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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第八章「天獄に一番近いここ」

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魔法直訳

『魔法翻訳』

:地球人と異世界人の間「のみ」で発生する自動翻訳機能。

聞くことと読むことに対して認識内部で互いの意図認識が瞬時に置換される。互いの文化に類似概念が無い場合や固有名詞に関しては単純な音で認識されるのみ。

置換も言葉で表現している範囲の表層的なモノであり、背景となる概念が伝わることはない。


だがこ、の効果のおかげで転移してきた地球人と異世界人は意志疎通をはかることができる。ただしその翻訳は感覚的なモノであり、聴く者や読む者、話す者や書く者が抱く心象や感情、気分の影響を強く受ける。



神は人が乗り越えることができない試練を与えない。


――――――――――新約聖書の共同著者サウロの言葉―――――――――


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・の要約の和訳の一つ。


いえ、原文は何語でも長くて(くど)くて注釈がないとわかりにくいので。

概ねこんな感じで広く日本では知られている言葉。

日本では。


それはあたかも「神が人の成長を願って苦難を与えている」そんな思いを抱かせる。

そんなモノ与えるな、って声もあるが。


成長したいなんて頼んでないんですが神がオマエの都合なんか知るかと言われたらさすがに言い返せない。





サウロは「ローマ市民権を持つユダヤ人」であったことを考えれば、原典は帝国公用語であるラテン語だろう。


ただし新約聖書自体は古代ギリシャ語が原典、とされている。

が、ほぼ同時期にラテン語を含む複数言語版が出ているので訳が分からない。


そもそも原文はローマ帝国の一部であるコリントス(現代のギリシャ)信徒へあてた手紙(布告)。


他民族への伝道に熱心だったパウロはギリシャ語を話せたとされる

やっぱり直筆代筆問わず古代ギリシャ語であったのかもしれない。


故に「いろいろな翻訳」が考えられる。

和訳はおそらく、一版原典から遠いと思われるがいかがだろうか?

例えば、原文を機械的に訳すと。





神は人が耐えることができない誘惑しか与えない。


――――――――――新約聖書の共同著者サウロの言葉―――――――――


それはあたかも「誘惑に負けたのは神のせいではなくお前が悪い」そんな思いを抱かせる。

ごめんなさい、としか言えないほどもっともだ。


囮捜査をしている警察官がいいそうだ。


信徒同士で殺し合っている連中にぶつけた言葉だからね。

仕方がないね。




本来の語感に近いのは、さて、どちらか。

想像にお任せする。


なおサウロは「心ならずも悪をなしてしまう自分に生涯苦しんだ人」で在ったっとか無かったとか。






【国際連合統治軍第13集積地/射撃場/軍政部隊後方見学席/青龍の貴族】


「HEY!Me――――――――――n!!!」


俺の特技。

意図的に死角を造る程度の能力。



「大切なことなのでRepeat!!!!!!!!!!」


さ、試射もそろそろ終わりだな。

弾倉一つ空にした隊員たちは、素早く交換。


また撃ち始めるわけではないけれど、常に実包入りの弾倉は装着すべし。

これは戦地の基本ルール。



引き金を引けば撃てるように、初弾装填で。

まあ、安全装置はかけているけれど。


「あの、道化さんが何か仰っていますが?」


気配りのできる魔女っ子。

見ちゃいけません。


「Anĝelo♪Anĝelo♪」


また妙な言葉を。

ん?

魔女っ子が俺を見あげている。

それはいつもだが、少し恥ずかしそうか?



「Nenia tento vin prenis,

krom lau~ homa forto;

sed fidela estas Dio」


何語だ?


「えーと、Dio()さまは誠実なので人が己で堪えられる誘惑しかあたえません」


そう言った魔女っ子が、俺を見る目。

いつもの親愛感とは違う、微妙な色が浮かんでいる。


なになに。

辛そうな恥ずかしがってるような我慢しているような嬉しそうな潤んだ眼と染まった頬は?


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・意地悪なんですね。

Dio()さまってどなたですか?

わひゃ」


俺は魔女っ子を撫で転がす。


はい。

相手しちゃいけません。



「Esperanto,YO!」


エスペラント語って。

んな、マニアックな人工言語を。

魔法翻訳はスゲーな。

ともあれ。

俺は聞き流して、魔女っ子を撫でるのに専念。


試射が終わればお出掛けだからね。

終ったかな?


あ、まだ半分か

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、できるだけ早くね。


曹長の合図で、残りの半数がM-14を構えた。


射撃は半数ずつ交互に行う。

銃の半分は空けておく。


フルオート射撃の場合も、発射開始タイミングをずらす。

弾倉交換と初弾装填のインターバルを被らせないように。


まあ、フルオートだと2~3秒で弾倉は空になる。

だから、できるだけ、だけれども。


常に誰かが、すぐに、撃てるようにしておく。

基本動作であって、例外もあるけれど、ほとんどない。



大抵の場合、インターバルを埋めるのは選抜射手がやる。


選抜射手は弾幕担当じゃないからね。

弾幕が途切れた時も、手が空いている確率が高い。

狭間に接近できる敵は弾幕を抜けてきた相手。

少数しか考えられない。


狙い撃ち担当なのだが狙撃専用銃ではなく、一般兵と同じフルオート小銃を装備している。

だからある程度の制圧射撃も可能。


銃種を共通させている、ソレが理由。




しかし、選抜射手が常に生きているとは限らない。

だからこそ、部隊単位で隙を埋めてさらに選抜射手でカバー。

石橋をたたいて壊すのが、現代戦。


お?

魔女っ子が失神中?

俺は体を支えて、のぞき込んだ。




【聖都南端/青龍の軍営内演習場/青龍の貴族、右側/魔女っ子】


は!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~ご主人様!!!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・離れてしまわれました。

わたしは、しっかりと支えます。

自分の肢体を。


ご主人様に抱かれている時は、ふわふわしてとても

~~~~~~~~~~~~~~~~~~うぅ反省しなきゃ!!!!!


お手を煩わせるなんて!!!!!!!!!!!!!!!!


「天使ちゃん、大丈夫かい?」


道化さんが気遣ってくださいます。

ことばだけは、いつになく真面目なのですが。

ふだんと違う言い回しを使うときだけ、人が変ったよう。

でも。

でも。

でも。


ご主人様は?

道化さんに、そっぽを向いています。


どうしましょう?

わたしは、ご主人様の後ろ、ねえ様をチラリと見あげます。


耳だけこちらに向けて

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・知らないふり。


うぅ~。

相手にするな、ってことですね。


でもでもでも。


道化さんが一生懸命、笑わせようとなさっていますし。

意味は解りませんけれど。


眼を合わせないようにするのも、凄く気まずいです。


でも、ご主人様も無視されてますし、習うべきなのでしょうね。

でも、ご主人様が相手にされない分、わたしが伺うべきなのかも。

でも、ご主人様は、わたしがお相手したら、どう感じられるのでしょうか。



その。

あの。

でも。


怒って、下さらないでしょうか。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~いけませんいけませんそんな下心を!!!!




【国際連合統治軍第13集積地/射撃場/軍政部隊後方見学席/青龍の貴族】


何か言いたそうにしているシスターズのアピールは可愛い。


俺の背中に指で<の>の字を書く。

俺の服の裾を握りなおしてチラチラ見あげる。

俺の脚に背中を預けてそっぽを向きながらゆらゆら揺らす。


何か言わせようとしている神父のアピールがうざい。


決め顔、のつもりなのか変顔なのかを繰り返してローテーション。

コミックにしかないポージングをキメた膝がプルプル震えている。

陽光を計算して艶のある肌と白い歯をこちらに向けて光らせてる。


いかん。

あれを相手にしては、いかん。



「「ふぁ♪わぁ♪わぁ♪わぁん♪」」


ちびっこ2人の頭をかいぐりながら気をそらす。


「Oh!ナマモノGUNをReload Now!!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし。


隊員、たちの射撃は完璧である。

交代した後も皆、だいたいそろっている。


各個射撃は禁止。

駐屯地だから、って訳じゃない。


むしろ戦場でこそ必須。


だから駐屯地でも例外を設けない。

現代の軍隊共通原則。


正規軍同士の戦争が可能性としてすらなくなった現代。

マニアの妄想を除けば不正規戦やら低烈度紛争しか考えられない。



撃つ工夫より、撃たせぬ工夫。


いつでも撃てる。

絶対に撃たせない。


だったんだけどね。

異世界転移前はね。



「うっていいのはうたれたがってる相手だけだ!OK?Girls??」

「「「「「「「「え?」」」」」」」」


っーか。

国連軍の指導者。

先祖代々軍人で建国以来連続戦争国家の大統領。

しかも女。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・手加減なんか考える訳がない。



単に最大多数を全力殺傷するために。

全ての配慮はそのために。



「Don’t shoot!Don’t shoot!Don’t shoot!Don’t shoot!Don’t shoot!」


よくあることだよなぁ?


紛れ込んだ民間人を撃ったり、友軍相撃ちをしたり。

戦場ではよくあることよくあること。


が、それはオマケ。

考慮しなくてもいいこと。



そもそも異世界の戦場に、民間人なんかいないからね。

ってーか、人間が味方以外いないからね。


射線上の障害物対策しか考えないのは仕方がないね。

対策っていうのは、アレだけどね。


敵ではない相手を撃ったらどうすればいいか?

敵のことはもっと撃てばいい。


生きている障害物に10発撃ちこめば、生きている敵に100発撃ちこめ。


わ~~~~~~~~~~アメリカン。

物量は正義。



「アメリカンアフリカンですYO~」


いや、アメリカ系アフリカ人ってな

・・・・・・・・・・・・・・・・・いかんいかん。



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