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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第二章「東征/魔法戦争」

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32/1003

ゴルディアスの結び目



主に少し前の会話。

最初に、少し先の会話。

最後に、はるか先の想い。




ハーフエルフ?

そうね。主権者としての意見は、親愛なる親父殿に一任。


家族っていうことは抜きにして、政治家として信用してるのよ。


だから任せていい範囲ね。

で、どうなるか、訊きたいわけか。


ふむふむ、そうなんだ?そういう存在なのね。


国籍法は血統主義だけど・・・・・・・・・・・・・・・・父なら、認めるわね。


法治原理主義者ってのもあるけど、党利党略、自分の選挙。

理想と公益と私欲が一直線なの。


法律通りだから国会対策が楽どころか不要。


「新しい事を始める」

時は

「古いルールや建て前を利用して新しく見せない」

のが大事なのよね。


しかも、野党が反対するに決まってるし。


それなら、かれらは与党支持になるでしょう?

ハーフエルフと両親に友人、うまく行けば親戚が組織票!

極少数派救済コストは雀の涙、波及させれば大票田。


与党連合は議席数で圧倒的だけど、それは小選挙区の錯覚でね。

基礎票では野党と拮抗しているから少しでも固定票を上積みしたいのよ。


あっちで2票、こっちで6票、集めてしまえば三千万票。

必ず投票に行く人たちが一番大切ね。


国会議員なら、飛びつかないわけがないわ。


ん?血統主義っていうのはね、貴女の子供の父親がウチの元軍政司令官だったら、貴女も子供も我が同胞・・・・・・・・・走っちゃ危ないわよ~~~~~?


《別な季節のお話》




【護衛艦格納庫壁際/青龍の貴族正面/LCAC乗船前】


あたしは青龍の貴族に『二人きりで話したいことがある』と告げた。

もちろん、皆が見ている前でだ。


青龍の貴族は無言で、『ついて来い』とすら言わずここに来た。

あたしはついてい行く。他のみなは何も言わなかった。

護衛すらつけない。


もちろん、そもそもが龍の腹の中ということはあるだろうが。

青龍の腹の中、密談が秘密になるか怪しい。

対応を間違えれば、死ぬ。

とりあえず殺されていない。それを喜ぶべきだろう。

今のところは。


「あなたが預かった、頭目の子」


ホント、ざっぱな話し方が、我ながら信じられない。


青龍の貴族、その側。

あたしも命の危険は感じているんだけど。

疑わしいかな、我ながら。

もっともっと注意しないと。


まあ、先に死にそうな、あの子の話。

一応知り合いの、初めて出会ったお子様だから、『できるだけ』はしてあげようかなってはなし。

あの子の母親からの私信を届ける、だけ。


「ハーフエルフよ」




【護衛艦格納庫壁より/エルフ正面/LCAC乗船前】


俺は少し驚き、更に納得。


ほうほう。

ハーフエルフ。

この世界では人間とエルフに子供が出来る訳だ。

ファンタジーの定番だな。

子供が出来るってことは、遺伝子が相当に近いのか。国会議員達がまた頭を抱えるな。


ま、近い将来の話だが、俺には関係ない。

第一、異世界と地球で人類の遺伝子が同じかどうかすら不明だ。

差異が有ろうが無かろうが、法的な扱いがどう転ぼうが、俺には無関係。


俺はもうすぐニートになるんだし。


さておき。

盗賊ギルドの頭目の子供がハーフエルフ。


翻訳する。


港を実質的に支配する有力者の旦那がエルフって事だな。

エルフは国家組織を持たない。

つまり、第三勢力が関与する話ではない。


・・・・・・・・・・・・・・・任務に関係無い、か。


って事は、エルフっ子の個人的な話か。




【護衛艦格納庫壁際/青龍の貴族正面/LCAC乗船前】


あたしは繰り返した。


「あの子はハーフエルフ」


視線で問われる。

だからなんだ、と。


「あの子を親元に返せば殺される。母親である頭目も」


だから、これは知らせるだけ。青龍が知らないであろう事を、耳に入れる。

それだけ。

盗賊ギルドの頭目を青龍に売ったのは、あたし。

ならば、頭目に関係する話は知らせるべきよね。

それは、あの母子の為になるし・・・・・・いや、あたしにとってはついでだけど。




【護衛艦格納庫/前部扉前/LCAC乗船前】


わたくし、あの娘は扉の前。重く分厚い鉄の扉。


「あのーあのー」


隙間らしきモノはありません。


「あうあうあう」


ねえ様と、なんの話かしら。

もちろん、盗み聞きなんて、はしたないことは致しませんけど。


「ね?ね?まっ」

「お黙りなさい」

ヒッ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで、あの娘まで、おびえ、いえ、驚いているのかしら

この子と遊んで、いえ、遊ばれていましたのに。

この子、つまりは盗賊ギルド頭目の子供。


あの娘の背中に登ったり、髪を引っ張ったり。

元気でよい子。


ただし、力加減がわからないようね。

一人っ子かしら。


わたくしが、教えてあげましょう。

特別に。


・・・・・・・・・・・・なぜ、あの娘の後ろに隠れますか?




【護衛艦格納庫壁際/青龍の貴族正面/LCAC乗船前】


沈黙。

あたしは青龍の貴族の言葉を待つ。


「エルフと人間の間に産まれた、ということか?」


そこから?

とはいえ、あたしは肯定。


ハーフエルフはそういうモノ。人間とエルフ以外の組み合わせは、ない。


というか、青龍はエルフを知っていてもハーフエルフは知らなかった、か?

なんて言えばいいのかな。

うーん。


「エルフが人間の子を産めるのか?いや、逆か」

「あたしだって産めるわよ」


あ。




【護衛艦格納庫壁より/エルフ正面/LCAC乗船前】


俺は首をかしげるしかない。

なるほど知っての通りのハーフエルフだった。そこまでは問題ない。だがそこから先が大問題。


なんで殺されるんんだ。


どんな経路でその結論に至る。


宗教的禁忌?魔法的呪い?生物学的な反応?


関与の可否やいかに?

如何に?

いかに?

あれ?

ん?


さあ、聞こうか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続きは?

エルフっ子の顔を覗き込んだ。

フリーズしているエルフっ子。



動いた、というか、顔色が?

熱でもあるのか。




【護衛艦格納庫壁際/青龍の貴族正面/LCAC乗船前】


あたしは思わず下がりそうになる、が、こらえた。

背後は壁。

醜態は見せられない。


「あの子は危険なのよ!バレたら命がない!」


青龍の貴族はキョトンとしている。

稀な表情ね。

次は叫ばないようにゆっくりと口を開く。


「ハーフエルフは殺される」


例外は例によって奴隷。


ただし鑑札を持てば一人で出歩けるエルフより弱い。

持ち主が居なければ、すぐに殺される。


母親が持ち主を装うのは立場から見て危険。

あの年頃では奴隷商人以外が持ち主というのは不自然だから。


あの子が生き続ける事を認める場所はない。


だから、郊外の農場に閉じ込めていたのだろう。

あの子についていた(青龍に取り押さえられた)、おそらくは頭目の配下が事情を知っていたとは思えない。


「エルフとは違うのよ」


まったくね。なぜ、違うのか。


「どう違う?」

わかって、ない。

「全然違うわ」


ハーフエルフは昔から嫌われていた。帝国以前から。エルフにも人にも。




【護衛艦格納庫壁より/エルフ正面/LCAC乗船前】


俺は頭目の子供をさっきまでみていたわけだが。


ただの子供に見えたがな?

間抜けにも馬鹿にも見えず、健康そうで、動きは俊敏でも愚鈍でもなく。

まあ、今のところは。


妙に聞き分けがよく、母親の言うとおりに俺に頼るが、緊張を解かないのは心配だ。


そういえば、耳がとがってたか。


スカーフで覆っていたのは隠していたのかな?


ヘリから甲板、ほどなく、格納庫。

寒いだけかと思ったが。


単に『嫌われてる』だけだとあいまいすぎて対処方法が限られるな。

文化的禁忌、歴史的な経緯、政策や体質、呪文や魔法や法律などなど原因がわかれば選択肢があるなし含めてわかるんだが。


「ハーフエルフは」


エルフっ子の説明。

エルフと人間の間に生まれる種族。

成長も寿命も能力も人間と同じようなもの。

違いは、容姿がエルフに近いこと。


なるほどなるほど。

概ね人並み。

容姿だけエルフ並み。


つまり、美男美女美少女美少年、に近いわけだろ。

なにがいけない?


――――――――――――――――――――――――――――――あれ、か?




【護衛艦格納庫壁際/青龍の貴族正面/LCAC乗船前】


あたしは続けようとした。

青龍の貴族が手を上げる。


「確認だ」


なによ?


「お前たちと私の感覚を確かめる」


感覚?

は?それ何?なぜ今?

え???????


壁から離され中央へ。

上から、下から、前後左右。

なぜか、あたしの周りをまわる青龍の貴族。


見られてる見られてる!!!!!!!!!!

近い近い!!!!!!!!!!

青龍、の、貴族、の吐息!


耳に触れられて力が抜けた。


なんで??

崩れ落ちる所を支えられた、事に気がついたのは後。それ、以上の、事態に至ったので 。


「おまえは美しいが、それは世界中がそう感じるか?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――な、な、な、にょ!!!!!!!!!!




【護衛艦格納庫壁より/エルフ正面/LCAC乗船前】


俺はエルフっ子しかよく知っているエルフがいない。

俺の、地球人の感覚で言えば、エルフっ子は絶世の美少女だろう。

地球文化のファンタジーにおけるお約束『エルフは美しい』。

だが、ここは異世界。


異世界一般の美醜好悪の感覚が地球と違う可能性はないか?


例えばエルフっ子。


長い銀髪。しなやかで細工と自然物の良さを凝縮したような美しさ。

鼻梁は柔らかな曲線で肌は滑らかに白い。

メリハリのあるスタイルは機敏な仕草と併せて魅力的だ。


一番、人と異なる場所。つまり耳。

違和感、はない、な。

特殊メイクやCGめいた不自然さもない。

感触も普通だ 。


結論。エルフは美しい。


だが。

この感想が感情が地球人固有のものだったら?


「ハーフエルフの容姿がエルフに近い」


という意味が変わるのかもしれない。つまり殺される原因になるほどに。




【護衛艦格納庫壁際/青龍の貴族正面/LCAC乗船前】


あたしは、マヌケ面をさらしていただろう。

反射的に顔を伏せる。

ゆっくりと、静かに、気が付かれないように深呼吸。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何が言いたいの」


落ち着かない。

というか、というか、というか、力が抜けたときに支えられたまま、青龍の貴族の胸元で視界が・・・・・・・・・・・・・・・。


「ふむ」


間を置かないでよ!!


「つまりな」


つまり、


「おまえを見れば魅力的に思い、惹かれるだろう」


!!!!!!!!!!


「それは、私だけか?」


――――――――――。


「我々が訪れる前に、同じ様に言われた事はないか?」


!!!!!!!!!!


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あるわ。でもエルフが容姿を褒められるのはよくあるし!相手にしたことは一度もない!まったくないけど!!!」


なに、頷いてるのよ!


「それは良かった」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!

とっさに青龍の貴族を突き飛ばすところだった。

が、何とか、腕をほどくにとどめ、手を握られ、いや、支えられて、壁際に。

壁に寄りかかる。




【護衛艦格納庫壁より/エルフ正面/LCAC乗船前】


勘違いじゃなくて良かった。


やはり、そうか。


元カノの副長を見ても目の前のエルフっ子と同じレベルの美しさ。

つまりエルフ一般は高いレベルの容姿を持つ。


この認識は他世界共通だ。

迫害より酷い帝国時代に、後ろ盾のない相手にお世辞が出る訳がないからな。


つまりエルフは美しい。

容姿が近いハーフエルフも美しい、に近い。

この異世界においても。


あれ?


振り出しに戻る。


なら、何が問題なんだ?なぜハーフエルフは殺される?

俺が関与する余地があるのかないのか?




【護衛艦格納庫壁際/青龍の貴族正面/LCAC乗船前】


青龍の貴族は考えこんでいる。

どういう状況よ?


「人並みに加えて、美しい」



「何が問題だ?」


なぜ、ハーフエルフは殺される?人とエルフがなぜ殺す?

青龍の貴族は何時も通り、単純な問いかけ。


やっと、話が戻った!でも。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――わからない。



違う。

考えたことなんか、ない。

青龍の貴族に問われるまで、ある種族が憎まれ殺されることを『そういうものだ』とだけ思っていた。


あたしは、知らない。


なぜ、ハーフエルフが嫌われているのか?

帝国がエルフを憎むのはなぜか?


青龍の貴族が『なぜ』を問うのは何となくわかる。

青龍の考え方に慣れてきたのだろうけど、あたしたちとあまりに異質だから、だ。

異質に過ぎて、確認しないと、意識せずに相手を壊してしまう。


・・・・・・・・・気を使われてるのか。

ペットでも見ている感覚か、足元にアリを見つけた気分か、その理由が何であれ。


だけど。

だけど。

あたしは答えを知らない。

知ろうともしなかった。


なにやって来たんだろう。


200年も大陸をうろついて。

ずっとずっと昔から知っていたこと。

何度も見ていたこと。


昨日今日、訪れた異邦人に『なぜ』と尋ねられ、わかりません。


泣けるわ、コレ。


「どこでもそうなのか?」


切り口を変えてくれた。よけい、泣けるわね。


「大陸中でそうよ」


それは断言できる。例外がぽつりとあるかもしれないが、大陸という単位で言えば言い切れる。


ハーフエルフは嫌われる。殺されてもおかしくないほどに。

そう多くはないのに、見かけたことがある人間は少ないはずなのに、なぜか。

あたしは、話し続ける。


「ここ十年、この邦で、あたし以外のエルフを見ないけれど」


帝国のエルフ絶滅政策で人里にエルフが近づかなくなったから。

あたしは反応が見えないまま続けた。


「それ以前は、たまにいたわ」


人とエルフが行き交うなかで、多くはないが、たまにそれは起こる。

エルフが普通の旅人だったころでも、ハーフエルフは迫害された。

親が側にいなければ成人しても生きることができないほどに。




【護衛艦格納庫壁より/エルフ正面/LCAC乗船前】


俺は独白めいたエルフっ子の説明を聞き続けた。

資料をめくりながら考えをまとめるようなもので邪魔にはならない。


選択肢はいくつかあるという。


あの子を頭目に返す?


邦中から注目される青龍がそんなことをすれば、絶対にあの子の素性はばれる。

失墜した頭目とともに母子は殺される。


逆にいえば、頭目が消されるタイミングは操作できる。

廻船商人や参事会、盗賊ギルド内の勢力を取り込み既成勢力を解体し、青龍が港を完全に支配することもできる。


うん、キミ、頭いいけど、顔色みるといろいろ心配だよ。

そのキャラ付け、向いてないって。



あの子を青龍(俺か)の手元に置く。


そうなればもう、母子はお別れじゃないか?

やっぱりそうか。


だが、頭目の望みはソレだろう。

え?

あんなに大切にしている子供を手放したいのか。


港の最有力者である盗賊ギルド頭目の、致命的な弱みを人質と一緒に差し出す。

俺に。

頭目は個人として青龍の貴族(俺)に絶対服従を誓う。

代わりにあの子の無事を青龍の力が保証する。


やったね!仕事には都合がいいけど、最低の悪党だよ!!

俺そんな真面目じゃないから!義務の為に泥をかぶるような人生拒否するから!

絶対。


でも、エルフっ子からみて、あの母子が生き残ることができる、唯一の選択肢らしい。


理解はできる。

ハーフエルフは『なんだかわからないが嫌われてる』ってのがエルフっ子の説明。

って話なら隔離しかない。




【護衛艦格納庫壁際/青龍の貴族正面/LCAC乗船前】


あの子は5~6歳。

もう親がなくとも生きていける。


明らかに帝国時代(ここ十年)生まれ。


青龍以前。

つまりは先の領主一族が逃げ去るころまで、一ヶ月と少し前だけど。


帝国官憲が払わない関心を、より強烈に払う目があった。


異種族が集う奴隷市。

異種交配を狩る化け物。

領主権限を超えた中枢直轄の監視組織。


帝国一優秀な異端審問官達。


エルフと通じたとなれば、子を産む産まない以前に龍の餌。


そもそも奴隷が主人を孕ませるのは禁忌。

そして弱肉強食どころか貪婪共喰の盗賊ギルド。

上は下を監視、下は上を窺う。


競争相手や部下に知られれば地位は失墜し母子そろって命はない。


そんな時代に、頭目と父親のエルフが出会えたこと。


どんな経過は解らないけれど、子供を産むことができたこと。


それは奇跡だ。

そして奇跡は続いていた。


頭目は子供を守るために力を尽くし、人目につかないように工夫し、世話役を配置し、いつでも逃げられる隠れ家をしつらえた。


何年も。

今日まで。


今日までは。

あの子が隠れ住んでいる農場に青龍の貴族が降りてきた。

最高の立地条件故に。


ここから先は?

いや、まだ運が良かったかもしれない。隠れ住むのはいずれ限界が来る。


頭目が青龍に示したサインは十分に成算がある。

あの子自身も青龍に身を投じるのは悪くない賭けだ。




【護衛艦格納庫壁より/エルフ正面/LCAC乗船前】


俺、やっちゃったか?エルフっ子が静かになってしまう。


「・・・・・・・・・・ごめんなさい。あたし、何にも知らないのね」


なぜ?

俺の、なぜ?に答えが見つからなかった?

いや、別にいーから。


とりあえず自分で考えたり調べたりする前に聞くことにしているだけで。


あれか?

俺、尋問口調になっちゃってたか?


「あとは、ハーフエルフが子供を産めない、くらいかな」


エルフとの違い。

うん?




【護衛艦格納庫壁際/青龍の貴族正面/LCAC乗船前】


あたしは一息つく。


一応顔見知りの、頭目の代わりってこともないけれど。

青龍の貴族に話は伝え終えた。


あたしがわかる範囲のことでしかないけれど


ここから先は賭けに出た母子の問題。

あたしが関与できる話じゃない。


とはいえ・・・・・・あたしは意外な程に落ち込んだ。

鼻っ柱を折られた、と。


「ハーフエルフは子供を産めないのか?」

頷く。


「あたしも生んだことはないけどね」


あたしは利口ぶっているバカだ。

うぬぼれともいうけど。


「ハーフエルフ同士でも?」

頷く。


何百年生きて、大陸中を旅して。見聞きして体験して感じて。


「人間やエルフを含む異種族が相手でも?」

頷く。


知ったかぶり、だった。何も知ろうとしていない、知らなくて当たり前。

無知を知る相手に出会って初めて自覚する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・自分が理解せずにいた諸々。


こんなことで約束を果たせるんだろうか?

あの娘を護ることができるんだろうか?


いやいや、あの娘を守るためにも落ち込んではいられないわね。

よしっ!


「なるほど」

頷く。


え?





あたしがその寓話を知るのは、ずっと後だけれど。


結び目を絶ち斬ることができたのはなぜか。

そもそもが「結び目をほどく」のが前提だったのに。


英雄だったから?

剣があったから?

ひらめきがあったから?


彼、青龍、を見ていたから理解できた。


彼はどこまでも、どうなっても、青龍以外の「なにか」ではない。


そのものがルールだから。

それが在り方だから。

だから。


絶ち斬れたのだ。

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