一殺多生
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
本作では一人称で描写される登場人物の固有名詞を使いません。
他の登場人物も複数ある役職名やアダナ等で呼ばれます。
文節の大半は一人称となりそれが次々と入れ替わります。
よって、以下の特徴で誰視点であるのか、ご確認ください。
・一人称部分の視点変更時には一行目を【】で区切ります。
・【語る人間の居場所/誰視点】とします。
・「誰視点か」の部分は「青龍の貴族」「魔女っ娘」など代表的な呼称(役職名やアダナ)を入れます。
・次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【登場人物/三人称】
地球側呼称《神父》
現地側呼称《道化》
?歳/男性
:合衆国海兵隊少尉。国連軍軍政監察官。カトリック神父で解放の神学を奉じる異端寄り聖職者。野戦戦闘服か制服にサングラス。ときどき咥えるコーンパイプや葉巻はネタ。異世界住民に接触する国連軍関係者は、地球産化学物質の影響を与えないために皆非喫煙者
地球側呼称《曹長》
現地側呼称《騎士長》
?歳/男性
:国際連合軍/陸上自衛隊曹長。主人公の「俺」が困ったら、困ってなくても、まず頼る相手。
『佐藤』『芝』
:主人公『俺』の部下。選抜歩兵(物語世界での選抜射手)であり、異世界転移後の実戦経験者。曹長に次ぐ軍政部隊戦闘の中心
【用語】
『アムネスティ』:日本の異世界転移後、国連より早く再建された国際的な人権団体(NGO)。売春合法化の実地試験を兼ねて、日本で育成した娼婦を雇用し異世界大陸国連統治下で営業している。なおアムネスティの「売春合法化論」は現実に準拠しており小説上の設定ではない。ただし、支部ごとの独自性が強い団体なので全体の総意と言えるかは微妙。
(詳細は第28部 「アムネスティ」 より)
通り魔事件が発生しなくなりました。
「馬鹿を言うな」
「それは人が死んでないからだ」
「運良く死なない未遂は毎週恒例」
「死人がでなければテロじゃない」
「運悪く人が死ねば通り魔だ」
「社会の放棄を形式でごまかしてるだけか」
「官僚の頭の中ではな」
「間抜けが官僚に騙されよって」
「日本で殺傷力のある武器は手に入らない」
「手に入ったら毎週乱射と爆破テロが起こるのか」
「戦果が上がればそれではすまん」
「潜在中のテロリストが顕在化する」
「アメリカより悪い」
「犠牲が出ていないから、社会が治らないともいえる」
「解熱剤を飲むから風邪が治らない」
「熱でウィルスを殺そうとしているのに、その邪魔をするから長引いて悪化する」
「紛争を戦争にして短期間に大量の犠牲を出せば恒久的和平がなる」
「合衆国のシンクタンクがいっておったな」
「今は無き世界のことはほっておけ」
「今の国連軍の基本思想ではないか」
「では、審議を元に戻すぞ」
「まて、たしかに、今年になってから、ないな」
「「「「「「「「「「え」」」」」」」」」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?
「何が起きた」
「異世界転移くらいしか起きてないが」
「因果関係があるか?」
「閉塞した状況からの解放感、では」
「何一つ不自由なく、完全に世界が変わったわけだからな」
「転移前と比べれば」
「金融政策の失敗、税制変更の失敗、貿易政策の失敗、キリがない」
「大蔵省の失敗、でまとめておけ」
「その破綻から切り離された、と言えなくもない」
「財務省がへばりついているが」
「解放、ではなく、開放感な」
≪衆議院厚生労働員会議事録より抜粋≫
【国際連合統治軍第13集積地/射撃場/軍政部隊後方見学席/青龍の貴族】
俺は遠くを見て感じた。
広く広く眼前に広がる大海原。
朝陽がふりそそぎ波がきらめく。
海風は硝煙を掃き清め、途切れた銃声が海鳥の声に入れ替わる。
ああ。
――――――――――鳥になりたい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無理か。
またの機会に。
では今は。
俺がすべき正しい反応はなんだ?
AA-12とはね。
マニアック過ぎてフツー知らないと思われ。
※詳細は第282話〈AA-12〉参照
神父が自慢げに取り出したるマイサンは、ものすごく玩具っぽい、非常に威圧感がなく、それがマイサンでいいのかどうか言っていいのか悪いのか。
だが見かけに反して凶悪なんだこれ。
自衛隊とは無関係なコイツは、大量に異世界に持ち込まれている。
事務処理任務をしていた時に、書類でも実物でも見ていた。
軍政官訓練キャンプでは異世界で使われている、地球側の携行兵器を一通り体験させられている。
それ以前に、海兵隊の知人に確認をとったのは、外見が本物らしくなかったからだ。
そして驚く謎スペック。
普通の銃器とまるで違う想定環境。
民間人大量殺戮兵器。
それがココ、俺の前の前で高々と。
さすがに、見なかったことには出来ん。
危ない、俺が。
死ぬ。
社会的にではなく、医学的に。
非軍隊であるところの自衛隊の将校に準ずる準民間人な俺は、つまり民間人その物ではないので、軍人なのだが。
四捨五入で巻き込まれること請け合い。
「Amen!ヒャッハー!シュハキマセリ!」
その主は来なくてもいいと思うんだ。
すくなくとも現代のバチカンには怒られると思われ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・破門上等な、解放の神学系神父にはきかないか。
むしろAK-47よりはウケがいいかもしれない。
ランドクルーザーに十字架描いて、AK&RPG抱え込むのが解放の神学。
左右問わず貧困と不平等に向けて、主に時の政府に向かって突撃する方々。
いや、まあ、目の前で起きている問題の責任者を討とうとすれば、そうなるけどね。
いや、討つ、じゃなくて、撃つ。
なお政府が倒れて権力者全員を火炙りにして世界が良くならないなら?
またその時の政府を倒して関係者を火炙りにする模様。
繰り返してればそのうち社会が良くなるそうですよ?
ソレ選挙で殺って、というのは民主国家でないといえないしね。
そんなノリ、平常運転で哄笑だか高唱する、神父。
さすがに集まった注目。
隊員たちはあっけにとられて、神父を見ている。
皆、曹長さえもM-14の点検動作、その真ん中で停止。
佐藤と芝だけが周辺警戒をしているのは、見事に隊員としての義務を果たしているのか、うまく混乱から逃げたのか。
わかる。
気持ちはよーく判ります。
俺のところ、だけじゃないが、主戦兵器はM-14だぞ。
800m圏内の人間サイズを7.62mm弾で制圧。
1km圏内の人間サイズを車載兵器12・7mm砲弾で制圧。
ゴーレムや竜はヘリの対地支援攻撃か砲撃。
あるいは100m圏内でM72LAW。
ここらあたりが異世界侵攻中の国際連合軍小部隊戦闘ドクトリン。
本当は最小単位が小隊だから、携行のM240B機関銃で1000m圏内支援射撃が入るんだけどね。
うち人数が少ないので車載状態。
拳銃は正直、あまり使わない。
まあ元カノにつき合わされて45口径屋内戦闘も付き添ったが。
あくまでも、俺は使ってないけれど。
M1911A1での近接戦闘なんて想定外。
普通の国連軍は建物を街ごと吹き飛ばすか、ガスを使って屋外戦闘に切り替える。
もちろん俺は屋内戦闘なんてしていない。
弾倉交換係として随伴しただけ。
神殿で野盗狩りをしたのは、まあ、元カノの趣味というか、軍政上の配慮というか、なんとなく流れで。
※第93話 〈Turkey Shot.〉
~
第94話〈一期一会/KILL Them ALL!〉
まで参照
勢いって怖いよね。
あれで隊員が負傷でもした日には軍法会議不可避。
異世界の民間人類似対象を傷つけてはならない。
策戦上の都合が合う限り。
つまり、村人を助けるために地球人/現地協力者を危険にさらすのは厳禁。
人道に対する罪確定。
偶然の予期しない結果としてたまたま任務遂行の障害物を殲滅したら全く無関係な村人が野盗から自力で逃れ出ただけなのだが、誤解をかう恐れは常にある。
ばれなくてよかったよかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・後で蒸し返されないとは言わないが。
その時は、余暇を利用した|カモ撃ち《Turkey Shot》でした、と言い訳しよう。
趣味のドラゴンハントより、よっぽど健全に聴こえると思われ。
そんな趣味のハンティングにならAA12も使えるかもしれない。
・・・・・・・・・・・・・・無理。
発射速度高すぎ。
トリガーを絞った瞬間、ワンボックス全弾発射で。
あれじゃ全弾一目標に集弾するだけだ。
12ゲージショットシェル20発が一点集中の極点オーバーキル。
ミンチを作るならもっと効率が良い方法がある。
しかも一丁って。
別名、弾の無駄。
神父はドヤ顔でAA-12構えた。
ショットガンなんか、どこで使う気だ。
射程短いし、数はねーし。
戦争は数だよ?
戦闘は部隊だよ?
戦闘隊形上、神父は中央後方。
監察官だからね。
そんなところで ショットシェル?
バックショット(味方の背中)必殺必中必至。
「アッテンション!!!!!!!!!!」
進み出る神父。
わざわざみんなの前で初弾装填。
撃つ気満々アピール。
試射ならいいけどな。
試射で済むならいい。
試射から持ち歩く、な、これ。
つまり。
軍隊ではよくあること、が必要だ。
みんなの気持ちが一つになった。
後ろから撃たれるのは嫌だよね。
つまり、真実は一つ。
さ。
フレンドリーファイアのお時間です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
俺に集まる部下の注目。
俺の番か?
え、俺が撃つの?
期待されてるのか俺??
期待されないよう気を付けて生きてきたつもりだったのに。
しょーがないな~。
これ以上ないくらいにわかりやすく、俺はガバメントを構えなおし
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?
みんなみてるなかたまって。
三佐と違って警告する俺、優しいよね。
殺すぞ♪
なんて言わない女も多いのに。
女、も、ね。
身振り一つで取り押さえられて、後頭部を抜かれる。
そこまで流れ作業。呼び出し頭に脚を撃ち、そのまま手術室ってのもあるか。
もちろん止血はされる。
生体からしか得られない情報も多いからな。
俺は得られたくないが。
もちろん得たくもない。
得たいのは三佐配下、自由を手に入れた、お医者さん。
元カノなら、最初に指を2~3本斬り落としてから命令。
五本落とすのではなく、対比できる指を残すのがコツ。
国家戦略予備軍の習慣、らしい。
意図的に傷付ける、事故でも手違いでもなく、正当性など全くないように。
理不尽な暴力で、永久に取り返しがつかない、傷を負わせられたと。
そのように、明確に示して解ってもらう。
すると
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・絶対に逆らえなくなる、人間なら。
元カノ配下の副長。
褐色の老人が言っていた
――――――――――世界は違えど、同じ人間でしたよ、まだ。
まだって、なーに?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・相互理解を全力否定。
殺すぞ、なんて言わない。
そういう世界の住民たち。
俺とは違う、異世界住民。
「Show Me My Son!」
腰をふるな子どもの前でシモネタ禁止だ!!!!!!!!!!
俺は手に持ったガバメントを抑えた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無意識に撃つところ、か?
ヤバいヤバい。
なんかなにかになじんでる。
Cool Down.
Cool Down.
Cool Down.
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――さてと。
止めても良いのよ?
俺みたいな素人が銃を構えるなんて危ないと思いませんか。
プロフェッショナルの下士官としては気になるところですよね。
曹長、直立不動はどうかと思う。
親愛なる部下の自衛隊員諸君、まっすぐな目でこちらを見ないでほしい。
俺は初弾装填。
まあ、殺ってもいいんだが。
まだ誰も動かない。
みんな無表情。
俺も無表情。
人を殺すのに、理由って必要だったっけ?
怪しい凶器で国際連合統治軍の活動を阻害する可能性が否定出来ない
――――――――――理由を問わずに平和に対する罪。
子供の着替えを覗こうと考えた
――――――――――思想犯罪、人道に対する罪確定。
誰も止めない理由はそれか。
神父が自殺志願者そのものの目つき。
俺の手にあるガバメントを指差した。
「HAHAHA!!!!!!!!!!Your Son??????????」
はい、シスターズ&Colorfulは聴いちゃいけません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ってか、なにを見つめてるのかな?
ガバメント?
手幅で測らない!!!!!!!!!!
魔法翻訳は何を伝えてやがる??????????
「Girls?
M1911:216mm!
Your fucking Guy!!
ダイジョーブダイジョーブ?」
Colorfulを見るシスターズ。
シスターズに頷くColorful。
俺に頷くシスターズ&Colorful
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい、魔法翻訳。
「Brother!Brother?愛があれば年の差なんてNo Problem!2人、シット!一人二人、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・当面9人が幸せならそれでWith My pleasure???」
目頭を抑えた神父はAA-12を天に掲げて大演説。
シスターズ&Colorfulに。
「OK!Let’s Try!!doctor’s orders to Stopアリアリ!Try!Retry!!Repeat!!!」
おいこら。
【聖都南端/青龍の軍営内演習場/青龍の貴族、左側/お嬢】
あらあら。
わたくしは、道化が殺されるところを見ておりました。
ご領主様の御手打ち。
撃ち、でしたでしょうか?
ねえ様が、完全に剣を抜いておりましたもの。
ご領主様の癇に触るのも、無理からぬこと。
閨の戯言。
それが赦されるのは、ご領主様だけですわ。
死の間際まで踏み込んでくる道化の姿勢、大嫌いとは言いませんけれど。
やり過ぎましたわね。
わたくし、わたくしたちに向けられた、道化の下世話な言葉。
そのどれかが、もしかしたら重なりが、不興をかったのですね。
珍しいことでもありません。
貴族、騎士に限らずに。
商家の主が不始末を片付ける。
用心棒たちが統制をとる。
人足手代の常日頃。
人が殺されます。
わたくしは、その痕を見かけることの方が多いですわね。
他の商家の娘なら、普段出入りしないところ。
わたくしは昔から、立ち入っておりますから。
でも、何度かその場を見たことはございます。
ですから、ご領主様の仕草は、とても特別と判りますわ。
人に抑えさせるか、抑えさせたうえで、手練れに命じて殺させますものね。
それに皆、ただ居合せて無関係なモノまで、殺気立っているもの。
広場で行われる処刑だって、縁もなしに興奮する者ばかり。
それが、耳記した範囲での、普通です
ご領主様は殺気もありません。
ただ、わたくしは感じましたわ。
ねえ様、あの娘も。
不快感。
竜殺し。
ご領主様、お手持ちの、銃。
筒先を、敢えてどこにも向けずに構えてらした。
故に。
自然に手と共に上がります。
筒先が道化に向けて。
それは、ほんの一瞬。
わたくしは後から気が付きました。
その時は、ただ、道化が殺されると感じただけ。
だから、息が止まってしまいました。
あの娘が、銃に跳び付いてしまうなんて。
しがみつき、胸に抱え、筒先を抱え込んで。




