表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第八章「天獄に一番近いここ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

312/1003

天網恢恢

【登場人物/三人称】


地球側呼称《三佐》

現地側呼称《青龍の公女》

?歳/女性

:陸上自衛隊三佐、国際連合軍事参謀委員会参謀、WHO防疫部隊班長、他いろいろな肩書を持つ。日本の政権与党を支配する幹事長の娘で、父親と連携して戦争指導に暗躍している。



【用語】


『軍事参謀委員会』:国際連合の参謀本部。安全保障理事会の補助機関。国連憲章第七章に基づく国際連合の軍事力行使の指揮を執る。


『仮名』:異世界転移後の国際連合武力制裁活動に暗躍する正体不明の軍人たち。既出の限りすべて女性で、地位に比べると若い。仮名として名乗る名前は歴史上の戦争に関与した人間の名前ばかり。





「順調です」


『あら素敵。来週には、おめでたい知らせを聞けそうね?』


「薬草の投与量は、ほぼ限界値」


『薬物投与?』


「行っておりません」


『国連は?』


「現地代表が個人的に欠かさず継続中」


『あくまでも個人的な?』


「少女が初めて見知った奴隷市場。愛玩奴隷購入者用の迎賓館。高級宿泊施設と認識。保管されていた薬草。その香草としての効果だけに気がつく」


『それを料理やお茶に使い始めた?』


「偶然です」


『運命って素敵ね?』


「そは自由なり、でしたか」


『運命ならば仕方がない?』


「偉大な文明を滅ぼしても、未熟な同朋を銃殺にしても、旧体制の同胞を虐殺しても」


『他人の恋路を応援しても?』


「他人たちの恋路を応援しても」


『関わっていない?』


「薬草は入手し難いようですから」


『接収品に幾らでもある?』


「ありません。ですから手配しました」


『善意の第三者として』


「用途は聴いておりません」


『由々しき問題?』


「経過を観察しておりますが、健康被害はありません」


『問題なし?』


「精力増強と催淫効果は肉体的上限を維持します。当人は禁欲性活のせいだと思い、違和感を持っていません。中断されることなく、それが常態となれば」


『いつか決壊する?』


「すでに決壊していますね」


『お赤飯?』


「いえ」


「我慢する奴じゃないけれど?」


「そのようです」


『???』


「日々、口説き終わってない女を口説いてますよ」


『あの、バカ』


「その、バカは彼女たちにお預けをくらわし、視界に映る成人女性の好感アップに邁進中」


『貴女もかしら』


「当然です。一番、優先度が高く見られてますね」


『金髪なら毎夜同衾してるのに』


「黒髪にも積極的ですね。美女ならなお好し」


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・変わらないわね』


「貴女も?」


『アレは誰、や、いつにこだわりがないのよ』


「誰か、と、時折、過ごせればいい」


『そ』


「処女をこじらせた方々には不評でしょうが、生理学的に正常ですね」


『正常じゃダメ』


「内心では葛藤を高ぶらせているでしょう」


『心はどうでもいいの』


「だから、失敗するんです」


『ほう?』


「肉体的刺激だけで男を誘導出来る訳がありません。処女をこじらせた方々には理解されませんが」


『メンタルが重要だと?』


「はい」


『貴女らしくないわね?』


「法務委員会が知りたがっているのはそこでしょう」


『異世界の男女がどのようなカタチを造るか』


「産みだされる者と産みだした者がどのようなカタチを造るか」


『双方の周辺環境がどのように反応するか』


「場合によっては異世界との関係を絶たなければなりません」


『プランA?』


「軍事参謀委員会の関心事はご存知でしょう」


『その第一歩で手間取る時間は無いわ』


「死角を生んでいるのは社会的条件付け」


『あれは雌ではない、と?』


「だから情動が向かわない」


『処方は?』


「人格は環境の付属品。世界を変えれば人格も変わる」


『世界?』


「人間にとって世界とは、一個人の五感が及ぶ範囲」


『十数~数十m圏内?』


「オンラインジャンキーなら1フィート圏内ですが」


『ディスプレイまでの距離?』


「誰にでもどうにでも」


『貴女らしいわ』






【国際連合統治軍第13集積地//ゲストハウス/正面出入り口扉前/青龍の貴族】


俺は一呼吸、間をとる。

情報量は多いが読み取るのは一瞬だ。



偵察ユニットと哨戒気球のデータを確認。

もちろん今のアクセス先は、ここ第13集積地の偵察ユニットに哨戒気球。


俺が管轄している軍政部隊装備は、はるか北、太守領だ。

いつも使っているが、この手の装備は移動させない。

地域指定装備。



もちろん俺の権限でアクセスできる。

上層部にダミーをつかませられなければね。


それを疑っているわけでは、あんまりないが、アクセスしない。

太守領のシステムには、アクセスしない方がいい。



俺の任地、太守領。

その中心、太守府。

その現在、三佐の胸先三寸。



それを知る必要はない。

なにもかもお任せである。


留守番の三佐を、俺が信用している?


訳がない。

むしろそのうち、帰還の必要なし、とかいわれたらどうしよう。





ニコニコしているが、あれは笑わない。


――――――――――嗤ってる――――――――――


なにをされても言われても平然としているが、力を貯めているだけ。


我慢や忍耐に縁がなく、倫理的制約を持たない


――――――――――自分の好みは重視する、それが救い――――――――――




何故にそれが救いかって?


嗜好自体は普通なのだ。

例えば普通の日本人ならば、子供を使い捨て特攻兵器にしようとしない。

歴史的に日本ではない時代に、やりやがったが。


俺は、そんなことを考えない。

三佐も考えない。




まあそんなこと、日本だけでもないか。


ハリウッド映画。

巨大ロボットVS怪獣もの。


ロボットのパイロットは、大人。

訓練生の子供は戦闘時にシェルターへ。


フィクションノンフィクション問わず

――――――――――当たり前だよな。



いやまあ。

当たり前じゃない部分もあったが。


20代後半から30代前半までの、脂がのった、というより滴りそうなムキムキ筋肉マッスルマンが二人一組心と体を合わせ、シンクロしながら二人一緒の狭いコクピットで血と汗とナニかを滴らせながらクンズホグレツ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・悪夢だった。


ないわー。

美男美女などいくらでもいるのに、なぜにどうしてそのチョイス。


せめてコクピットは単座にして。

バディものやりたいからって、相席させないで。


アメリカンは複雑怪奇にして不可解。






ま、その点はやはり三佐も同意してくれるだろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それがいい、とか言われたらどーしよう。


銀貨三十枚で買い取ってくれる相手を探さないと。

いやいや。



言われてない言われてない。

つまりは三佐。


いってしまえば、当たり前が通じる相手。

そこだけは、そこんところだけは、信頼できる。


三佐は、嗜好は至極まっとうで、ブレない。

思考自体が逸脱しているだけなのだ。




だから三佐が常駐、ってか、片手間に管理している、であろう太守領。

魔女っ子たちの故郷

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・心配な、い、かな。


もちろんほぼ他人な太守府住民はどうでもいいんだけどね。


ほんとうに、どうでもいいが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三佐だからな。


俺には理解出来ない理由で、邦を滅ぼしかねない。



よし

――――――――――決めた。



どうにもならないことを考えるのは、自殺行為だな。

考えなければ生き残れる、訳もないが。

気は楽になる。

これ重要。



絞首台の床が抜けるまで、何も考えずに過ごせたら?


最高最強だ。

よし

――――――――――忘れた。







本日の作戦域、概況確認に集中。

ここ第13集積地の偵察ユニットは、日の出と共に自動離陸。


ローテーションで哨戒飛行。

常時滞空している哨戒気球と連携作戦。


夕暮れと共に全機着陸。

整備自体もローテーションで昼間に整備部隊が行う。


普通とは違う、贅沢運用。



太守領では待機中を含め、常時滞空は哨戒気球のみ。

作戦時のみ偵察ユニットを飛ばす。


俺たちで言えば王城、作戦拠点にいる時が待機。

王城を出たら作戦時。


例えばアムネスティのネーチャンがオフに外出したら。

上空を偵察ユニットが周回する。





そーいう時以外は、哨戒気球だけ。


太守府や港街は定点監視。

太守領全体は気球のローテーション監視。

それが普通。


哨戒気球は配置後、燃料がいらない。

姿勢制御や巡航だけなら、太陽電池で事足りる。


哨戒気球の動力は、たまに動かすプロペラ。

ほとんどは大気循環を利用しているからね。


海風山風季節風。

高度の上げ下げだけで、ほとんどの気流はいなせる。


気象把握用の超高々度気球が上げられてから、精度アップ。

天気予報は適当だが、リアルタイム気象把握は高精度。


広範囲の今を捉えられれば、直近の波及予測はたやすい。

長期予報はまだまだ。





逆に偵察ユニットは基本的に動力飛行。

揚力を常に必要とする。


滑空を多用するが、それは静穏偵察のため。

だからつまりは、燃料を食う。


そんな物を多用するわけがない。

普通は。





ここ第13集積地が特別運用である理由。


それは、数十万以上の異世界住民管理。

やはり、要注意らしい。


広大な国際連合勢力圏。

そこにいる幾百万の異世界住民。


彼らは、いや、国連統治軍の呼び方では〈それら〉は皆、ほぼ放置されている。


一方的に、国連の都合のみ考慮され、干渉される。

異世界が地球人に統治されているのは、ここ、第13集積地のような例外だけだ。


だからここでは、居住区画他を舐めるように観測する偵察映像がふんだんに手に入る。

動体把握で居住者、徴集農民から帝国軍、集積地に出入りする周辺地域の住民たちまで確認可能。


低空飛行の偵察ユニットなら個体識別すらできる。

哨戒気球だと、そこまではなかなかできない。

真上でも見てくれないと、角度が悪いから。



もっとも、そんな濃密データ、俺はみないけどね。

解析は自動判定とともに、第13集積地の司令部が行っている。

俺はそれを読み取るだけ。

結論部分を斜め読み。




自動部分は、おおざっぱ。

基準値を満たした対象にフォーカス&アラート。


一定数の個体が集中する。

一定速度以上で移動する。

集積地区内外への移動。





その判定基準は軍政部隊や戦闘部隊とは違う。



行軍中の戦闘部隊なら、隣接エリアに30人以上が集まれば反応。

銃一丁で対処可能な人数、って基準。


遮蔽物を利用する(ようにみえる)動きがあれば、数人にも反応するが。


銃に備えた動きは、帝国軍の証し。

軍全体で対処しなければならない。



帝国軍でなければ?


銃一丁で対処可能でも、対処したりはしない。

30人程度を片付けるのは可能でも、やりはしない。




M-14の弾倉は20発じゃないかって?


それで30人を片付けるのは、問題ない。

さすがにワンマンアーミーで皆殺しにできるのは、5人まで。

素人を追い散らすだけなら、余裕余裕。


銃を使ったらオーバーキルってぐらい。



元カノみたいなワンウーマンバイオレンスなら。

素手で素人10人相手で圧勝。


向き合った瞬間に、一番強い奴を潰せば済む、とか。


美女相手なら油断する。


狙い目は顔。

金的はインパクトにかける。


標的が一人なら、瞬殺優先。

複数なら、利用し尽くすまで殺さない。



目に掌打を食らわして眼球を潰す。

視界が奪えればいい。


それだけでこちらの武器になる。


そのまま、のけぞった体の脚を払う。

倒した顔に膝を落とす。


喉や心臓を潰さないように注意。

血やもろもろと一緒に、良い声で鳴くそうな。


頭は丈夫で、顔は致命傷になりにくい。

しかし出血しやすく、崩れた顔を併せて視覚効果抜群。


その顔に、膝を落とした反動で立ち上がる。

それで逃げなかった奴はいない、とかなんとか。



間違いなく再起不能だよね。

生き残っても、一生障害が残るよ。


でもそこで終わらせない。

戻ってくる気を起こさせないように。

喚かせのたうち回らせる。


そんなモノは棄てて逃げた標的、中でもノロマを追撃。

逐い潰して散らかすと、目撃者も口をつぐむとかなんとか。


ニ、三人を一方的に蹂躙するだけ。



リアルなジョークだな?

HAHAHA!



なお、後で困る事はない。

堅気にしか見えない女一人に与太つくチンピラの10人20人。

どんな目に遭わせても、ケーサツはまともに扱わない。


ヤクザがヤクザを殺しても、抗争を心配するだけ。

裁判所も検察庁も、あからさまに軽い判決。


共食い歓迎!

物理的に数を減らす。

社会の共通認識。


だから潰してヘーキヘーキ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・現代日本に合わないクオリティ。


中世社会に向いているよな。

あいつ。

うちの子たちを近づけないようにしないとな。

中世っぽい世界の子供たちには、毒すぎる。




まあ、つまり、素人には単独逃走以外のスキルはない、ということ。


一斉に飛びかかってきたりしない。

分かれて逃げたりしない。

攻撃を避ける術もない。


せいぜい身を守ろうとするだけの、標的に過ぎない。



だからといって、銃一丁で対処したりはしない。

むしろ銃一丁しかない状態で異世界住民たちを見付けたら、逃げる。

特段の事情がない限り、接触を避ける。



たかが射的の的でも、結果としてバラバラに逃げる可能性もある。


誰か一人でも逃がせば、経験が拡散する。

そんな一人を帝国が知れば、何を置いても確保される。


そして俺たちは可能性を許容しない。


一人でも逃がして情報を与えたりはしない。

帝国軍もどきを作ってたまるか。



近代兵器の優位は、それぐらい危うい。

俺みたいな素人ても、中世装備での対抗策を考えつくくらいに。

恐れおののかれるぐらいが華なのだ。


だから、小銃一丁で対処可能な相手に小隊でかかる。

一人も逃がさぬように。


異世界行動中の部隊は、最小限小隊単位で動くからな。

小隊規模なら、逃げるも逃がさぬも自由自在。



え?

例外?

長距離浸透斥候とか、破壊工作拉致誘拐などの担当者とか

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺たち。


分隊規模の軍政部隊。

これは謎ではあるのだが。

謎を解くのも先送り。




そしてここ、第13集積地。

異世界住民数十万人を管理する此処。


否応なく、地球人が異世界住民に関わらずをえない、特異点。



何故か知らんが、軍事参謀委員会が安全策をとらなかった。


蛇は卵のうちに、いや正体は気にせず、卵があれば潰す。

堅牢な石橋を叩き壊して戦車橋を設える。

死体の頭を斬りおとしてそれを潰す。



問題は対処するもの?

解答するもの?

解決するもの?


いや、問いかける者を殺すべし。

そんな俺たち地球人が、たまたま今日は殺してない。

あんまり。



そんな奇跡に感謝しよう。

ツイてるうちに、太守領の住民を連れ戻さなくては。


シスターズは、俺を信用してるからな。


最期まで騙し通す

――――――――――単なる観光旅行で終わらせる。


そんなわけで目に映る情勢要約。

第13集積地司令部作成の情勢概要。


天気晴朗。

波高し。

異世界は今日も平和です。


さ、扉を開けて、って、なぜかColorfulが先回りして開けてくれた。

人に開けてもらうのは好きじゃないが、まあ、これも任務か。



開いた扉から気持ちよい海風を


「キオツケ――――――――――!」


うん、知ってた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ