表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第九章「神様のいない天獄」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

332/1003

鏡像認知


【用語】


『軍政部隊』:「俺」が率いる増強分隊。司令官(俺)、監察官(神父)の二人の将校と下士官一人、兵十名(含む選抜歩兵2名、武器科衛生科各一名)。独立した作戦単位として活動する為に軽装甲機動車と3 1/2tトラック各ニ台、KLX250(軍用バイク)二台、偵察ユニット四機と機動ユニット、各種支援装備が配備されている。


『佐藤』『芝』

:主人公『俺』の部下。選抜歩兵(物語世界での選抜射手)であり、異世界転移後の実戦経験者。曹長に次ぐ軍政部隊戦闘作戦の中心



【登場人物/三人称】


地球側呼称《曹長》

現地側呼称《騎士長》

?歳/男性

:国際連合軍/陸上自衛隊曹長。主人公の「俺」が困ったら、困ってなくても、まず頼る相手。


地球側呼称《神父》

現地側呼称《道化》

?歳/男性

:合衆国海兵隊少尉。国連軍軍政監察官。カトリック神父で解放の神学を奉じる異端寄り聖職者。野戦戦闘服か士官制服にサングラスとコーンパイプ。騒ぎを起こすのは大抵コイツ。




戦争とは外交の一手段に他ならない。

暴力をもって相手に強制する行いである。


―――――――――――――プロイセン軍人―――――――――――――――




戦争の開始と終了を自国のみで決定できる国家を大国という。

この場合、戦争とは互いの外交問題ではなく、彼らの内政問題でしかない。


――――――――――――――ヴェネツィア貴族――――――――――――――




平和を産むのは諸国民の誇りと利益を熟慮した外交である。

征服では生まれないし、脅迫しても造れない。


――――――――――――――フランス初代皇帝――――――――――――――








【国際連合統治軍第13集積地/除染場/シスターズの包囲下/青龍の貴族】


俺に目配せする曹長。


なにかな?

思わず教えを

――――――――――――――――――――――――――――お、敬礼?


「積載開始!」


―――――請うてしまうのを待つ、曹長ではなかったぜ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、答礼忘れた!!!!!!!!!!

いまさら?


曹長の号令に従う隊員たち。


うん、判った。

俺が命じるところだったね。

最低限、命じる許可を出すところ。



俺は、取りあえず、スルー。


指揮官たるもの、NBC防御警報発令時も微動だにしない。

装面密閉は最後にすべし。


――――――――――って、言ってた。



軍政官訓練キャンプの軍曹が。





【聖都南端/青龍の軍営外郭馬場/青龍の貴族、背後/エルフっ娘】


あたしたちには、相変わらず。


なにもさせてもらえない。

あの娘もじれてきてるし。


青龍の騎士たちは、全身を研ぎ澄ませている。

立ち働きながら、皆、主の気配を窺っている。


彼、青龍の貴族、その気配に。


過てば、何が起こるのかしら、ね。

道化のように、無言で撃ち殺される?


それを示すために、殺されかけているのだとしたら。

あたしが殺してやりたくなるわ。



一回目は、あの娘が危なかったから。

二回目は、あの娘が彼に怒られたから。

三回目は、羨ましいから

――――――――――必要とされたいじゃない?


女として、以外にも。

ま、無理だけど。



あたしの最優先は、青龍の貴族じゃない。



それは最初から、バレてるし。



調べたのか。

察したのか。

知っているのか。


たとえ100年前のことだとしても。

ソレを知っていて当たり前。



太守領に青龍の貴族が来る前、参事会の密談。


厳重に秘匿された部屋、部外者が立ち入れない秘密の会話。

あの娘を生贄にする陰謀。


太守領を訪れて、青龍の貴族があたしたちに出会った直後。


半月以上前の密談を取り出して、太守府住民皆の前で再現して見せた。

青龍の魔法。


あたしたちが彼に出会った日。

青龍の貴族は、その場でその時、それを聴き、怒った。

つまりは初めて聴いた訳。

※第7話<人間って、なんだっけ?> より



最初から知っていて、あそこで怒って見せた?


有り得ない。

それくらい判る。

長いつきあいとは言えないけれど。

惚れた男のことだもの。



ということは?


過去の何処かの誰かの会話を、自由にいつでも取り出せる。

だから青龍には、誰も何も、隠せない。


あたしも例外じゃない。


それを彼、青龍の貴族が気に留めるかどうかはまた別の話。

何処かの誰かの過去のこと、どーでもよけれは気にされない。


でも、有り得ない。

有り得ないに決まってる。

自分の女、その秘密を気に留めないわけがない。


あたしの昔、今、これから先まで続く誓い。


実際、バレてるし。

あの娘のことでもあるし。


きっと、あたしも気にされてる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わよね。




【国際連合統治軍第13集積地/除染場/シスターズの包囲下/青龍の貴族】


そんなわけで俺は何もさせてはもらえない。

おかげでのんびり快適です。


駐屯地整備班が車両倉庫から走らせてきた、ランドクルーザー三台。


うちの曹長。

駐屯地の整備班長。


2人が頷きあって、俺を見る。

俺は一呼吸間をあけて、一瞥。


整備班長と運転してきた整備兵、まあ陸上自衛隊の武器科隊員たち四名。


俺に敬礼。

小走に倉庫へ戻っていった。


走らなくてもいいんだが。

癖というか、習慣というか。


事務職以外の現場勤務者には、のんびりゆっくりが好まれないんだよな。

それはまあ、うちの連中も同じなわけで。

俺と子供たち以外。



曹長の命令一下。

部下たちが車両に取りつく。


既に積載済みの装備、車載装備を確認する者。

これは佐藤と芝。

車両自体の足回りや運転席などを確認する者。

これはうちの武器科。

俺たち軍政部隊独自装備を積み込み始める者。

他みんな。


独自装備ってのは、まあ小火器の弾薬や手榴弾他標準装備。

そしてメインとなるのはお出掛け用品。


パンやら麺やら香辛料他調味料の類はシスターズ&Colorfulが。

肉やら野菜やら調理器具一式は隊員たちが。


それぞれここまで運んできたのだが。

それらは部下たちがまとめて荷台に積み込み始める。




戦場には宅配がないから仕方がないね。

俺が持つのは禁止事項。

軍政官規定。


いやまあ、普段だって荷物を持ったりしないけれど。


基本、手ぶらです。

つーか、必要な物は全部職場に在るし。

仕事を職場以外に持ちだしたりしないし。


背負ったり持ったり抱えたり。

そんなモノは演習だけで十分以上。


手に持つのは食器と食材と子供だけ。

別に戦場だからってわけではないが。



荷物持ちにしようとするやつがいても、断固拒否する。

それが女でも例外ではない。


そんなことしても、口説けないぞ?


とはいえ女が荷物を持つところは、好きじゃない。

だからさっさと宅配へ。


日本固有のきめ細かいサービス万々歳。

異世界にも普及しないかな。




【聖都南端/青龍の軍営外郭馬場/青龍の貴族、背後/エルフっ娘】


相変わらず。

あたしたちを仕草で制する、青龍の貴族。


これが彼の意思表示。


判らないわよね、普通は。

あたしたちには判るんだけど。

あたしたち以外には、何もなし。


青龍の騎士長が主を見た。

青龍の貴族は完全無視

――――――――――これが、青龍の命令。



無視は承認。


騎士長が騎士たちに、青龍の貴族からの命令を伝えた。

皆、一斉に動く。


これも、彼の命令。


判断は各々、補足は騎士長、把握して無視する青龍の貴族。

何も、仕草すらなし。


でも、皆が動くのよね。


騎士長が、補足するのだけれど。

気配を分かり易く言い換えて、騎士たちの動きを裏付ける。



無言と有言。

命令を重ねるから、確実で間違いが起らない

――――――――――無駄がない、わね。




でも、あたしたちは青龍の習慣に通じてない。


だから、はっきり命じられる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・仕草で。


当たり前に、従わせるまでもない、貴族。

周りの皆が、考え察して立ち回る。


あしたちは、彼の求めが判るからいいけれど。

太守領の連中が、必死になるわけだわ。




なにも言わないからこそ。

なにも命じないがゆえに。

なにも関心を向けないと。


誰も彼もがその意思を、命を懸けて探し回る。




【国際連合統治軍第13集積地/除染場/シスターズの包囲下/青龍の貴族】


俺がいまさら偉そうにしていても仕方がない。

ので、フリーズ維持。


指揮官たるものあれやこれや。


NBCは、つまりあれ。

Nuclear/Biological/Chemicalなやつ。


核、生物、化学戦。


それに動じないのが士官の基本にして最低条件。

ムチャいうな。


ムチャを言うのが在日米軍軍曹。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんなディープなモノを、訓練キャンプに投じるなんて!!!!!!!!!!


訓練生、一人残らず日本人、みな泣いていた。

一人残らず事務系、みな軍政任務だからね。


俺も泣いてた訓練生。

一人残らず予想外。



つまりあれか。

米軍では、それが基本で当然か。


日本でNBC戦部隊を出勤させる場合、関係省庁が月単位で打ち合わせないとな。

なにがいつどこで、と最初からわかっているのが前提。


演習なら半年前。

実戦なら一年前。


最低限、そこから準備。

出勤する時間までに、装備保管庫の鍵を入手出来れば奇跡。

部隊行動可能な装備が在るのかどうか、開けて見なけりゃわからない。


普通なら?


必要になる時の一週間以上前に、必要になる場所の近傍拠点で、装備を目視確認手入れしながら待機。

でなけりゃ絶対に間に合わない。


ま、そんなもんだ。



とはいえ、米軍将校に言わせれば、何処も同じ、だと。

米軍の中でもコアな部分だけが、ありとあらゆる対応が可能。


冷戦に産まれ育った者だけが、軍人になれたらしい。

軍籍がある人、って意味じゃなくて。

<軍人>という鋳型のこと。


それ以前は義勇兵、それ以後は民兵。


どう違うって?

義勇兵は意欲に溢れている素人。

率いるのは軍事貴族。


民兵は意欲すらないド素人。

追い立てるのは奴隷頭。


どちらも甲乙つけがたい。

職業軍人から見れば、とかなんとか日本人が知らない世界。


上から下まで職業軍人で占められていた、軍の理想郷。

それが冷戦。


そんな理想郷の生き残りが、日本列島の異世界転移に付いてきた。


マメシバ三尉曰わく

<チートかな?>

とかなんとか。


日本語でよろしく。



米軍の中で相当に少ない精鋭は、日本列島にいたらしい。

だから否応なく、異世界転移に付いてきた。

なんでやねん。


最前線に精鋭を集めるのは常道だとか。

それは判る。


中東や中央アジアじゃなく、日本列島が最前線。

そこが解らない。


アメリカ人、いや、米国軍人の考えることは複雑怪奇。

合衆国をはみ出した、米軍という国の人々。


星条旗を掲げ、日々ドンパチしている暑い場所。

いや砂漠は寒いとき寒いけど。


そこが最前線じゃないのか?


寒暖差と砂に埃はパソコンと人間の大敵。

だから、だ。


リアルファイト中の場所は米軍にとって、ゴミ捨て場、らしい。



ワシントンDCという名の国が押し付けてきたゴミの山。

見込みのない民兵を、まったく意味のない砂漠や荒野へ速やかに廃棄。


脱走歓迎、除隊まあよし、戦死こそ至高。


だから、それがあり得る場所に集中配備。

勝利する余地がない無意味な戦場。

せめてもの有効活用。



まあ、それが基本なのだが。

日本にもある程度ジャンクを持ち込んでいたと何とか。

ウォール街という国の連中が五月蝿いから。


なんて迷惑。

ただウォール街が消滅したから、ジャンクは異世界大陸に持ち込んでない。


じゃあ、本土に残されてるってことで、日本が心配なんですがそれは

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・米軍は、在日米軍自体が、今の日本列島、異世界転移から5か月目、に、ほとんど残っていないよな?




在日米軍は自衛隊の大半と共に、兵士も設備もほとんど全部が異世界大陸に移転した。

日本本土には指揮通信系統しか残っていない。


そんなジャンルにジャンクが混ざっているはずもない。


異世界に居ない。

日本本土にもいない。


どこにいる?

え、いない?

――――――――――開戦決定から1ヶ月かけて、戦死した、そうな。


アレ?

国連特使遭難前後、米軍は異世界大陸突入

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えーと、異世界転移が年末で、2月1日には上陸が終わって

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・米軍の移設には半月もかからず

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・開戦決定から?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハッハッハッワケガワカラナイナ。




【聖都南端/青龍の軍営外郭馬場/青龍の貴族、左/お嬢】


なんばーわん、になるために。


わたくしは、ご領主様に背をあずけます。

欲しい方を感じることでこそ、やる気がムクムク高まりますわ。


そして身を委ねる安心感。

それはもちろん、前から抱き合った方が好いけれど。


でも、この方が、よく見えますから。

ご領主様が黙殺するところも、見えるかも。

いえ、見て見せます。


それでこそ、わたくし。

わたくしたちのなかで、抜きんでるため。


わたくしが成長しても、ねえ様のように強くはなれません。

お料理はできませんし、わたくしの肢体は、あの娘と互角。


ただただ生涯ず~と、可愛がっていただく。

それはとってもすごく楽しみで、素敵ですけれど。

もっともっと。




だからよーく、見つめました。

背中に集中していないとは申しません。

それでも意識の半分くらいは周りに向けましたわ。



青龍の騎士様方。

そして三頭の土竜。


らんどくるーざー、とおっしゃいましたか?


動き出すと臭います。

座っていても臭います。

馬や牛と同じね。


臭いの種類がちがうだけ。

皆様方が土竜の背に、荷を上げて行きます。


熟練の人足並みの速さ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも違うわ。


人足たちは経験で積み上げる。


青龍の男騎士様方は?

――――――――――決まって、るのかしら。


そう、そんな感じ。

何を、何処に、どれだけ。


大きな枠組みが、まず在る。

そこに不要と必要を、加えて抜いて。

そんな感じですわ。


確かにこの方が、上手くいきそう。

この方法は荷積み荷降ろしだけ、じゃありませんわね。




【国際連合統治軍第13集積地/除染場/シスターズの包囲下/青龍の貴族】


俺もそう考えていたことがありました。

軍政って事務仕事だと思うよね。


嘘ではないが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違った。


あり余る通信回線でタイムラグゼロ。

世界全人類の産業と繋がっていたリソースがフルオープン。


電子漏洩リスクゼロ。


電子化イコールコピー流出って常識。

機密は紙に記し人間が運ぶのが常識。


だったのは、異世界転移前。


あらゆる通信ネットワークのハブ、全ての盗聴傍受システムは国際連合が管理中。

事務作業は、後方地帯へ。


よって軍政官は事務仕事から解放されました。

かなり。



主な仕事は肉体労働。

交渉、示威、観察、プランニング、時々戦闘。


フィールドワークじゃねーか。

そりゃ泣くわ。


事務職関係ねーじゃん、あまり。

まったく、じゃない凶悪仕様。

だから異議申し立ても却下。


訓練キャンプでともに死線をくぐった被害者同士諸君を懐かしく思いだす。

みんな何をしでかして、左遷されたのやら。


さて。

曹長が視線を向けてきた。


そんな悲劇にみまわれた人々に憐れみを感じつつ、俺は俺の役割を進める。


え?

仕事じゃないよ?


役割だよ。

誤解しないよーに。

仕事しちゃうよーな、ドMじゃないから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ