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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第八章「天獄に一番近いここ」

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自尊己隷

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします



本作では一人称で描写される登場人物の固有名詞を使いません。

他の登場人物も複数ある役職名やアダナ等で呼ばれます。


文節の大半は一人称となりそれが次々と入れ替わります。

よって、以下の特徴で誰視点であるのか、ご確認ください。


・一人称部分の視点変更時には一行目を【】で区切ります。

・【語る人間の居場所/誰視点】とします。

・「誰視点か」の部分は「青龍の貴族」「魔女っ娘」など代表的な呼称(役職名やアダナ)を入れます。

・次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。


以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)




【登場人物/一人称】


『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿/たいちょー》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。軍政官なのでいつも陸上自衛隊制服(常服)着用。元々訓練以外で戦闘服を着たことがない。


『あたし』

地球側呼称《エルフっ子/エルフっ娘》

現地側呼称《ねえ様》

256歳/女性

:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。シスターズの姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。


『わたし』

地球側呼称《魔女っ子/魔女っ娘/幼女》

現地側呼称《あの娘》

10歳/女性

:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。


『わたくし』

地球側呼称《お嬢/童女》

現地側呼称《妹分/ちい姉さま/お嬢様/愛娘》

12歳/女性

:異世界人。大商人の愛娘。ロングウェーブのクリームブロンドに蒼い瞳、白い肌。身長は130cm以下。装飾の多いドレスが普段着。



私に良心はない。

私の良心はアドルフ・ヒトラーだ。


――――――ヘルマン・ヴィルヘルム・ゲーリング―――――

ニュルンベルク裁判被告人の言葉





悪意から偽りの教えを与えられたとしましょう。

その結果、私が地獄に落ちたとしましょう。


そこに何の悔いがありましょうか。


―――――――親鸞―――――――――

流刑地における流刑囚の言葉





神を試してはならない。


―――――――ナザレのイエス――――――――――

ユダヤ教のラビにしてイスラム教の預言者でありキリスト教の開祖(以下略)







【聖都南端/青龍の軍営内演習場/青龍の貴族、左/お嬢】


――――――――――――――――――――????


わたくしは、耳を疑いましたわ。

その時、その事、その言葉。


ご領主様の意志。

あの娘の哀願。



ほんの一瞬前。

もう一度、思い起こしましょう。






ご領主様はあの娘の前に座っていらっしゃいます。

ゆっくり、どっしり、怒りを湛えて。


そして、あの娘の肩を、頭を力任せに掴んで引き寄せます。


鼻先を合わせ、眼の奥底を睨みつけ、泣き言を許さぬ構え

――――――――――しゃくりあげる、あの娘。


わたくしは、機を窺っておりました。

これは、わたくしたちの、我が事ですわ。

このままで済ませるわけにはまいりません。



狂わんばかりな、あの娘のためにも。

深くうなだれた、ねえ様のためにも。

あるべきこと、わたくし自身のため。


そして

――――――――――ご領主様の声。


「意見することを許す」


わたくし、に?


「だが」


あの娘に?

ねえ様に?


「危険は赦さん」


体の奥を貫かれる、お声。

ご領主様の、わたくしを支配する方の、声。

そして、わたくしたちへの、声。


わたくしなら、一も二もなく頷きます。

わたくしは、ご領主様のため以外、肢体と心に傷を負うことなどありえません。

わたくしが申しあげるまでも無きこと、なれど幾たびでも誓いあげますわ。


「・・・お・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゆ・・・・・・・・・ひく・・・・・・い」


それは、ねえ様も、あの娘も。

あの娘が息を整える、間。


「・・・・・・・・御赦し・・・・・い」




間違いありませんわね。

あの娘が身も心もすべてを捧げた生涯唯一の主への、応え。


拒絶。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――わたくしは、耳を疑いましたわ。




【聖都南端/青龍の軍営内演習場/青龍の貴族、右/エルフっ娘】


あたしも。

妹分も

彼も。


あの娘の言葉を聞いた。

意味を取り違えることなど、ない。




赦さない。

赦して。


危険を赦さない。

危険を赦して。



――――――――――退かない。


あの娘は、繰り返す。

あの娘が、あの娘である限り、繰り返す。

何処かの誰かを、何度でも庇い、何度でも怒らせる。


だから

――――――――――哀願する。




死にかけることを、殺されかけることを、貴男に赦して欲しい。

繰り返し繰り返し怒りをかい、繰り返し繰り返し赦して欲しい。


貴男の女が、貴男の意に反して傷つき殺されること

そのまま貴男の側で過ごすことを。




――――――――――赦して――――――――――




あの娘は、泣きながら、身じろぎ一つなしに、すがり続ける。

青龍の貴族、あの娘の男に、哀願する。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・赦すわけがない。


青龍の貴族が、あの娘を失う?

それを受け入れる?


――――――――――あり得ない。


だから、命じない。


あの娘は、あたしたちも、貴男に従いたい。


貴男に命じられれば、従う。

だから貴男は、命じない。


彼、青龍の貴族も、知っているから。


思うがままに振る舞え

――――――――――彼、青龍の貴族が、あたしたちに命じたこと。


世界の何もかも、何一ついらない彼。

青龍の貴族が、たった一つ、あたしたちに望んだこと。


だから、彼は、命じない。


命じる?

あの娘に、あの娘を止めろと?


自分の女を、壊してしまう、訳がない。

でも

――――――――――どうしたら、いい?


心を棄てれば、あの娘はいなくなる。

命を棄てれば、あの娘はいなくなる。


あたしなら?





【国際連合統治軍第13集積地/射撃場/魔女っ娘の前/青龍の貴族】


俺が困った、循環論理。

いや、言ってることは判る。



ミミズもオケラもアメンボも神父も見捨てられない?



魔女っ子の将来が心配だ。

いや、解るんだが。


幼い頃、自我が確立する前。

自他の区別がつかない時期。


人形にだって、共感、いや自己投影してしまう。



下手に理屈を知っているから、俺は決めかねた。

これでも大学時代、教職課程をとったのだよ。


いや、面白そうだったからね。

子どもの人生を背負うなんて御免だから、教師なんて最初から目指さないけどさ。

教員免許取ったのは、興味を満たしたらついてきただけ。


そんなわけで、魔女っ子の心理は判りやすい。



この手の心象は大人になれば、失われる。

そのまえに矯正すると、必要な部分が壊れる。


共感性は諸刃の剣。


共感は共感を生む。

他者に共感しやすいものは共感を受けやすい。

それは仲間を創りやすいということだ。


そこで得られるメリットもあるが、そこにとらわれるデメリットも大きい。


共感が結び付ける関係は標準化を導く。

つまりは、相手が自分より劣位にあれば自分が苦しくなるというわけだ。

ましてやそれが無力な相手なら、完全に自滅路線一直線。


本人が気が付かなければ苦でもないだろうけれど。

もちろん相手によらず過剰になれば、自分と他人の区別がつかなくなる。


子どもならよくあるころとだが、大人になれば異常心理と言えるだろう。


魔女っ子は、今ココ。

過剰に過ぎる共感、ならそれを否定するか?



共感を失えばサイコパス。


それはそれで幸せだろう。

定説で考えれば、サイコパスは社会的成功をおさめる可能性が高い。


あらゆる決断の瞬間、自分以外を客観視できるのだから当たり前。

それはつまり相手を突き放して見ている、ということ。


犯罪にはしる可能性も、限りなく低い。


凶悪犯罪の発生原因が、ほぼ感情起因なのだから当たり前。

とりわけ先進国、法や組織が完成した社会はサイコパスとよく馴染む。



そりゃそうだ。

倫理学の基本原則。


利他は利己の究極形態。


社会的逸脱から得られるリターンより、リスクの方が高いからだ。

社会に順応しそれを守ったほうが、リスクは最小化されリターンが最大化する。


よほど運が悪くない限り、同じ能力ならサイコパスの方が圧倒的に成功する。


わーざわーざ統計を取っている合衆国だと十人に一人以上。

各階層の中間クラス以上がサイコパス。


どの社会階層、どの組織、どのような社会活動においても指導的な役割を負う

――――――――――ことが多い。


もちろん合衆国のような自由競争寄りの社会では、階級を飛び越える可能性は限りなく低いけれど。


出生時点で社会的格差が大きすぎて、個人が関与する要素がないからね。

サイコパスでもソシオパスでも、階層を越えればどうでもいいといえる。



余談の余談。




現代社会は理性や論理を社会基盤にする、しようとしているのだから。

まさにサイコパスにとって最適化。


普通、サイコパスは周辺の人々と併せて、幸福な人生を送る。




日本だと言葉の意味自体が誤解を越えて極解されてるけどね。

矛盾を解消する為に反社会的サイコパス、なんて矛盾した表現があるくらい。


反社会的、しばしばそうなるのはソシオパスなんだけど。


まあ社会が破たんしている場合、サイコパスはそれを修正しようとする。

そういう意味では、既存社会の敵に回る可能性もあるけれど。


それは社会の方が悪いだろう。


勝利した革命家にはサイコパスが多いんじゃないかな。

敗北したテロリストには非サイコパスが多いだろう。



で。

魔女っ子。

ここだけが重要。


地球人類社会でそうなのだから、異世界でそうならない可能性は低い。

社会が未分化、つまりは法や慣習が曖昧な、情緒優先の世界。


多少、効率は落ちるかもしれないが。


その分、関わる世界も狭い。

効率の低下は取り扱い量の低下でお釣りがくる。




ならば?

俺は魔女っ子を、よーく見た。






赤い綺麗な瞳だな。

よし、決定。


現状維持。


涙目可愛いなどと思っていない。

思っていないが、それとこれは無関係と言い切れる。


ほら、必ずしも、上手くサイコパスになるとは限らないし。

まあ、成否によらず不都合はないだろうが。


人一人の在り方を変えるなんて、俺の分を越えているよね。



単なる通行人が、子供の人生を変えていいわけがない。

あくまでも通行人Aでないとな、うん。




魔女っ子が大人になれば自然に解決する、はず。

感性が程よく鈍麻して、身を護れるようになる、たぶん。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ならかったら、魔女っ子人生を見守らなければならなくなる。



ないないないないない

――――――――――がんばれ、エルフっ子。


うん、いい子だ。

エルフっ子、力強いうなずき。


将来の問題は、これで解決。

昨今の問題は、まだ未解決。


だから、それまでどうする?




魔女っ子は相変わらず。

ミミズもオケラもアメンボも神父も区別がつかない。


友達とか言い出したら矯正するが、生きているのは否定しない。


根本的矯正を断念した俺。

危険を絶対容認しない俺。





24時間付きっきり、って訳には

――――――――――迷子紐で繋ぐか?



「「「「「「「「お願いします!!!!!!!!!!」」」」」」」」


いや、まあ、俺が銃を遠ざけて手の届く範囲で拘束すれば、危険はなくな

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?


なにを?


魔女っ子

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あら?

みなさん、どうしたの?


スッゴく見られてますが。

魔女っ子だけじゃなくて。


シスターズ&Colorful、16の瞳。


俺、なんか言ったか?

みんなも、なんか言ったよね?




【聖都南端/青龍の軍営内演習場/青龍の貴族、左/お嬢】


わたくし、聞き漏らすことなどありません。

ましてや、ご領主様の、お言葉を。


わたくしは、考える前に反応しておりました。

確かに


「繋いでやろうか」

「「「「「「「「はい!!!!!!!!!!」」」」」」」」


確かに間違いなく確実に

――――――――――好機至れり♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも、もしかして、これは?


「えーと」


あら?

ねえ様?

らしからぬ、前置きですわ。


「動けなくならないかしら」


皆が言えなかったこと

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三人でも、辛いですわね。


わたくしは、思い出しました

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・八人。

Colorfulの皆を外すわけには、だ、ダメ、ですわね。


長い丈夫な綱を使っても、なんとか、なれば~~~~~~~~~~

はい、ムリです。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さすが、ねえ様。

ご領主様の都合をこそ、お考え。


あきらめますわ。

どうにもならないこと。

いたしかたないことに、駄々をこねたりいたしません。




――――――――――日替わりにて、いたしましょう。



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