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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第八章「天獄に一番近いここ」

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無限責任


『野党』:作品世界における連合与党に対抗する単一政党。転移時点の党執行部/主流は党内左派。異世界転移後、リベラル系与党連合と大連立、挙国一致内閣を造る。が、第一回閣議で閣内不一致を理由に、野党閣僚が全員罷免。全く選挙準備の無いまま、衆議院が解散。準備完了している与党との選挙戦に入った。これを「騙し討ち解散」と呼ぶ。野党内では責任をとって左派執行部は総退陣。代わって少数派ながら責任追求の急先鋒である、党内極右派が執行部を掌握。左派右派ともに執行部から距離を置き、選挙戦に突入。極右のみで創られた公約が、支持層の離叛を招いた結果、大敗。改選前議席が与野党で3:1であったものが、4:1へ。左派議員はほぼ落選。極右と右派は議席を残したが、執行部から極右は追放され右派が主導権を握る。現在、野党は対異世界戦争推進に反対ではないためにその点への言及は避ける方針。代わりに与党の統制経済を批判し、自由主義経済で論陣をはっている。

野党党首に関して

覚書

・この人物は日本最後の右翼思想家と言われている

・与党の詐術で野党内左右両派閥が壊滅しなければ総裁の地位に就くことはなかっただろう

・右翼団体の多くがそうであるように台湾系半島系の人脈に強い

・与党幹事長が大陸系(大平洋双方)に強いことと好対照をなしている


『連合与党』:作品世界における政権与党。複数政党と複数会派による連立政権。日本の政治にはよくあることだが、政治思想から政策まで左右両派が混在。中心となっているのは国連中心主義/経済統制志向の左派リベラル系。転移前から与党第一党幹事長の指導力だけで成立しているといわれ、その強烈な個性に引きずられている側面を持つ。極端な議会中心主義をとり、首相は「幹事長の操り人形」で「閣僚は衆参両院各委員会の事務処理係」と言うのが世評。転移後の混乱に乗じて各種立法が通過、従来にはあり得なかった議会強化策が実行される。移転前から官僚機構とは真正面から対立しており、連立の中枢議員は逮捕間近とささやかれていた。移転後は国会の会期消滅通年化で議員不逮捕特権に空白が無くなり、在日米軍を背景とした米国など各国の視線が厳しいために宣伝合戦でにらみ合いが続いている。「異世界よりも国内の敵と戦っている」と指摘されるのも故なしとは言えない。だが国際連合を再建し対異世界戦争を開始推進しているのは間違いない。


ふむ。

いいだろう。


貴公の飼い主が予定していることは知っている。

我輩は、それに賛成してもいる。


だが、ソレは正義ではない。




君らはまるでわかっておらん

――――――――――なぜ相手の身になってやれないのだ。



なぜ憎まれるか?

なぜ蔑まれるか?

なぜ恨まれるのか?


なぜなぜなぜ???


なぜ!!!!!!!!!!

その程度のことが理解できない??????????

あれは、親に裏切られた子供の泣き声だ!!!!!!!!!!




これは政治家としての言葉ではない。

思想というに生々しいが、我ら民族の根幹にかかわる問題だ。





恥じているよ。

死なぬでおるのが辛い。

いつも心から謝罪しておる。


現代史におけるわが祖国、日本のふるまいを。

彼らアジア諸国の人々に、そして半島と台湾の皆に。



八月十五日正午。

敗戦責任を恐れた階級が、国家を売った。

陛下と臣民、上から下まで、全て。


しかも、あろうことか、外殻防衛を担っていた多くの臣民を、敵国に引き渡した!



我が国は臣民を、その一部を選んで切り捨てたのだぞ!

帝国議会に籍を持ち、ともに大日本帝国を盛り立てた同じ民を!!

売国奴どもが国を売り、本島以外の帝国臣民を、陛下の赤子を、棄てたのだ!!!


売国奴は殺さねばならぬ。

国賊は絶やさねばならぬ。

では、同胞を棄てた我らはどうされようか?



――――――――――これは永遠に背負わねばならぬ――――――――――



日本民族が亡びぬ限りは永遠にな。

無論、全アジアの同胞を見捨てたる恥も忘れてはおらぬ。

しかし、家族を棄てたること、かほどに邪悪なことがあろうか。



彼らが逃げたのではない。

我らが棄てたのだ。


永遠に侮蔑されたとて、何を言い返せよう。


我らの存在を呪うがいい。

我らを唾棄すべき輩というがいい。

我らの帝国は、まさしく、鬼畜以下であった。


子を敵に差し出した後で、何を言い得るというか。



其れは膏肓に入る。


売国奴に諾々としたがい、植民地等と言い訳し、己が国の所業を忘れる売国奴が息をしておるくらいだ。

人はそこまで落ちることができる、否、なにひとつ覚悟もなしに人を止められるのだ。


もちろん、繰り返させはしないがな。




それを踏まえて考えたまえ。

我々日本人が彼らを再び振り向かせることができるのか。

ソレを見ている各国の人々から同志同胞にたる信頼を得ることができるのか。


この異惑星に住む者たちから、敬意を受ける資格が築けるのか。


我輩は、成し遂げて見せる。

貴様とは違う方法でな。




否。

貴公にあらず。

貴様だ貴様。


貴様は、どうだ?

素知らぬふりか?


ほう。

自由な発言を求める為に、口をつぐんでおるとな。


それを解説してくれたインド人、貴女に問おう。

国際連合事務総長、であればそう呼ぼう。




貴女の飼い主は、理解する気すらない。

あの機械主義者はシステマティックに処理するだろう。


憎しみ。

恨み。

蔑み。


なにもかも「方便」に過ぎない。

と、こう考えておるぞ。


恨まれる理由は今にしかない。

過去など全く意味がない。


歴史は食えぬとうそぶくか。

吾奴の言い分は知っておる。




造ったばかりの国家には(よすが)が必要。

だから敵を求めた。


内戦の相手にそれを求める訳にはいかない

――――――――――血を分けた同胞を憎めるわけがない。

大国にそれを求める訳にはいかない

――――――――――脆弱な反植民地国家など踏み潰される以前よな。


だから、日本だ。

当時、弱りきり、復活の余地など有り得なかった旧大国にして敵国。


安全に蔑める。

恨みは既にある。

憎ませる手間もない。


そして建国の夢は色褪せ、行き詰まる。

だから一層、外敵を手放せない。


ましてやその相手が飽食に飽きて、隣国の敵意など気に留めぬとあれば。


ならば。

容易い。

誰にでも。


憎まざるを得ない。

愛さざるを得ない。


切り替えればいい。


考慮すべきは?

手間に見合った値打ちの試算。

使い道を考えれば、憎まれるのも悪くない。


使えるうちは、使う。

使い道がなくなれば、片付ける。


謝罪してまた開き直って、手のひらはなんど返しても減らない。

ふふ、機械主義者の性根よ。






吾奴が太子党を囲っていたのは知っとろう。


でかい国の小さな中枢。

将来の国家主席「たち」。


留学生とはよく言うたわ。

自宅に住まわせて帝王学を仕込んでおるではないか。


猫の色にこだわらぬ者同士、気が合うだろうて。


赤い貴族の有望株。

最小投資で最大効果。


そこ「だけ」を押さえておけば、弱小国家や大半の大衆は付いてくる。

残りは嫌でも付いて来ざるをえない。


旧臣民の意志が奈辺に在りや?

――――――――――そんなことは気にも留めない。





あるいは、上手くいかせるかもしれん

――――――――――――――――――――吾奴には、背負う歴史がない。


今だけ、今だけ、今しかわからぬのだ。

過去など頭を掠めない。


事実がどうあろうと、真実がいずこにあろうと、吾奴には無意味。


「今、そう思われている」

「今、そう思っている」

「なら、こう思わせよう」


いつも変わらぬ三段論法。



傷付けた相手を、全員黙らせれはいい。

傷つかなかったのとどう違う?




否!!!!!!!!!!


被害者を皆殺しにしたとて、罪は残る。

誰が責めなくとも己が赦さぬ。

それが人というものだ。


官僚どもが帝国を簒奪し、朝鮮臣民、台湾臣民を棄てた罪、その歴史は我々が背負わねばならない。


謳いあげるべき栄光も。

悶絶すらたりぬ汚辱も。

穢れも清きも我らなり。


大日本帝国がどれほど歪であろうと!!!!!!!!!!

我々が官吏どもに裏切られたのだとしても!!!!!!!!!!

我が我なりとあること、これを誉と言わずして、

なにを誇るか!!!!!!!!!!






そこの仏頂面。

我輩を呼ばせたのは貴様であろう。

同席を講じられてから考えたか。


その面ならば応用が効く、とでも?

同意とも不同意とも、要不要に応じて繕うか?




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ははあ、そうか。


此処を選び、彼ら旧臣民を立ち会わせたのは、そういうことか。

立ち会わせて、責めを互いに負わせるためか。


我輩以外の全地球人類を、共犯者にしたてる手か!



《東京都港区白金台5丁目20番2号「(旧)台湾日本関係協会:(現)中華連邦議会本部」//同化政策委員会/日華議員懇談会長の証言》






【国際連合統治軍第13集積地/ゲストハウス前/軍政部隊指揮位置/青龍の貴族】


俺の部下一同。

一人の欠員もありません。

人死にが出ないのは善いことだ。


何人殺したか忘れたが。


あれ?

人を撃ったことないのも多いか?

訓練射撃だけ?


まあいいか。

国際連合軍の平均通り。

余計な経験値なんかいらんわな。



緑のプロテクターはくすんだ色あい。

まあこれは当たり前に寝る前、磨き上げる。

いくら磨いても輝かない。


まあ戦闘迷彩なんだから当たり前。

屈折率反射角など、低視認性を計算して形や色は設えられている。


でも汚したままだと、迷彩効果が落ちるのだ。

だから暇があれば、プロテクターを磨くべし。

輝かない明日を目指し、今日もくすんでよう。


うむ。



皆が構えるM-14は弾倉装着済み。


戦地だからね。

仕方がないね。

内地なら弾倉ぶっ込んだりしないけどね。


89式より見慣れた撃ち慣れた、M-14。

89式は普段、鍵付きの保管庫だからね。


弾薬高いから、撃つ機会無いしね。

バカが部品や薬莢盗んだりするから仕方ないね。


訓練すると暴発しかねないし。

メーカーが耐久試験したかしてないか覚えてないから仕方がないね。


だから誰もがM-14に馴染んでいる。

明らかにふれた時間が桁違い。


予備弾倉も装着済み。

個々の予備弾倉に手榴弾も。


俺指揮下、10名。

普通科隊員8名、衛生兵に技官も完全武装。


こう小所帯だと、全員戦闘任務に投ぜざるを得ない。


普通科は対ゴーレム対竜他巨大標的用の、M72LAWを一本背負い。

技官は対人手榴弾の部隊予備バックバックを背負う。

軍医は弾倉の部隊予備バックバックを背負う。


戦闘時、予備弾倉は真っ先に減るから。

衛生兵はなるべくフリーにして置きたい。


あー、もちろん、今までのささやかな戦闘で、ここまで背負わせてない。

普段は想定戦闘にあわせて、装備を調整する。


こんな全力戦闘が想定されてたら、逃げ

――――――――――撤退させるわマジ。



だけど閲兵中は降ろせないんだよね。


そもそもが、閲兵イコール装備確認だから。

ほんの一昔前、あるいは先進国以外では、装備の紛失横流しなんか日常だ。


米軍の一般的部隊は異世界転移直前でも、そのレベル。


アフガニスタンやイラクで、街中に弾薬やGPSを忘れて紛失したり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・横流しの方がマシ。


悪党は更正させられる。

無能は悪化しかしない。


まあ、部隊内で英語が通じないケースもあるっていうし。

一応、今、日本列島ごと転移した米軍はエリートだから大丈夫、らしい。

どうしても使えない奴は、オスプレイに放り込んだとか。


何から何まで、スターリン時代の赤軍ちっく。



そして我が自衛隊は

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・不祥事の少なさが自慢です。




【聖都南端/青龍の軍営/青龍幕舎出入り口/青龍の貴族、その前/魔女っ娘】


わたしは意識がどこかにいってしまいそう。


ご主人様の手。

大きくて暖かかくて、わたしを掴んでくださる手のひらだけが、わかります。


背に感じる御身体。

わたしは何もかもゆだねているのですけれど、でもでもでも、別なことを求められているのだと、感じました。


とにかく、えーと、えと、その、すごくおわびしたいです!


どーしろとおっしゃてください。

めいれいしてほしいです。

なんでもします。


ご主人様の、ご意思さえいただければ。


だからおねがいします。

わたしだけではなにもできません。

まっすぐに前を見ることしかできません。



なんでもしたいのですけれど。

なんにもできないのです。

でもだから

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・がんばらせてくださいますか。




【国際連合統治軍第13集積地/ゲストハウス前/軍政部隊指揮位置/青龍の貴族】


なでなで

――――――――――俺は魔女っ子で、自分の動揺を鎮めた。


発表会に来た保護者のように、ドキドキである。


いつもはシスターズ&Colorfulの保護者気分。

こんどは曹長に指揮された我が部下一同の指揮官気分。



普段ほとんど関わっていない、部下の隊員一同に注目。


これから行われるのは国家的儀礼。

軍隊と名がつく、国連統治軍もその一つだが、の晴れ舞台。

それをやるのが俺の部隊で俺の部下。


ギャラリーには、あまり好意的な反応を期待できない女の子たち。

メインゲストには、すでに硬直している10歳児、魔女っ子。




もしかして、指揮官っていうのはいつもこういう気分なのか。

曹長を、いつもよりなお一層、尊敬する。


着任後、通信販売で曹長一家に贈り物を送っておいてよかったよかった。


奥様には異世界転移後品薄になりつつある高級食材ギフト券。

お嬢さんにはコレクションしているという、ゆるきゃらオーダーメイドアクセサリー。

曹長の家族自慢に耳を澄ませていた成果。


仕事をしない男は、此処が違うのだよ。


さておき、曹長任せ部下一同。

全く縁のない部隊から寄せ集められて、気心は知れてない。

異世界関与が前提の国際連合統治軍戦闘部隊にありがちな精鋭でもない。



いや、別に不満がある訳じゃないのだが。

だが、不安だ。


我が隊一同、整列に異常なし。

目の前の兵士、つまり部下たち。


戦闘経験が、まあ、太守領派遣後に初。

素人(俺)目から見てなお、ヤバかった。


降着動作がぎこちなく、鈍い。

全周警戒させると重複警戒と無警戒。

味方以外を見る目が甘く、友好的。


そりゃ生きた心地がしない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いつ殺されるかと。


全自衛官から見て、悪いレベルじゃないよ?

自衛官て比較的均質だから、まあこんなもの。


――――――――――ま、普通の日本人だからね。


最精鋭は最前線。

古今東西皆同じ。


軍政任務は最前線、ではないが前線だ。

そこに派遣される人員がコレなのは、推して知るべし全体像。

まあ自衛隊だしね。


仕方がないね。

軍は歴戦の勇士揃いな国なんて、政治家が無能で社会が歪なだけ。

そこは自慢していい。


役立たずの無駄飯食い。

それこそ俺が選んだ就職先。


軍隊が無駄飯食えないってそれもう、国家破綻してるから。

まあだから、異世界に来ちゃうと俺困る。


わざわざ最前線から抜き出した、選抜隊員を二人つけて下支え。

後は曹長がひたすら訓練。


戦闘ってレベルのモノがなかったから、凌げただけ。

かろうじて戦闘らしきことは、元カノ黒旗団に任せてたしな。



なのになぜ閲兵か?


曹長に聞いて。

兵士を鍛えるには、段階が必要。


比較的容易で見栄えの良い行動で、成功体験を造る。

料理に例えれば、お菓子づくり。


そのためにもここ、第13集積地は最適。


味方防衛線内側で危険が最小。

味方ながら他の部隊の視線を意識できる。

現地代表の同席を得れば、訓練感を誤魔化せる。


などなどいろいろかくかくしかじか

――――――――――和訳希望。





【聖都南端/青龍の軍営/青龍幕舎出入り口/青龍の貴族、その背後/エルフっ娘】



あたしは彼、青龍の貴族、その背後に立つ。


あたしの横、一歩前には妹分。

これが妹分の主張ね。


二歩後ろに一列、Colorful。

この娘たちの自制、か。


あたしも横に立ちたいけれど、真後ろっていうのも悪くないかな。



彼の背中越しに見える、青龍の騎士たち。

普段、あたしたちは守られる側。

彼らの背中しか見えない。



そして青龍の騎士たちは、主、青龍の貴族のことしか見ていない。

――――――――――ああ、だからか。


青龍の騎士、その意志は青龍の貴族、その意志。


下から上に向かう上意下達

――――――――――いつもの青龍。


だから普段、ひとりひとりの意志を感じないのね。

なのに、だからこそ、個々の存在感が強烈。

爪であり、鱗であり、髭のように。



青龍の貴族を首に据えた、一つの龍

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そりゃ、圧倒されるわよ。


あたしたちは、龍の背中に留まる鳥のようなものだもの。


でも、今は、今だけは、違う

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気がする。


全体の中にいる青龍の騎士。

その一人一人に、いえ、独り独りが、あの娘を見ている。


いままで、こんなことが在ったかしら?


そして自分の騎士、ひとりひとりを睨み付ける、青龍の貴族

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・絶対こんなの、はじめて。


彼、青龍の貴族が無視するのは、領民たちだけじゃない。

自分の体、その巨体の一部に等しい、まあ一部なんだろう青龍の騎士たち。


青龍の貴族は、彼らも見たことがない。

命令すらせずに、放置する。


皆が勝手に走り回り、主の意を汲んでいく。

言葉を交わす、こともなく。


ただ一方的に報告するのは騎士長くらい。

それすら青龍の貴族は聞き流すだけ。


手を動かす時に、命令する者はいない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう考えれば、当たり前なんだけど。



なら、今は?

儀式めいた、ううん、儀式を使ってまでひとりひとりに向き直ったのは、何故?


あたしからは彼、青龍の貴族は見えない。

でも青龍の騎士たちは、よく見える

――――――――――恐怖。


あからさまに、青龍の貴族に向いている。

さっき、だ。


青龍の騎士たちが、あの娘に注目した瞬間。


子供を見る、青龍特有の、優しい視線。

街ゆく子供を見かけたとき、時折、ほんの時折瞳を掠める優しさ。


それが彼、青龍の貴族、その気配で潰された。

高まる緊張

――――――――――青龍の騎士長が間に入る。



「捧げ~~~~~~~~~~銃!!!!!!!!!!」



騎士が剣を捧げる姿勢、たぶん、意味も同じ。

やっぱり、微妙にずれた青龍の騎士たち。

やっぱり儀礼は苦手みたいね。



でも、強い意志は感じる

――――――――――意志?


普段は感じないモノ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・たぶん、見ている、あの娘を。


子供として、じゃない。

主の持ち物として、でもなく。


まるで、自分たちの上位に立つ者に対するように。

青龍の貴族、それに継ぐ相手をみるかのように。




まるで、まるで、主の妻を仰ぐかのように。






【国際連合統治軍第13集積地//ゲストハウス/正面出入り口扉前/青龍の貴族】


俺は目頭が熱くなるのをを禁じ得ない。


ちゃんと出来てる捧げ銃。

皆が一糸乱れず、銃剣付きM-14を構えて礼を捧げる。


異世界住民の中で、唯一、国際連合序列に規定がある存在。

現地代表、つまりうちでは魔女っ子だが。



この子は、だけは、国際連合軍からみて別格。


現場最高指揮者の次。

この瞬間で言えば、中尉相当。


俺が大尉だからね。


もちろん指揮権はないが。

現地代表は国際連合軍/国際連合統治軍の中に組み込まれる。


軍政の都合上、文官扱いは出来ない。


なにしろ、国際連合には彼らを尊重する気はないのだから。

だからといって、軽んじることは厳禁。


それでは代表を設えた意味がない。


異世界に対して絶対的な、地球側にも重みがある。

そう在るべきだ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、どこかの国際連合のどこかの誰かが決めた。


だから階級相当を決めて、序列に取り込む。


それが佐官相当や尉官相当にまとめなかった理由?



おそらく、たぶん、現地代表の権威を安定させるため。


現地代表は地球人より上でなくてはならない。

現地代表は地球人より上であってはならない。


上でありながら上にならない。

あらゆる状況で同じ程度の重さを与える。


道具としての権威を維持し、どうなろうと道具で終わらせるため。


そんな現地代表に、魔女っ子を任命してしまったのである!!!!!!!!!!


俺が

――――――――――ごめんなさい。



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