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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第九章「神様のいない天獄」

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二律背反

【用語】

『結婚』:予定労働者(子供)所有権確定制度。付随するシステムとして「親子」「家庭」が派生する。

19世紀から先進工業国にないでのみ急速に普及し、20世紀中には世界人口の10%程度が「ほぼ」共通の認識をもつようになった。

産業革命による生産システムにおける不可分の一部として「人間」の価値が確立。以後、労働人口の安定的増加が社会的要請となるに従い、子供は有望な投資先となる。

その所有権を生殖者に対して保証することで投資意欲を高め、人口増加を生み出すために自然発生した。

しかしながら20世紀初頭には「過剰生産」の慢性化により人間の価値が暴落。

「ちょうど完成期に差しかかった制度が既にして目的を見失う」

という最悪の二律背反を生じせしめ、莫大な死者と環境破壊を生み出していた。


異世界転移がそれにどのような影響を与えるのか、取り残された地球世界に与えたのかは不明。



営業と同じだよ。


数。

それ以外に効果はない。


何人。

何度。

何回。


だろ?

俺はやったことないし、やる気がないから事務職を選んだが。

営業のダチはいる。


それも結構すご腕が。

俺のダチが言ってるんだから、間違いない。


繰り返して数をこなせば、ブッシュマンにペプシコーラだって売れる。


ニーズを探すなんて、間抜けな素人の阿呆だけ。

同業者が殺到するニーズとやらに首を突っ込むのは、数の無駄。


買いたい相手なんか無視すべし。

売りたい相手に売りつける。


もちろん売るべきは利益なんかじゃない。

誰かに売れる、唯一つのソレ。


自分自身さ。


それが営業。

そしてまた、コレもおなじ。



最長で一年。

最短で3ヶ月。

3ヶ月未満は、プロかセミプロだな。


一緒に過ごすのは、最長で半年未満。

最短一晩。

プロやセミプロなら数時間以内かな。



コツなんかない。

慣れだ慣れ。



いやいやいやいやいや、そんなことしないって。


苗を植えて、発芽するまで観測するのは小学生にやらせとけ。

観てたみたいな観察日記を創作してくれるから。

近所のガキの絵日記は、マジですごいし。


つまり、遊軍を造らない。

それは予備兵力と違うからな。

将校教育で習っただろう。



輪作や三角貿易と同じでね。


布石を打つ。

今収穫しながら、次の布石を打つ。


豊作なら出来るだけ収穫時期をずらして、生産調整。

凶作ならセミプロやプロの手を借りて供給調整。



常に一定の成果がでる訳ないだろ。


相手は人間だからね。

頭の悪い経営者じゃないんだから。


都合や好みはお互いさまだよ。


だからさ、数、なんだよ。

個々人の反応は予想しきれない。

集団になれば予測に収まる。


恋愛が芸術なら、これは統計ってことさ。


いやいやいやいやいや、指名なんかしないし。

この籾から発芽した米じゃなきゃ嫌、なんて思わないだろ?

俺も思わない。


友達じゃないんだから、コイツじゃなきゃ嫌、なんてあるわけがない。

そこは柔軟にいけるよ。



揉め事?


ないな。

まあ価値観の違いに気がついて、打ち切る時はあるさ。


最初から互いを知り尽くして始まる関係じゃないしな。

そしてそれは、当たり前。


他人として出会って、口説いて口説かれる。

齟齬が生じてあたりまえ。


歓迎出来ない時もある。

許容してもらおうとも思わない。


ご活躍を祈って別れるにしても、上手い下手はある。

それも当たり前。


最初から決まってること。



それは揉め事じゃない。

日常って言うんだ。



別に女との間だけに起こることじゃない。

人付き合いの基本だろ。

普通普通。



ん?

ああ、嫌われる、って?


かも知れないな。

突然好かれることもあれば、突然嫌われることもある。

理由なんて知らんよ。


相手のせいだとも思わない。

俺には関係ないことだし。



おいおい。

嫌われるのが怖いなんて、義務教育で済ませとけよ。

人類が何人いると思ってるんだ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・減ったが。


対象は半分、のうち諸条件でさらに半分。

な。


一千万人ぐらいに嫌われて、なにか困るのか?


去年までは、10億人に嫌われて、っていってられたが。

ずいぶん楽になったもんだ。


まあ、これ以上はへらないさ。

たぶん。


うん?


ばーか。

女には隠さなくても、子供には隠す。


大人と子ども。

世界が違うし、違わにゃならん。


子どもっぽい大人は銃殺に。

大人っぽい子どもは遊ばせに。

それはそれ。

これはこれ。




でも、十分だろ。

大勢に嫌われより、ひとりに憎まれる方が怖いね。

俺は。



それは、こういうことさ。

我らが地球人類のスローガン。



愛されるな。

憎まれるな。

畏れられよ。




付箋:マメシバ名人の攻略メモ

「なにこれチョロい。すぐに接近でき、ただず~と寄り添っていればライバル(だんちょー、とか)は形をとろうとして100%自滅。ただし結婚や家族がない異世界だと、自滅まちが使えない。みんなず~と側に居続けて千日手になるかも」


《国際連合安全保障理事会直轄(検閲削除)プランC(非公開コード)管理軍医によるマテリアル解析レポート》






【国際連合統治軍第13集積地/除染路/ランドクルーザー車内/美幼童少女掘削中/青龍の貴族】


誰にも警戒されない俺。


決して軽く見られているわけではないと思いたいが、見られてる方がニートになりやすいかもしれない。

悩みどころだな。


不都合があるほど馬鹿にされず。

不都合になるほど敬意を払われない。

出ないと不都合に過ぎる。


んで。

今。


道は訊かれるし、保護者役を求められるし、やたらと自宅に遊びにこられるし、我侭を言われて無視すると騒がれると無視すると泣かれると無視すると詫びられる。


と、地球世界では当たり前になっているほどには、異世界ではなっていない。



いや、地球世界からの侵略者に容易く慣れられても困るが。

マジ、出会って一か月半でフェイスハガーしてくる女の子はヤバイ。

いや、警戒心が無さすぎると危ないから眼を離せなくなる。


だがまあ、何とか信頼を勝ち得ているわけで。

シスターズ&Colorfulなら、寝ぼけてフェイスハガーされる程度。

さすがに隙を見て狙ってくるほどではないが。



見知らぬ相手を敬遠する。

これは安心できるよ?


警戒はされていない。

これは嬉しいですよ?


遠慮はされている。

これは問題だよ?



充分ではあるが少し足りない。

そんな理想的距離感だろう。



伊達に常日頃、この子たちを入浴中に隅々まで洗っていない。

まあ、入浴頻度が高いからたいして汚れてないけどね。

だが一緒にお風呂は意味がある。


単なる娯楽や癒しでは無い、こともないが。


たゆたう長い髪、力が抜けて弛緩した体、夢見心地の瞳。

平和安息怠惰に安寧、

――――――――――ほっこりするよね。


子どもとネコの違いはそこに在る。


猫だったら?

ひっかかれます。

パニくられます。

根に持たれます。


子どもだったら?

登られます。

シスターズ&Colorfulはそこまでしないが。

ハグられます。

シスターズ&Colorfulは時たまくらいかな。

味をしめられます。

シスターズ&Colorfulは習慣だから違うな。




それはそれとして。

より重要な意味もある。




一人一人、時間をかけてよーく見る機会。


傷やあざが無いかどうか。

関節や筋に違和感がないか。


状態チェックは当然として、常態チェックも毎日行う。


その外皮に近く、視認可能な血管。

指先や手のひらで圧迫して、その脈動まで確認済み。

バイタルの正常値を把握しておくためだ。



親が子供を入浴させるのって、この為だよね。


当事者が意識しているかどうかはしらんが。

ただ洗うだけで観ることになるし、ゼロ距離で過ごして触ることで視ることになる。

それなりの知識があればなお一層よくわかる。


つまり、俺。

ことシスターズ&Colorfulのこととなれば、一か月半前後の蓄積がある。

一緒にお風呂に入るようになったんは、さて、いつからだったか。


でもまあ、現時点で正常値を把握しているから、いいか。


で、子らのこと。

けっこう脈拍が激しいが、子供はそんなモノ。

近所の子と変わらない。



そして今、状態と常態を比較できるというだけではない。

それはそれで自慢だが。


予想されうる非常時にも、この習慣が生きるのだ。

非常時は避けたいが、避けるが、避けきれるとは言い切れないからな。

対処できる自信はあるが、そのためにはそれを考えないといけないわけで

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嫌な世の中だ。



つまり?


外皮に近ければ傷つきやすい。

外から見やすい、確かめやすいほど太い血管。

それは、傷つけばダメージが大きい、ってことだ。


場所と場合で致命的。


その位置や脈動を確認し、その結果を後日に衛生科隊員と照らし合わせる。

俺は慣れてはいても、専門じゃないからな。

セカンドオピニオンは大事です。


何かあったら、オマエのせい。

・・・・・・・・・・いえいえ、上官として責任を取りますよ?

三佐が。


で、確かめた結果。

異世界カテゴリー内で言えば種族が違えど体は同じ、という実に無難で有難い結果が得られた。


シスターズ&Colorful。

魔法使い、異世界人、エルフにハーフエルフ。


外見、耳の形や虹彩の色、肌質や何かは違うけど。

血流に代表される基幹構造は同じ。


血管や内臓の配置が逆だったら大変だよ。


リバイバルされた暗殺拳の都合じゃなくて、日常生活的に。

そこからさらに検証を続けた、暇を見て。


なんか俺が知ってる、同年代同性の地球人とも違わない気がしたからだ。

256歳の少女はさすがに知らんが。


エルフっ子は外見年齢準拠で地球人と比較。

エルフっ子以外は、全部そのまま比較。



脚の付け根内側、股関節付近。

腕の付け根内側、脇の下付近。

首の付け根内側、顎の下の下は頸動脈。


などなど。

つまりこれは止血点。

緊急医療の最重要ポイント。


普通、偶発的であ意図的であれ、人が死ぬときは失血死が一番多い。

正確には失血性ショック死か?



なお二番目は痛みによるショック死です。


それは即効性のある痛み止めで対処可能。

国際連合軍には瞬間的に意識が跳ぶくらいの薬があります。


表層意識が跳んだあと、痛覚をブロックしたまま緊急反応は継続させる優れもの。

つまり体組織の収縮や造血反応や吸気排気など、負傷した体の自立防衛作用は継続させる。

十分なバックアップを受けられる環境でのみ使用許可がでる特殊薬剤。


意識を潰さずに痛覚だけ止めるお薬は、開発中。

開発成功したら、ほぼゾンビに等しい人間が実現します。

体がちぎれても体機能が残っている限り動き回れる感じの。


誰が使うか。

いずれにせよ。


本来は異世界人への処方は禁止。

逆に薬効でショック死しかねない。


んが。

マメシバ三尉が一日一回限定で、シスターズ&Colorfulの8人分調合してくれている。

別命マメシバ・カクテル。


服と同じくマメシバブレンド。

その辺りは信頼していいだろう。

つまり俺が対処すべきこと。




止血が最優先。


だから、しつこく確認済み。

視る、触る、圧す、覚えて訊く。

訊いた結果を基に、また、視る、触る、圧すの繰り返し。

それを日々繰り返している。



結論。

あんまり人間と変わらない、みたい。




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