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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第八章「天獄に一番近いここ」

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325/1003

自制自戒

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします



本作では一人称で描写される登場人物の固有名詞を使いません。

他の登場人物も複数ある役職名やアダナ等で呼ばれます。


文節の大半は一人称となりそれが次々と入れ替わります。

よって、以下の特徴で誰視点であるのか、ご確認ください。


・一人称部分の視点変更時には一行目を【】で区切ります。

・【語る人間の居場所/誰視点】とします。

・「誰視点か」の部分は「青龍の貴族」「魔女っ娘」など代表的な呼称(役職名やアダナ)を入れます。

・次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。


以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)




【登場人物/一人称】


『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿/たいちょー》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。軍政官なのでいつも陸上自衛隊制服(常服)着用。元々訓練以外で戦闘服を着たことがない。


『あたし』

地球側呼称《エルフっ子/エルフっ娘》

現地側呼称《ねえ様》

256歳/女性

:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。シスターズの姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。


『わたし』

地球側呼称《魔女っ子/魔女っ娘/幼女》

現地側呼称《あの娘》

10歳/女性

:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。


『わたくし』

地球側呼称《お嬢/童女》

現地側呼称《妹分/ちい姉さま/お嬢様/愛娘》

12歳/女性

:異世界人。大商人の愛娘。ロングウェーブのクリームブロンドに蒼い瞳、白い肌。身長は130cm以下。装飾の多いドレスが普段着。



 つまり、来年からは別な自殺者が激増します。


「居場所があった者たち、か」

「社会のために役に立っていた、と思っていた者たち」

「価値を生み出し、価値を維持し、社会を支えていた」

「働かない者たちの代わりに富を生み出し尊敬された」

「はずだった」

「それは最初から必要ありませんでした」

「誰にも必要ない財貨やサービスを造りだし」

「消費しきれぬままに手間ひま金をかけて破壊して」

「働かない者たちが消費のみすることで、かろうじて破滅が先送り」

「成功者、生産者、勤労者」

「何もせぬほうがマシ」

「ならまだよかったな」

「働けば働くほど、工夫すれば工夫するほど、産みだせば生み出すほど」

「社会を破壊して追いつめていましたとさ」

「なにしろ、産みだされたモノを消費する余地がなかったのだから」

「資源を浪費して環境を破壊して人類を追いつめていた、だけ」

「失業者や貧困層、高齢者や未成年を、養っていたと勘違い」

「彼らがストックの氾濫を防いでいた」

「いまさら隠せん」

「日々体感しているだろう」

「何をすることも止められて、それでも社会に不自由はない」

「今まで何に勤め何を誇っていたのか」

「道化だな」

「すでに周りは気づいている」

「己で悟ればとどめだな」

「傷はふかかろう」

「誇っていたものが、何もかも恥となる」

「死なぬほうが難しい」

「自業自得か」

「それは違う」

「我々とて、以前はそう信じていただろう」

「根拠もなしにな」

「その虚構を指摘する論文や研究は幾らでもあったが」

「気づくことはできた、が、世間に騙され世間を騙していた」

「どちらかといえば、自己責任か」

「奴らの好きな言葉だろう」

「責任を自覚せぬ者は、みんなそれが好きさ」

「皮肉なことに」

「逃げ道がないの」

「死ぬな」

「支障はない」

「もともと必要ない、というより生産という浪費を続けていた者が居なくなる」

「むしろこれからを考えればプラスか」

「人口動態は」

「逝くものと送る者が単に入れ替わるだけ」

「とは言え、哀れではある」

「いずれ同じ道をたどっていた」

「生産が自殺行為だということは、四半世紀もせずに明確化した」

「異世界転移は、半世紀前から解っていたことを表に出しただけだ」

「一夜で知らせることではあるまいよ」

「本来ならゆっくりと淘汰されたモノを」

「その分、無駄を積み重ねて、な」

「憐れ、とは思う」

「異世界改造計画の前倒し発表が必要では?」

「彼らが関与する余地があるのか」

「没落と思った方がマシでしょう」

「これからあなたたちはいらなくなりました」

「最初からあなた方はいらない上に浪費の元でした」

「マシだな」

「逃げ道を与えなければならん」

「孫子の兵法か」

「犠牲を最小限に抑えられるかと」

「同胞を護るということは、必要不必要の話ではない」

「賛成」

「つまり我々の責任は増える」


≪衆議院参議院合同厚生労働委員会議事録より抜粋≫





【国際連合統治軍第13集積地/射撃場/軍政部隊後方見学席/青龍の貴族】


俺は、感情を鎮めようとする。

つまりは感情的になっている。


俺にしては、めずらしく。

さっきまでは昇り調子。


感情を高ぶらせてもいいことなんかないのにな。


逆上させることはある、時々は。

自分が逆上したのは、もしかして、はじめてかな?


だが、大丈夫。

ピークを過ぎればなんとかできる。



感情なんてどうやって鎮めるんだ?

と言われるかもしれない。


意外にいける。


もちろん、逆上させる方が簡単なんだが。

逆上させた方が扱いやすくなるし。

それはもちろん他人事。



今は俺。



そもそも、俺はあんまり感情が高ぶらないからね。

楽なんだ、低空飛行メンタルは。


大抵勝手にシラケるが、それでも持続する場合もある。


過去三カ月に二回。

全生涯だと何年かに一回くらい?


異世界転移はメンタルに良くないことが確定した瞬間。

そういう時はだいたいやらかします。


何をやらかしたのかは黙秘するとして。



ちょうどいまソレ。

世界が変わっただけで三回目。

月一ペースで更新中。


やはり言える。

異世界転移は体に悪い。


その都度、人を殺してはいかん。



軍隊の指揮官ってのは、そういうところがやばいよな。

自衛隊の士官であり続ければ、そんなことにならなかったのに。


戦わない軍隊最高!

戦えない兵士至上!

戦わない平和至高!


せっかく巧くいっていたのに。

俺も日本も。


今となっては、代わりに戦ってくれる便利グッズが居なくなってしまい。

向き不向きを越えて、俺なんかが前線おくり。



俺のつぶやき一つで人が死ぬ。

っていうか、死んだ。


いまのところ、気にもならないどころか、うろ覚えだが。



もっともっと、苦しい最期を贈ってやりたかった、自称愛国者。

※第18話 <Rules of Engagement/ROE/交戦規程>


俺たちが現れたために港街で起こった騒乱、俺が殲滅させた住民一同。

※第26話<文明の衝突(非接触事故> ~第73話<まだ夜が暗かったころ >


国連軍が帝国を逐ったせいで発生した野盗と、俺が殺させた被害者たち。

※第80話<初めての地球人類> ~第97話<心の造り方/Reproducibility>


他になんかいたかな。

いたようないないような。


命じたりつぶやいたり眼を離したすきに結構殺してるしな。

ついさっきも、実銃を使って、神父のパフォーマンスを潰そうとしてしまったし。


神父のそれが、そもそもパフォーマンス。

実銃持った者同士、避けられたはずなんだよね。


まさにそれこそマズいこと。




だからこそ、気を静める技法が必要になるわけで。

それは簡単な手法なので、不必要に人を殺さないで済むのだが。

つい今しがた失敗したばかりという勿れ。


俺が一番大好きな言葉。

今度こそ。


しかも今、俺の前に強い味方。

これで勝てる。

魔女っ子に。



俺は魔女っ子の両頬を抑えると、その髪が手に纏いつく。


そう!

モフモフである。


俺が猫と一緒に育ってきた理由。

過去人生でそれほど盛大にやらかさなかった理由。


よし!

大丈夫。




【聖都南端/青龍の軍営内演習場/青龍の貴族、右/エルフっ娘】


あたしは今まで、こんなに深いそれを見たことがない

――――――――――それは絶望。

あの娘のそれ。


青龍の貴族は、あの娘の肢体を強く強く抱きしめたまま。

あの娘の顔を掴み、自分と同じ目線で向き合わせる。


彼が女と向き合う時。

いつも同じように、高さを合わせる。


尋ねるときも。

揶揄うときも。

愛するときも。


怒った時も。

――――――――――怒ってる。


彼、青龍の貴族が。

初めて、あたしたちに、怒った。


危険に跳び込んだ、あの娘に。

危険から救えなかった、あたしに。


怒ってる

――――――――――あたしは、泣きたくなった。


謝りたい。

でも、動けない。

謝ってすむことじゃない。


あたしが、あの娘を護れていれば

――――――――――こんなことに、ならなかったのに。


あたしの心は、流れる鉄を水に落とし込んだみたい。

散り散りにみだれて動けない。




【国際連合統治軍第13集積地/射撃場/軍政部隊後方見学席/青龍の貴族】


俺は極めて確実に間違いなく落ち着いた。

落ちついたのは何度目だ。


今度こそ大丈夫。


感情なんてどうやって把握できるだ?

と言われるかもしれない。


まあ、そうだよね。

カッとなってつい、なんて思えるのは、ついの後。

だいたい手遅れ。


今カッとなってますね、などと思えたら、それはカッとなってない時だ。


今カッとなっている自覚がない。

果て其れは冷静なのか自覚がないだけか。

俺の場合は判る。




よし。

テンパってない。

表情筋が動く。


つまりそれ。


感情的になると無表情になる。

表情を意識できなくなる。

動かせなくなる。


だから、わかる。




【聖都南端/青龍の軍営内演習場/青龍の貴族、正面/魔女っ娘】


わたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




【国際連合統治軍第13集積地/射撃場/軍政部隊後方見学席/青龍の貴族】


俺は魔女っ子を罰したいわけじゃない。

神父はぜひ罰したいが。


魔女っ子は悪いことをしたわけじゃやない。

神父は存在自体で悪いが。


善悪適否の問題ではない。

神父が生きていてはいけないのと同じく、理屈など必要ない。


賞罰善悪美醜理非まったく関係なく、結論が一つだけ。




絶対に、同じことを、繰り返させない。

魔女っ子に、絶対に、危険を冒させてはならない。


俺がいようがいまいが、誰が原因であろうがなかろうが。



――――――――――いついかなる時でも永続的に――――――――――




為すべきことはソレ。

それは特別なことじゃない。

大人が子供にすべきこと。


俺にできないわけがない。



友達には、気分屋だといわれる。

三佐以外の上官には、取り澄ましていると評される。

女が相手の時は、気取り屋だと怒られる。


もちろん、違う。



気心知れた親しい相手に、遠慮したりなんかしない。

だから、お互いに気分が向くときに付き合う、それだけ。


財布、いやクレジットカード、もとい上司に対する礼儀。

愛想よくしていると、余計な仕事を断るときに気の毒すぎる。


深く近く、浅く遠く、長く短いのが付き合いのコツ。

わざとと伝わるように、らしく気取って見せるのは最適解。



そんな俺の自己把握。


諦観が信条の客観主義者(オブジェクティビスト)だ。

シニシズム(冷笑主義)も混じっているかもしれないが。


嫌なことは忘れる。

出来ないことは気にしない。

義務や責任は他人のモノ。



つまりクールなのである。

本当だ。

マジ。


クールに笑顔。

よし。


シスターズを笑顔で安堵させてから、魔女っ子に向き直る。


完璧。



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