考えている、とは言いませんが。
座して待つのは飢え死にのみ。
そうなったらやってみてもいいかもしれませんね。
腹を斬り斬首される覚悟で、自殺の代わりに。
単なる自殺で、全く解決しませんが。
幸いなことに日本列島は火山帯であり地下資源に恵まれています。
運のいいことに土壌も肥沃だ。
敢えて言うなら嗜好品が足りないくらいですか。
そして地球産の嗜好品は異世界のどこを探してもありません。
どうしても代換が必要なら日本列島で造ったほうが安くつきます。
第一、相手に売る物が無いでしょう。
中世欧州段階にある社会では、余剰生産力が無いんですから。
人口の9割を占める農民は自給自足しています。
余剰生産、それは多分に天候に左右されますが、それが全体の一割程度の都市部住民に消費されています。
我々が対面している帝国軍は100万以上ではありません。
それがつまり、異世界世界全体の余剰生産でまかなえる限界値と言えます。
派遣されている国連軍の食料を賄えば、とんとんというところですか
つまり、そもそも考える方がおかしいんです。
一億を超える日本人の腹を満たすことなんか、異世界のキャパシティでは不可能です。
近代農業を持ち込めば変るかもしれませんね。
どうやって持ち込むのか興味深いですが。
そして異世界を市場として考えることはできません。
いったい、何を売るんです?
最低限の社会資本が無ければ日本が提供する製品もサービスも全く無価値です。
そうですね。
対人地雷と小銃なら売れるでしょう。
まるで儲かりませんが。
そして、何を代価に受け取るんでしょうか?
奴隷でも売ってもらいますか?
何の役に立つか知りませんが。
海外、後進国でない発展途上国で事業を立ち上げた人間ならわかるでしょう。
経験が無くても資料を読めば想像はつくでしょう。
基礎教育がなく、安定した社会が無く、文化的共通点すらない人間に単純労働を始めさせるのがどれほど困難か。
近代文明が届いている世界ですら、それです。
ましてや異世界、言ってしまえば千年前に行って技術指導をする?
不可能以前の問題です。
人口の9割は自分の村以外を知らないし、想像したことも無い。
どうやって工場や農園に集めるんでしょうね?
出勤させるだけでどれほど手間がかかるやらわかりません。
生まれた時から見知っている相手しか知らない、そんな人たちばかりです。
それで十分必要性を満たせている人たちです。
初対面同士での共同作業をどうやって教えればいいのやら。
それを学ぼうとするモチベーションをどこから産みだせばいいやら。
機械を見れば畏れるレベルの人たちに、何をさせることができるでしょうか。
武力で強制することもできるでしょう。
何だって命じることはできるでしょう。
人びとは逆らえないので従うでしょう。
命令を理解できれば、です。
魔法翻訳は共通する概念が無いと通じませんからね。
最初から意味がありません。
豊かな土地。
大勢の人。
たくさんの鉱山。
いやすばらしい。
開発できればね。
それとも、日本人を送り込みますか?
別に何が不足しているわけでもない。
みなさん。
異世界に行ってくれます?
別に何も得られませんが。
なんとなく。
《東京都千代田区丸の内1-4-6/日本工業倶楽部別館5階/経済同友会「ユニオン」設立準備委員会》
【国際連合統治軍第13集積地/除染路/ランドクルーザー車内/エルフっ娘の胸の中/青龍の貴族】
噛まれるのも致し方なし。
俺は悪い悪いと謝る。
心で。
いや、声が出せないからね。
口呼吸不可、鼻呼吸困難。
視界は完全にふさがれている。
エルフっ子の胸に。
だが謝罪の心は忘れない。
魔女っ子の顔を掴んでしまったからだ。
しかも今じゃなく、さっきから。
顔っていうか、口だな。
スベスベツルッとした濡れて温かいなにか。
指が完全に入ってます。
それも貴重な情報だが。
ここまでは準備。
ここからが本番。
準備が一番長く、本番が一番短い。
軍事作戦の基本?
いや、なんだってそうか。
俺の頭上、後頭部。
お嬢が跨っている。
この重量感、っていうか、軽量感。
魔女っ子じゃなければ、お嬢。
幼女か童女か二者択一。
ちびっこは二人しかいないからね。
簡単な推理だよホームズくん。
お嬢は元気そうです。
「わたくしもわたくしもわたくしもわたくしもわたくしもわたくしも」
いろいろ不満の意思表示中。
ただ小さな手のひらは、問題ない。
一生懸命な気持ちは伝わるが、伝わるだけ。
後で抱きしめれば済む。
後で。
つまり、今は問題継続中。
だから問題は、その、小さな体。
小柄な12歳児とはいえ、(検閲削除)kgはあるだろう。
それが俺の頭を拘束し、上から下に押し付ける。
絶妙な振動は肩叩き券30分相当。
両脚で挟まれた俺の頭は、鞍に等しい。
その問題は首に良くないとか、肩こり対策ならもうちょっと下とか、デスクワークだから体が固いんだ俺、とかとかではない。
エルフっ子、その位置。
俺の顔から見て頭頂部方向から
――――――――――吐息。
必死に息を押し殺しております。
エルフっ子も俺も。
多分、太股なんだろうな、を握った瞬間。
エルフっ子が蝦反った。
死ぬかと思った俺。
古典的映画の、ワンシーン。
クッションを顔に押し付けて殺す奴。
在る意味腹上死
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・胸上死?
後頭部に馬乗りな、童女。
前頭部で枕にされたエルフっ子。
二人のプレスサンド。
サンドイッチの具か今川焼きの具が、俺の頭。
猿轡状態で、更に上下から押し込まれ、鼻もキメられたら死ねる。
柔らかいから、つぶされない鼻。
豊かだから、包み込まれる、鼻。
エルフっ子の衣服とエルフっ子の肌の間。
口は多少楽になるだけ。
頂が高いから仕方がないね。
そこで大きく息をすって~~~~~~~~~~る最中に、落ちる。
息を吐くのは口も動員。
実際にやると判るが、映画みたいに行かない気がする。
枕を顔に押し付けて殺すってやつ。
映画より、さらに気になるエルフっ子。
お出かけ装備で鎧なし。
普段なら体線に合わせたボディーアーマー的な鎧があるのに、今日、今は無い。
故に胸を潰されているのは、いかばかりか。
俺も辛かったが、エルフっ子も辛かった。
過去形を繰り返すと現在進行形。
戦死扱いにはならないが、労災認定ならワンチャンあり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、死なんけど。
死因。
キミの胸の中で死んだ。
普通は、キミの腕の中で死にたい、とかだよな。
交通事故の一種?
ダーウィン・アワードにノミネート。
子孫を残さずに死亡し、その間抜けな死にざまで自らの無価値を証明した人に送られる、栄誉。
間抜けな遺伝子を人類から抹消した功績をたたえて記念し語り継ぐ、とかなんとか。
いや俺、子供いないけどね。
どうせ死ぬなら伝説に残るようなバカな死に方を、ってほど諦めてない。
遺伝子が残らないのは全くかまわないが。
バカやって死ぬなら、一人で死ぬ。
さらに魔女っ子も大変だ。
現在位置は 俺の下腹辺り。
声も出せない気持ちはわかる。
俺と同じように、口に入っているからね。
俺の指
――――――――――早く抜けって?そりゃそうだが。
僅かな隙間で手を上下左右
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんか、抜けん。
まるで釣りをして大物にくわえられたような。
指でつれるのはザリガニくらいだが。
アレはいたかった。
縁日で見かけて、つい。
手を出すんじゃなかった、文字通り。
魔女っ子の場合は、まあいいか。
痛くないから。
悪いとは思ってますよ?
現況把握完了
――――――――――よし。
左手は放棄。
脚と肘で姿勢制御。
右手一本で状況調整。
右手の先、Colorfulの白、碧は俺の両サイド。
がっちり側面から圧迫される。
男の俺でも強く感じるということ。
二人とも胸が潰れて辛かろう。
防御姿勢の研修必須。
両腕で胸を抱え込んで、両膝を抱える。
胸と腹を護る形。
朱、翠は俺の脚。
橙の顔は完全に腹より下。
声と形でよく判る。
皆が皆体の正面をむけている。
背中で衝撃を吸収したんだな。
怪我がなかったのは、俺に抱きついたからだな。
まとまることで、互いにぶつからずに済んだな。
車室は柔らかいシート張り。
ここそれぞれ女の子だから、体も関節も柔らかい。
しかも全員、防具を付けていなかったのが幸い
一番不安定で危険な人体、特に手脚を固定できたのは、大きい。
肘や膝をぶつけ合ったら、重症を負っていたかもしれない。
ついていたな。
つまり運が良かっただけ。
――――――――――神父死すべし、慈悲はない。
そのため、俺は右腕を伸ばした。




