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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第八章「天獄に一番近いここ」

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幕間:非破壊試験

地球側呼称《三佐》

現地側呼称《青龍の公女》

?歳/女性

:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。


地球側呼称《幹事長/三佐のオヤジ/オヤジ様》

現地側呼称《青龍の宰相》

?歳/男性

:衆議院議員。連立与党第一党幹事長。与党合同選挙対策委員会代表。世に広く知られた「政界の黒幕」、知らぬ者が居ない「影の宰相」という日本語の限界に挑戦されている。娘と違って役職は三つだけ。米中を中心とした各国、複雑多数の与党連合に少数独自の野党からなる日本議会に影響力を持っている、と言われている。私邸が事実上の安全保障理事会/国連事務局となっており、その運営を司る(国連に役職は無い)。国際連合の実質的軍事指導者である現合衆国大統領とは旧知の間柄。



そこなの?




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・他に訊きたいことは無いのかしら?


貴女はカタリベ。

あらゆる情報の開示を許されたモノ。

そう。

オヤジ様にね。

私の。



皆が協力的とは言えないし、安全とも言えないけれど。


――――――――――あら。

私が貴女を殺したりはしないって、なぜ判るのかしら。

殺す以外の方法も。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そういうこと。


貴女も、か。

貴女は、父さまの跡を継いだんだったわね。

私は継がないけれど。


――――――――――なぜかって?


当たり前じゃない。

私は愛娘なのよ。


私が家を継ぎたがったら、オヤジ様の邪魔になるわ。


我が家は代々政治家。

それも終わり。


――――――――――ん?

誰が決めたのか?



贈り物。

17歳の誕生日。

「おまえに平和な世界をあげよう」って。


世界は理屈通りにしかならない。

幸いなことに。

だから解る。



――――――――――ふふ。

だから、うちの家業は終わり。

だから、自衛官になることにしたの。


オヤジ様が安心して、愛しい娘を巻き込まず、家を使いつぶせるように。



――――――――――まあ、そうね。

兄も自衛官だけど。

弟は技官だったわね。


――――――――――――――――――――さあ?

理由は知らない。


可愛い妹に、進路相談なんかしません。

お姉ちゃんに頼るような、育て方はしてません。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、だから、私がオヤジ様に逆らう訳がない、と。


わたしたちは、同じ種類の女。

ごまかせないわね。


残念。

やっぱり、オヤジ様が選んだ男の、愛娘。




さて

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――あ、また、そこに戻るんだ?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでも聞けるのに。


講和会議の日程とか、仮名の活動報告とか、粛清リストとか、特捜部の強制捜査スケジュールとか、プランはABにClover field、いろいろ。


――――――――――あら?

いらないか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・全然、未練がないのね。


思い切ったこと。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・神は細部に宿る、と。


残念。

ホントに残念。

貴方が、こちら側、じゃないのが。

あちら側に送れないのが。



で、つまり。


「あのバカは何者なのか」


本人に聞けば大河小説なみの与太話がきけるから、やってみたら。

貴女がいいって思うまでは、押し倒したりしないわよ。

空気は読めるし、そういう時の空気は無視しない。


――――――――――――――――――――あ、私の。


役職抜き?

個人的見解、それはまた、久しぶりね。

ふーん。



例えて言えば「体重計」かしら。

貴女も持ってるでしょう。

なになに?

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――もっと言い様がある?


でも

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何気に重要じゃないかしら。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・議会政治家の一族で育つとね、「みんな」のことが良く見えるの。


好き、嫌い、無関心。

善意、悪意、喜怒哀楽と敵意に好意。


何が望みか、何が欲しいのか、頭の良し悪しに自覚の有無。

好かれたいのか、好きになりたいのか、好きをあきらめてるか。


これまで支持してくれた、これからも支持してくれる、これからは支持してくれる。

感じてること、反応していること、考えたり判断するときも、なくはないこともない。


ま、そんなことね。


で。

見えなくなるのよ。


――――――――――――――――――――まさか。

曖昧なことじゃないわ。



私。

己。

我。


何もかも載っている地図があっても、現在位置が解らない。


ランドマークを創るしかないけれど、創るのはたやすいけれど、都度々創ればね、誤差を誤差とすら測れない。


無いよりマシか、無いほうがマシか。



だからアレは便利なのよ。


作為的な標準。

意図的な平凡。

偽造した基点。


だからブレない壊れない。

相対的安定は免震構造なみ。


ゆらゆら揺れてる、揺れに合わせて止まらない。

相対的な絶対性。


――――――――――天秤?

悪くない。


でも馴染まない。

日常感がないわね。


やっぱり体重計でいいわ。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ソレをアソコに置いておいていいのか?



やだ♪

異世界に現世界をぶつけるなら、最適でしょう。

どんなに激しくしても、たぶん壊れないわよ。

向こう側が壊れるかも、だけれど。





だから作戦区域を広げたの。

同じように進んでいるところは、ない。

ちょっと違うバージョンはあるけれど。


まあ数が少ないから、結論は出せないわね。

でも、ここからパターンを抽出すれば、先の見込みが創れる。

疫学的な危険はまた別だけれど。


いずれにせよ完全に管理できるから、互いへの危険は最小限。

わざわざ、護衛艦まで派遣してるんだから。


そのうえに暇だからってDiamond backsを待機させてるんだし。

レーガンにエスコートされた奴なんて、人類史上初めてじゃない?




――――――――――?

体重計は?


大丈夫。

壊れてないから。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、そうか、そうね。



手段は一つでも、目的はいくらあってもいいものよ。



《インタビュー132/???》






【国際連合統治軍第13集積地/ゲストハウス前/軍政部隊指揮位置/青龍の貴族】


俺、ってか魔女っ子の正面。


うちの部隊。

前後二列。

五人ずつ。


二列に分かれるのは、全滅を防ぐためだとか。

一列だと一連射で全滅だから。


なら並ぶなって話だが。


体の前後左右を包むプロテクター。

基本的には防弾じゃない。

対弾対片がいいところ。


いやいや、十分だけどね?

凄いことなんですよこれは?


戦死戦傷の少なからぬ直接原因は、砲爆撃の弾体から生じる破片だからね。

爆発そのものではなくて、爆発の威力でまき散らされた破片

斬り裂き抉り穿つのは人体。


そして非常に大きい割合を占める間接的原因も、破片弾片だったりする。

防ぎようがない銃弾を人体に撃ちこむためには、射程まで射線まで接近が必要。


接近するまでされるまで、破片の嵐で釘を刺す。

逃げないように逃さぬように、撃つために撃たれぬために。



破片の嵐がある程度でも防げれば、直接的犠牲者は減る。

間接的な効果も減って、逃げたり反撃しやすくなる。

敵も味方も死ににくくなる。


互いの装備が対等なら。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やめよう。


殺し合い、って前提が崩れるのを直視してはならなない。

異世界転移前から、半世紀くらい前からね。


うん。

禍々しいから嫌われるんだな。

女の子に。


愉しい話じゃないしね。






そんな便利グッズなプロテクター。



便利であって万能でなし。

難しくなっても人は死ぬ。


7.62mmの直撃は防げない。

大切なのことなので以下略。


訓練キャンプで何度言われた事か。

しってるってーの。

とは言えない。

殴られる。


それに、撃たれてみるとわかったし。

何回、何度、繰り返し言っても言われても、たりねーや、と。


ほぼ動けないほど魔改造したプロテクターで、実際撃たれる訓練があったのだよ。

撃たれてわかるありがたみ。




軍政官って何?

何を政してると撃たれるわけ??

国際連合統治軍って何?

何を統治すると撃たれるわけ???


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って聞くと、左遷されました。


それが答えだ?

ごもっとも。


つまりなぜ撃たれたのかと言えば、三佐が悪い、と。



怪我はしないけれど、貫通した弾頭の感触を、それはそれは暴力的な奴を味わいました。


7.62x39mm弾だったけどね。

7.62x51mm弾とは大違いの弱装弾だけどね。

撃ち抜かれたよ外殻が。

プロテクターの。


とはいえ、それを二層に渡って撃ち抜くのは難しい。

だから兵士は二列に分かれる。


前後左右からプロテクターを貫いた弾頭は、反対側のプロテクターに跳ね返される。


プロテクター内側はゲル状の緩衝材。

伝達率の高さで衝撃を拡散し、瞬間凝固で弾片を吸着する

――――――――――それなりに。


だから、死ぬのは一人で済む。

つまりはまあ、あくまでも閲兵中に銃撃された場合の話。



プロテクターを撃ち抜かれたら、どうせ死ぬ。

なら体で弾頭を受け止めろ。

無慈悲な軍事思想。


俺みたいな防汚加工の正服。

こちらの方が生きやすい。


貫通したほうが、ダメージがすくないからね。


イヤだけど。

あんまり致命率変わらないけど。



例外は、一部の特殊部隊用プロテクターだけ。

内部被膜が弾片を包み込み、内部破壊を防ぐ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・出来るだけ。

あんまり変わらない?


まあ7.62mmNATO弾に撃たれたら諦めろ、ってこと。

銃声が聴こえたら、よく聞く。


5.56mmなら危険はすくないからね。

オリジナルAKの7.62mm弱装弾も期待出来る。


そんな死装束、プロテクターの別名、をまとった兵士たち。





しかしそれは現代戦の話。


対異世界で言えば最強装備。

斬撃刺突矢に投石、衝撃以外は通じない。

殺傷力の9割キャンセル。


人体を斬り裂き出血させる、主要な攻撃が通じない。



だから帝国軍など戦槌を装備し始めているとか。

貫けなければ貫かないで中身を壊せばいいじゃない

――――――――――なんて奴らだ。



とはいえ、みなさん良い整列です。


一糸乱れぬ揃いの装備。

異世界の板金鎧より軽くて丈夫。


相対的防御力が落ちる一方とはいえ、プロテクターは見栄えがよい。

でまあ、元気そうでなにより。




【聖都南端/青龍の軍営/青龍幕舎出入り口/青龍の貴族、その背後/エルフっ娘】


「着剣!」


あたしは驚いた。

青龍の騎士たちが動きを合わせた、無意味に。


竜殺し、銃を天に構える。




それが何かの礼法だ、とは、判るけれど。

だから、判るから、余計におかしいわね。


青龍。

普段は儀礼なんか無視。

そもそも統一して見える動作なんかしない。

王城の中ですら、バラバラ。


陣形は造っても、行進はしない。


なのに今は、王を迎えるみたいに。

あの娘は涙目。


だけど青龍の騎士から目を逸らさない。

槍を捧げる騎士の儀礼。


それが、あの娘に向けられている。


それは、あの娘自身にも判るからだ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気絶しそうだけど。


凄く耐えてる、ものすごく頑張ってる。

名目や形だけではない、あの青龍たちの敬意。


だからこそ、苦しいんでしょうけれど。

だからこそ、逃げたくても逃げられない。


あたしは嬉しくなった。

とっても、嬉しい。



気を失ったら、さりげなく支えないとね。

彼、青龍の貴族が支える前に。



男に恥をかかせるわけにはいかない。

彼が、青龍の貴族がこの一事で女の評価を変えたりはしない。

あの娘は愛されたままだろう。




ソレは判るけれど

――――――――――出来るだけ、よく思われたいじゃない?


それなら姉として、支えなくちゃね。

あの娘が、産まれて初めて、誰かに気に入られようとしてるんたから。



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