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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第九章「神様のいない天獄」

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安分守己


【登場人物/一人称】

『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿/たいちょー》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。軍政官なのでいつも陸上自衛隊制服(常服)着用。元々訓練以外で戦闘服を着たことがない。


【登場人物/三人称】

地球側呼称《曹長》

現地側呼称《騎士長》

?歳/男性

:国際連合軍/陸上自衛隊曹長。主人公の「俺」が困ったら、困ってなくても、まず頼る相手。


地球側呼称《神父》

現地側呼称《道化》

?歳/男性

:合衆国海兵隊少尉。国連軍軍政監察官。カトリック神父で解放の神学を奉じる異端寄り聖職者。野戦戦闘服か士官制服にサングラスとコーンパイプ。

騒ぎを起こすのは大抵コイツ。


地球側呼称《三佐》

現地側呼称《青龍の公女》

?歳/女性

:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。

騒ぎを起こさせるのは大抵この方。



【用語】

『軍政部隊』:「俺」が率いる増強分隊。司令官(俺)、監察官(神父)の二人の将校と下士官一人、兵十名(含む選抜歩兵2名、武器科衛生科各一名)。独立した作戦単位として活動する為に軽装甲機動車と3 1/2tトラック各ニ台、KLX250(軍用バイク)二台、偵察ユニット四機と機動ユニット、各種支援装備が配備されている。


『佐藤』『芝』:主人公『俺』の部下。選抜歩兵(物語世界での選抜射手)であり、異世界転移後の実戦経験者。曹長に次ぐ軍政部隊戦闘作戦の中心


『シスターズ』:エルフっ子、お嬢、魔女っ子の血縁がない姉妹同然の三人をひとまとめにした呼称。。頭目の愛娘を加えるときは「+1」とか「+α」などとつける。


『Colorful』:奴隷商人に造られたハーフエルフの最高級愛玩奴隷たち。髪の色がいろいろなため、神父が全員あわせて「Colorful」と命名。一人一人の名前は髪の色に合わせて白・朱・翠・蒼・橙と主人公が名づけた。




とある歴史家はこういった。


ローマはローマ人がいる限り亡びない。

だからローマは滅びたのだ。



だが。

ローマ人と称する人は滅びたことがないけれど。





「英雄とは二つの要件からなる」

「さて、教えていただけるのでしょうな」

「一つ、皆が望むことを望む」

「それで終わりではありますまい」

「二つ、皆が望むことを実行する」

「足りないのでは?」

「成功も失敗も関係ない。困難か容易かもとるに足りん」

「それでスパルタクスですか」

「あれこそ英雄だ」

「まあ、否定する者はおりますまい」

「トラキア王族の末裔、公正無私の指導者、ローマ史上最高の将軍、あとは?」

「ローマ人が人を讃える時に付ける名前はあらかた」

「ローマの敵でありながら、な」

「カルタゴとはえらい違い」

「せめてハンニバルを出せ」

「なぜでしょうな」

「みんな英雄が好きなのさ」

「英雄だから」

「英雄だから」

「スパルタクスは何を望んだのです」

「敵を滅ぼすこと」

「だからローマを離れなかったわけだ」

「おのれを頚木につなぐ敵の、息の根を止めること」

「条件に合っていますか?」

「奴隷ならば皆がそう想うべきだ」

「そして実行できたものが英雄となる」

「まさに」

「貴男は英雄になれそうですな」

「まさか」

「では何になりたいのです」

「カプアの興行主」

「スパルタクスに最初に殺される役回りだ」

「まさにまさに」

「まったく、おかしな主もつと苦労しますな」

「おまえなら必ずやり遂げてくれるさ」

「ささ、奴隷たち盃が空いておるぞ、はようはよう」



ルキウス・セプティミウス・バッシアヌス

マルクス・オペッリウス・セウェルス・マクリヌス・アウグストゥス

2人の会話。



絶えることなく侍り続ける奴隷の中で過ごすルキウス。

腹心のマルクスとこのような会話をしていたのはいつか。

それははわからない。


だが、夢をあきらめた年は判っている。

ユリウス暦212年7月11日「アントニヌス勅令」

帝国内の全自由民にローマ市民権が与えられた。


ただローマ市民から生まれさえすれば能力に実績によらず誰もが支配階級になれる。

そんな制限をなくし「優秀なモノこそがローマ人だ」と高らかに叫んだ。


衰退期のローマ帝国、失われる繁栄に従って増えていく連中。

自分が何者でもないくせに、ただただ「ローマ人である」と誇示する者たちを嗤いながら。

ローマ人の股から生まれただけで、まるで無関係な「ローマの偉大さ」を吹聴して回るやつらを蔑みながら。



実力さえあれば奴隷から解放奴隷ではなく、市民になれる。

ローマ市民にたいへん評判の悪い命令を、軍の圧倒的な支持で勝ち得た独裁権力で実行したのだ。


彼はその時カラカラ帝と呼ばれている。


そして親衛隊長として辣腕を振るったマルクスは、マクリヌス帝として即位した。

カラカラ帝が親衛隊員によって暗殺された後で。



スパルタクスは英雄であった。

ローマ人にとって。


自分を「ローマ人」と呼ばないローマ人にとって。






【国際連合統治軍第13集積地/除染場/シスターズの包囲下/青龍の貴族】



俺たち、曹長、シスターズ&Colorfulは待機。


曹長が、わざーとらしく、見回した

――――――――――――――――――――今度は気が付いたよ?


俺も。

もちろん隊員たちも。


積載を完了した隊員たちは、俺の傍らに立つ曹長の意図に気が付いて、慌てて散開。

適度な距離を開けて全周警戒に入る。


基本動作基本動作。


降車乗車時は部隊全体として動きが止まる。

しかも降車乗車動作は予測しやすく、動き自体が緩慢。


これほど襲いやすく襲われやすい状況もない。



だからまあ、警戒しなければならないよね。

もちろん国連軍陣地内で何を警戒するのかって話だが。



第13集積地。


電子機器による警戒線/索敵圏は全域網羅。

内側は自動兵器/地雷機雷による殲滅圏。

さらに内側は有人即応部隊の作戦範囲。


駐屯地とそれ以外は、最短で10kmは離れている。


警戒すべき相手なんかいない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よね?



だがまあ、曹長がやらせてるんだから、必要なんだろう。


太守府で作戦行動中は皆が気が付く前に、曹長が全周警戒を命令していた。

俺はそれから気が付くのだが。


だからこそ。

警戒が必要無い駐屯地内だからこそ、自動的に動けるか試したのかな?

残念な結果でしたが。



帰還後しこたま怒られるんだろう。

常に何もかも曹長が命じられるわけじゃない。


戦闘中に限らず、曹長が別の役割に集中しなければならない時もある。

俺の世話とか。


極端に言えば戦死しているかもしれない。

そうなったら終わりだが。


そうなったとしても、更なる犠牲を出さないために基本動作が無思考で出るように、仕込む。

兵に自主性など必要ないが、命令を待つようでは兵士ではない。


いや、まったく。

大変な仕事だね。


そう思ってないのもいるが。




佐藤と芝。

2人とも曹長の期待を知っていながら、率先しなかった。


2人が動けば、皆も気が付いただろうに。

隊員たちは、まず曹長、次に選抜歩兵の二人に注目している。


その三人を見ていれば、何をするべきかわかるし。

自分の行動が正しいかどうか、の確認もできるし。



それ以外に注目するとすれば、民間人の様子を確認している。


シスターズ&Colorfulはもちろんだけれど、坊さんや役人が同伴していればそれを含めて非戦闘員全体を気にかける。


自衛隊らしいって言えば、らしいよね。

自分たちの役目を理解してるんだな、と思うと上官として安心です。

練度は不安です。


曹長がいれば何とかなるので、曹長死守は作戦の必須事項だな。

うん。



俺?

俺を見たってしょうがない。

それはみんな判ってる。


俺からは見えるので。


曹長の側にいるからね。

隊員たちの顔はよくわかる。


眼を合わせようとしないようにされてる気もするが、そんなことはない。

みんな横に居る曹長を見ているから、俺の視線とはずれるだけ。


嫌われてません。


実際、佐藤や芝はちょくちょく俺を見てるしね。

ニヤつく佐藤。

苦笑する芝。


馬鹿にされて、無いと思われ。


今だってそうだ。

ある意味で曹長の期待通り、皆が気が付くか試すために率先しなかった、佐藤と芝。



皆が気が付くまで、アイコンタクトを交わして待機

――――――――――曹長に協力した、ってより、明らかに、意地悪だな。



微妙に距離を置き。

微妙に止まらず、だが動かず。


自分達が曹長に叱責されない範囲。

皆がやるべきことに気が付かない範囲。



まあ、よろし。

結果として曹長、佐藤と芝の三人で皆に問題点を自覚させることができた。


そのうち教育効果が現れる、かもしれない。

自分で気が付くようになるかもしれないじゃないか。

俺はともかく、隊員たちはね。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺はいいんだ俺は。



怒られる覚悟完了。


そんな俺は無敵である。

いやホント、楽だよね。


言われた通りにしないと、怒られる。

ならば?

怒られればやらなくていい!!!!!!!!!!


――――――――――発想の転換。




上司には嫌われます。

都合のいいことに。


上司に好かれると仕事増えるからね。

増えた仕事をこなすからこそ好かれるので、何一つありがたくない。


上司にあきらめられるまでが勝負です。

コイツに何言っても無駄だな、という真理。


いや、まったく。

諦めの悪い人間が多くて困るよ。


時間の問題だから心配はしていないが。

ついでに免職してくれればいいのだが。




働かない。



働きたくない。

ではなく。

働かない、のだ。



空想でお茶を濁してはならない。

愚痴で気を晴らしても、なにもならない。


いやむしろ、気を晴らしたあげく気を取り直して働けば、

敵の思うつぼではないか!!!!!!!!!!!!


願望とは予定の別名である!

予定とは計画の推進である!!

計画とは願望の充足である!!!


万難を排して実現する!!!!!!!!!!!



働かない。

誰も死ななきゃ、いいじゃない。

人間だもの。


戦場以外なら、それでよし。




今は?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・反省してます。


死体には言い訳出来ないからね。

死体から苦情もでないが、頑張ります。

成功は、時々しかしませんが。





平和が恋しいな~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!



飛んでこないミサイル花火を、笑って見てればば済んだ黄金時代。

世界経済とイコール故に、滅ぼされようがない祖国。

開戦一週間で経済破綻する大国(笑)の脅威(爆)。


国を建てるには百年かかるが、国が亡びるのは一晩で足りる。


そんな時代もありました。

19世紀くらいかな。


20世紀には死語になり。

21世紀には笑い話。


働いてるフリで気楽に過ごせた

――――――――――過去形。


昨年末から時代区分が11世紀に逆戻り。

鎌倉幕府成立後くらい。

中世の始まり。


日本史の場合だけど。




21世紀という輝かしい過去、ばかりでもないが。

働かなくても済む時代に、働かされていた恨みを忘れない。


何処でもいつでも適当にやっていける。

そんな自信に満ちていた学生(大学生以上)生徒(高校生以下就学生まで)児童(小学生)時代が懐かしい。


戦場に限らず、そんな常道が通じない相手もいる。


就職先でエンカウントしたモンスター。

生まれつきの女王様、いや、独裁者気質。


コストもリスクも考えず、何が何でも従わせるタイプ。


やたらと個々人の嗜好指向に目が利く。

それこそ俺みたいな、世間外れも一目で把握。


スーパードレッドノートクラス・サディスト。


他人の気持ちに敏感、知っていながら踏み潰す鈍感。

エンドレス天下りで生涯ず~~~~~~~~~~~~っと無職にさせてあげない、なんて言い出す佐官とか。



そりゃ働くわ。


恨み辛みを溢れさせ、ると余計に喜ばれるし。

手を抜いてサボると、命に関わる任務をふるし。


理屈をこねた時は、思い知ったし。


ニッコリ笑って。

法律は銃弾を防げるの?

とかなんとかすごく怖いんですけれど。


暴発事故が起こりかねない職場。

日本で立った二つのそんな場所。


俺の職場と警察ね。

在日米軍は一応、国外扱いで。



剣はペンより強し

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死後の裁判で勝ってもしかたない。

そもそも裁判にすらならないかもしれない。



三佐。

労働者の天敵。

雇用契約っていうより、主従関係で動いている。

かつての時代錯誤が、異世界転移で時代のトレンド。


俺が嫌がることが大好き。

ってことは。

そのドSを快感に変えれば、失業させてくれるんだろうが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やめよう。


人間を辞めるのは止め。



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