痛勤電車

Ｄ’ｏù ｖｅｎｏｎｓ ｎｏｕｓ？

Ｑｕｅ ｓｏｍｍｅｓ ｎｏｕｓ？

Ｏù ａｌｌｏｎｓ ｎｏｕｓ？

我はどこから生じているのか？

我はどうして居るのだろうか？

我はどこに在るのだろうか？

とある人の遺書より。

なお跳ぼうとは思わなかった模様。

君たちは何処からきて来て何処へ行くのか？

――――――――――自宅から勤務先へ――――――――――

痛勤とは罰ゲームである。

――――――――――就職とは懲役にほかならない――――――――――

ニートになれなかったキミたちへ。

基本的人権の尊重を謳いあげながら、牢働の義務を課す憲法の欺瞞。

赦すまじ第２７条！！

我々、労働者は過剰生産という原罪を背負い、今日も同病相憐れむ。

君はどうか。

無駄に混んだ道をリスク(歩行者)を背負い、コスト(燃料車検税金)を払い、ノーギャラで？

お気の毒。

だが下には下がある。

バカがつくった間抜けなコトリバコ、痛勤電車。

同情しなさい、大いに、広く、全力で。

春夏冬と、マシになる時期もある。

高校生以下の子どもたちが、児童虐待から解放されるからだ。

普段から登校時刻をズラせばいいのだが。

文部省改めて文部非科学省の官僚主義者たちは、当然、そんなことをしない。

奴隷たちの性根が判っているからな。

幸福は奪い合い、不幸は押しつけ合う。

皆で少しマシにする、なんて考えさせない。

争わせれば、元凶を吊そうなんてしないから。

奴隷頭になるためなら、蹴落としあって諂いあう。

他人が不幸でも、自分が幸福になれやしないのに。

病院に行けばわかる。

病人に囲まれたって、花粉症は楽にならない治らない。

自己責任とやらは、どこまでもどこまでも追ってくる。

自分に責任をとれるような、そんな奴がいるものか。

自己なんぞを信じ込む、おめでたい奴は居るようだが。

そんなわけで、一つ質問。

駅のホームで「空を飛べるはず」と気がつく人は多い。

昔からだ。

知り合いのキラキラネームは「異世界転生ですよ」と嗤っているが、なんのことやら。

命名段階で受けた児童虐待の賜物だろう。

まあいい。

知らない誰かの話なら。

どーでもいい。

朝の痛勤時間帯に跳びたってくれると、なおいい。

貴方の想いは確かに受け取った。

帰宅時間帯は止めなさい。

自爆テロなら、経済に打撃を与えるべきだよね。

ね？ね？ね？

知り合い以外なら、こんなもの。

電車遅延に備えて早く出勤するように。

などと発音する上司もいるようだ。

命令書の発行と時間外手当金の確認、私事都合による不可日の申請を申し出た。

ら、音沙汰なしになったが。

チッ！

暇なときに、手当付きの朝寝を楽しもう

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ささやかな願いが敗れた。

ん？

そうだそうだ質問だ。

まだ跳べると気がつかない、キミたちに。

電車が止まり、遅れたとしよう。

ほどなく残念無念にも動き始めやがったとしよう。

せめて丸一日止まってもバチは当たらないのに。

するとなぜか、迂回路を含めて、動く電車は過密を通り越す。

人間押し寿司、奇怪なオブジェ。

全力で押し寿司に合流せんとする精神に異常をきたしていないはずの人々。

たぶん正常なのだろうが、それを正常と見てしまう俺はもうだめかもしれない。

――――――――――なぜ？？？？？？？？？？

「なぜ、乗ろうとする？」

そう。

あくまでも痛勤時間帯。

痛勤電車の行き着く先は？

それと判ってなにゆえに。

アウシュビッツ行きの貨物列車。

それに跳び乗る君に訊く。

そこまでせんでもねぇ。

電車遅延なら嗤って言い訳すりゃ済むのに。

冷暖房完備の喫茶店から、君たちを眺める者からの質問だ。

人はなぜ会社に向かうのであろうか？

【国際連合統治軍第１３集積地/除染場/シスターズの包囲下/青龍の貴族】

さ、征くか。

正しい侵略者として。

俺は元気に出発進行。

珍しく元気。

仕事じゃないし。

名目上は仕事だけれど。

ちゃんと仕事のような脚色をして、仕事じゃないような理屈をくみ上げ、勤務先に分かったようなわからないような申請を上げて、追加の確認を防いで曖昧な黙認を引き出した。

２４時間完全勤務の軍政官。

通常勤務時間外も待機任務とされている。

手当が出ればいいってもんじゃない。

寝ても覚めても見ても読んでも聴いても、子供を転がしても勤務中。

月月火水木金金。

マジで戦地の兵隊さん

金よりも責任からの解放をですね？

そうですかダメですか。

もちろん本来であればサボるだけのこと。

手抜きとサボりと誤魔化しは大得意。

んが。

戦場ではそれもできない。

ましてや、保護者だ。

眼を離したすきに、いつ殺されてもおかしくない子が８人。

孤独な旧支配階級、魔女っ子。

捨て身のメイン盾、エルフっ子。

大富豪のお嬢さま、まんまお嬢。

非差別少数民族が５人、Ｃｏｌｏｒｆｕｌ。

胃が痛いです。

頭も痛いです。

お腹も痛くなりました。

非常につらいので、帰っていいですかと言えないくらい。

健康管理は仕事のうち。

そんなバカなことを手当ても出さずに言うアホもいる。

健康が管理できたら医者なんぞ要らんわ！！！！！！

もちろん、手当を出されても受命拒否。

不可能な命令を受けたフリなんぞ、職業倫理が赦さない。

だからこそ、今日は開放日。

孤立し味方以外が混在している軍政地、太守領ではない。

大軍ではないにしても、指の数より多い部隊数がいる駐屯地。

俺が何かを仕出かし見落とし手に余っても、圧倒的力でカバーしてもらえる。

此処でしか、太守領に戻ったら、絶対に味わえない開放感。

まさに休日。

Ｌｅｔ’ｓ Ｇｏ！

というわけで。

第１３集積地駐屯地国連軍の足。

ランドクルーザー。

それが三台。

二台が警護並びに戦闘車両。

一台が指揮並びに護衛車両。

まず護衛車両に乗車。

神父が運転席へ。

子どもたちを放り込み、俺が続く。

曹長が最後に乗り込む。

つぎに戦闘車両に乗車。

佐藤と芝が前後二台に分散。

荷台上のＭ-２に取りつく。

ドライバー役の隊員が乗り込み、他の隊員が続き、最後に警戒していた隊員が助手席へ。

一般的な手順だ。

つまり、俺たちがまず乗り込まないとならない。

よろしい、それは判る。

問題は手順じゃない。

――――――――――三台？

機関砲に弾薬、お出かけ装備が載った二台に隊員５人づつが分乗。

運転席と助手席は二人。

荷台にはＭ-２重機関砲射手と弾薬手と予備の三人。

で、あとは、一台だけ？

その一台。

荷台部分を潰してシートをしつらえている。

その分、車室は広くスペースも広い。

だが、一台。

シスターズ＆Ｃｏｌｏｒｆｕｌ、俺。

曹長と神父。

１１人。

足りなくねーか？

追加呼ぶ？

え？

いらない？

【聖都南端/青龍の軍営外郭馬場/青龍の貴族、背後/エルフっ娘】

あたしたちの目の前。

青龍の土竜、らんどくるーざー。

三頭。

青龍の竜は、大きさがいろいろ。

帝国の竜に比べて圧倒的に大きい海龍もいれば、同じくらいの大きさで飛龍もいる。

龍ってぐらいだから、しゃべるのだけれど。

そして龍とも龍とも違う、大隼(Ｆ-１６)に海蛙(ＬＣＡＣ)、はまあ、関係ないけれど。

※第３０話

〈バックストーリー/Ｂａｃｋ　Ｓｔｏｒｙ/ｈａｌｆ　ａｎ　ｈｏｕｒ 〉

にＬＣＡＣ(ホバークラフト)が登場

※第６３～６６話にてＦ-１６ファイティング・ファルコンが登場

そんな魔獣を使役する青龍。

だから帝国なら普通に馬車を使うところで、小型の土竜を使うわけね。

もちろん小型といっても、人より大きい。

普通の馬車と比べても、大きいほうだろう。

薄い甲羅にかこまれた姿は、とらっく、に似ている。

太守府に置いてこられたソレよりも小さいけれど、使い勝手は良さそう。

力をためるように、威嚇するような唸り声をあげて主を待つ。

それが三頭。

あたしたちが乗るのは真ん中。

甲羅の中が広くとられてるわね。

馬車で言うところの、荷台や車室。

前後の二頭は荷台形式。

青龍の騎士たちがのるんだから、射界重視かな。

真っすぐさえぎるものなしに、貫き通せるように。

銃の長所は弓矢と同じ、威力より飛距離だろうから。

車室形式の一頭には、青龍の貴族がのる。

彼は指揮を執るのだから、見通せればそれでいい。

空から使い魔が見ていて、青龍の貴族も同時に見ている。

青龍の魔法なら、箱の中でも関係ない。

つまり、あたしたちや甲羅に包まれて、問題なく指揮できる。

将が一番安全な位置のは、古今東西の常道。

もっとも、将の首一つで終わった戦も少なくない。

勇敢な馬鹿者は、兵に背中を見せることにこだわるから。

あたしみたいな弓手には、良い狙いどころ。

青龍の貴族はその

――――――――――極めつけ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まったく、あたし、たちの気持ちも知らないで。

彼。

青龍の貴族。

配下の騎士を無視して、独りで突っ込むものね。

敵の群れに。

それも。

ちょくちょく。

それで片づいちゃうんだけど。

不死身でもないくせに。

あたしの剣や矢でも死ぬくせに。

しかも勘違いしてるし。

すっごく、腹が立った。

アレは今でもゆるせない。

ちょっと自慢気に言われたとき。

「俺が死んでも、すぐに次席が引き継ぐ。だから安心しろ」

誉めてあげたい自分の忍耐力

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・怒鳴らなかった、あたし。

配下の青龍の騎士たちが

自分の女たちが。

何を気に病んでるか、まるで感じてない

――――――――――まあ、いいわ。

青龍の貴族、その性格。

絶対ぜったいに、変わらないし。

生涯を共にするんだから、慣れないと。

つまり、あたしが考えるべきことは？

彼が

――――――――――跳び出せないようにすること。

――――――――――絶対に――――――――――

【国際連合統治軍第１３集積地/除染場/美少女饅頭の真ん中/青龍の貴族】

押し寿司かな？

どうしてこうなった？？

俺、中央。

ランドクルーザーの車内。

運転手は神父。

まあ、いい。

俺に次ぐ暇人。

俺たち軍政部隊の監察官。

見張り役なんだから、物理的に手があいてる。

建て前は。

実質的にも、遊んでるだけ。

だから

「運転手はキミＤＡ～」

歌っていても、まあいい。

運転手はお前だが。

どうでもいい。

助手席は曹長。

当然だな。

実質的指揮官だからね。

フリーハンドは基本。

部隊の様子を見つつ、各自に微修正を指示をしつつ、緊急時に備える。

一家に一人、頼れる下士官。

曹長の家族に〈お父さんの立派な仕事ぶり〉を宣伝しておこう。

通信回線が開いている割に、プライベートな通信は完全管制の国連軍。

戦時下の軍隊としては当たり前ではあるけれど。

基本検閲付きでかつ回数制限文字制限があるメールしか許されません。

んが。

軍政官には特別枠があるのだよ。

俺についていえば、検閲基準の知識も併せて持っている。

個人的に用はないが、代筆やらなんやらバリエーションは豊富です。

曹長の奥様にゴマをすりつつ、娘さんをおだて上げ、素晴らしいお父さんですねたよりにしています、でフィニッシュ！

テンプレートが出来上がってるくらいですよ。

ほかの部下にも応用できます。

部下への細かな気遣いは士官の必須スキル。

だからよろしく見捨てんといて。

で。

俺の乗ってるランドクルーザー。

後席は前後で向かい合った、広めのシート。

なんか三台中、この車両だけゲスト用。

シートもふかふか。

絨毯ぽい床。

たっぷり６人掛けの車室。

そう。

６人。

そこに座る。

シスターズ＆Ｃｏｌｏｒｆｕｌで８人。

そして、俺。

合計９人。

言うまでもないかもしれないが。

そしてエルフっ子は、収納上手だった。

ハタと困って考える俺。

それを無視して誘導。

成し遂げたのだから。

乗車を。

あるいは立体パズルの間違いか？

エルフは器用だな～～～～～～～～～～

それだけは間違いない。

一流の整理屋になれる。

俺の部屋も片付けて欲しい。

出入りしている近所のガキ爺婆主婦層が、片付けながら物を無くすんだよな。

私物を忘れて行ったりするし。

名前タグ付きの歯ブラシやらマイカップを置いていくのはやめてほしい。

そんな部屋もエルフっ子なら整理整頓可能だろう。

切れ長のシャープな目を見ていると、才能がうかがえる。

家事代行って、意外に儲かるよ。

異世界では、すご腕の剣士だし。

二つの世界に対応可能。

そんなエルフっ子の、芸術的、いや前衛的人体オブジェ。

俺を中心とした巾着袋的な、ふわふわ卵の代わりにやわらかい子供を寄せ集めたような。

決してきつくも痛くもない、全方位が柔らかい拘束着を着せられているような。

それはあたかも専用にしつらえられた介護ソファーに体を埋めているような。

なんか目的忘れてなーい？

エルフっ子は間違ってるな～～～～～～～～～～

それだけは間違いない。